( 入江 重樹 ( いりえ しげき )) この度 は ―
入江 直樹 ( いりえ なおき ) と 大泉 沙穂子 ( おおいずみ さほこ ) の 婚約 が 調い ―
喜んで おり ます
( 入江 直樹 ) 謹んで お 受け いたし ます
幾 久しく 納め させて いただき ます
( 池沢 金之助 ( いけざわ きんのすけ )) 相原 琴子 ( あいはら ことこ ) さん
俺 と 結婚 して ください !
( 石川 理美 ( いしかわ さとみ )・ 小森 ( こもり ) じんこ ) 金 ちゃん に プロポーズ された !?
ちょっと こっち !
それ で ? 何て 言った の ?
( 相原 琴子 ) まだ 何にも
( 理美 ) でも 何て 答える つもり ?
分かんない …
金 ちゃん の こと すごい 好き だ けど
ずっと 友達 と して 仲良く して きた から …
まあ そう だろう ね …
私 は 琴子 に は 入江 より 金 ちゃん の 方 が お 似合い だ と 思う
はっきり 言って
理美 …
だって そう でしょ ?
入江 なんて さ
さんざん 思わせぶり な 態度 とって きて
キス まで し といて
あっさり 他 の 女 と 婚約 して んだ よ ?
琴子 の 親友 と して 許せ ない よ
だ よ ね
その 間 も 金 ちゃん は ずっと いちずに
琴子 だけ を 思い 続けて た わけ だ し
( 理美 ) 琴子 だって 言って た じゃん
金 ちゃん と 一緒に いる と 楽しい って
自分 に ない もの を 持つ 入江 に 憧れる 気持ち も 分かる けど
でも 長く つきあって いける の は
一生 一緒に いて 幸せ に なれる の は
金 ちゃん みたいな 男 だ と 私 は 思う
( じんこ ) うん ―
愛する より 愛さ れる 方 が 女 は 幸せ って いう し ね
( 理美 ) これ を 機 に ―
金 ちゃん の こと 真剣 に 考えて あげ な よ
うん
はい 日本酒 お 待たせ し ました ~
( 男性 客 ) はい よ ー
お 兄ちゃん 今日 も 元気 だ な
へい おおきに
お 兄ちゃん みたいな 威勢 の いい 人 が
うち の 店 に も いて くれる と うれしい んだ けど な
( 金之助 ) いやいや …
うち も ね 和食 屋 やって ん の
どこ で やって はる んです か ?
教え ない よ
教えて ください よ
知り たい ?
( 琴子 ) 私 が 金 ちゃん に プロポーズ さ れた って 知ったら ―
入江 君 どう 思う だろう ―
入江 君 ―
少し は 驚いて くれる の か な ―
それとも …
♪~
( 重樹 ) この度 は ―
我が社 へ の 多額 の 出資 を ご 決断 いただき ―
誠に ありがとう ございます
( 大泉 ) いや …
そんな 堅苦しい 話 は やめて くれ
これ から 家族 に なる ん じゃない か
お互いに 助け合って いこう
ありがとう ございます
それ で ?
2 人 の 結婚 式 の 日取り は ?
それ は もう 会長 の お 好き な ように
( 大泉 ) ああ
会長
実は 父 は 今年 中 に 心臓 の 手術 を 予定 して い ます
直樹 !
これ から 家族 に なる と 会長 も おっしゃって ください ました
だから ―
僕 も 隠し事 は し たく あり ません
直樹 君
君 って やつ は …
ですから … 挙式 は その 手術 が 終わって から ―
できれば 来年 の 方 が ありがたい のです が
分かった
大事 な 沙穂子 の 結婚 式 だ
それ ぐらい の 準備 期間 は 必要 だろう うん
ジューンブライド って やつ だ な
なあ ?
じゃあ 来年 の 今頃 と いう こと で
分かり ました
ああ
( 金森 ( かなもり )) お 時間 大丈夫 です か ?
( 横山 ( よこやま )) 会長 ―
そろそろ 次 の ご 予定 が …
( 大泉 ) おお そう か そう か
それ じゃあ
夢 みたいだ よ
君 みたいな 男 と
親戚 に なれる なんて
ありがとう ございます
ただいま
( 入江 紀子 ( のりこ )) お かえり なさい
( 重樹 ) あー 疲れた
まだ 本調子 じゃない んだ から 早く 休んだ 方 が いい よ
( 重樹 ) ああ
あっ 直樹
ありがとう
だけど …
ほんとに これ で いい んだ な ?
