三 姉妹 探偵 団 01 chapter 06 (1)
みっ|しまい|たんてい|だん|
6 第 二 の 犠牲
だい|ふた||ぎせい
6 Second Sacrifice
夕 里子 は 、 ゆっくり と 、 夜 の 道 を 歩いて いた 。
ゆう|さとご||||よ||どう||あるいて|
Yuuriko was slowly walking on the night road.
珠美 を 一応 病院 へ 連れて 行き 、 検査 した 方 が いい と いう ので 、 今 日一日 だけ 、 入院 さ せる こと に した のである 。
たまみ||いちおう|びょういん||つれて|いき|けんさ||かた||||||いま|ひいちにち||にゅういん||||||
Because it is better to take Shumi to the hospital and examine it for a while, I decided to stay in the hospital only for one day today.
あれ や これ や で 、 こんな 時間 に なって しまった 。
||||||じかん|||
That's it, this time has come.
しかし 、 珠美 に は 参った 。
|たまみ|||まいった
However, I went to Tamami.
検査 と 聞く と 、 その 度 に 、
けんさ||きく|||たび|
Every time when I check and listen,
「 それ 、 いくら かかる んです か ?
"How much does it cost?
と 訊 く のだ
|じん||
夕 里子 は 顔 から 火 が 出る ような 思い であった 。
ゆう|さとご||かお||ひ||でる||おもい|
Yuuriko thought that a fire would come out of her face.
それにしても ── と 夕 里子 は 、 駅 から の 道 を 、 ゆっくり と 歩き ながら 、 考えた 。
||ゆう|さとご||えき|||どう||||あるき||かんがえた
Even so-Yuuriko thought about the way from the station while walking slowly.
そもそも が 無理だった ので は ない か 。
||むりだった||||
Isn't it impossible in the first place?
言い出した の が 、 自分 だった だけ に 、 夕 里子 は 責任 を 感じる のだ 。
いいだした|||じぶん||||ゆう|さとご||せきにん||かんじる|
Yuuriko feels responsible only because he was the one who said.
子供 たち 三 人 で 、 犯人 を 探し出す など と 、 無 茶 を 言い出して 、 万一 、 誰 か が 犠牲 に でも なったら 、 どう なる だろう ?
こども||みっ|じん||はんにん||さがしだす|||む|ちゃ||いいだして|まんいち|だれ|||ぎせい||||||
If three children say that they are looking for the culprit, and if they are at the expense of someone else, what will happen?
もちろん 、 珠美 が 襲わ れた の は 、 父 の 事件 と は 関係 ある まい 。
|たまみ||おそわ||||ちち||じけん|||かんけい||
Of course, it wasn't related to my father's case that Sumi was attacked.
しかし 、 あれ でも し 、 珠美 が 犯人 に 襲わ れ でも したら 、 どう なって いた か 。
||||たまみ||はんにん||おそわ|||||||
But, if that were the case, and if Shumi was attacked by the criminal, what would it be like?
もし 珠美 が 殺さ れる ような こと が あったら 、 たとえ 、 犯人 が 捕まって も 、 何の 意味 が ある だろう か 。
|たまみ||ころさ|||||||はんにん||つかまって||なんの|いみ||||
If there was something that would kill Shumei, what would that mean even if the perpetrator was caught?
夕 里子 は 、 考え 直さ なくて は いけない 、 と 思った 。
ゆう|さとご||かんがえ|なおさ|||||おもった
Yuriko thought that she had to rethink her mind.
もし やる と して も ── 捜査 を 続ける と して も 、 あまり 危険 を 伴う もの に 、 姉 や 妹 を 巻き込んで は いけない 。
|||||そうさ||つづける|||||きけん||ともなう|||あね||いもうと||まきこんで||
If you do it-even if you continue the investigation, don't involve your sister or sister in something too dangerous.
私 が やれば いい 。
わたくし|||
I should do it.
いや 、 こう 考える こと 自体 が 、 驕 り な の かも しれ ない が 。
||かんがえる||じたい||きょう|||||||
No, thinking about this may itself be miserable.
これ は 殺人 の 捜査 な のだ 。
||さつじん||そうさ||
This is a murder investigation.
遊び で は ない 。
あそび|||
It is not a play.
頭 で は 分 って いて も 、 今 まで 、 それ を 実感 した こと が なかった 。
あたま|||ぶん||||いま||||じっかん||||
Even though I knew it with my head, I had never realized it before.
