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Aozora Bunko imports, 大きなかに

大き なか に

大きな かに

小川 未明

それ は 、 春 の 遅い 、 雪 の 深い 北国 の 話 で あり ます 。 ある 日 の こと 太郎 は 、 お じいさん の 帰って くる の を 待って い ました 。 お じいさん は 三 里 ばかり 隔たった 、 海岸 の 村 へ 用事 が あって 、 その 日 の 朝 早く 家 を 出て いった のでした 。 「 お じいさん 、 いつ 帰って くる の ? 」 と 、 太郎 は 、 その とき 聞き ました 。 すっかり 仕度 を して 、 これ から 出て ゆこう と した お じいさん は 、 にっこり 笑って 、 太郎 の 方 を 振り向き ながら 、 「 じきに 帰って くる ぞ 。 晩 まで に は 帰って くる ……。」 と いい ました 。 「 なに か 、 帰り に お みやげ を 買って きて ね 。」 と 、 少年 は 頼んだ のであり ます 。 「 買って きて やる と も 、 おとなしく して 待って いろ よ 。」 と 、 お じいさん は いい ました 。 やがて お じいさん は 、 雪 を 踏んで 出て いった のです 。 その 日 は 、 曇った 、 うす暗い 日 で あり ました 。 太郎 は 、 いまごろ 、 お じいさん は 、 どこ を 歩いて い られる だろう と 、 さびしい 、 そして 、 雪 で 真っ白な 、 広い 野原 の 景色 など を 想像 して いた のです 。 その うち に 、 時間 は だんだん たって ゆき ました 。 外 に は 、 風 の 音 が 聞こえ ました 。 雪 が 霰 が 降って き そうに 、 日 の 光 も 当たら ず に 、 寒う ございました 。 「 こんなに 天気 が 悪い から 、 お じいさん は 、 お 泊まり なさる だろう 。」 と 、 家 の 人 たち は いって い ました 。 太郎 は 、 お じいさん が 、 晩 まで に は 、 帰って くる と いわ れた から 、 きっと 帰って こ られる だろう と 堅く 信じて い ました 。 それ で 、 どんな もの を お みやげ に 買って きて くださる だろう と 考えて い ました 。 その うち に 、 日 が 暮れ かかり ました 。 けれど 、 お じいさん は 帰って き ませ ん でした 。 もう あちら の 野原 を 歩いて き なさる 時分 だろう と 思って 、 太郎 は 、 戸口 まで 出て 、 そこ に しばらく 立って 、 遠く の 方 を 見て い ました けれど 、 それ らしい 人影 も 見え ませ ん でした 。 「 お じいさん は 、 どう なさった のだろう ? きつね に でも つれ られて 、 どこ へ かゆき なされた ので は ない か しら ん ? 」 太郎 は 、 いろいろ と 考えて 、 独り で 、 心配 を して い ました 。 「 きっと 、 天気 が 悪い から 、 途中 で 降ら れて は 困る と 思って 、 今夜 は お 泊まり なさった に ちがいない 。」 と 、 家 の 人 たち は 語り 合って 、 あまり 心配 を いたし ませ ん でした 。 しかし 太郎 は 、 どうしても 、 お じいさん が 、 今晩 泊まって こ られる と は 信じ ませ ん でした 。 「 きっと 、 お じいさん は 、 帰って き なさる 。 それ まで 自分 は 起きて 待って いる のだ 。」 と 、 心 に きめて 、 暗く なって しまって から も 、 その 夜 に かぎって 、 太郎 は 、 床 の 中 へ 入って 眠ろう と は せ ず に 、 いつまでも 、 ランプ の 下 に すわって 起きて いた のでした 。 いつも なら 、 太郎 は 日 が 暮れる と じきに 眠る のでした が 、 不思議に 目 が さ えて いて 、 ちっとも 眠く は あり ませ ん でした 。 そして 、 こんなに 暗く なって 、 お じいさん は さぞ 路 が わから なくて 困って い なさる だろう と 、 広い 野原 の 中 で 、 とぼとぼ と して い られる お じいさん の 姿 を 、 いろいろに 想像 した のでした 。 「 さあ 、 お 休み 、 お じいさん が お 帰り に なったら 、 きっと おまえ を 起こして あげる から 、 床 の 中 へ 入って 、 寝て いて 待って おい で 。」 と 、 お 母さん が いわ れた ので 、 太郎 は 、 ついに その 気 に なって 、 自分 の 床 に は いった のであり ました 。 しかし 、 太郎 は 、 すぐ に は 眠る こと が でき ませ ん でした 。 外 の 暗い 空 を 、 吹いて いる 風 の 音 が 聞こえ ました 。 ランプ の 下 に すわって いる とき も 聞こえた 、 遠い 、 遠い 、 北 の 沖 の 方 で する 海 の 鳴る 音 が 、 まくら に 頭 を つける と 、 いっそう はっきり と 雪 の 野原 の 上 を 転げて くる ように 思わ れた のであり ます 。 しかし 、 太郎 は 、 いつのまにか 、 うとうと と して 眠った のであり ます 。 彼 は 、 朝 起きる と 、 入り口 に 、 大きな 白い 羽 の 、 汚れて ねずみ色 に なった 、 いま まで に こんな 大きな 鳥 を 見た こと も ない 、 鳥 の 死んだ の が 、 壁板 に かかって いる の を 見て びっくり し ました 。 「 これ は なに ? 」 と 、 太郎 は 、 目 を 円く して 問い ました 。 「 これ かい 、 これ は 海鳥 だ 。 昨夜 、 お じいさん が 、 この 鳥 に 乗って 帰って き なすった のだ 。」 と 、 お 母さん は いわ れ ました 。 お じいさん が 帰って き なすった と 聞いて 、 太郎 は 大喜びであり ました 。 さっそく 、 お じいさん の へや へ いって み ます と 、 お じいさん は 、 にこにこ と 笑って 、 たばこ を すって い られ ました 。 それ より も 、 太郎 は 、 どうして 、 海鳥 が 死んだ の か 、 聞き たかった のです 。 その 不審 が 心 に あり ながら 、 それ を いい 出す 前 に 、 お じいさん の 帰って き なされた の が うれしくて 、 「 お じいさん 、 いつ 帰って きた の ? 」 と 問い ました 。 「 昨夜 、 帰って きた のだ 。」 と 、 お じいさん は 、 やはり 笑い ながら 答え ました 。 「 なぜ 、 僕 を 起こして くれ なかった のだ い 。」 と 、 太郎 は 、 不平 に 思って 聞き ました 。 「 おまえ を 起こした けれど 、 起き なかった のだ 。」 と 、 お じいさん は いい ました 。 「 うそ だい 。」 と 、 太郎 は 、 大きな 声 を たてた 。 する と 、 同時に 、 夢 は さめて 、 太郎 は 、 床 の 中 に 寝て いる のでした 。 お じいさん は 、 お 帰り なされたろう か ? どう なされたろう ? と 、 太郎 は 、 目 を 開けて お じいさん の へや の 方 を 見 ます と 、 まだ 帰ら れ ない もの の ように 、 しんと して い ました 。 太郎 は 、 小便 に 起き ました 。 そして 、 戸 を 開けて 外 を 見 ます と 、 いつのまにか 、 空 は よく 晴れて い ました 。 月 は なかった けれど 、 星影 が 降る ように 、 きらきら と 光って い ました 。 太郎 は 、 もしや 、 お じいさん が 、 この 真 夜中 に 雪道 を 迷って 、 あちら の 広野 を うろついて い なさる ので は なかろう か と 心配 し ました 。 そして 、 わざわざ 入り口 の ところ まで 出て 、 あちら を 見た のであり ます 。 いろいろの 木立 が 、 黙って 、 星 晴れの した 空 の 下 に 、 黒く 立って い ました 。 そして 、 だれ が 点した もの か 、 幾 百 本 と なく 、 ろうそく に 火 を つけて 、 あちら の 真っ白な 、 さびしい 野原 の 上 に 、 一面に 立てて ある のでした 。 太郎 は 、 きつね の 嫁入り の はなし を 聞いて い ました 。 いま あちら の 野原 で 、 その 宴会 が 開か れて いる ので ない か と 思い ました 。 もし 、 そう だったら 、 お じいさん は 、 きつね に だまさ れて 、 どこ へ か いって しまい なされた のだろう と 思って 、 太郎 は 、 熱心に 、 あちらこちら の 野原 の 方 を 見 やって い ました 。 ろうそく の 火 は 、 赤い 、 小さな 烏帽子 の ように 、 いく つ も いく つ も 点 って いた けれど 、 風 に 吹か れて 、 べつに 揺らぎ も し ませ ん でした 。 太郎 は 、 気味 悪く なって きて 、 戸 を 閉めて 内 へ 入る と 、 床 の 中 に もぐり 込んで しまい ました 。 ふと 太郎 は 、 目 を さまし ます と 、 だれ か トントン と 家 の 戸 を たたいて い ます 。 風 の 音 で は あり ませ ん 。 だれ か 、 たしかに 戸 を たたいて いる のです 。 「 お じいさん が 、 帰って き なすった のだろう 。」 と 、 太郎 は 思い ました が 、 また 、 先刻 、 野原 に 赤い ろうそく の 火 が たくさん 点 って いた こと を 思い出して 、 もしや なに か 、 きつね か 悪魔 が やってきて 、 戸 を たたく ので は なかろう か と 、 息 を はずま せて 黙って い ました 。 