影 踏み :消息:7
かげ|ふみ|しょうそく
Shadow Treading: Extinguished: 7
그림자 밟기 : 소식 : 소식
Desaparecimento de sombras: desaparecimento: 7.
Gölgede gezinme: ortadan kaybolma: 7.
暗影踏步:新闻:7
真壁 は 夜 を 待ち 、 雁 谷 署員 が 住む アパート 型 の 官舎 に 足 を 向けた 。
まかべ||よ||まち|がん|たに|しょいん||すむ|あぱーと|かた||かんしゃ||あし||むけた
|||||||||||||government housing||||
Makabe waited for the night and turned to the apartment-type official residence where the Kariya officer lived.
久子 の 自転車 は オアシスランド の 駐輪場 に 置いて きた 。
ひさこ||じてんしゃ||||ちゅうりんじょう||おいて|
||||Oasis Land|||||
ハンドル の 中 に 仕込ま れた 発信 機 は 外さ ず に おいた 。
はんどる||なか||しこま||はっしん|き||はずさ|||
||||installed||||||||
陽動 に 逆 利用 できる 。
ようどう||ぎゃく|りよう|
diversion||||
五 階建て の 官舎 は 大半 の 窓 に 灯 が あった 。
いつ|かいだて||かんしゃ||たいはん||まど||とう||
真壁 は 階段 で 二 階 に 上がり 、
まかべ||かいだん||ふた|かい||あがり
「 吉川 」 の 表札 の 出た ドア の 呼び鈴 を 押した 。
きちかわ||ひょうさつ||でた|どあ||よびりん||おした
すぐに ドア が 開き 、 神経質 そうな 女 の 顔 が 覗いた 。
|どあ||あき|しんけいしつ|そう な|おんな||かお||のぞいた
女房 と は 初対面 だった 。
にょうぼう|||しょたいめん|
真壁 と 言って 貰えば わかる と 告げる と 、 その 声 が 聞こえた らしく 、 奥 から パジャマ 姿 の 吉川 が 出て きた 。
まかべ||いって|もらえば|||つげる|||こえ||きこえた||おく||ぱじゃま|すがた||きちかわ||でて|
|||if you receive||||||||||||||||||
パンチ パーマ を タオル で ゴシゴシ 拭いて いる 辺り は 気 安い が 、 昨日 の 今日 の 来訪 だ から 怪 訝 そうな 顔 で は ある 。
ぱんち|ぱーま||たおる|||ふいて||あたり||き|やすい||きのう||きょう||らいほう|||かい|いぶか|そう な|かお|||
|||||||||||||||||visit|||||||||
「 官舎 まで 押しかける た あ どういう 了 見 だ 」
かんしゃ||おしかける||||さとる|み|
||to intrude||||decision||
「 近く まで 来た んで な 」
ちかく||きた||
「 早く 上がれ 。
はやく|あがれ
見られ たく ねえ 」 通さ れた 六 畳 間 は 、 襖 も 壁 も 隙間 なく 子供 の 賞状 や 下手くそな 絵 が ベタベタ 貼られて いた 。
み られ|||つう さ||むっ|たたみ|あいだ||ふすま||かべ||すきま||こども||しょうじょう||へたくそな|え||べたべた|はら れて|
|||||||||||||||||certificate|||||stuck all over|stuck on|
カレンダー も 子供 の 手づくり らしく 、 誕生日 だの 塾 の 予定 だの が 色とりどりの マジック で 書き込ま れ 、3、9、16、23、29 と 吉川 の 当直 日 に も 赤 丸 が くれて ある 。
かれんだー||こども||てづくり||たんじょうび||じゅく||よてい|||いろとりどりの|まじっく||かきこま|||きちかわ||とうちょく|ひ|||あか|まる|||
||||handmade|||||||||||||||||||||||||
Takvim de çocuklar tarafından el yapımı gibi görünüyor; doğum günleri ve okul programları renkli kalemlerle yazılmış ve Yoshikawa'nın görevde olduğu günler - 3, 9, 16, 23 ve 29 - kırmızı daire içine alınmış.
ちゃぶ台 に は B 5 判 の 刷り物 が 広げて あった 。
ちゃぶだい|||b|はん||すりもの||ひろげて|
low table|||||||||
B5 boyutundaki baskılar bir chabudai üzerine yayıldı.