珠美 の 負傷 で 、 夕 里子 は 目 を 覚まさ れた ような 思い であった 。
たまみ||ふしょう||ゆう|さとご||め||さまさ|||おもい|
It was thought that Yuuriko was awake because of the injury at Shumi.
道 が 暗く なって 、 少し 夕 里子 は 足 を 早めた 。
どう||くらく||すこし|ゆう|さとご||あし||はやめた
As the road became dark, Yuuriko got a little faster.
その とき 、 誰 か の 足音 が 後ろ から 近付いて 来た と 思う と 、 振り向く 間もなく 、 追い抜いて 行って しまった 。
||だれ|||あしおと||うしろ||ちかづいて|きた||おもう||ふりむく|まもなく|おいぬいて|おこなって|
At that time, when I thought that someone's footsteps came from behind, I turned around and soon overtook it.
「 あれ ……」
" that ……"
と 、 夕 里子 は 呟いた 。
|ゆう|さとご||つぶやいた
もし かして 、 今 の は …… 敦子 の 母親 、 紀子 じゃ なかった だろう か ?
||いま|||あつこ||ははおや|としこ||||
By the way, now ... was Reiko 's mother, Noriko?
暗かった し 、 よく は 分 ら なかった が 。
くらかった||||ぶん|||
It was dark and I didn't know well.
でも 、 あんなに 走って 行く なんて は ず が ない 。
||はしって|いく|||||
But there is no excuse not to run that much.
女 の 人 で は あった ようだ が 、 後ろ姿 が 、 ちょっと 似て 見えた だけ な のだろう ……。
おんな||じん||||||うしろすがた|||にて|みえた|||
She seemed to have been a woman, but her back figure just looked a bit similar ....
道 が 、 少し 明るく なる 。
どう||すこし|あかるく|
The road gets a little brighter.
そこ へ 出た とき に は 、 追い抜いて 行った 人影 は 、 もう とっくに 見え なく なって いた 。
||でた||||おいぬいて|おこなった|ひとかげ||||みえ|||
When I went out there, the person who had overtaken was already invisible for a long time.
紀子 は 、 必死で 走って いた 。
としこ||ひっしで|はしって|
Noriko was running desperately.
駅前 の 電話 ボックス でかけた のだ が 、 家 まで は 、 やはり 距離 も ある 。
えきまえ||でんわ|ぼっくす||||いえ||||きょり||
I called at the station's front phone box, but there is also a distance to the house.
間に合う だろう か ?
まにあう||
Is it in time?
ほとんど 普段 走る と いう こと の ない 紀子 だ が 、 今 は 必死だった 。
|ふだん|はしる||||||としこ|||いま||ひっしだった
It is Noriko who almost never runs, but now she was desperate.
心臓 が 破裂 する か と 思った が 、 構わ ず に 走り 続けた 。
しんぞう||はれつ||||おもった||かまわ|||はしり|つづけた
I thought that my heart would burst, but I continued to run without hesitation.
夫 と 敦子 が 殺人 者 の 手 に かかって 、 血まみれで 倒れて いる 光景 が 、 脳裏 を かすめる 。
おっと||あつこ||さつじん|もの||て|||ちまみれで|たおれて||こうけい||のうり||
The sight of her husband and Miko falling on the murderer's hand and falling in a bloody coat makes her mind faint.
大丈夫だ 。
だいじょうぶだ
きっと 大丈夫だ 。
|だいじょうぶだ
夫 だって 、 そう 簡単に やられ は し ない だろう し 、 夕 里子 だって いる のだ 。
おっと|||かんたんに|||||||ゆう|さとご|||
Even my husband will not be able to get away with it so easily, and she is Yuuri Yuko.
あの 男 は あんな こと を 言った が 、 あれ は 、 ハッタリ だ 。
|おとこ|||||いった|||||
That man said something like that, but that is addicting.
三 人 も の 人間 を 一 人 で 、 一度に 殺せる もの で は ない 。
みっ|じん|||にんげん||ひと|じん||いちどに|ころせる||||
It is not something that can kill three people alone at one time.
大丈夫だ 。
だいじょうぶだ
大丈夫だ 。
だいじょうぶだ
くり返し そう 言い聞かせる 度 に 、 しかし 、 万が一 、 と いう 思い も 強まって 来た 。
くりかえし||いいきかせる|たび|||まんがいち|||おもい||つよまって|きた
Every time I say it repeatedly, however, the thought that it should happen has also strengthened.