おやじ も 沙穂子 さん に 会って 分かった ろ ?
あんな 人 と 結婚 する のに 何の 不満 が ある んだ ?
そう だ な
お 兄ちゃん … 本当に あの 子 と 結婚 する の ね
もう 後 に は 引けない よ
( 金之助 ) 相原 琴子 さん
俺 と 結婚 して ください !
金 ちゃん と 結婚 か …
ピンと こない な …
( ノック )
はい
( 相原 重雄 ( しげお )) 琴子 ちょっと いい かな ?
( 琴子 ) はい
なあに ? お 父さん
なあ 琴子
なあ 琴子
( 琴子 ) ん ?
ちょっと これ 見て くれ ない か ?
新しい 家 ?
うん
どうかな ?
前 より 広い だ ろ ?
駅 から ちょっと 遠い けど 家賃 も 手ごろ で さ
お 父さん こういう の 嫌 だって 言って なかった ?
一軒家 が いい って
ああ
それ は まあ 一軒家 もつ の は 母さん と の 約束 で も あった から な
まあ でも 今 すぐ 一軒家 を もつ の は 無理 だ し
しばらく は 賃貸 で
それ は お前 に 婿 が 来たら
その 男 と 一緒に 二世帯住宅 を もつ の を 夢 に
頑張る よ
もっとも ―
お前 を もらって くれる 男 が いれば の 話 だ けど な
ハハ …
ねえ お 父さん
( 重雄 ) ん ?
もし 私 が 金 ちゃん と 結婚 したら うれしい ?
えっ ?
えっ 何 ? お前 あの 男 と …
あ … 例えば の 話
ああ …
金之助 ね ~
そりゃ まあ あいつ は 確かに
料理 の 腕前 だけ は 見どころ が ある から な
人柄 も あったかい し 情 に 厚い し
ばか正直 で 誠実 だ し
そりゃ お前 と 結婚 して くれたら
店 の 後継者 が 見つかる って もんで
俺 と して は うれしい が
そう だ よ ね
あ … いや …
だからといって あいつ と 無理 して 結婚 する こと は ない んだ ぞ
俺 は ―
お前 の 気持ち が いちばん 大切 な んだ
お前 が いちばん 好き な 男 で
お前 の こと を 幸せ に して くれる ん だったら
店 の こと なんか 関係ない
♪~
( 金之助 ) まだ 絶対 振り返ったら あかん で
( 琴子 ) うん
ここ 上がって から や
ここ 上がって から や
はい
まだ や で まだ や で ~
まだ や で まだ や で ~
( 琴子 ) はい
まだ や で まだ や で ~
まだ や で まだ や で ~
( 琴子 ) はい
いく で いく で ~
いく で いく で ~
( 琴子 ) はい はい
せーの !―
うおーっ じゃーん !―
すっご ー !―
おい 琴子 ほら
( 琴子 ) わあ !
すごい きれーい !
( 金之助 ) どう や ? 琴子 ほら 行く で ほら !―
めっちゃ ええ 席 が あん ねん 特等席 が ―
ほれ ほれ ―
ほれ ほれ … こっち や こっち ―
ほれ ~!―
どう や ?―
見て みい
どう や ? どう や ?―
でっかい な ~―
かっこええ なあ ―
これ は “ 封鎖 ” でき ん わ なあ
( 直樹 ) 俺 は ―
お前 と 同じ 家 に いて も 嫌 じゃない って 言って る んだ
( 琴子 ) それ って
私 の こと …
嫌い じゃない って こと ?
苦手 だ けど
嫌い じゃない よ
えっ ?
琴子 ?―
おい レインボーブリッジ あっち や で
おい 琴子 ?
おい 琴子 ?
アハッ ごめん 何でもない
( 金之助 ) さては 腹 が 減った ん や な ―
遊び に 行く 前 に 何か うまい もん でも 食い に 行く か ―
“ 腹 が 減って は 戦 は できぬ ~” や
(2 人 の 笑い声 )
そう だ ね じゃあ 行こう
行く か
( 女性 の 声 ) うわあ レインボーブリッジ すてき
どうして ん ? 琴子
( 金之助 ) い … 入江 の 野郎 や ん か !
