三 姉妹 探偵 団 4 Chapter 17
エピローグ
「 やっと お 正月 が 来た って 感じ 」
正に 、 夕 里子 の 実感 である 。
正月 の 三 日 。
── 三 人 姉妹 は 、 国 友 の おごり で (! )、 ホテル の 最上 階 の レストラン で 食事 を して いた 。
「── 新年 に 当って の 誓い は ?
と 、 国 友 が 言った 。
「 夕 里子 君 、 今年 は 危 い こと に 手 を 出さ ない 、 って 誓わ ない か ? 「 無理 みたい 」
と 、 珠美 が 代り に 答えた 。
「 うるさい わ ね 」
と 、 夕 里子 は にらんで 、「 珠美 の 目標 は 何 な の ?
「 生命 保険 を 倍 額 に する こと 」
「 やめ なさい よ 」
と 、 綾子 が 苦笑 した 。
「 あ 、 そう だ 。
お 姉ちゃん 、 家庭 教師 の 料金 、 もらって ない でしょ 。 石垣 に 請求 し な よ 」
夕 里子 と 綾子 は 、 啞然 と して 、 顔 を 見合わせた 。
── 食事 の 後 、 デザート に なって 、 席 を 移る こと に なった 。
「 お 二 人 で どうぞ 」
珠美 が 気 を きか して 、 国 友 と 夕 里子 を 、 窓ぎわ の 席 へ 押しやり 、 自分 たち は 通路 に 近い 席 へ 座った 。
「 変な ところ に 気 が 回る んだ から 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
「 しかし ── 一 歩 間違えば 、 こんな こと しちゃ い られ なかった んだ な 」
と 、 国 友 が しみじみ と 言った 。
「 私 、 過去 に は こだわら ない の 」
と 、 夕 里子 は 言って のけた 。
「 それ より 、 あなた が 気絶 した こと ── 平川 浩子 さん の 死体 が ニッコリ 微笑んだ 、 って こと は 説明 ついた の ? 「 いや ……。
検死 官 なんか の 話 じゃ 、 死後 硬直 の 一種 で 、 顔 の 筋肉 が 動いて 、 そんな 風 に 見えた んだろう って こと だった けど ね 。 ── でも 、 本当に 笑い かけた と して も 、 いい じゃ ない か 。 あの おかげ で 、 僕 は 彼女 の 敵 を 討って やれた よ 」
「 そう ね 」
夕 里子 は 微笑んだ 。
「 私 、 国 友 さん の 、 そういう ところ が 大好き よ ! 「 そ 、 そうかい ?
国 友 が 、 たちまち しまら ない 顔 に なる 。
「── あー あ 」
と 、 二 人 を 眺めて いた 珠美 が 言った 。
「 見ちゃ いら ん ない わ ね 」
「 じゃ 、 見 なきゃ いい でしょ 」
綾子 の 言葉 は 単純である 。
「 そういう もん じゃ ない の よ 」
珠美 は 偉 そうに 言って 、「 ねえ 、 お 姉ちゃん 」
「 お年玉 なら 二 回 も あげた わ 」
「 そう じゃ ない の !
もし 、 夕 里子 姉ちゃん が 国 友 さん と 結婚 し たい って 言い 出したら 、 どう する ? 「 そりゃ 、 個人 の 自由でしょ 」
「 でも 、 綾子 姉ちゃん より 先 に 、 だ よ 」
「 いい じゃ ない 。
今 は 別に 順番 通り って わけで も ない し 。 ── あんた も 意外に 古い の ね 」
「 そう じゃ ない けど さ 。
そういう タイムリミット でも 設け ない と 、 綾子 姉ちゃん 、 一生 結婚 し そう も ない から 」
「 どういう 意味 よ ?
と 、 綾子 は 顔 を しかめた 。
「 ともかく 、 夕 里子 姉ちゃん の 子供 から 、『 おばちゃん 』 と か 言わ れる の は いやだ な 、 私 は 」
「 気 が 早 すぎる の よ 」
「 そう ?
「 夕 里子 、 まだ 高校 生 よ 」
「 でも 、 ほら ──」
綾子 が 振り向いて 見る と 、 夕 里子 と 国 友 が テーブル を 挟んで 、 そっと 身 を 乗り出し 、 キス して いる 。
赤く なって 、 綾子 は 、 あわてて 目 を そらし 、
「 人前 で 、 いや ねえ !
ああいう こと は ──」
珠美 が 、 そっと 席 を 立って 行く 。
何 を する の か と 思えば ── 店 の 誰 か を つかまえて 、 ヒソヒソ 話 を して いる 。
「── 何 して た の ?
と 、 戻って 来た 珠美 に 訊 く と 、
「 いい の 。
── 見て て 」
と 、 ニヤニヤ して いる 。
ポロン 、 と 生 の ピアノ が 流れて 、 小さな スポット ライト が 、 ほの暗い 店 内 に 動いた 。
と 思う と ── 光 の 輪 が 、 ちょうど キス して いる 夕 里子 と 国 友 を 捉えた 。
店 の 客 たち が ワッ と 拍手 を した 。
国 友 が 頭 を かいて いる 。
「── ハハ 、 面白い 」
珠美 も 拍手 し ながら 、「 でも 、 夕 里子 姉ちゃん の 方 が 、 落ちついて た よ 。
ねえ ? ── どうした の ? 「 え ?
綾子 は 、 ホッと 我 に 返って 、「 あ 、 ごめん ── 今 、 何だか 、 そば を 通った みたいで 」
「 そりゃ 、 通路 だ から ね 」
「 そう じゃ なくて 何 か ── 感じた の 」
と 、 綾子 は 呟く ように 言った 。
── 通って 行った の は 、 一 人 の 少年 らしかった 。
その 少年 は 、 ずっと 先 へ 行く と 、 足 を 止め 、 綾子 たち の テーブル の 方 を 振り向いて 、 ニッコリ と 笑って 、 呟いた 。
「 また 、 会おう ね 」