( 敏夫 ) 起き上がり の 襲撃 と 殺人 を 一緒 に する な !
( 静 信 ) 君 は アベル な の かい ? ( 正雄 ) 夏野 火葬 さ れ た の ?
( 恭子 の 悲鳴 )
( 徹 ) 《 人 は なぜ 死者 に 切り 花 を 捧げる の だ ろ う か 》 →
《 夏野 が 死 ん で 7 日 。 墓 の 代わり に こうして →
夏野 の 部屋 の 窓 辺 に 供え た 花 も 7 本 目 に なった 》
朝 の 光 を 手放し た 花
注が れ ない 雨 を 求め
覚め ない 眠り に つく
誰 か を そっと 呼ぶ 声
闇 の 楽園 は
嘘 か 夢 か
失う の は 身体 と
自分 と いう 心
その 対価 を 差し出し
何 を 得 られる の だ ろ う
この 涙 で 奪え る 程 に
命 は 脆く て 儚く て
全て に 訪れる
終わり を
「 恐怖 」 と 嘆く の か
終演 を 歌う 金 盞花
静か に 咲き誇る
憎しみ も
悲しみ も
その 根 で た くり 寄せ て
終焉 を 歌う 金 盞花
寂し さ を 潤す
注が れ ない 雨 を 求め て
覚め ない 眠り に つく
( 敏夫 ) いい ところ に 来 た 。
片付ける の を 手伝って くれ 。
( 静 信 ) あっ … 。
静 信 … 。
何 だ ? なら お前 は どう し たい ん だ ?
( 敏夫 ) どう すれ ば お 気 に 召す ? 俺 は 選択 し 決断 し た 。 →
このまま 汚染 の 拡大 を 放置 する こと は でき ない 。
だから 屍 鬼 を 狩る ! これ が 俺 の 正義 だ 。
( 静 信 ) 《 他者 を 殺害 する こと は →
どんな 大義 名分 を 掲げよ う と 正義 で は ない 》 →
《 僕 は 殺し たく ない 。 人 で あ ろ う と なか ろ う と 》
( 静 信 ) 《 「 彼 は なぜ 弟 を 殺し た の か ? 」 》 →
《 兄 は 魔 が 差し た の だ 》
《 そう 。 意味 の ない 衝動 に 駆られ た だけ 》
《 「 殺意 の ない 殺人 は 事故 で あって … 」 》
( 静 信 ) 《 「 殺意 の ない 殺人 は … 」 》
《 「 理由 の ない 殺意 は ない 」 》 →
《 だが 僕 に 殺意 は なかった 》 →
《 誰 も 殺し たく など ない 》 →
《 本当 に 理由 など なかった ん だ 》
( 敏夫 ) すま ん ね みんな 。 昼間 から 呼び出し て 。
( 広沢 ) いえ 。 昼 が いい と 言いだし た の は わたし です から 。
( 敏夫 ) そうだ な 。 だが 何で 昼 な ん だ ? →
こうして 集まる なら 夜 の 方 が 自然 だ ろ 。
( 広沢 ) いや 別に 意味 は ない けど 。
( 敏夫 ) 俺 は また 夜 に 外出 する の が 嫌 な の か と 思った よ 。
夜 に は 人通り が 絶える から な 。 うち の 病院 も →
いつも なら 時間 ぎりぎり まで 患者 が 来 て いた ん だ が →
今 で は 日 が 落ちる と 誰 も 来 ない 。
( 敏夫 ) 村 で は 今 も 死 が 続 い て いる 。 →
いや 続 い て いる どころ じゃ ない 。 →
今 で は もう 毎日 の よう に 人 が 死 ん で いる 。 →
当たり前 の よう に 。
あんた ら 伊藤 の 郁美 さん が やら かし た 騒ぎ を 覚え て いる か 。 →
あれ を ただ の イカレ た ばあさん の ざ れ 言 だ と 思って いる の か ?
( 敏夫 ) 俺 は 郁美 さん が 言って い た こと を 証明 できる 。 →
何なら 安 森 の 奈緒 さん の 墓 を 暴 こ う 。 →
中 に 死体 は ない はず だ 。 ( 広沢 ) やめ て くれ バカバカしい !
( 広沢 ) そんな わけ ない じゃ ない か !