する と 、 この 音 を きき つけた の は 、 自分 一 人 で なかった と みえて 、 お 父さん か 、 お 母さん か が 起き なされた ようす が し ました 。 ランプ の 火 は うす暗く 、 家 の 中 を 照らし ました 。 まだ 、 夜 は 明け なかった のです 。 しかし 、 真 夜中 を 過ぎて いた こと だけ は 、 たしかでした 。 その うち に 、 表 の 雨戸 の 開く 音 が する と 、 「 まあ 、 どうして 、 いま 時分 、 お 帰り なさった のです か ? 」 と 、 お 父さん が いって い なさる 声 が 聞こえ ました 。 つづいて 、 なにやら いってい なさる お じいさん の 声 が 聞こえ ました 。 「 お じいさん だ 。 お じいさん が 帰って き なさった のだ 。」 と 、 太郎 は さっそく 、 着物 を 着る と 、 みんな の 話して いる 茶の間 から 入り口 の 方 へ やってき ました 。 お じいさん は 、 朝 家 を 出た とき の 仕度 と 同じ ようす を して 、 しかも 背中 に 、 赤い 大きな かに を 背負って い られ ました 。 「 お じいさん 、 その かに どうした の ? 」 と 、 太郎 は 、 喜んで 、 しきりに 返事 を せきたて ました 。 「 まあ 、 静かに して いる のだ 。」 と 、 お 父さん は 、 太郎 を しかって 、 「 どうして 、 いまごろ お 帰り なさった のです 。」 と 、 お じいさん に 聞いて い られ ました 。 「 どうした って 、 もう 、 そんなに 寒く は ない 。 なんといっても 季節 だ 。 早く 出た のだ が 、 道 を まちがって のう 。」 と 、 お じいさん は 、 とぼとぼ と した 足 つきで 、 内 に 入る と 、 仕度 を 解か れ ました 。 「 道 を まちがった って 、 もう じき 夜 が 明け ます よ 、 この 夜中 、 どこ を お 歩き なさった のです か ? 」 父 も 、 母 も 、 みんな が 、 あきれた 顔つき を して お じいさん を ながめて い ました 。 太郎 は 、 心 の 中 で 、 お じいさん は 、 自分 の 思った とおり 、 きつね に だまさ れた のだ と 思い ました 。 やがて みんな は 、 茶の間 に きて 、 ランプ の 下 に すわり ました 。 すると 、 お じいさん は つぎ の ように 、 今日 の こと を 物語ら れた のであり ます 。 「 私 は 、 早く 家 へ 帰ろう と 思って 、 あちら を 出かけた が 、 日 が 短い もの で 、 途中 で 日 が 暮れて しまった 。 困った こと だ と 思って 、 独り とぼとぼ と 歩いて くる と 、 星 晴れの した いい 夜 の 景色 で 、 なんといっても 、 もう 春 が じき だ と 思い ながら 歩いて いた 。 海辺 まで くる と 、 雪 も 少なく 、 沖 の 方 を 見れば 、 もう 入り日 の 名残 も 消えて しまって 、 暗い うち に 波 の 打つ 音 が 、 ド 、 ドー 、 と 鳴って いる ばかりであった 。 ちょうど 、 その とき 、 あちら に 人間 が 五 、 六 人 、 雪 の 上 に 火 を 焚いて 、 なにやら 話 を して いる ようだった 。 私 は 、 いまごろ 、 なに を して いる のだろう 、 きっと 魚 が 捕れた の に ちがいない 。 家 へ みやげ に 買って いこう と 思って 、 なんの 気 なし に 、 その 人 たち の いる そば まで いって みる と 、 その 人 たち は 酒 を 飲んで いた 。 みんな は 、 毎日 、 潮風 に さらさ れて いる と みえて 、 顔 の 色 が 、 火 に 映って 、 赤 黒かった 。 そして 、 その 人 たち の 話して いる こと は 、 すこしも わから なかった が 、 私 が ゆく と 、 みんな は 、 私 に 、 酒 を すすめた 。 つい 私 は 、 二 、 三 杯 飲んだ 。 酒 の 酔い が まわる と 、 じつに いい 気持ち に なった 。 このぶん なら 、 夜 じゅう 歩いて も だいじょうぶだ と いう ような 元気 が 起こった 。 私 は 、 なに か みやげ に する 魚 は ない か と いう と 、 その 中 の 一 人 の 男 が 、 この かに を 出して くれた 。 銭 を 払おう と いって も 手 を 振って 、 その 男 は どうしても 金 を 受け取ら なかった 。 私 は 、 大 が に を 背中 に しょ った 。 そして 、 みんな と 別れて 、 一 人 で 、 あちら に ぶらり 、 こちら に ぶらり 、 千鳥足 に なって 、 広い 野原 を 、 星 明かり で 歩いて きた のだ 。」 と 、 お じいさん は 話し ました 。 みんな は 、 不思議な こと が あった もの だ と 思い ました 。 「 よく 星 明かり で 、 雪道 が わかり ました ね 。」 と 、 太郎 の お 父さん は いって 、 びっくり して い ました 。 「 お じいさん 、 きっと きつね に ばかさ れた のでしょう 。 野原 の 中 に 、 いく つ も ろうそく が ついて い なかった かい ? 」 と 、 太郎 は 、 お じいさん に 向かって い い ました 。 「 ろうそく ? そんな もの は 知ら ない が 、 思った より 明るかった 。」 と 、 お じいさん は 、 にこにこ 笑って 、 たばこ を すって い られ ました 。 「 もらった かに と いう の は 、 どんな かに でしょう 。」 と 、 お 母さん は いって 、 あちら から 、 お じいさん の しょ って きた かに を 、 家 の もの の いる 前 に 持って こ られ ました 。 見る と 、 それ は 、 びっくり する ほど の 、 大きい 、 真っ赤な 海 が に で あり ました 。 「 夜 だ から 、 いま 食べ ないで 、 明日 食べ ましょう 。」 と 、 お 母さん は いわ れ ました 。 「 なんという 、 大きな かに だ 。」 と いって 、 お 父さん も びっくり して い られ ました 。 みんな は 、 まだ 起きる の に は 早い から と いって 、 床 の 中 に 入り ました 。 太郎 は 、 夜 が 明けて から 、 かに を 食べる の を 楽しみに して 、 その ぶつぶつ とい ぼ の さ る 甲 ら や 、 太い はさみ など に 気 を ひかれ ながら 床 の 中 に 入り ました 。 明くる 日 に なる と 、 お じいさん は 、 疲れて こたつ の うち に は いって い られ ました 。 太郎 は 、 お 母さん や お 父さん と 、 お じいさん の 持って 帰ら れた かに を 食べよう と 、 茶の間 に すわって い ました 。 お 父さん は 小 刀 で かに の 足 を 切り ました 。 そして 、 みんな が 堅い 皮 を 破って 、 肉 を 食べよう と し ます と 、 その かに は 、 まったく 見かけ に よら ず 、 中 に は 肉 も なんにも 入って い ず に 、 からっぽに なって いる やせた かに で あり ました 。 「 こんな 、 かに が ある だろう か ? 」 お 父さん も 、 お 母さん も 、 顔 を 見合して たまげて い ます 。 太郎 も 不思議で たまり ませ ん でした 。 お じいさん は 、 たいへんに 疲れて いて 、 すこし ぼけた ように さえ 見 られた のでした 。 「 いったい 、 こんな かに が この 近辺 の 浜 で 捕れる だろう か ? 」 お 父さん は 、 考え ながら いわ れ ました 。 海 まで は 、 一 里 ばかり あり ました 。 それ で 、 こんな かに を もらった 町 へ いって 、 昨夜 の こと を 聞いて こよう と お 父さん は いわ れ ました 。 太郎 は 、 お 父さん に つれ られて 、 海辺 の 町 へ いって みる こと に なり ました 。 二 人 は 家 から 出かけ ました 。 空 は 、 やはり 曇って い ました が 、 暖かな 風 が 吹いて い ました 。 広い 野原 に さしかかった とき 、 「 だいぶ 、 雪 が 消えて きた 。」 と 、 お 父さん は いわ れ ました 。 黒い 森 の 姿 が 、 だんだん 雪 の 上 に 、 高く のびて き ました 。 中 に は 坊さん が 、 黒い 法衣 を きて 立って いる ような 、 一 本 の 木立 も 、 遠方 に 見 られ ました 。 やっと 、 海辺 の 町 へ 着いて 、 魚 問屋 や 、 漁師 の 家 へ いって 聞いて み ました けれど 、 だれ も 、 昨夜 、 雪 の 上 に 火 を 焚いて いた と いう もの を 知り ませ ん でした 。 そして 、 どこ に も そんな 大きな かに を 売って いる ところ は なかった のです 。 「 不思議な こと が あれば ある もの だ 。」 と 、 お 父さん は いい ながら 、 頭 を かしげて い られ ました 。 二 人 は 、 海辺 に きて みた のです 。 すると 波 は 高くて 、 沖 の 方 は 雲 切れ の した 空 の 色 が 青く 、 それ に 黒 雲 が うず を 巻いて いて 、 ものすごい 暴れ 模様 の 景色 でした 。 「 また 、 降りた 。 早く 、 帰ろう 。」 と 、 お 父さん は いわ れ ました 。 二 人 は 、 急いで 、 海辺 の 町 を 離れる と 、 自分 の 村 を さして 帰った のであり ます 。 その 日 の 夜 から 、 ひどい 雨 風 に なり ました 。 二 日 二 晩 、 暖かな 風 が 吹いて 、 雨 が 降りつづいた ので 、 雪 は おおかた 消えて しまい ました 。 その 雨 風 の 後 は 、 いい 天気 に なり ました 。 春 が 、 とうとう やってきた のです 。 さびしい 、 北 の 国 に 、 春 が やってき ました 。 小鳥 は どこ から と も なく 飛んで きて 、 こずえ に 止まって さえずり はじめ ました 。 庭 の 木立 も 芽 ぐん で 、 花 の つぼみ は 、 日 に まし 大きく なり ました 。 お じいさん は 、 やはり こたつ に は いって い られ ました 。 「 あの じょうぶな お じいさん が 、 たいそう 弱く お なり なされた 。」 と 、 家 の 人々 は いい ました 。 ある 日 、 太郎 は 、 野原 へ いって み ます と 、 雪 の 消えた 跡 に 、 土筆 が すいすい と 幾 本 と なく 頭 を のばして い ました 。 それ を 見 ました とき 、 太郎 は 、 いつか 雪 の 夜 に 、 赤い ろうそく の 点 って いた 、 不思議な 、 気味 の わるい 景色 を 思い出した のであり ます 。