もう すぐだ !
It is soon!
もう すぐ 家 が 見える 。
||いえ||みえる
I can see my house soon.
火 は つけ られて い ない 。
ひ|||||
There is no fire.
燃え上って いれば 、 炎 が 見える はずである 。
もえあがって||えん||みえる|
If you are burning up, you should be able to see the flame.
紀子 は 少し ホッ と して 、 足取り を 緩めた 。
としこ||すこし|ほっ|||あしどり||ゆるめた
Noriko felt a little relieved and relaxed his gait.
家 が 見えた !
いえ||みえた
I saw a house!
── 明り が 点いて いる の が 、 理由 も なく 、 紀子 を 安心 さ せた 。
あかり||ついて||||りゆう|||としこ||あんしん||
明 The light was on, but for no reason, I relieved Noriko.
同時に 、 急に 、 溢れ出て 来る 涙 で 、 視界 が 曇った 。
どうじに|きゅうに|あふれでて|くる|なみだ||しかい||くもった
At the same time, suddenly, with the tears coming over, the view became cloudy.
私 の いる 所 は 、 あそこ しか ない 、 と 思った 。
わたくし|||しょ||||||おもった
夫 と 娘 の いる 、 あの 家 だけ だ 。
おっと||むすめ||||いえ||
It is only that house with her husband and daughter.
家 へ 帰って 、 警察 へ 電話 を かければ 、 総 て は 終る 。
いえ||かえって|けいさつ||でんわ|||そう|||おわる
If you go home and call the police, everything is over.
いや 、 自分 の 罪 が 消え ない こと は 百 も 承知 だ が 、 夫 に は どんな こと を して も 許して もらわ なくて は なら ない 。
|じぶん||ざい||きえ||||ひゃく||しょうち|||おっと||||||||ゆるして|||||
Well, I know one hundred that my sins won't disappear, but I have to forgive my husband for whatever he does.
私 の 家 は 、 あそこ に しか ない のだ もの ……。
わたくし||いえ|||||||
My house is only there over there ....
「 もう 歩け ない ……」
|あるけ|
"I can't walk anymore ..."
紀子 は 、 一旦 足 を 緩める と 、 もう どんどん スピード は 落ちる 一方 で 、 喘ぎ喘ぎ 、 やっと 家 の そば まで 辿り着いた 。
としこ||いったん|あし||ゆるめる||||すぴーど||おちる|いっぽう||あえぎあえぎ||いえ||||たどりついた
Once Noriko loosens his feet, while his speed slows down, she pants and finally reaches the side of her house.
「 敦子 …… あなた ……」
あつこ|
表 から 呼ぼう と する のだ が 、 何しろ 激しい 動 悸 と 息切れ で 、 声 に なら ない のだ 。
ひょう||よぼう|||||なにしろ|はげしい|どう|き||いきぎれ||こえ||||
I try to call it from the front, but I can not turn into a voice because of intense movement and breathlessness.
玄関 へ 向 って 、 足 を 運んで 行く 。
げんかん||むかい||あし||はこんで|いく
Head to the front door and take a walk.
突然 、 暗がり から 、 腕 が のびて 、 紀子 の 首 へ 巻きつく と 、 そのまま 地面 へ 押し倒す 。
とつぜん|くらがり||うで|||としこ||くび||まきつく|||じめん||おしたおす
Suddenly, from the dark, with arms stretched and wrapped around Noriko's neck, he pushed it down to the ground.
紀子 は 、 叫ぼう と した 。
としこ||さけぼう||
Noriko tried to shout.
しかし 、 もう 、 絞め つける 腕 と 手 は 、 その 声 の 通る 隙間 を 残して い なかった 。
||しめ||うで||て|||こえ||とおる|すきま||のこして||
However, the strangling arms and hands no longer left a gap for the voice to pass through.
紀子 の 手 が 、 地面 を かきむしった 。
としこ||て||じめん||
Noriko's hand scratched the ground.
足 が 地 を けって 、 靴 が 飛んだ 。
あし||ち|||くつ||とんだ
My feet hit the ground and my shoes flew.
やがて 、 紀子 は 動か なく なった 。
|としこ||うごか||
Soon, Noriko stopped moving.