( ドア の 開閉 音 )
( 敏夫 ) 頼む 。 手 を 貸し て ほしい ん だ 。 →
俺 1 人 で は これ を 食い止め られ ない 。
( 田代 ) 疲れ てる ん だ よ お前 。
妄想 と まで は 言わ ん が 墓 に 死体 が ない と か … 。
正 さん … 。
そう いや 人骨 って の は 肺病 に 効く って 説 が あって →
昔 は よく 盗掘 さ れ たら し い な 。
( 長谷川 ) ああ 。 アメリカ でも あり まし た ね 。 →
墓場 から 死体 を 掘り起こし て どう こういう 映画 の →
モデル に なった 事件 。 ( 田代 ) そうそう ! →
何て いう 映画 だ っけ ? ( 敏夫 ) それ が あんた ら の 答え か 。
( 長谷川 ) 敏夫 君 が 確信 と 覚悟 を 持って いる こと は 分かる 。 →
だが 俺 たち は 近代 合理 主義 の 洗礼 を 受け て いる ん だ 。 →
洗脳 と 言って も いい 。
この世 に 化け物 や 魔法 は 存在 し ない 。
それ が 俺 たち の 世界 に 対 する 認識 な ん だ 。
いまさら それ を 覆す こと は でき ない 。
( 長谷川 ) これ は 伝染 病 な ん だ ろ う ? →
その うち 外 の 誰 か が 怪しむ はず だ 。 →
そう なれ ば 全て が 公 に なり 事態 も 収まる だ ろ う よ 。
あ … 。
( 隆文 ) あら ま ! こりゃ 若 先生 。
( 敏夫 ) 隆文 さん 。 どうして あんた が ?
い や ぁ 留守番 の バイト を 頼ま れ まし て ねぇ 。
昼間 は ここ 誰 も い ない んで 。 ( 敏夫 ) い ない ?
何でも 所長 が 体 悪く し て 夜 しか 出 られ ない らしい の です よ 。 →
それ で ほか の 職員 も 合わせる 形 で 夜 に 開ける よう に なった と か 。 →
書類 と か なら 俺 が 預かって おき ます よ 。 →
でも 急ぎ でし たら →
夕方 7 時 くらい に 来 て くだされ ば 職員 が いる んで 。
( 兄 ) 日 が 暮れ たら 母ちゃん に 怒ら れ ん ぞ ー !
( 妹 ) 待って よ ー !
あ … 。
( 敏夫 ) 《 あり ふれた 役場 の 風景 だ 。 これ が 夜 で なけ れ ば 》
( 敏夫 ) すま ん が 保険 係 は いる か ね ?
( 職員 ) いま せ ん よ 。 失踪 し まし て ね 。 →
それ きり 後任 が い ない ん です よ 。 何 か ご用 で ?
( 敏夫 ) 9 月 から こちら の 死亡 者 数 が 知り たい ん だ 。
死亡 者 ? ゼロ です が 。
えっ … 。 ゼロ ? ( 職員 ) はい 。
( 敏夫 ) 《 こいつ ら みんな … 》
そんな ペテン が 通用 する か !
村 の 外 の 国立 病院 で 死亡 し た 者 も いる ん だ 。
例えば 安 森 幹 康 は →
9 月 に 息子 の 進 と 一緒 に 死亡 が 確認 さ れ て いる 。 →
何 だったら 国立 で みとった 医者 を 連れ て こよ う か ! ?
あぁ 安 森 工務 店 の 人 たち ね 。
あの 人 たち は 死ぬ 前 に 引っ越し て ます よ 。 →
8 月 末 に 転出 届 が 出 て い ます 。
つまり 9 月 の 死亡 の とき に は 村人 じゃ ない 。
だから 村 の 死亡 者 は ゼロ な ん です よ 。
( 静 信 ) 《 全員 死ぬ 直前 に 退職 し て いる 》 →
《 いや 死亡 だけ じゃ なく て 突然 の 引っ越し が 多い ん だ 》
《 近所 に 何 の 連絡 も なく 》 ( 敏夫 ) 《 いいかげん に しろ ! ! 》 →
《 好き で 出 て いった 連中 な ん か 知った こと か ! ! 》 →
《 例の 疫病 は 勢い が ついて る ん だ ! 》
何もかも 村 の 死 を 隠ぺい する ため だった の か 。
納得 さ れ まし た か ?