大き なか に おおき|| Riesenkrabbe In the big crabe géant granchio gigante 큰 게 gigantyczny krab caranguejo gigante гигантский краб 大螃蟹 大螃蟹

大きな かに おおきな| Big crab

小川 未明 おがわ|みめい Mio Ogawa

それ は 、 春 の 遅い 、 雪 の 深い 北国 の 話 で あり ます 。 ||はる||おそい|ゆき||ふかい|きたぐに||はなし||| It is a story about a northern country late in spring and deep in snow. 그것은 봄의 늦은 눈이 깊은 북국의 이야기입니다. ある 日 の こと 太郎 は 、 お じいさん の 帰って くる の を 待って い ました 。 |ひ|||たろう|||||かえって||||まって|| One day Taro was waiting for his grandfather to return. お じいさん は 三 里 ばかり 隔たった 、 海岸 の 村 へ 用事 が あって 、 その 日 の 朝 早く 家 を 出て いった のでした 。 |||みっ|さと||へだたった|かいがん||むら||ようじ||||ひ||あさ|はやく|いえ||でて|| The grandfather had a business trip to the coastal village, only three miles away, and left the house early that morning. 「 お じいさん 、 いつ 帰って くる の ? |||かえって|| "Old man, when will you come back? 」 と 、 太郎 は 、 その とき 聞き ました 。 |たろう||||きき| ", Taro asked at that time. すっかり 仕度 を して 、 これ から 出て ゆこう と した お じいさん は 、 にっこり 笑って 、 太郎 の 方 を 振り向き ながら 、 「 じきに 帰って くる ぞ 。 |したく|||||でて||||||||わらって|たろう||かた||ふりむき|||かえって|| The grandfather, who was completely prepared and was about to leave, was smiling, smiling, and turning to Taro. 晩 まで に は 帰って くる ……。」 ばん||||かえって| I'll be back by night ... " と いい ました 。 said . 「 なに か 、 帰り に お みやげ を 買って きて ね 。」 ||かえり|||||かって|| "Something, please buy a souvenir on your way home." と 、 少年 は 頼んだ のであり ます 。 |しょうねん||たのんだ|| Asked the boy. 「 買って きて やる と も 、 おとなしく して 待って いろ よ 。」 かって|||||||まって|| "When you buy it, stay calm and wait." と 、 お じいさん は いい ました 。 Said the grandfather. やがて お じいさん は 、 雪 を 踏んで 出て いった のです 。 ||||ゆき||ふんで|でて|| Eventually the grandfather stepped out of the snow. その 日 は 、 曇った 、 うす暗い 日 で あり ました 。 |ひ||くもった|うすぐらい|ひ||| That day was a cloudy, light, dark day. 太郎 は 、 いまごろ 、 お じいさん は 、 どこ を 歩いて い られる だろう と 、 さびしい 、 そして 、 雪 で 真っ白な 、 広い 野原 の 景色 など を 想像 して いた のです 。 たろう||||||||あるいて|||||||ゆき||まっしろな|ひろい|のはら||けしき|||そうぞう||| Taro was imagining, by this time, where the grandfather would be walking, lonely and snow-white, wide fields. その うち に 、 時間 は だんだん たって ゆき ました 。 |||じかん||||| In the meantime, time gradually increased. 外 に は 、 風 の 音 が 聞こえ ました 。 がい|||かぜ||おと||きこえ| I could hear the sound of the wind outside. 雪 が 霰 が 降って き そうに 、 日 の 光 も 当たら ず に 、 寒う ございました 。 ゆき||あられ||ふって||そう に|ひ||ひかり||あたら|||さむう| It was cold without the sunshine hitting the snow like hail. 「 こんなに 天気 が 悪い から 、 お じいさん は 、 お 泊まり なさる だろう 。」 |てんき||わるい||||||とまり|| "Because the weather is so bad, the grandfather will stay." と 、 家 の 人 たち は いって い ました 。 |いえ||じん||||| Said the people in the house. 太郎 は 、 お じいさん が 、 晩 まで に は 、 帰って くる と いわ れた から 、 きっと 帰って こ られる だろう と 堅く 信じて い ました 。 たろう|||||ばん||||かえって|||||||かえって|||||かたく|しんじて|| Taro was convinced that his grandfather was told that he would return by night, and that he would return. それ で 、 どんな もの を お みやげ に 買って きて くださる だろう と 考えて い ました 。 ||||||||かって|||||かんがえて|| So I was wondering what kind of things would be bought as souvenirs. その うち に 、 日 が 暮れ かかり ました 。 |||ひ||くれ|| In the meantime, the sun went down. けれど 、 お じいさん は 帰って き ませ ん でした 。 ||||かえって|||| However, my grandfather didn't come home. もう あちら の 野原 を 歩いて き なさる 時分 だろう と 思って 、 太郎 は 、 戸口 まで 出て 、 そこ に しばらく 立って 、 遠く の 方 を 見て い ました けれど 、 それ らしい 人影 も 見え ませ ん でした 。 |||のはら||あるいて|||じぶん|||おもって|たろう||とぐち||でて||||たって|とおく||かた||みて||||||ひとかげ||みえ||| I thought it was time to walk through the fields over there, Taro went out to the doorway, stood there for a while, and looked into the distance, but I couldn't see a figure like that. did . 「 お じいさん は 、 どう なさった のだろう ? "What happened to your grandfather? きつね に でも つれ られて 、 どこ へ かゆき なされた ので は ない か しら ん ? I guess she was taken by the fox and where did she go? 」   太郎 は 、 いろいろ と 考えて 、 独り で 、 心配 を して い ました 。 たろう||||かんがえて|ひとり||しんぱい|||| Taro was thinking about various things and was worried by himself. 「 きっと 、 天気 が 悪い から 、 途中 で 降ら れて は 困る と 思って 、 今夜 は お 泊まり なさった に ちがいない 。」 |てんき||わるい||とちゅう||ふら|||こまる||おもって|こんや|||とまり||| "I bet I thought I wouldn't want to get off halfway because the weather is bad, so I would have stayed tonight." と 、 家 の 人 たち は 語り 合って 、 あまり 心配 を いたし ませ ん でした 。 |いえ||じん|||かたり|あって||しんぱい||||| The people at home talked and were not too worried. しかし 太郎 は 、 どうしても 、 お じいさん が 、 今晩 泊まって こ られる と は 信じ ませ ん でした 。 |たろう||||||こんばん|とまって|||||しんじ||| But Taro never believed that his grandfather would stay overnight tonight. 「 きっと 、 お じいさん は 、 帰って き なさる 。 ||||かえって|| "I'm sure my grandfather will be back. それ まで 自分 は 起きて 待って いる のだ 。」 ||じぶん||おきて|まって|| Until then, I'm up and waiting. " と 、 心 に きめて 、 暗く なって しまって から も 、 その 夜 に かぎって 、 太郎 は 、 床 の 中 へ 入って 眠ろう と は せ ず に 、 いつまでも 、 ランプ の 下 に すわって 起きて いた のでした 。 |こころ|||くらく||||||よ|||たろう||とこ||なか||はいって|ねむろう|||||||らんぷ||した|||おきて|| Taro had been sitting under the lamp forever for the night, even after darkening her heart, without going into the floor and trying to sleep. did . いつも なら 、 太郎 は 日 が 暮れる と じきに 眠る のでした が 、 不思議に 目 が さ えて いて 、 ちっとも 眠く は あり ませ ん でした 。 ||たろう||ひ||くれる|||ねむる|||ふしぎに|め||||||ねむく||||| Taro usually slept shortly after the sun set, but he was awake and strangely not asleep. そして 、 こんなに 暗く なって 、 お じいさん は さぞ 路 が わから なくて 困って い なさる だろう と 、 広い 野原 の 中 で 、 とぼとぼ と して い られる お じいさん の 姿 を 、 いろいろに 想像 した のでした 。 ||くらく||||||じ||||こまって|||||ひろい|のはら||なか||||||||||すがた|||そうぞう|| Then, when it was so dark, the grandfather imagined various things about his grandfather, who was in a wide field and was in trouble, because he couldn't understand the road. 「 さあ 、 お 休み 、 お じいさん が お 帰り に なったら 、 きっと おまえ を 起こして あげる から 、 床 の 中 へ 入って 、 寝て いて 待って おい で 。」 ||やすみ|||||かえり||||||おこして|||とこ||なか||はいって|ねて||まって|| "Let's take a break, when your grandfather returns, I'll wake you up, so I'll go into the floor, sleep and wait." と 、 お 母さん が いわ れた ので 、 太郎 は 、 ついに その 気 に なって 、 自分 の 床 に は いった のであり ました 。 ||かあさん|||||たろう||||き|||じぶん||とこ||||| Taro finally came to his own floor because he said to his mother. しかし 、 太郎 は 、 すぐ に は 眠る こと が でき ませ ん でした 。 |たろう|||||ねむる|||||| However, Taro couldn't sleep right away. 外 の 暗い 空 を 、 吹いて いる 風 の 音 が 聞こえ ました 。 がい||くらい|から||ふいて||かぜ||おと||きこえ| I could hear the sound of the wind blowing through the dark sky outside. ランプ の 下 に すわって いる とき も 聞こえた 、 遠い 、 遠い 、 北 の 沖 の 方 で する 海 の 鳴る 音 が 、 まくら に 頭 を つける と 、 いっそう はっきり と 雪 の 野原 の 上 を 転げて くる ように 思わ れた のであり ます 。 らんぷ||した||||||きこえた|とおい|とおい|きた||おき||かた|||うみ||なる|おと||||あたま|||||||ゆき||のはら||うえ||ころげて|||おもわ||| I heard the sound of the ocean sounding off the distant, distant, north offshore, even when I was sitting beneath the lamp, as I rolled my head in the pillow, rolling more clearly over the snowy field. It was thought. しかし 、 太郎 は 、 いつのまにか 、 うとうと と して 眠った のであり ます 。 |たろう||||||ねむった|| However, Taro fell asleep at short notice. 彼 は 、 朝 起きる と 、 入り口 に 、 大きな 白い 羽 の 、 汚れて ねずみ色 に なった 、 いま まで に こんな 大きな 鳥 を 見た こと も ない 、 鳥 の 死んだ の が 、 壁板 に かかって いる の を 見て びっくり し ました 。 かれ||あさ|おきる||いりぐち||おおきな|しろい|はね||けがれて|ねずみいろ|||||||おおきな|ちょう||みた||||ちょう||しんだ|||かべいた||||||みて||| He wakes up in the morning, and at the entrance, he has never seen such a big bird, with a large white feather, dirty and gray, and the dead bird rests on the wall. I was surprised to see it. 「 これ は なに ? 」 と 、 太郎 は 、 目 を 円く して 問い ました 。 |たろう||め||まるく||とい| " Taro's eyes widened as he asked, "What do you want me to do? 「 これ かい 、 これ は 海鳥 だ 。 ||||うみどり| "This is it, this is a seabird. 昨夜 、 お じいさん が 、 この 鳥 に 乗って 帰って き なすった のだ 。」 さくや|||||ちょう||のって|かえって||な すった| Last night my grandfather came home on this bird. " と 、 お 母さん は いわ れ ました 。 ||かあさん|||| She said, "I am not a good person. お じいさん が 帰って き なすった と 聞いて 、 太郎 は 大喜びであり ました 。 |||かえって||な すった||きいて|たろう||おおよろこびであり| When Taro heard that his grandfather had returned, he was overjoyed. さっそく 、 お じいさん の へや へ いって み ます と 、 お じいさん は 、 にこにこ と 笑って 、 たばこ を すって い られ ました 。 |||||||||||||||わらって|||||| He went to his grandfather and found that he was smiling and smiling and was smoking cigarettes. それ より も 、 太郎 は 、 どうして 、 海鳥 が 死んだ の か 、 聞き たかった のです 。 |||たろう|||うみどり||しんだ|||きき|| More than that, Taro wanted to ask how the seabird had died. その 不審 が 心 に あり ながら 、 それ を いい 出す 前 に 、 お じいさん の 帰って き なされた の が うれしくて 、 「 お じいさん 、 いつ 帰って きた の ? |ふしん||こころ|||||||だす|ぜん|||||かえって|||||||||かえって|| Even though the suspicion was in my heart, I was glad that my grandfather had returned before giving it out, saying, "When did you return? 」 と 問い ました 。 |とい| 「 昨夜 、 帰って きた のだ 。」 さくや|かえって|| I came home last night. と 、 お じいさん は 、 やはり 笑い ながら 答え ました 。 |||||わらい||こたえ| The grandfather answered with a laugh. 「 なぜ 、 僕 を 起こして くれ なかった のだ い 。」 |ぼく||おこして|||| "Why didn't you wake me up?" と 、 太郎 は 、 不平 に 思って 聞き ました 。 |たろう||ふへい||おもって|きき| Taro listened with a sense of dissatisfaction. 「 おまえ を 起こした けれど 、 起き なかった のだ 。」 ||おこした||おき|| "I woke you up, but I didn't." と 、 お じいさん は いい ました 。 「 うそ だい 。」 "Bullshit." と 、 太郎 は 、 大きな 声 を たてた 。 |たろう||おおきな|こえ|| Taro shouted loudly. する と 、 同時に 、 夢 は さめて 、 太郎 は 、 床 の 中 に 寝て いる のでした 。 ||どうじに|ゆめ|||たろう||とこ||なか||ねて|| At the same time, at the same time, the dream was awakened, and Taro was sleeping on the floor. お じいさん は 、 お 帰り なされたろう か ? ||||かえり|| Is Grandpa gone home? どう なされたろう ? What was done? と 、 太郎 は 、 目 を 開けて お じいさん の へや の 方 を 見 ます と 、 まだ 帰ら れ ない もの の ように 、 しんと して い ました 。 |たろう||め||あけて||||||かた||み||||かえら||||||||| Taro opened his eyes and looked toward his grandfather's room, which was quiet as if he was not yet ready to go home. 太郎 は 、 小便 に 起き ました 。 たろう||しょうべん||おき| Taro got up in piss. そして 、 戸 を 開けて 外 を 見 ます と 、 いつのまにか 、 空 は よく 晴れて い ました 。 |と||あけて|がい||み||||から|||はれて|| I opened the door and looked outside, and before I knew it, the sky was clear. 月 は なかった けれど 、 星影 が 降る ように 、 きらきら と 光って い ました 。 つき||||ほしかげ||ふる||||ひかって|| There was no moon, but the stars were shining brightly as if they were falling. 太郎 は 、 もしや 、 お じいさん が 、 この 真 夜中 に 雪道 を 迷って 、 あちら の 広野 を うろついて い なさる ので は なかろう か と 心配 し ました 。 たろう|||||||まこと|よなか||ゆきみち||まよって|||ひろの||||||||||しんぱい|| Taro was worried that his grandfather would be straying down the snowy road at midnight and wandering around Hirono. そして 、 わざわざ 入り口 の ところ まで 出て 、 あちら を 見た のであり ます 。 ||いりぐち||||でて|||みた|| He went all the way out to the entrance and looked over there. いろいろの 木立 が 、 黙って 、 星 晴れの した 空 の 下 に 、 黒く 立って い ました 。 |こだち||だまって|ほし|はれの||から||した||くろく|たって|| The trees were silently standing under the clear skies of the stars. そして 、 だれ が 点した もの か 、 幾 百 本 と なく 、 ろうそく に 火 を つけて 、 あちら の 真っ白な 、 さびしい 野原 の 上 に 、 一面に 立てて ある のでした 。 |||ともした|||いく|ひゃく|ほん|||||ひ|||||まっしろな||のはら||うえ||いちめんに|たてて|| And there were not hundreds of who lit them, and they lit their candles, and stood all over that white, lonely field. 太郎 は 、 きつね の 嫁入り の はなし を 聞いて い ました 。 たろう||||よめいり||||きいて|| Taro was listening to a story about a fox's bride-to-be. いま あちら の 野原 で 、 その 宴会 が 開か れて いる ので ない か と 思い ました 。 |||のはら|||えんかい||あか|||||||おもい| I wondered if the banquet was being held in that field now. もし 、 そう だったら 、 お じいさん は 、 きつね に だまさ れて 、 どこ へ か いって しまい なされた のだろう と 思って 、 太郎 は 、 熱心に 、 あちらこちら の 野原 の 方 を 見 やって い ました 。 ||||||||||||||||||おもって|たろう||ねっしんに|||のはら||かた||み||| If so, he wondered if he had been fooled by the fox and had to go somewhere. . ろうそく の 火 は 、 赤い 、 小さな 烏帽子 の ように 、 いく つ も いく つ も 点 って いた けれど 、 風 に 吹か れて 、 べつに 揺らぎ も し ませ ん でした 。 ||ひ||あかい|ちいさな|えぼし|||||||||てん||||かぜ||ふか|||ゆらぎ||||| The candle 's fire, like a red, small crow' s hat, was lit many and many times, but was not blown by the wind, nor did it fluctuate. 太郎 は 、 気味 悪く なって きて 、 戸 を 閉めて 内 へ 入る と 、 床 の 中 に もぐり 込んで しまい ました 。 たろう||きみ|わるく|||と||しめて|うち||はいる||とこ||なか|||こんで|| Taro began to feel creepy, and when she closed the door and entered the room, she fell into the floor. ふと 太郎 は 、 目 を さまし ます と 、 だれ か トントン と 家 の 戸 を たたいて い ます 。 |たろう||め|||||||とんとん||いえ||と|||| When Taro wakes up, he hears someone pounding on the door of his house. 風 の 音 で は あり ませ ん 。 かぜ||おと||||| It is not the sound of wind. だれ か 、 たしかに 戸 を たたいて いる のです 。 |||と|||| Someone is surely knocking on the door. 「 お じいさん が 、 帰って き なすった のだろう 。」 |||かえって||な すった| My grandfather must have come home. と 、 太郎 は 思い ました が 、 また 、 先刻 、 野原 に 赤い ろうそく の 火 が たくさん 点 って いた こと を 思い出して 、 もしや なに か 、 きつね か 悪魔 が やってきて 、 戸 を たたく ので は なかろう か と 、 息 を はずま せて 黙って い ました 。 |たろう||おもい||||せんこく|のはら||あかい|||ひ|||てん|||||おもいだして||||||あくま|||と||||||||いき||||だまって|| Thought, Taro thought, but remembering that there was a lot of red candle fire in the field soon, I wonder if some kind of devil came and knocked on the door. , And kept his breath out of silence. する と 、 この 音 を きき つけた の は 、 自分 一 人 で なかった と みえて 、 お 父さん か 、 お 母さん か が 起き なされた ようす が し ました 。 |||おと||||||じぶん|ひと|じん||||||とうさん|||かあさん|||おき||||| Then, it seemed that he was not the only one who heard this sound, and it was as if his father or mother had woken up. ランプ の 火 は うす暗く 、 家 の 中 を 照らし ました 。 らんぷ||ひ||うすぐらく|いえ||なか||てらし| The lamps were dimly lit and illuminated the house. まだ 、 夜 は 明け なかった のです 。 |よ||あけ|| It was still daybreak. しかし 、 真 夜中 を 過ぎて いた こと だけ は 、 たしかでした 。 |まこと|よなか||すぎて||||| But it was certain that it was past midnight. その うち に 、 表 の 雨戸 の 開く 音 が する と 、 「 まあ 、 どうして 、 いま 時分 、 お 帰り なさった のです か ? |||ひょう||あまど||あく|おと|||||||じぶん||かえり||| In the meantime, when the sound of the front shutters opened, he said, "Well, why did you return now, hour, and minute? 」 と 、 お 父さん が いって い なさる 声 が 聞こえ ました 。 ||とうさん|||||こえ||きこえ| " I could hear my father saying, "I'm sorry, I'm sorry. つづいて 、 なにやら いってい なさる お じいさん の 声 が 聞こえ ました 。 |||||||こえ||きこえ| Then, I heard a grandfather's voice saying something to me. 「 お じいさん だ 。 お じいさん が 帰って き なさった のだ 。」 |||かえって||| My grandfather has come home. と 、 太郎 は さっそく 、 着物 を 着る と 、 みんな の 話して いる 茶の間 から 入り口 の 方 へ やってき ました 。 |たろう|||きもの||きる||||はなして||ちゃのま||いりぐち||かた||| お じいさん は 、 朝 家 を 出た とき の 仕度 と 同じ ようす を して 、 しかも 背中 に 、 赤い 大きな かに を 背負って い られ ました 。 |||あさ|いえ||でた|||したく||おなじ|||||せなか||あかい|おおきな|||せおって||| The grandfather was doing the same as when he left the house in the morning, and on his back was carrying a big red crab. 「 お じいさん 、 その かに どうした の ? "Grandpa, what's wrong with that? 」 と 、 太郎 は 、 喜んで 、 しきりに 返事 を せきたて ました 。 |たろう||よろこんで||へんじ||| Taro was happy to reply to me. 「 まあ 、 静かに して いる のだ 。」 |しずかに||| "Well, I'm quiet." と 、 お 父さん は 、 太郎 を しかって 、 「 どうして 、 いまごろ お 帰り なさった のです 。」 ||とうさん||たろう||||||かえり|| And the father struck Taro and said, “Why did you come home now?” と 、 お じいさん に 聞いて い られ ました 。 ||||きいて||| Asked my grandfather. 「 どうした って 、 もう 、 そんなに 寒く は ない 。 ||||さむく|| I don't care, it's not that cold anymore. なんといっても 季節 だ 。 |きせつ| After all, it's the season. 早く 出た のだ が 、 道 を まちがって のう 。」 はやく|でた|||どう||| He left early, but he got on the wrong side of the road. と 、 お じいさん は 、 とぼとぼ と した 足 つきで 、 内 に 入る と 、 仕度 を 解か れ ました 。 |||||||あし||うち||はいる||したく||とか|| And, the grandfather, with his sloppy feet, went inside and was unprepared. 「 道 を まちがった って 、 もう じき 夜 が 明け ます よ 、 この 夜中 、 どこ を お 歩き なさった のです か ? どう||||||よ||あけ||||よなか||||あるき||| "If you make a mistake on your way, the night is about to end. Where did you walk this night? 」   父 も 、 母 も 、 みんな が 、 あきれた 顔つき を して お じいさん を ながめて い ました 。 ちち||はは|||||かおつき|||||||| " My father, mother, and everyone else looked at him with a puzzled look on their faces. 太郎 は 、 心 の 中 で 、 お じいさん は 、 自分 の 思った とおり 、 きつね に だまさ れた のだ と 思い ました 。 たろう||こころ||なか|||||じぶん||おもった||||||||おもい| Taro thought in his heart that the grandfather was always fooled as he thought. やがて みんな は 、 茶の間 に きて 、 ランプ の 下 に すわり ました 。 |||ちゃのま|||らんぷ||した||| Soon everyone came to the tea room and sat under the lamp. すると 、 お じいさん は つぎ の ように 、 今日 の こと を 物語ら れた のであり ます 。 |||||||きょう||||ものがたら||| Then his grandfather told him the story of his day. 「 私 は 、 早く 家 へ 帰ろう と 思って 、 あちら を 出かけた が 、 日 が 短い もの で 、 途中 で 日 が 暮れて しまった 。 わたくし||はやく|いえ||かえろう||おもって|||でかけた||ひ||みじかい|||とちゅう||ひ||くれて| I left there to go home early, but the day was short and it got dark on the way. 困った こと だ と 思って 、 独り とぼとぼ と 歩いて くる と 、 星 晴れの した いい 夜 の 景色 で 、 なんといっても 、 もう 春 が じき だ と 思い ながら 歩いて いた 。 こまった||||おもって|ひとり|||あるいて|||ほし|はれの|||よ||けしき||||はる|||||おもい||あるいて| I thought it was a problem, and when I walked alone and alone, it was a beautiful night view with a clear star. 海辺 まで くる と 、 雪 も 少なく 、 沖 の 方 を 見れば 、 もう 入り日 の 名残 も 消えて しまって 、 暗い うち に 波 の 打つ 音 が 、 ド 、 ドー 、 と 鳴って いる ばかりであった 。 うみべ||||ゆき||すくなく|おき||かた||みれば||いりひ||なごり||きえて||くらい|||なみ||うつ|おと|||||なって|| When we reached the seaside, there was little snow, and when we looked off the coast, the remnants of the sunset had disappeared, and the sound of the waves whining in the dark was just sounding like do, do. ちょうど 、 その とき 、 あちら に 人間 が 五 、 六 人 、 雪 の 上 に 火 を 焚いて 、 なにやら 話 を して いる ようだった 。 |||||にんげん||いつ|むっ|じん|ゆき||うえ||ひ||ふん いて||はなし|||| Just then, five or six people seemed to be talking over there, building a fire on the snow. 私 は 、 いまごろ 、 なに を して いる のだろう 、 きっと 魚 が 捕れた の に ちがいない 。 わたくし|||||||||ぎょ||とれた||| What am I doing now, surely a fish was caught? 家 へ みやげ に 買って いこう と 思って 、 なんの 気 なし に 、 その 人 たち の いる そば まで いって みる と 、 その 人 たち は 酒 を 飲んで いた 。 いえ||||かって|||おもって||き||||じん||||||||||じん|||さけ||のんで| He thought he was going to buy it for a souvenir, and without hesitation, he went up to the place where they were, and they were drinking. みんな は 、 毎日 、 潮風 に さらさ れて いる と みえて 、 顔 の 色 が 、 火 に 映って 、 赤 黒かった 。 ||まいにち|しおかぜ|||||||かお||いろ||ひ||うつって|あか|くろかった Everyone seemed to be exposed to the sea breeze every day, and the color of their faces reflected in the fire, and they were red and black. そして 、 その 人 たち の 話して いる こと は 、 すこしも わから なかった が 、 私 が ゆく と 、 みんな は 、 私 に 、 酒 を すすめた 。 ||じん|||はなして||||||||わたくし||||||わたくし||さけ|| And I couldn't understand a little what they were talking about, but as I went, everyone recommended me to drink. つい 私 は 、 二 、 三 杯 飲んだ 。 |わたくし||ふた|みっ|さかずき|のんだ I ended up drinking two or three cups. 酒 の 酔い が まわる と 、 じつに いい 気持ち に なった 。 さけ||よい||||||きもち|| I felt really good as soon as I sobered up. このぶん なら 、 夜 じゅう 歩いて も だいじょうぶだ と いう ような 元気 が 起こった 。 ||よ||あるいて||||||げんき||おこった I felt energized, as if I could walk around at night. 私 は 、 なに か みやげ に する 魚 は ない か と いう と 、 その 中 の 一 人 の 男 が 、 この かに を 出して くれた 。 わたくし|||||||ぎょ||||||||なか||ひと|じん||おとこ|||||だして| When I asked what fish to souvenir, one of them came out of it. 銭 を 払おう と いって も 手 を 振って 、 その 男 は どうしても 金 を 受け取ら なかった 。 せん||はらおう||||て||ふって||おとこ|||きむ||うけとら| He waved his hand to pay money, and he never received the money. 私 は 、 大 が に を 背中 に しょ った 。 わたくし||だい||||せなか||| I dropped my back on my back. そして 、 みんな と 別れて 、 一 人 で 、 あちら に ぶらり 、 こちら に ぶらり 、 千鳥足 に なって 、 広い 野原 を 、 星 明かり で 歩いて きた のだ 。」 |||わかれて|ひと|じん||||ぶら り|||ぶら り|ちどりあし|||ひろい|のはら||ほし|あかり||あるいて|| And they broke apart from each other, hung over there alone, hung here, staggered, and walked across a wide field with stars. " と 、 お じいさん は 話し ました 。 ||||はなし| My grandfather said, "I'm not sure I'm going to be able to do this. みんな は 、 不思議な こと が あった もの だ と 思い ました 。 ||ふしぎな|||||||おもい| Everyone thought it was strange that something had happened. 「 よく 星 明かり で 、 雪道 が わかり ました ね 。」 |ほし|あかり||ゆきみち|||| "You did a good job finding the snow-covered road by the starlight." と 、 太郎 の お 父さん は いって 、 びっくり して い ました 。 |たろう|||とうさん|||||| Taro's father was surprised to hear that. 「 お じいさん 、 きっと きつね に ばかさ れた のでしょう 。 |||||ばか さ|| "My grandfather must have been ridiculed by the fox. 野原 の 中 に 、 いく つ も ろうそく が ついて い なかった かい ? のはら||なか|||||||||| Did you have any candles in the field? 」 と 、 太郎 は 、 お じいさん に 向かって い い ました 。 |たろう|||||むかって||| " Taro went to his grandfather. 「 ろうそく ? そんな もの は 知ら ない が 、 思った より 明るかった 。」 |||しら|||おもった||あかるかった I don't know such a thing, but it was brighter than I expected. " と 、 お じいさん は 、 にこにこ 笑って 、 たばこ を すって い られ ました 。 |||||わらって|||||| The grandfather was smiling and smoking a cigarette. 「 もらった かに と いう の は 、 どんな かに でしょう 。」 “What kind of thing is it?” と 、 お 母さん は いって 、 あちら から 、 お じいさん の しょ って きた かに を 、 家 の もの の いる 前 に 持って こ られ ました 。 ||かあさん|||||||||||||いえ|||||ぜん||もって||| My mother said, and from there, she brought the grandfather's squid before her house. 見る と 、 それ は 、 びっくり する ほど の 、 大きい 、 真っ赤な 海 が に で あり ました 。 みる||||||||おおきい|まっかな|うみ||||| Seeing it was a stunning, large, bright red sea. 「 夜 だ から 、 いま 食べ ないで 、 明日 食べ ましょう 。」 よ||||たべ||あした|たべ| "Because it's night, don't eat now, let's eat tomorrow." と 、 お 母さん は いわ れ ました 。 ||かあさん|||| Said the mother. 「 なんという 、 大きな かに だ 。」 |おおきな|| What a big crab. と いって 、 お 父さん も びっくり して い られ ました 。 |||とうさん|||||| Dad was surprised to hear that. みんな は 、 まだ 起きる の に は 早い から と いって 、 床 の 中 に 入り ました 。 |||おきる||||はやい||||とこ||なか||はいり| Everyone said it was too early to get up, so they went to bed. 太郎 は 、 夜 が 明けて から 、 かに を 食べる の を 楽しみに して 、 その ぶつぶつ とい ぼ の さ る 甲 ら や 、 太い はさみ など に 気 を ひかれ ながら 床 の 中 に 入り ました 。 たろう||よ||あけて||||たべる|||たのしみに|||||||||こう|||ふとい||||き||ひか れ||とこ||なか||はいり| After dawn, Taro looked forward to eating the crab, and went into the floor, paying attention to the carapace and the thick scissors. 明くる 日 に なる と 、 お じいさん は 、 疲れて こたつ の うち に は いって い られ ました 。 あくる|ひ|||||||つかれて||||||||| When it came to come, the old man was tired and went into the kotatsu. 太郎 は 、 お 母さん や お 父さん と 、 お じいさん の 持って 帰ら れた かに を 食べよう と 、 茶の間 に すわって い ました 。 たろう|||かあさん|||とうさん|||||もって|かえら||||たべよう||ちゃのま|||| Taro was sitting in the living room with his mother, father and grandfather to eat the crabs that his grandfather had brought home. お 父さん は 小 刀 で かに の 足 を 切り ました 。 |とうさん||しょう|かたな||||あし||きり| Dad cuts the crab's legs with a small knife. そして 、 みんな が 堅い 皮 を 破って 、 肉 を 食べよう と し ます と 、 その かに は 、 まったく 見かけ に よら ず 、 中 に は 肉 も なんにも 入って い ず に 、 からっぽに なって いる やせた かに で あり ました 。 |||かたい|かわ||やぶって|にく||たべよう|||||||||みかけ||||なか|||にく|||はいって||||||||||| When everyone tried to break through the tough skin to eat the meat, they found that the crab was not what it looked like at all, but was a skinny, empty crab with no meat inside. 「 こんな 、 かに が ある だろう か ? "Is there a crab like this? 」   お 父さん も 、 お 母さん も 、 顔 を 見合して たまげて い ます 。 |とうさん|||かあさん||かお||み あわして||| " Both father and mother were surprised to see each other's faces. 太郎 も 不思議で たまり ませ ん でした 。 たろう||ふしぎで|||| Taro couldn't help but wonder. お じいさん は 、 たいへんに 疲れて いて 、 すこし ぼけた ように さえ 見 られた のでした 。 ||||つかれて||||||み|| The grandfather was very tired and even looked a little dim. 「 いったい 、 こんな かに が この 近辺 の 浜 で 捕れる だろう か ? |||||きんぺん||はま||とれる|| "Would such a thing be caught on this nearby beach? 」   お 父さん は 、 考え ながら いわ れ ました 。 |とうさん||かんがえ|||| Dad said while thinking. 海 まで は 、 一 里 ばかり あり ました 。 うみ|||ひと|さと||| There was only one ri to the sea. それ で 、 こんな かに を もらった 町 へ いって 、 昨夜 の こと を 聞いて こよう と お 父さん は いわ れ ました 。 ||||||まち|||さくや||||きいて||||とうさん|||| So, my dad told me to go to the town where I got this kind of thing and listen to what happened last night. 太郎 は 、 お 父さん に つれ られて 、 海辺 の 町 へ いって みる こと に なり ました 。 たろう|||とうさん||||うみべ||まち||||||| Taro was taken by his father and decided to go to the seaside town. 二 人 は 家 から 出かけ ました 。 ふた|じん||いえ||でかけ| They went out from the house. 空 は 、 やはり 曇って い ました が 、 暖かな 風 が 吹いて い ました 。 から|||くもって||||あたたかな|かぜ||ふいて|| The sky was still cloudy, but there was a warm breeze. 広い 野原 に さしかかった とき 、 「 だいぶ 、 雪 が 消えて きた 。」 ひろい|のはら|||||ゆき||きえて| When we reached a large field, he said, "The snow is disappearing. と 、 お 父さん は いわ れ ました 。 ||とうさん|||| 黒い 森 の 姿 が 、 だんだん 雪 の 上 に 、 高く のびて き ました 。 くろい|しげる||すがた|||ゆき||うえ||たかく||| The appearance of the Black Forest gradually grew higher above the snow. 中 に は 坊さん が 、 黒い 法衣 を きて 立って いる ような 、 一 本 の 木立 も 、 遠方 に 見 られ ました 。 なか|||ぼうさん||くろい|ほうい|||たって|||ひと|ほん||こだち||えんぽう||み|| In the distance, a single grove, like a priest standing in a black robe, was seen. やっと 、 海辺 の 町 へ 着いて 、 魚 問屋 や 、 漁師 の 家 へ いって 聞いて み ました けれど 、 だれ も 、 昨夜 、 雪 の 上 に 火 を 焚いて いた と いう もの を 知り ませ ん でした 。 |うみべ||まち||ついて|ぎょ|とんや||りょうし||いえ|||きいて||||||さくや|ゆき||うえ||ひ||ふん いて||||||しり||| Finally, when I arrived at a seaside town, I went to a fish wholesaler and a fisherman's house and asked them. そして 、 どこ に も そんな 大きな かに を 売って いる ところ は なかった のです 。 |||||おおきな|||うって||||| And there was nowhere to sell such a big place. 「 不思議な こと が あれば ある もの だ 。」 ふしぎな|||||| “If there is something strange, it ’s something.” と 、 お 父さん は いい ながら 、 頭 を かしげて い られ ました 。 ||とうさん||||あたま||||| He was saying, "I'm not sure what I'm supposed to do. 二 人 は 、 海辺 に きて みた のです 。 ふた|じん||うみべ|||| They tried to come to the beach. すると 波 は 高くて 、 沖 の 方 は 雲 切れ の した 空 の 色 が 青く 、 それ に 黒 雲 が うず を 巻いて いて 、 ものすごい 暴れ 模様 の 景色 でした 。 |なみ||たかくて|おき||かた||くも|きれ|||から||いろ||あおく|||くろ|くも||||まいて|||あばれ|もよう||けしき| Then the waves were high, and offshore, the color of the sky, which had been cut off by clouds, was blue, and black clouds were wrapped around it, giving a terrible rampage. 「 また 、 降りた 。 |おりた "I got off again. 早く 、 帰ろう 。」 はやく|かえろう Let's go home soon. " と 、 お 父さん は いわ れ ました 。 ||とうさん|||| Said Dad. 二 人 は 、 急いで 、 海辺 の 町 を 離れる と 、 自分 の 村 を さして 帰った のであり ます 。 ふた|じん||いそいで|うみべ||まち||はなれる||じぶん||むら|||かえった|| They hurriedly left the seaside town and returned home, pointing to their own village. その 日 の 夜 から 、 ひどい 雨 風 に なり ました 。 |ひ||よ|||あめ|かぜ||| That night, it started raining and windy. 二 日 二 晩 、 暖かな 風 が 吹いて 、 雨 が 降りつづいた ので 、 雪 は おおかた 消えて しまい ました 。 ふた|ひ|ふた|ばん|あたたかな|かぜ||ふいて|あめ||ふりつづいた||ゆき|||きえて|| Two days and two nights, a warm breeze blew and it continued to rain, so the snow had mostly disappeared. その 雨 風 の 後 は 、 いい 天気 に なり ました 。 |あめ|かぜ||あと|||てんき||| After the rain and wind, the weather turned beautiful. 春 が 、 とうとう やってきた のです 。 はる|||| Spring has finally arrived. さびしい 、 北 の 国 に 、 春 が やってき ました 。 |きた||くに||はる||| Spring has come to this dreary northern country. 小鳥 は どこ から と も なく 飛んで きて 、 こずえ に 止まって さえずり はじめ ました 。 ことり|||||||とんで||||とまって||| The little bird flew out of nowhere, stopped at Kozue and began to sing. 庭 の 木立 も 芽 ぐん で 、 花 の つぼみ は 、 日 に まし 大きく なり ました 。 にわ||こだち||め|||か||||ひ|||おおきく|| The groves in the garden were also buds, and the flower buds were getting bigger day by day. お じいさん は 、 やはり こたつ に は いって い られ ました 。 The grandfather was still sitting under the kotatsu. 「 あの じょうぶな お じいさん が 、 たいそう 弱く お なり なされた 。」 ||||||よわく||| "That big old man has become so weak and weak." と 、 家 の 人々 は いい ました 。 |いえ||ひとびと||| ある 日 、 太郎 は 、 野原 へ いって み ます と 、 雪 の 消えた 跡 に 、 土筆 が すいすい と 幾 本 と なく 頭 を のばして い ました 。 |ひ|たろう||のはら||||||ゆき||きえた|あと||つくし||||いく|ほん|||あたま|||| One day, when he went to the field, he found that there were so many brushes on the trace of the disappearance of the snow and his head was stretched out. それ を 見 ました とき 、 太郎 は 、 いつか 雪 の 夜 に 、 赤い ろうそく の 点 って いた 、 不思議な 、 気味 の わるい 景色 を 思い出した のであり ます 。 ||み|||たろう|||ゆき||よ||あかい|||てん|||ふしぎな|きみ|||けしき||おもいだした|| When he saw it, he recalled one day, on a snowy night, a mysterious, creepy view of a red candle.