男 は 激しい 息 を ついて 、 ゆっくり と 起き上り かけた が 、
おとこ||はげしい|いき|||||おきあがり||
The man took a strong breath and slowly got up and started
「 誰 か いる の ?
だれ|||
"Is there anyone?
と 敦子 の 声 が して 、 ハッと 身 を 伏せた 。
|あつこ||こえ|||はっと|み||ふせた
And the voice of Ms. Yuko turned her down.
玄関 の ドア が 細く 開いた 。
げんかん||どあ||ほそく|あいた
The front door thinly opened.
チェーン を かけた まま 開けて いる のだ 。
ちぇーん||||あけて||
It's open with the chain on.
「 夕 里子 ?
ゆう|さとご
── 違う の ?
ちがう|
── ママ な の ?
まま||
返事 して 」
へんじ|
敦子 は しばらく 待って 、 ドア を 閉めた 。
あつこ|||まって|どあ||しめた
Reiko waited for a while and closed the door.
「 誰 も い ない よ 」
だれ||||
"There is no one"
と 、 中 から 、 声 が 洩 れて 来た 。
|なか||こえ||えい||きた
A voice was leaked from inside.
男 は そろそろ と 起き上る と 、 紀子 の 服 を 探り 始めた 。
おとこ||||おきあがる||としこ||ふく||さぐり|はじめた
As soon as he got up, he began to search for Noriko's clothes.
そして 、 手 に 通して いた バッグ を つかむ と 、 それ を 手 に 、 しばらく あたり の 様子 を うかがって から 、 静かに その 場 を 離れて 行った 。
|て||とおして||ばっぐ||||||て|||||ようす||||しずかに||じょう||はなれて|おこなった
Then I grabbed the bag that I had in my hand, looked at it for a while, looked around for a while, and then left the place quietly.
夕 里子 は 、 安東 の 家 の 方 へ 先 に 寄ろう か と 思った 。
ゆう|さとご||あんどう||いえ||かた||さき||よろう|||おもった
Yuuriko wondered if he would like to stop at the Andong house first.
一応 の こと は 、 綾子 に も 言って ある のだ が 、 なにしろ 心配 性 である 。
いちおう||||あやこ|||いって|||||しんぱい|せい|
First of all, although it is said to Reiko, it is anxious about anything.
心配 ない のだ と 言って おく 方 が いい かも しれ ない 。
しんぱい||||いって||かた|||||
It may be better to say that you don't worry.
しかし 、 こんな 時間 に 立ち寄る と いう の も 、 ちょっと ためらわ れた 。
||じかん||たちよる|||||||
However, it was a little hesitation to stop at such a time.
むしろ 、 明日 の 朝 に でも 行けば いい かも しれ ない 。
|あした||あさ|||いけば||||
Rather, it may be better to go tomorrow morning.
そう 思い 直して 、 片瀬 家 の 方 へ と 足 を 向ける 。
|おもい|なおして|かたせ|いえ||かた|||あし||むける
That's why I turned my feet toward the Katase family.
どっち も 大した 距離 で は ない 。
||たいした|きょり|||
Neither is a great distance.
ふっと 、 足音 が 聞こえた ような 気 が して 、 夕 里子 は 振り向いた 。
|あしおと||きこえた||き|||ゆう|さとご||ふりむいた
I felt like I heard footsteps, Yuuriko turned around.
── 誰 か が 、 背後 を 駆け抜けて 行った ような 気 が した のだ 。
だれ|||はいご||かけぬけて|おこなった||き|||
-I felt like someone ran past behind me.
しばらく 立ち止まって いた が 、 もう 、 それ きり 何の 物音 も し ない 。
|たちどまって||||||なんの|ものおと|||
I stopped for a while, but I will not make any noise anymore.
気のせい だった の か 。
きのせい|||
夕 里子 は 肩 を すくめて 歩いて 行った 。
ゆう|さとご||かた|||あるいて|おこなった
Yuuriko shrugged and walked.
片瀬 家 に は 、 まだ 明り が 点いて いる 。
かたせ|いえ||||あかり||ついて|
The Katase family is still bright.
母親 の 帰り を 待って いる のだろう か ?
ははおや||かえり||まって|||
Are you waiting for your mother 's return?
夕 里子 は 、 片瀬 に 、 あの 電話 の こと を 、 打ち明けた もの か どう か 、 と 悩んで いた 。
ゆう|さとご||かたせ|||でんわ||||うちあけた||||||なやんで|
Yuuriko was asking Katase if she had confessed to the phone.