分から ん な 。 死亡 診断 書 は 俺 も 書 い てる 。 →
これ は その 控え だ 。 これ を 村 の 外 に 持っていき →
ここ の 戸籍 と 合わ ない と 大騒ぎ を する 。
そう すれ ば 公 に 捜査 さ れ … 。 ( 千鶴 ) 駄目 よ 。 →
せ ん せ … 。
( 千鶴 ) おとなしく し た 方 が 身 の ため 。 →
わたし 美食 家 です の 。 そして 先生 は わたし の →
え も の 。
でも 先生 が 困った こと を する よう なら … 。 →
今 すぐ そい つ ら の 餌 と なり果てる でしょ う よ 。 →
わたし は 桐 敷 千鶴 。
若く て 生き の いい 人間 しか 食さ ない 屍 鬼 。 →
近い うち に お宅 へ 伺い ます わ 。 尾崎 の 若 先生 。
俺 の 時間 も 残り 少ない と いう わけ か 。
( 辰巳 ) それ で どう だ ? →
この 葬儀 社 は 問題 なく やって いけ そう か ?
( 速見 ) もちろん です と も 。 結構 繁盛 し て ます よ ! →
ほら 人 が いっぱい 死 ん で て 寺 だけ じゃ 間に合わ ない から →
3 日 前 に も 田中 良和 さん の 葬儀 を →
パーフェクト かつ 華やか に 大 開催 し て やり まし た よ ! →
ホイ ホイ ホイ ホイ !
華やか ? ( 速見 ) ホーイ ホホホ ホーイ !
本当 に 大丈夫 な の か ? やはり 今日 の 葬儀 見 させ て もらう ぞ 。
了解 ! で は この チョコレート バー でも 食べ ながら →
見 て て ください まっ せ ー 。 ( 辰巳 ) いら ん 。
( 会場 の BGM )
( 浪江 ) な … 何 だ ろ う ね ? これ は 。
( 速見 ) 篤 さん は 心 優しく … 。
まったく 夜 から の 葬式 だ なんて 。 しかも こんな みっともない … 。
( 富雄 ) 好き で 頼 ん だ わけ じゃ ない 。 寺 の 手 が 空 い て なかった から →
ここ に する しか なかった ん だ ろ が 。
( 速見 ) さて 会場 の 皆さま 。 →
それでは いよいよ お 別れ で ござい ま ー す !
( 会場 の BGM )
( 速見 ) それ で は 皆さん サヨウナラ ~ !
( 花火 の 音 )
篤 ぃぃ ぃ … 。
( 速見 ) ここ は 会場 の 裏 祭壇 の 下 に なり ます 。 →
すっぽん で 降り て き た 棺 は ここ で 空 の 棺 と すり替え られ →
親族 に 渡さ れ この 後 は 彼ら に よって 棺 を こし に 載せ て →
山 の 墓地 へ と 運ぶ こと に なる の です 。 →
そして 中 の 死体 は しばらく ここ に 置か れ て →
起き上がる の を 確認 する と いう わけ です 。
これ で 仲間 を 掘り返す 手間 が 省 ける な 。
( 速見 ) その ため の 外 場 葬儀 社 です から 。
今日 に も 起き上がる な 。
おお ! さすが は 人 狼 。 鼻 が 利く なぁ 。
では 早速 山 入 に 移し ま しょ う 。
( 辰巳 ) それ から 葬儀 は もう 少し 地味 に しろ 。 →
葬儀 は 残さ れ た 者 たち の ため の もの 。 →
彼ら は 感傷 に 浸れ る 場所 を 欲 し て いる の だ 。
はい 了解 ! 辰巳 さん が そう 言う なら あした から でも 。
( 律子 ) えっ ! わたし たち →
通夜 の 手伝い し なく て いい ん です か ?
わたしら 近所 の 女 衆 で やる から さ 悪い けど 帳面 やら 事務 を お 願い 。
じゃ 忙しい から 。 ねっ 頼 ん だ わ よ 。
どうして … 。 ( 清美 ) 伝染 病 よ 。
わたし たち 病院 で 働 い てる から 一 番 危ない じゃ ない ? →
そんな 人間 が 食べ物 を 作って 人 に 振る舞う なんて →
とんでもない ! って こと よ 。
そう です か … 。
( 孝江 ) まあ あなた たち !
( 孝江 ) こんな ところ で 何 を のんき に !
あなた たち が 率先 し て 働 い て くれ ない と ! →
下々 の 者 に 好き勝手 に 家 の 中 を いじら れ たく あり ませ ん から ねぇ 。
さっ 早く お 勝手 に 行って ちょうだい !
で … でも … 。
( 聡子 ) わたし たち 別に 使用人 じゃ ない わ ! !
誰 が お 給金 を 払って いる か 忘れ て いる よう ね 。
( 聡子 ) 病院 から 看護 師 と して 報酬 は 頂 い て いる わ !