( 琴子 ) ん ~ いい から …
えっ 隣 に おる ん が うわさ の 婚約者 か ?
うわ ~! めちゃくちゃ お嬢様 っぽい 感じ や な
( 大泉 沙穂子 ) あら ? 琴子 さん ?
あ ~ ら ~ 沙穂子 さん
先日 は どうもっ
( 沙穂子 ) あら 偶然 琴子 さん も デート 中 な の ?
アハハ
( 金之助 ) ハハ …
こちら 婚約者 の 大泉 沙穂子 さん
はじめまして 大泉 沙穂子 です よろしく お 願い いたし ます
あっ ど … どうも あの …
池沢 金之助 です あの …
琴子 の おやっさん の 店 で 板前 やっ とり ます
まあ お父様 の 後継者 で いらっしゃる の ね
( 金之助 ) いやいや … まだまだ 見習い な もの で
沙穂子 さん は どうして 今日 ここ に ?
実は この後 銀座 で 美術展 に 行く の
その 前 に ちょっと 足 を 延ばし ません か って
直樹 さん が
とても 気持ち の いい 所 が ある から って
沙穂子 さん が 開放感 の ある 場所 に 行き たい って いう から
( 琴子 ) 私 と 一緒に 来た 場所 な のに ―
そこ に 沙穂子 さん 連れて くる んだ ―
入江 君 に とって は ―
私 と の ファースト デート なんて 何でもない ―
どうでも いい こと な んだ よ ね ?
( 沙穂子 ) あっ そう だ わ もし よかったら
琴子 さん と 金之助 さん も ご 一緒 し ません こと ?
( 琴子 ・ 金之助 ) へっ ?
フランシス ・ ベーコン の 初期 作品 が …
ベ … ベーコン ?
ベ … いや あの …
わし ら は どちら か と いう と …
ベーコン より か は ソーセージ の 方 が ね …
そういう 無理強い は よした 方 が いい です よ
沙穂子 さん
えっ ?
そんな 所 に 誘って も ―
2 人 に は 苦痛 に なる だけ です
彼ら に は 彼ら の レベル が あり ます から
まあ …
レベル ?
おい どういう 意味 や ? 入江
そう よ 私 たち が ばか だ と でも 言い たい わけ ?
何か 間違い でも ?
直樹 さん ?
行こう 金 ちゃん
私 たち は 私 たち の レベル に 合う こと しよう
琴子 さん …
沙穂子 さん
どうぞ お 二人 は 思う存分 ベーコン を
私 たち は おなか いっぱい ソーセージ 食べ ます から
じゃあ !
( 直樹 ) 琴子
全く お 似合い だ よ お前 ら
そりゃあ どうも !
( 沙穂子 ) どうした の ? 直樹 さん
琴子 さん に あんな ひどい こと おっしゃる なんて …
直樹 さん らしく ない わ
俺 らしく ない です か ?
大丈夫
沙穂子 さん に は あんな こと 言い ません から
沙穂子 さん ?
( 沙穂子 ) 直樹 さん て ―
お 仕事 も できて 何でも 分かって らっしゃる けど
ご 自分 の ほんと の 気持ち だけ は ご存じ ない の ね
今日 は 帰り ます
♪~
あー むかつく !
琴子 大丈夫 か ?
何 が ?
いや 何 が って …
何 が よ
ハハハ 何もない
ソーセージ たん と 食い や
もう 食って る か
( 重樹 ) アイ ちゃん
( 紀子 ) 相原 さん
本当に 出て いか れる んです か ?
はい
うち は ほんとに かまわ ん と よ
いやいや
直樹 君 も 結婚 する こと や し
そろそろ 潮時 ばい
何もかも 終わって しまう の ね …
♪~
( 重雄 ) みんな お疲れ ー
(3 人 ) お疲れさま です
俺 ちょっと これ から お 得意 さん とこ 顔 出す から
後 頼む な
( 金之助 ・ 琴子 ) はい
(3 人 ) いってらっしゃい
( 小田原 ( おだわら )) いや ~ あした は 定休日 か
今週 も よく 働いた ~
兄貴
( 小田原 ) えっ ?
後 は わし ら 片づけ とき ます んで
もう 上がって もらって ええ です よ
そう ?
あっ … じゃあ お先 !
( 琴子 ) お疲れさま でーす
( 小田原 ) お疲れー っす
お疲れさま です !