しかし 、 どっち に して も 結果 は 変り ない 。
|||||けっか||かわり|
However, the result does not change either way.
それ ならば 、 なまじ 敦子 に 悩み の 種 を 与える ばかり かも しれ ない ……。
|||あつこ||なやみ||しゅ||あたえる||||
If that is the case, it may be just giving the seed of trouble to the raw eggplant ......
玄関 の 少し 手前 で 、 夕 里子 は 何 か を けっ とばして 、 足 を 止めた 。
げんかん||すこし|てまえ||ゆう|さとご||なん|||||あし||とどめた
Just before the entrance, Yuuriko broke something and stopped her leg.
転がって 行った の は 、 靴 の 片方 だった 。
ころがって|おこなった|||くつ||かたほう|
It was one side of the shoes that went down.
── 女 物 の 靴 だ 。
おんな|ぶつ||くつ|
靴 Women's shoes.
どうして こんな 所 に ある のだろう ?
||しょ|||
Why is it in such a place?
夕 里子 は 二 、 三 歩 戻って 、 それ に 気付いた 。
ゆう|さとご||ふた|みっ|ふ|もどって|||きづいた
Yuuriko went back a couple of steps and noticed it.
足 が 、 暗がり の 奥 から 、 出て いる 。
あし||くらがり||おく||でて|
My feet are coming out of the depths of darkness.
── 夕 里子 は 、 顔 から 血の気 が ひく の が 分 った 。
ゆう|さとご||かお||ちのけ|||||ぶん|
-Yuuriko found that her face felt bloody.
そっと 、 近付いて 、 覗き込んで みる 。
|ちかづいて|のぞきこんで|
Gently, approach and look into it.
暗がり に 目 が 慣れて 来る と 、 やがて 、 片瀬 紀子 の 顔 が 、 ぼんやり と 見えて 来た ……。
くらがり||め||なれて|くる|||かたせ|としこ||かお||||みえて|きた
As the eyes got used to the darkness, eventually, Noriko Katase's face looked dimly ....
夕 里子 は 、 短い 悲鳴 を 上げる と 、 玄関 へ 向 って 走った 。
ゆう|さとご||みじかい|ひめい||あげる||げんかん||むかい||はしった
Yuuriko ran to the front when she screamed a short scream.
「 開けて !
あけて
敦子 !
あつこ
開けて !
あけて
思い切り ドア を 叩く 。
おもいきり|どあ||たたく
I knock on the door.
「── どうした の ?
敦子 が 目 を 丸く して 立って いた 。
あつこ||め||まるく||たって|
Reiko stood with her eyes round.
「 お 父さん を 呼んで 」
|とうさん||よんで
「 え ?
何 な の ?
なん||
「 いい から 、 お 父さん を ──」
|||とうさん|
"Because it is good, 父 Father"
夕 里子 は めまい が して 、 よろけ そうに なった 。
ゆう|さとご||||||そう に|
Yuuriko was dizzy and seemed to get lost.
「 早く !
はやく
声 を 聞きつけて 、 片瀬 が やって 来た 。
こえ||ききつけて|かたせ|||きた
After hearing the voice, Katase came.
「 どう した んだ ね 」
「 来て 下さい 」
きて|ください
「 どこ へ ?
「 表 です 。
ひょう|
すぐ そこ です 」
It is right there "
「 何 だって いう ん だい 、 一体 ?
なん|||||いったい
"What the hell is that?
「 いい から 、 来て 下さい !
||きて|ください
と 、 夕 里子 は 叫んだ 。
|ゆう|さとご||さけんだ
片瀬 が サンダル を 引っかけて 、 降りて 来る 。
かたせ||さんだる||ひっかけて|おりて|くる
Katase grabs the sandals and comes down.
「 そこ に ……」
" there ……"
ドア を 大きく 開く と 、 光 が 家 の 前 を 照らし出す 。
どあ||おおきく|あく||ひかり||いえ||ぜん||てらしだす
When the door is opened wide, the light illuminates the front of the house.
表 に 出た 片瀬 は 、 夕 里子 の 指さす 方 へ 目 を 向けた 。
ひょう||でた|かたせ||ゆう|さとご||ゆびさす|かた||め||むけた
Katase, who appeared in the table, turned to look at Yuuriko's direction.
「 紀子 !