『 ご 家族 様 へ 』 で 始まる 文面 は 、 ねちねち と 回りくどい が 、 要するに 、 旦那 が 不祥事 を 起こさ ぬ よう きちんと 女房 が 見張れ 、 おかしい と 思ったら すぐに 上司 へ 連絡 せよ 、 に 尽きる 。
|かぞく|さま|||はじまる|ぶんめん||||まわりくどい||ようするに|だんな||ふしょうじ||おこさ||||にょうぼう||みはれ|||おもったら||じょうし||れんらく|||つきる
||||||||||circuitous|||||scandal||||||||watch over||||||||||comes down to
Metin, biraz dolambaçlı bir yol olan "Sevgili Aile" ile başlıyor, ancak kısaca şu anlama geliyor: Karınızın kocasına göz kulak olduğundan emin olun, böylece uygunsuz bir şey yapmaz ve bir şeylerin yanlış olduğunu düşünüyorsanız hemen patronunuzla iletişime geçin.
来月 は 『 盗 犯 月間 』 である と 同時に 、『 身上 掌握 等 個別 指導 強化 月間 』 で も ある 。
らいげつ||ぬす|はん|げっかん|||どうじに|しんじょう|しょうあく|とう|こべつ|しどう|きょうか|げっかん|||
||||||||personal circumstances|||||||||
台所 で 女房 と ヒソヒソ やって いた 吉川 が 現れ 、 チッ と 舌打ち する なり 、 B 5 用 紙 を くしゃくしゃに 丸めて オーバースロー で ごみ箱 に 放り込んだ 。
だいどころ||にょうぼう||ひそひそ|||きちかわ||あらわれ|||したうち|||b|よう|かみ|||まるめて|||ごみばこ||ほうりこんだ
|||||||||||||||||||||overhand throw||||
「 ブン 屋 に しちゃ 時間 が 早い と 思った が な 。
|や|||じかん||はやい||おもった||
実際 うる せ えん だ あの 連中 」
じっさい||||||れんちゅう
ブツブツ 言い ながら 、 吉川 は 座布団 を 真壁 の 胡座 の 膝 先 に 押しつけた 。
ぶつぶつ|いい||きちかわ||ざぶとん||まかべ||あぐら||ひざ|さき||おしつけた
うるさい はずの 記者 を この 座布団 に 座ら せ 、 真壁 の ノビ の 手口 から 生い立ち まで すっかり リーク した の も 、 しれっと した 顔 に 軟膏 を 擦り込む その 吉川 である 。
||きしゃ|||ざぶとん||すわら||まかべ||||てぐち||おいたち|||||||しれ っと||かお||なんこう||すりこむ||きちかわ|
|||||||||||||||background|||||||||||ointment||rubbed in|||
「 いい の が 入って る ようだ な 」
|||はいって|||
真壁 が 言う と 、 吉川 は 、 何 が ?