( 琴子 ) 金 ちゃん も 1 週間 お疲れさま
おう !
なあ 琴子
( 琴子 ) ん ?
( 金之助 ) あした 何か もう 予定 入って る ?
ううん 何もない けど どっか 出かける ?
( 金之助 ) いや
店 で 勉強 会 せえ へん ?
勉強会 ?
( 金之助 ) 琴子 も だいぶ 店 に は 慣れて きた やろう けど
まだ 和食 の 基本 と か 分からん こと も ある やろ ?
うん うん
わし も そろそろ 自分 で 考えて
コース 料理 組み立てたり して み たい し
試食 して もらい が てら 一緒に 勉強 せえへん か な 思って
いいね それ やろう よ
ええ やろ ?
ええ やろ ?
うん
うん
うん
よっしゃ 決まり や !
よっしゃ 決まり や !
ねっ ウフフ
ただいま
( 紀子 ) あーら お 兄ちゃん 遅かった の ねえ ―
でも ね ―
琴子 ちゃん まだ 帰って きて ない んだ から
( 直樹 ) そう
お 店 の 片づけ な の かしら 最近 いつも 遅い の よ ね ~
いや !
今日 は 一段 と 遅い かも
もしかしたら あの 金 ちゃん さん て 人 と
どこ か 出かけて る の かも しれ ない わ ね
ひょっとしたら 今夜 は 帰って こ ない かも ~!
( 直樹 ) おやすみ
ねえ お 兄ちゃん ねえ
相原 さん たち うち から 出て いく って …
本当に それ で いい の ね ?
♪~
( 須藤 ( すどう )) 相原 なら 今日 休む って 連絡 あった ぞ
( 直樹 ) そうです か
同じ 家 に 住んで ん のに お前 ら お互い 何も 知ら ない んだ な
会社 の 仕事 が 忙しくて いつも 家 に 帰る の が 遅い んで
じゃあ
そう いえば 入江
結婚 する んだ って な おめでとう
ありがとう ございます
( 松本 裕子 ( まつもと ゆうこ )) 久しぶり
元気 ?
( 松本 ) うん !―
入江 君 に 振ら れて も この とおり 元気 よ
やめる の ? 大学
多分
ふーん
私 彼女 嫌い よ
文句 の 言え ない 女 って つまらない
松本 らしい な
誰か の 男 に なって も
かっこいい 入江 君 で いて ね
( 松本 ) じゃあね
( じんこ ) 入江 直樹 !
何で 大学 来て ん の よ ?
( 直樹 ) 来 ちゃ 悪い の か よ ―
休学 して る だけ で まだ 在籍 は して る んだ
( じんこ ) ふーん
あら 琴子 なら もう 今日 は い ない わ よ
おあいにくさま でした
別に 聞いて ない し
もう お 店 行っ ちゃい ました よ ー だ
店 ?
今日 定休日 じゃない の か よ
あーら よく ご存じ だ こと
でも ねえ その 定休日 に わざわざ 出勤 して
金 ちゃん と お 勉強 会 です って
勉強 会 ?
て いう か それ は 表向き ?
琴子 は 金 ちゃん の プロポーズ に 答える ため に …
プロポーズ ?
( じんこ ) あーら 聞いて ない の ?
金 ちゃん 琴子 に プロポーズ した の よ
じんこ チャック !
んっ いい じゃない の !
誰かさん が どこぞ の 令嬢 と 政略 結婚 する こと に なって
そりゃあ 琴子 も 最初 は 落ち込んで た わ よ ―
でも ね やがて 琴子 は ―
真実 の 愛 に 気 が 付いた の !―
ねっ 理美
えっ ?
あー ! そうそう …
お 金 や 地位 や 肩書き に 目 の くらむ こと の ない ―
いちず な 思い に ね !
( じんこ ) そうそう !―
じゃあ 私 たち は これ から デート なんで
失礼 いたし ます
あ ~ 本当に 愛する 彼 と の デート って
貧乏 デート でも チョー 幸せ !
( じんこ ) ね ー !
じゃあ 失礼
さよなら
( 理美 と じんこ の 笑い声 )
( じんこ ) あー ! いい 気分 ~!
( 理美 ) じんこ ! ほれ ほれ ちょっと 足 !