としこ
父親 の 声 に 、 敦子 は 裸足 で 飛び出して 来た 。
ちちおや||こえ||あつこ||はだし||とびだして|きた
Reiko jumped out barefoot in the father's voice.
「 ママ !
まま
── どうした の ?
ど う What happened?
ママ が どうした の ?
まま|||
What happened to your mom?
夕 里子 は 、 その 場 に 、 力 を 失って 座り込んで しまった 。
ゆう|さとご|||じょう||ちから||うしなって|すわりこんで|
Yuriko lost her strength and sat down there.
「── なるほど 」
その 刑事 は 、 あまり 熱心 そうで は なかった 。
|けいじ|||ねっしん|そう で||
The detective didn't seem so keen.
眠って いる の を 叩き起こさ れた の か 、 しきりに 欠 伸 が 出 そうに なる の を 、 かみ殺して いた 。
ねむって||||たたきおこさ|||||けつ|しん||だ|そう に||||かみころして|
I was staring at whether I was awakened that I was asleep, or that I was almost in a state of failure.
夕 里子 は 腹 が 立った が 、 片瀬 も 敦子 も 、 今 は 腹 を 立てる ほど の 余裕 も ない ようだ 。
ゆう|さとご||はら||たった||かたせ||あつこ||いま||はら||たてる|||よゆう|||
Yuriko was upset, but neither Katase nor Ayako seems to have enough time to get upset now.
居間 の 中 は 、 かなり 冷えて いた 。
いま||なか|||ひえて|
The living room was quite cold.
もう 明け方 に なる 。
|あけがた||
It will be early morning.
「 する と 、 奥さん が なぜ 戻って 来た か 、 お 分 り に なら ない んです ね 」
||おくさん|||もどって|きた|||ぶん||||||
"If you do, you will not know why your wife came back."
と 、 刑事 は 訊 いた 。
|けいじ||じん|
「 はい 。
分 り ませ ん 」
ぶん|||
「 ここ は ママ の 家 よ 。
||まま||いえ|
帰って 来る の が 当り前じゃ ない の 」
かえって|くる|||あたりまえじゃ||
It 's not obvious that you will come back home "
敦子 が 声 を 震わせて 言った 。
あつこ||こえ||ふるわせて|いった
Reiko shook her voice and said,
「 パパ が 追い出した の よ !
ぱぱ||おいだした||
"Daddy 's driven out!
ママ を 殺した んだ わ !
まま||ころした||
I killed my mom!
「 敦子 ……」
あつこ
夕 里子 が 敦子 の 肩 を 抱いた 。
ゆう|さとご||あつこ||かた||いだいた
敦子 が 、 夕 里子 の 肩 へ 顔 を 埋めて 、 声 を 殺して 泣いた 。
あつこ||ゆう|さとご||かた||かお||うずめて|こえ||ころして|ないた
Yuko burys her face on Yuuriko's shoulder and kills her voice crying.
「 何と 言わ れて も 仕方 あり ませ ん 」
なんと|いわ|||しかた|||
"It doesn't matter what you say."
と 、 片瀬 は 力なく 言った 。
|かたせ||ちからなく|いった
Said Katase without force.
居間 の ドア が 開いて 、 国友 刑事 が 入って 来た 。
いま||どあ||あいて|くにとも|けいじ||はいって|きた
The door of the living room opened, and a detective came in.
「 国友 さん 」
くにとも|
夕 里子 が 声 を 出す と 、 国友 は ちょっと 肯 いて 見せた 。
ゆう|さとご||こえ||だす||くにとも|||こう||みせた
When Yuuriko uttered, Kutumi shook her a bit.
「 大変な こと に なった ね 」
たいへんな||||
"It was a big deal, right?"
「 ええ 。
── あの ── 実は 私 、 申し上げ なきゃ いけない こと が ある んです 」
|じつは|わたくし|もうしあげ||||||
あ 実 こ と Actually there is something I have to say.
国友 の 顔 を 見て 、 やっと 言葉 が 出て 来た 。
くにとも||かお||みて||ことば||でて|きた
After seeing the face of a national friend, the words finally came out.
「 何 だい ?
なん|
夕 里子 は 、 紀子 あて に かかって 来た 電話 の こと 、 そして 、 昨夜 、 誰 か が 自分 を 追い抜いて 走って 行った こと を 話した 。
ゆう|さとご||としこ||||きた|でんわ||||さくや|だれ|||じぶん||おいぬいて|はしって|おこなった|||はなした
Yuuriko talked about the phone that was sent to Noriko and that last night somebody had overtaken and ran.