まかべ||いう||きちかわ||なん|
の 顔 を こっち に 向けた 。
|かお||||むけた
「 この 時間 に お前 が 帰れる んだ 」
|じかん||おまえ||かえれる|
|||||can return|
吉川 は 自嘲 気味に 笑った 。
きちかわ||じちょう|ぎみに|わらった
||self-deprecation||
「たいした んじゃ ねえ よ 。
目覚まし時計 や 炊飯 器 まで 担ぎだしちゃ あ 質屋 に 持ち込む 雑 食 の ジジイ と か 」
めざましどけい||すいはん|うつわ||かつぎだしちゃ||しちや||もちこむ|ざつ|しょく||||
|||||started carrying||pawn shop||bring in||||old man||
「 佐藤 の 爺さん か 」
さとう||じいさん|
「 当たり だ 。
あたり|
あと は 変態 の 下着 ドロ に 、 万引き に 毛 の 生えた スタンド 荒らし の 若 造 グループ と か ……。
||へんたい||したぎ|||まんびき||け||はえた|すたんど|あらし||わか|つく|ぐるーぷ||
|||||shoplifting||||||||troublemaker|||young man|||
まあ 、 どれ も タマ は 悪い が 頭 数 が 揃った んで な 。
|||たま||わるい||あたま|すう||そろった||
ぼちぼち 叩いて 足し 上げりゃ 、 そこそこ 数字 は 出る だ ろ 」
|たたいて|たし|あげりゃ||すうじ||でる||
little by little|||will increase||||||
「 月間 まで 貯金 して おく 、って わけだ な 」 「 お うよ 、 大物 は いら ねえ 。
げっかん||ちょきん||||||||おおもの|||
|until||||||||||||
お前 みたい の に 関わって 時間 ばっか 食って よ 、 署長 や 課長 に 散々 厭 味 言わ れた んじゃ 割に 合わ ねえ 。
おまえ||||かかわって|じかん|ばっ か|くって||しょちょう||かちょう||さんざん|いと|あじ|いわ|||わりに|あわ|
|||||||||chief||||a lot||||||||
とにかく 仕事 は コツコツ が 一 番 よ 」
|しごと||こつこつ||ひと|ばん|
女房 が 怯え と 憐れみ の 入り交じった 顔 で 茶 を 出し 、 足音 を 殺して 消えた 。
にょうぼう||おびえ||あわれみ||いりまじった|かお||ちゃ||だし|あしおと||ころして|きえた
||||pity|||||||||||
代わり に 右手 の 襖 が 細く 開いて 、 好奇心 の 塊 の ような 六 つ の 瞳 が 二 つ ずつ 縦 に 並んだ 。
かわり||みぎて||ふすま||ほそく|あいて|こうきしん||かたまり|||むっ|||ひとみ||ふた|||たて||ならんだ
吉川 が 手首 を 振って 追い払う 。
きちかわ||てくび||ふって|おいはらう
「 で ?
今日 は 何 だ 」
きょう||なん|
「 子供 に やって くれ 」
こども|||
Give that to the child.
真壁 は 手 土産 の タイ 焼き を 突き出した 。
まかべ||て|みやげ||たい|やき||つきだした
Makabe held out a Thai-style grilled fish as a gift.
「 すま んな 、 と 言いたい ところ だ が 、 タイ 焼き で 鯛って わけ に は いか ねえ ぜ 」 「 聡 介 、 一 つ 聞か せろ 」 「 ここ なら いい が な 」 爪 切り に 手 を 伸ばした 吉川 が つまらな そうに 言った 。
|||いい たい||||たい|やき||たい って|||||||あきら|かい|ひと||きか|||||||つめ|きり||て||のばした|きちかわ|||そう に|いった
||||||||||snapper||||||||||||||||||||||||||not interesting||
"I want to apologize, but it's impossible to share a sea bream with a Thai-style grilled fish." "Sosuke, tell me something." "It's fine here, but..." said Yoshikawa, reaching for the nail clippers with a bored expression.
「 よそ じゃ 苗 字 で 呼べ 。
||なえ|あざ||よべ
さん 、 を つけて な 」
「 ああ 、 覚えて おく 」
|おぼえて|
「 で 、 何 が 聞き て えん だ ?
|なん||きき|||
「 篠木 の こと だ 」
しのき|||
Shinogi|||
パチン と 爪 を 飛ばして 、 吉川 が 意外 そうな 顔 を 上げた 。
||つめ||とばして|きちかわ||いがい|そう な|かお||あげた
「 篠木って …… 篠木 辰義 の こと か 」 「 そうだ 。
しのき って|しのき|たつよし||||そう だ
Shinogi||Tatsuyoshi Sh||||
二 課 で 調べて る と 聞いた 」
ふた|か||しらべて|||きいた
言われて 吉川 は 畳 に 目 を 落とした 。
いわ れて|きちかわ||たたみ||め||おとした
真 下 の 部屋 に 、 刑事 二 課 の 山根 充 が 住んで いる 。
まこと|した||へや||けいじ|ふた|か||やまね|まこと||すんで|
|||||||||Yamane Mitsu|Mitsuru|(subject marker)||
「 ああ 、 山根 ん とこ だ 。
|やまね|||
組 を 叩く 突破 口 に しようって んで 、 いっと きしゃ か りき に なって ケツ を 追って た よ 」 「 潰れた の か 」 「って いう か な 、 篠木 の 野郎 が 帰っち まったん だ 関西 に 。
くみ||たたく|とっぱ|くち||しよう って||||||||||おって|||つぶれた|||||||しのき||やろう||かえ っち|||かんさい|
|||||||||train||with all one's might|||butt||||||||||||||||returned||||
それ で オジャン よ 」
||over|
「 関西 …… の どこ だ ?