( じんこ ) いい 気分 だ な ~
でも 琴子 さ …
プロポーズ に 答える なんて ひと言 も 言って なかった じゃん
あんな 適当 な こと 言っ ちゃって ほんとに よかった の ?
だって あの くらい 言って や ん なきゃ 悔しい じゃん
いい 薬 だ よ あの 冷血 男 に は
そうだ ね ! うん !
そうだ そうだ !
(2 人 ) はあ ~ すっきり した ~
( 金之助 ) はい
( 琴子 ) お ~ きれい ~
何か 肉じゃが じゃない みたい
和食 は な 舌 だけ と 違う て 目 でも 楽しむ もん な ん や
きれい に 盛りつける こと も 大切 な ん や で
( 琴子 ) うーん
では 試食 して みて ください
はい いただきまーす
エヘヘ
じゃがいも ~
ん ー
おいひい ~
こんな おいしい 肉じゃが 食べた の 初めて
せや ろ ?
高級 な 懐石 も ええ けど な
わし 誰も が 知って る 家庭 料理 ―
肉じゃが と か きんぴら と か 揚げ出し 豆腐 と か
そういう 料理 を 出す 店 を やり たい と 思って ん ねん
人 の 味覚 の ルーツ って やっぱり 家庭 や と 思う し
最高 の 素材 使って 最高 の 家庭 料理 作って
その すばらし さ を みんな に 分かって もらい たい ねん
ふーん
店 の 雰囲気 も 家庭的 に して
優しい て ―
みんな に 愛さ れる おかみさん も いて ―
2 人 で 店 切り盛り して
金 ちゃん …
♪~
なあ 琴子
この 前 の 返事 …
そろそろ 聞か して もらえ へん か ?
ごめん
もう ちょっと だけ 考え させて もらって いい かな ?
あ …
はぁ
やっぱり 忘れ られ へん の か 入江 の こと
そ … そんな こと …
ほな 何 や ねん ―
俺 …―
ずっと 琴子 の こと 見て きた のに
前 見てくれ や
あんな 冷たい やつ の どこ が ええ ねん ?
あ … 金 ちゃん
あんな やつ の こと 俺 が 忘れ さしたる
あっ やめて ! 入江 君 !!
はっ …
ごめん … 金 ちゃん
そうか
はぁ …
やっぱり … 入江 なんか
ごめん
本当に ごめん
♪~
( すすり泣き )
( 器 が 割れる 音 )
チクショー !
( 琴子 ) 私 って 最低 だ ―
金 ちゃん に あれ だけ 期待 さ せ と いて ―
思わせぶりな 態度 を とって ―
あげく に 出た 言葉 が ―
“ 入江 君 ” だ なんて …―
ずっと 考えて 悩んで ―
諦めて …―
それなのに …―
やっぱり 入江 君 なんだ
もう ―
どう したら いい か 分か ん ない よ
よう
入江 君 …
何で ?
迎え に 来た んだ よ
お前 を
迎え に 来た ?
私 を ?
( 直樹 ) あいつ と 会って た の か ?
( 琴子 ) へ ?
( 直樹 ) 池沢 だ よ
( 琴子 ) あ …―
うん … そう
( 直樹 ) プロポーズ された ん だって な
( 琴子 ) そう よ ―
私 だって まんざら じゃない んだ から
( 直樹 ) 何て 答えた んだ よ
( 琴子 ) 何て 答えた って 入江 君 に は 関係ない でしょ ―
入江 君 は ―
沙穂子 さん と 結婚 する んだ から
( 直樹 ) そうだ な
私 ―
家 出る ね
お 父さん と もう 決めた の
そして ―
金 ちゃん と 結婚 する
それ で 金 ちゃん と 一緒に ―
お 父さん の お 店 継いで …
あいつ の こと 好き な の か ?
金 ちゃん は 私 の こと …
高 1 の とき から ずーっと 好き で いて くれた んだ よ
お前 は 好き って 言わ れたら 好き に なる の か ?
何 よ 悪い ?
私 は もう 何年 も 片思い して
実らない 恋 に 疲れ ちゃった の
入江 君 は 沙穂子 さん の こと 考えて れば いい でしょ
私 の こと なんか …
お前 は 俺 が 好き な んだ よ !
俺 以外 好き に なれ ない んだ よ
何 よ 自信 たっぷり に そう よ …
そう よ そう よ ! だって しかたない じゃない !