「 私 が 電話 の こと を 黙って いた せい で 、 こんな こと に なった ような 気 が して ……。
わたくし||でんわ||||だまって|||||||||き||
"I felt like I was doing something like this because I was silent on the phone ....
片瀬 さん 、 すみません 」
かたせ||
と 夕 里子 は 頭 を 下げた 。
|ゆう|さとご||あたま||さげた
「 いや 、 あんた の せい じゃ ない よ 。
私 に 紀子 へ の 思いやり が 足りなかった んだ 」
わたくし||としこ|||おもいやり||たりなかった|
I didn't have enough consideration for Noriko. "
敦子 は 、 涙ぐみ ながら 、
あつこ||なみだぐみ|
Yuko, with tears,
「 可哀そうな ママ ……」
かわいそうな|まま
と 呟いた 。
|つぶやいた
「 その 、 君 を 追い抜いて 行った の が 奥さん だ と したら 、 何 を そんなに 急いで いた んだろう ?
|きみ||おいぬいて|おこなった|||おくさん||||なん|||いそいで||
と 国友 が 言った 。
|くにとも||いった
誰 も 答え られ ない 。
だれ||こたえ||
No one can answer it.
夕 里子 は 言った 。
ゆう|さとご||いった
「 でも 、 本当に 凄い 勢い だった わ 。
|ほんとうに|すごい|いきおい||
"But it was really amazing.
よほど 一刻 を 争う こと が あった んだ わ 、 きっと 」
|いっこく||あらそう||||||
I have been fighting for a very long time, I'm sure "
「 一刻 を 争う 、 か ……。
いっこく||あらそう|
すると 犯人 は それ を 予期 して いて 、 あそこ で 待ち 伏せて いた の かも しれ ない な 」
|はんにん||||よき|||||まち|ふせて||||||
Then the criminal was expecting it and might have been ambush there.
国友 は ちょっと 考えて から 、「 そうだ 。
くにとも|||かんがえて||そう だ
Gutomo thought a bit, "Yes.
何 か 盗ま れて いる 物 は ?
なん||ぬすま|||ぶつ|
What is the thing being stolen?
「 バッグ が ない わ 。
ばっぐ|||
ママ が 持って 出た んだ けど 」
まま||もって|でた||
My mom took it out, "
「 バッグ ね 。
ばっぐ|
どんな バッグ か 教えて くれ 」
|ばっぐ||おしえて|
Please tell me what kind of bag "
と 担当 の 刑事 が 手帳 を かまえる 。
|たんとう||けいじ||てちょう||
And the detective in charge hold a notebook.
敦子 が バッグ の 特徴 など を 説明 して いる 間 に 、 夕 里子 は 国友 と 一緒に 居間 を 出た 。
あつこ||ばっぐ||とくちょう|||せつめい|||あいだ||ゆう|さとご||くにとも||いっしょに|いま||でた
While Yuko was describing the characteristics of the bag, Yuuriko left the living room with Kunitomo.
「 不幸 が 続いた ね 」
ふこう||つづいた|
"Unhappy continued,"
と 国友 が 言った 。
|くにとも||いった
「 偶然 かしら 」
ぐうぜん|
"I wonder if it happened by accident"
「 と いう と ?
「 こんなに 身近な 所 で 人殺し なんて ……。
|みぢかな|しょ||ひとごろし|
"What a murderer in such a familiar place ....
二 度 も 起る なんて おかしい わ 」
ふた|たび||おこる|||
It is strange that it will happen twice.
「 同じ 犯人 ?
おなじ|はんにん
しかし 、 偶然 って こと は ある もん だ から ね 」
|ぐうぜん||||||||
However, there is nothing wrong with chance. "
「 それ は 分 る んだ けど ……」
||ぶん|||
「 犯人 は たぶん その 電話 の 男 だろう 。
はんにん||||でんわ||おとこ|
"The criminal is probably the man on the phone.
物 盗 り と は 思え ない 。
ぶつ|ぬす||||おもえ|
I do not think that it is a thing theft.
あんな 家 の 玄関 の 前 で 襲う なんて ね 。
|いえ||げんかん||ぜん||おそう||
You attack in front of the front door of such a house.