かんさい|||
「 大阪 だろう 。
おおさか|
詳しく は 知ら ねえ 」
くわしく||しら|
「 女 は どうした 」
おんな||
「 女 ?
おんな
「 稲村 の ところ の 女房 だ 。
いなむら||||にょうぼう|
一緒に 大阪 へ 行った の か 」
いっしょに|おおさか||おこなった||
爪 が 飛んだ 。
つめ||とんだ
やや あって 、 吉川 の 無表情 が 真壁 に 向いた 。
||きちかわ||むひょうじょう||まかべ||むいた
「 詳しい んだ なお 前 。
くわしい|||ぜん
だが よ 、 なん だって 盗っ人 野郎 が 入った 家 の 女 を 追っ掛け 回す んだ ?
||||ぬすっと|やろう||はいった|いえ||おんな||おっかけ|まわす|
「 女 も 一緒な の か 」
おんな||いっしょな||
||together||
「 ああ 、 そう らしい 。
詳しく は 知ら ん が な 」
くわしく||しら|||
真壁 は 腰 を 上げた 。
まかべ||こし||あげた
「 邪魔 した な 」
じゃま||
「 おいおい 、 聞く だけ 聞い と いて よ 」
|きく||ききい|||
吉川 は ムッと した 顔 で 見上げた が 、 自宅 で パジャマ を 着て しまった 刑事 は 例外 なく 猫 の ように おとなしい 。
きちかわ||むっと||かお||みあげた||じたく||ぱじゃま||きて||けいじ||れいがい||ねこ|||
|||||||||||||||||||||quiet
「 ちょっと 待て や 真壁 。
|まて||まかべ
ゆうべ は どう した んだ ?
保護 会 泊まり か 」
ほご|かい|とまり|
「 いや 」
「 ん ?
おい 、 それ じゃあ 三郷 かよ ?
|||さんごう|
へえ 、 よく 入れて くれた な 、 あの 保母 さん 」
||いれて||||ほぼ|
||||||nursery teacher|
「………」
「 誤解 する な よ 」
ごかい|||
そう 前置き して 吉川 は 眉 も 声 も ひそめた 。
|まえおき||きちかわ||まゆ||こえ||
「 実際 お前 が うらやましく なる こと が ある んだ よ 。
じっさい|おまえ||||||||
|||envy||||||
俺 だって な 、 実家 の ジジババ や 女房 や ガキ ども も 一 人 残ら ず い なけりゃ な 、 お前 みたいに 勝手気ままに やって みて え 」
おれ|||じっか||||にょうぼう||がき|||ひと|じん|のこら|||||おまえ||かってきままに|||
|||||grandparents|||||||||||||||||||
顔 は 本音 の それ だ が 、 肩 は 茶の間 の 空気 に どっぷり 漬かって 萎え きって いる 。
かお||ほんね|||||かた||ちゃのま||くうき|||つかって|なえ||
The face is that of the real intention, but the shoulders are soaked in the air between the living rooms and withered.
「 グチ は 飲み屋 で 言う んだ な 」
||のみや||いう||
真壁 は 官舎 を 出た 。
まかべ||かんしゃ||でた
足早に 階段 を 下り 、 が 、 その 足 が ふっと 止まった 。
あしばやに|かいだん||くだり|||あし|||とまった
何 か が 見えた 気 が した 。
なん|||みえた|き||
いや 、 何 か を 見た ――。
|なん|||みた
《 どうした の 修 兄 ィ ?
||おさむ|あに|
〈………〉
《 ねえ ―― ねえって ば 》 真壁 は オアシスランド に 戻り 、 久子 の 自転車 を 乗り出した 。
|ねえ って||まかべ||||もどり|ひさこ||じてんしゃ||のりだした
三郷 に 向かう 間 、 啓二 の 声 を 遠ざけた 。
さんごう||むかう|あいだ|けいじ||こえ||とおざけた