( やす よ ) 聡 ちゃん 。
でも … 。 決して 使用人 じゃ ない 。
何 です か その 言い 方 は ! ! 敏夫 に 言って 辞め させ ます よ ! !
そう すれ ば ! ? 看護 師 を 欲しがって る 病院 なんて →
いくら で も ある ん だ から !
先生 だって 雪 ちゃん が い なく なった こと を 心配 も し ない 。
そんな ん だったら わたし もう いい か な って 。 わたし … 。
( 聡子 の 泣き声 )
( 田 茂 ) おお いらっしゃい まし た か 若 御 院 。 どうぞ こちら へ 。
( 敏夫 ) 何 だ ? ( 清美 ) 病院 あて に 来 まし た 。
( 敏夫 ) 井崎 君 が … 。 なぜ ?
( 清美 ) 雪 ちゃん の こと が こたえ た ん です よ 。
どういう こと だ ? ( 清美 ) 覚え て らっしゃら ない 。
雪 ちゃん が … 。 こんな 大変 な 状況 の 中 休日 返上 で 一緒 に →
頑張って くれ て い た 看護 師 が 行方 不明 に なった って いう とき … 。
( 聡子 ) 《 先生 ! 雪 ちゃん 行方 不明 な ん です 》
( 清美 ) 「 そう か 」 は ない ん じゃ ない です か ! ?
( 敏夫 ) そう か … 。 いや すま なかった 。
わたし に 謝ら れ て も 困り ます 。
そりゃ あ 奥さん の こと が あって 大変 だった の は 分かって ます よ 。 →
でも 聡 ちゃん に し たら 先生 が 少しも 気 に し て ない ふう な の が →
我慢 でき なかった ん だ と 思い ます 。 →
もう いまさら 先生 を 責め て も しょうがない です けど 。
( 敏夫 ) 俺 の せい な の か … 。
そう 言った つもり です けど そう 聞こえ ませ ん でし た か ? →
わたし も 納得 は し て い ませ ん !
先生 に は 同情 し ます から →
それ で 辞める の どう の と 言う 気 は あり ませ ん けど !
くっ … !
( 田 茂 ) 確かに 村 で は 死ぬ 者 が 続 い て おる 。 →
むしろ だ から こそ ことし の 霜月 神楽 は →
盛大 厳粛 に 執り行 お う で は ない か !
( 小池 ) 田 茂 に 賛成 だ 。 こういう とき こそ →
神事 を しっかり と 行って 厄災 を はらう べき だ 。
( 宗 秀 ) っ ちゅう こと は 五 座 十 三 番 全部 やる の か ?
( 竹村 ) 覚え とる 者 が おる か ? ( 小池 ) 確か うち の ばあさん が →
『 三輪 』 と 『 式 三 番 』 を 覚え とる と 言って い た が 。
( 宗 秀 ) じゃあ お前 ん と この せがれ が 覚え て くれりゃ あ →
話 が 早い なぁ 。
でも 小池 の せがれ じゃ ぬ ぼ っと し 過ぎ て →
見栄え が 悪い の と 違う か ? ( 小池 ) こら 何 を 言う か ぁ 。
( 田 茂 ) ほか は どう する ?
( 宗 秀 ) 確か 北田 の ばあさん も 何 か 知 っと る 言って た ぞ 。
( 敏夫 ) 《 この 人 たち は 誰 も 気付 い て い ない 》
《 いや 気付く 気 が ない ん だ 》
( ドア の 開く 音 )
( 武藤 ) あぁ お かえり なさい 。
ああ 。 なあ 武藤 さん 。 ( 武藤 ) はい 。
あんた は そこ に い て →
夏 以来 何 が 起こって き た か 見て い た よ な ?
は あ 。
村 は 鬼 に 侵略 さ れ てる … 。 って の は どう だい ?
ご 冗談 を 。
フッ 。 そう か 。
( 足音 )
俺 を 殺し に 来 た か 。
( 敏夫 ) 君 は 確か … 。
結城 夏野 君 だった ね 。
( 夏野 ) 先生 。 聞き たい こと が ある 。
何 か な ?
今 でも … 清水 恵 は 死 ん だ と 思って いる の か ?
( やす よ ) 《 工房 で 誰 か 亡くなった らしい の よ 》
ああ 死 ん だ よ 。 まだ 動 い て いる が な 。
あんた は 1 人 じゃ ない 。
闇 に 紛れ て
息 を 殺す
闇 を まとって
ふっと 微笑む
気のせい さ
お前 など 誰 も 知る はず ない
月 だけ が
見つめ て いる
ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う
ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て
ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う
ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て