入江 君 は 私 の こと なんか 好き じゃない んだ もん !
私 の こと なんか …
♪~
俺 以外 の 男 を 好き だ なんて 言う な
キス ―
2 回目
3 回目 だ ろ
えっ ?
もう 数え なくて いい よ
さみしく なり ます ね
また ちょくちょく 遊び に 来 ます から
( 玄関 の ドア の 開閉 音 )
( 玄関 の ドア の 開閉 音 )
あっ 帰って きた !
はっ お 兄ちゃん 琴子 ちゃん ―
どうした の ? そんな ずぶぬれ で ―
今 タオル を …
いや
その 前 に 大事 な 話 が ある
おふくろ も いて くれ
おじさん お 話 が あり ます
いや その 前 に 着替えた 方 が …
琴子 さん と …
お嬢さん と 結婚 させて ください
はあっ
入江 君 !
( 重樹 ) ほ … 本気で 言って ん の か ? 直樹
本気 だ よ
やっと 分かった んだ
俺 …
琴子 と 結婚 し たい んだ
もちろん 今 すぐ って わけじゃない
大泉 さん 側 に も 納得 して もらわ なきゃ いけない し
会社 が 持ち 直して 経営 も 軌道 に 乗って から
でも これ から ずっと 一緒に いる の は ―
こいつ 以外 考え られ なくなった
おじさん
承知 して もらえ ます か ?
あ …
直樹 君
こいつ は 何にも でき ない やつ な んです よ ?
分かって ます
頭 も 悪い し
分かって ます
( 重雄 ) 料理 も でき ない し
分かって ます
( 重雄 ) おっちょこちょい で 早合点 で 失敗 ばかり だし
分かって ます
( 重雄 ) でも ね …
明るくて ―
根性 が あって
いちず で ほんとに かわいい やつ な んです
分かって ます
( 重雄 ) 直樹 君 …
琴子 の こと … よろしく !
はい
いい な ? 琴子
はい
( 紀子 ) 琴子 ちゃ~ん ! アハハ
私 は この 日 を どんなに 待ち望んだ こと か !
(2 人 の 笑い声 )
父さん
勝手 な こと して すいません
これ で ―
大泉 会長 の パンダイ へ の 出資 も 危うく なる と 思い ます
俺 は 多大 な 損害 を …
そう だ な
これ は パンダイ に とって は 非常に 深刻 な 事態 だ
( 紀子 ) パパ そんな こと いい じゃ ない
いや !
パンダイ の 社長 と して ―
一 社員 の こんな 身勝手 な 行動 を 許す わけ に は いかん
( 琴子 ) おじ 様 …
それ でも ―
どうしても 琴子 ちゃん と 結婚 する と いう なら
条件 が ある
お前 は パンダイ を 退社 し なさい
パパ !
そして 大学 に 戻って ―
医者 に なる 勉強 を し なさい
おやじ …
隠して た つもり だった の か ?
親 を 見くびる んじゃ ない よ ~ ハハッ
父さん とっくに 分かって た よ
パンダイ は 私 が 作った 会社 だ
私 が 責任 を もって 再建 する
大泉 会長 に も 話 を つけ とく よ
だから お前 は ―
お前 の 夢 を 追いかけ なさい ―
琴子 ちゃん と 一緒に
ありがとう
ありがとう ございます
でも おじ 様 の 会社 は どう なる んです か ?
( 入江 裕樹 ( ゆうき )) 僕 が やる
僕 が パパ の 会社 を 継ぐ よ
まだ 当分 時間 は かかる から
それ まで は パパ に 頑張って もらって さ
だから お 兄ちゃん は 医者 に なって いい よ
じゃあ そう させて もらう よ
頼んだ ぞ 裕樹
よかった わ ね
よかった わ ね ~
これ で 何もかも うまく いった じゃない の ―
私 たち 本当に 家族 に なれる の ね !
( 紀子 と 重樹 の 笑い声 )
ああ 何はともあれ ほら 着替えて き なさい よ ―
よーし 乾杯 しよう 乾杯 しよう ほら 着替えて きて 乾杯 …
( 琴子 ) う おっ
フフ …
何か 怖い …
あした に なったら ―
入江 君 が 元 の 意地悪 な 入江 君 に 戻っ ちゃい そうで
( 直樹 ) じゃあ 一緒に 寝る か ?