計画 的な 犯行 と しか 考え られ ない よ 。
けいかく|てきな|はんこう|||かんがえ|||
I can only think of it as a planned crime.
── その 奥さん は 、 相手 の 男 が 誰 な の か 、 気付いて いた の かも しれ ない な 。
|おくさん||あいて||おとこ||だれ||||きづいて||||||
-The wife may have noticed who the other man is.
だから 男 が 口 を 塞いだ ……」
|おとこ||くち||ふさいだ
That's why a man blocked his mouth ...... "
「 でも 、 それ なら なぜ 訊 かれた とき に 、 そう 言わ なかった の かしら ?
||||じん|||||いわ|||
"But then why did you not say that when you were scolded?
「 うん ……。
その とき は まだ 分 ら なかった の か 、 それとも 確信 が なかった か 」
||||ぶん||||||かくしん|||
"Did you not know at that time or were you not convinced?"
夕 里子 は ゆっくり 肯 いた 。
ゆう|さとご|||こう|
「 でも …… どこ か で パパ の 事件 と つながる ような 気 が する の 。
||||ぱぱ||じけん||||き|||
"But ... I feel like I'm going to connect with Papa's case somewhere.
そんな 感じ が ……」
|かんじ|
二 人 が 玄関 から 表 に 出る と 、 捜査 員 たち が 、 犯人 が 残した 手がかり を 求めて 、 地面 に かがみ 込んだり 、 這い 回ったり して いた 。
ふた|じん||げんかん||ひょう||でる||そうさ|いん|||はんにん||のこした|てがかり||もとめて|じめん|||こんだり|はい|まわったり||
When the two came to the front from the front door, the investigators scooped and crawled on the ground in search of clues left by the perpetrators.
「 おい !
と 声 が して 、 サンダル ば き で やって 来た の は 、 安東 だった 。
|こえ|||さんだる|||||きた|||あんどう|
And it was Andong that came in with the sandals.
綾子 も 後 から ついて 来る 。
あやこ||あと|||くる
Ayako will come later.
「 あ 、 先生 」
|せんせい
「 どうした ?
片瀬 さん の 奥さん が どうかした の か 」
かたせ|||おくさん||||
「 殺さ れた んです 」
ころさ||
「 何て こと だ 。
なんて||
" Oh my God .
── 世 も 末 だ な 」
よ||すえ||
-The world is too late "
と 安東 は 首 を 振った 。
|あんどう||くび||ふった
「 牛乳 屋 の 奴 が 話して くれて な 。
ぎゅうにゅう|や||やつ||はなして||
"A milk shop guy talks to me.
びっくり して 飛んで 来た んだ 」
||とんで|きた|
I was surprised and flew away "
「 怖い わ ……」
こわい|
綾子 が 青く なって 、 安東 の 腕 に しがみついた 。
あやこ||あおく||あんどう||うで||
夕 里子 は 、 ちょっと 妙な 気 が した 。
ゆう|さとご|||みょうな|き||
Yuuriko felt a little strange.
ただ 無意識に しがみついた 、 と いう の と は 違う ような 気 が した から である 。
|むいしきに|||||||ちがう||き||||
It was because I felt that it was different from saying that I was clinged unconsciously.
「 そうだ 。
そう だ
珠美 君 は 大丈夫 か な 」
たまみ|きみ||だいじょうぶ||
I wonder if you are OK.
と 安東 が 言った 。
|あんどう||いった
「 私 が 病院 へ 行き ます 」
わたくし||びょういん||いき|
と 、 夕 里子 は 言った 。
|ゆう|さとご||いった
「 今日 は 学校 の 方 は お 休み に して 下さい 」
きょう||がっこう||かた|||やすみ|||ください
"Please take a rest from school today"
「 分 った 。
ぶん|
しかし 、 無 茶 な 奴 だ な 」
|む|ちゃ||やつ||
But you're a stupid guy "
「 私 、 行って も いい けど ──」
わたくし|おこなって|||
"I can go there, but ──"
と 、 綾子 が 言い出した 。
|あやこ||いいだした
And, Reiko came out.
「 だめ よ 、 お 姉さん は 会社 が ある じゃ ない の !
|||ねえさん||かいしゃ|||||
と 、 夕 里子 は 姉 を にらみつけた 。
|ゆう|さとご||あね||
「── そう だ 、 忘れる ところ だった 」
||わすれる||
"Yes, I was about to forget"
と 、 国友 が 言った 。
|くにとも||いった