あ … そういう 意味 じゃなくて あの …
もう …
ああ
ほんとに 私 で いい の ?
ああ
大好き だ から ね 入江 君
知って る よ
十分 ね
フフ …
でも ―
入江 君 が 私 を 好き な の は 知ら なかった
お前 に は 降参 した よ ―
大好き だ よ
♪~
( シャッター 音 )
う~ん !
いちばん 近い 大安 の 日曜日 は …
ウフフ フフッ
ねえ ママ まだ ?
もう ちょっと
( 重樹 ) 全く ―
日曜 だって の に こんなに 朝 早く から
悪かねえ アイ ちゃん
あー よか よか かまわ ん よ
ところで 奥さん どこ 行く んです ?
ウフフ …
結婚 式 !
( 琴子 たち ) えっ ?
ほら ~
( 琴子 たち ) おお っ !
まさか …
もちろん お 兄ちゃん と 琴子 ちゃん の よ
( 琴子 たち ) えーっ !?
おい 聞いて ない ぞ
だって ~
言って ない もの ウフフ
( 琴子 ) あの でも …
ほんとに 今日 結婚 式 する んです か ?
下見 と か じゃなくて ?
サプライズ プレゼント よ ~!
オホホ オホホ …
( 紀子 ) じゃ~ん !
( 一同 ) 結婚 おめでとう !!
( 拍手 )
みんな びっくり した でしょ ?
さあ みんな !
ボーッと して ない で 着替えて 着替えて ―
ほら 早く ~!
はいはい はいは~い
まさか こんな 日 が 来る なんて
夢み たい …
ああ 裕樹 君 フフッ
フェア フェザース メイク フェア ファウルズ
は ?
はぁ こんな 簡単 な 英語 も 分かんない の か よ
やっぱり 琴子 は ばか だ な
その フェア … 何とか って どういう 意味 よ
( 裕樹 ) フェア フェザース メイク フェア ファウルズ ―
美しい 羽 が 鳥 を 美しく する ―
まあ 誰でも きれい な ドレス 着たら
まとも に 見える って こと よ
何 よ 人 を ばか に して
結婚 祝い に 1 つ いい こと 教えて やる よ
ちょっと 耳 貸せ
♪~
( 足音 )
( 金之助 ) かっこええ や ん か
お前 は いつも かっこ だけ は 一人前 や な
池沢
琴子 もらう ぞ
フッ
はぁ …
ったく 琴子 は 男 を 見る目 が ない のう
琴子 を 幸せ に な
ちょっと でも 泣か したら 承知 せん ぞ
ああ
油断 は でき へん で
いつでも わし が 待機 し とる さかい
だ な
♪~
フッ
ああ ~
握手 して も うた ~
( すすり泣き )
ああ ~
( シャッター 音 )
もう ~ 機嫌 直して よ お 兄ちゃん
そう だ よ 直樹
( 紀子 と 重樹 の 笑い声 )
おお いい ねえ
かっこいい わ お 兄ちゃん
あっ !
♪~
こう も 勝手に 進め られ ちゃ 不愉快 だ けど さあ
お前 が きれい だ から
もう いい や
( 神父 ) 敬い 慰め 助けて ―
その 命 の かぎり 固く 節操 を 守り …
ご 新郎 様
どうぞ ベール を 上げて ください ―
では 誓い の キス を
ねえ 入江 君
前 から 私 の こと 好き だった んでしょ ?
は ?
何 調子 に 乗って んだ
聞いた わ
私 と 入江 君 の 2 回目 の キス の こと
裕樹 君 が こっそり 教えて くれた の
( 直樹 ) あいつ …
入江 君 だって 私 に 夢中 だった ん じゃない
( 神父 ) オーノー !―
こんな ヤマトナデシコ … 見た こと が ない !
ざまあ見ろ
参った よ
お前 に は
( 参列 者 たち の 歓声 )
( 琴子 ) こうして 私 は ―
“ 相原 琴子 ” から “ 入江 琴子 ” に なった
( 参列 者 ) おめでとう !
えっ ?
( 琴子 ) 流れ星 ? 昼間 な のに ?
人 が 流れ星 に 打た れる 可能性 は ―
百億 分 の 一
お前 と の 出会い は
それ 以上 の 奇跡 だ よ
( カメラマン ) はい 3・2・1
( シャッター 音 )