21. 大寒 小寒 - 土田 耕平
だいかん|しょうかん|つちた|こうへい
great cold|slight cold|Tsuchida|Kouhei Tsuchida
21. Große Kälte und kleine Kälte - Kohei Tsuchida
21. big chill little chill - TSUCHIDA Kohei
21. frío grande y frío pequeño - Kohei Tsuchida
21. Grand froid et petit froid - Kohei Tsuchida
21. 대한소한 - 토치다 고헤이
21. Большой холод и маленький холод - Кохэй Цутида
21. 大冷,小冷-土田航平
大寒 小寒 - 土田 耕平
だいかん|しょうかん|つちた|こうへい
great cold|minor cold||Kouhei Tsuchida
Dahan Xiaohan-Kohei Tsuchida
お ほ 寒 こ 寒 ・・
||さむ||さむ
|oh|||
Hot, cold, cold, cold, cold...
山 から 小僧 が ・・
やま||こぞう|
||boy|
A kid from the mountain ...
とんで くる ……・・
will come|
It's coming. .........
冬 の さむい 晩 の こと 、 三郎 は おばあ さん と 二 人 で 、 奥 座敷 の こたつ に あた つて ゐま した 。
ふゆ|||ばん|||さぶろう|||||ふた|じん||おく|ざしき|||||||
||cold||||Saburo||||||||inner|||kotatsu||sitting by||sitting|
It was a breezy winter evening, and Saburo and his grandmother were sitting on the kotatsu in the living room.
庭 の 竹やぶ が 、 とき /″\ 風 に 吹き たわむ 音 が して 、 その あと は 、 しんと しづか に なります 。
にわ||たけやぶ|||かぜ||ふき||おと|||||||しずか||なり ます
||bamboo grove||||||bends|||||||quietly|quietly||
The bamboo grove in the garden sometimes sounds like it is being deflected by the wind, and then it becomes quiet and still.
そして 、 遠く の 方 で 犬 の 吠える 声 が きこえたり する の も 、 山家 の 冬 らしい 気 もち で あります 。
|とおく||かた||いぬ||ほえる|こえ||||||やまが||ふゆ||き|||あり ます
|||||||barking|||could be heard||||mountain home|||||feeling||
The sound of dogs barking in the distance is also a wintery mood in the mountain households.
大寒 小寒 の 唄 は 、 さ う いふ さむい 晩 など 、 お ばあさん が 口癖 の や うに 、 三郎 に うた つて きかせる 唄 で ありました 。
だいかん|しょうかん||うた||||||ばん|||||くちぐせ||||さぶろう|||||うた||あり ました
|||song|||||cold||||grandmother||catchphrase|||like|||song||let him hear|song||
・・
「 おばあ さん 、 小僧 が なぜ 山 から とんで くる の 。」
||こぞう|||やま||||
||young boy|||||jumping||
"Grandma, why did the little boy come from the mountain?"
・・
三郎 は 、 今 また おばあ さん が 口ずさんで ゐる の を きいて 、 かう 云 つて たづ ねました 。
さぶろう||いま|||||くちずさんで||||||うん|||ね ました
|||||||humming|||||like this|||called|slept
When Saburo heard his grandmother humming again, he asked her about it.
・・
「 山 は 寒う な つて も 、 こたつ も なければ お家 も ない 。
やま||さむう|||||||おいえ||
||cold|||||||||
"When it gets cold in the mountains, there are no kotatsu (a table over the fireplace) and no houses.
それ で とんで くる のだ ら うよ 。」
||will fly|||probably|probably
I guess it will come flying like that.
・・
…
おばあ さん は 手 に 縫物 の 針 を はこび ながら 答 へました 。
|||て||ぬいもの||はり||||こたえ|へ ました
|||||sewing||needle||carried|||answered
The old lady answered while carrying a needle for sewing in her hand.
・・
「 小僧 つて お 寺 の 小僧 かい 。」
こぞう|||てら||こぞう|
young monk|||||young monk|question particle
"A monk is a monk in a temple."
・・
「 何 に お 寺 な もの か 、 お 寺 なら お 師匠 さま が ゐて 可愛が つて 下さる だ ら う が 、 山 の 小僧 は 木 の 股 から 生れた から 、 お 父さん も お母さん も なし の 一 人 ぽつ ちよ 。」
なん|||てら|||||てら|||ししょう||||かわいが||くださる|||||やま||こぞう||き||また||うまれた|||とうさん||お かあさん||||ひと|じん||
|||||||||||master|||sitting|taking care of|||||||||young boy||||fork||was born|||||||none||||alone|just
If it were a temple, the master would be lovely and adorable, but the mountain boy was born out of a tree, so he's all alone without a father or mother.
・・
「 お ばあさん も ない の 。」
|grandmother|||
I don't even have a grandmother.
・・
「 ああ 、 お ばあさん も ない のだ よ 。」
||grandmother||||
Oh, and grandma's not here either.
・・
「 それ で 小僧 は 着物 を きて ゐる の かい 。」
||こぞう||きもの|||||
||young boy|||||||
"That's why the little boy wears a kimono."
・・
...
「 着物 くら ゐ は きて ゐる だ ら うよ 。」
きもの||||||||
|probably|probably|||||probably|
"I'm wearing a kimono, that's all."
・・
「 誰 が 着物 を 縫 つて くれる の 。」
だれ||きもの||ぬ|||
||||sews||will sew|
"Who will sew the kimono."
・・
「 そんな こと は 知ら ない よ 。
|||しら||
I don't know anything about that.
大方 木 の 葉 の 衣 か なんだら う 。」
おおかた|き||は||ころも|||
|||||clothes||something|
I wonder if it's a garment of leaves of a tree. "
・・
木 の 葉 の 衣 つて どんな もの だ ら う と 、 三郎 は 想像 して みた が 、 はつ きり 思 ひ 浮べる こと は できません でした 。
き||は||ころも||||||||さぶろう||そうぞう||||||おも||うかべる|||でき ませ ん|
|||||||||probably|||||imagination||||suddenly||||could not visualize||||
Saburo imagined what kind of clothing the leaves of a tree would be, but he couldn't think of it.
・・
「 小僧 は 山 から とんで きて どう する の 。」
こぞう||やま||||||
||||jumped||||
"What does a boy do when he comes from the mountains?"
・・
「 人 の 家 の 門 へ 立つ て 、 モシ /\ 火 に あたら せて おく んな さい 、 なんて 云 ふ の だ ら う 。」
じん||いえ||もん||たつ|||ひ||||||||うん|||||
||||||||saying|||to warm|||please|||||||quotation particle|
"What do they say, 'Stand at the gate of a man's house and let him light the fire for you'?"
・・
「 そして 、 火 に あたら せて も らふ の 。」
|ひ||||||
||||||to warm|
"And then I'm going to let the fire burn."
・・
「 い ゝ え 、 火 に なん ぞ あたれ ない 。」
|||ひ|||||
||||||emphasis particle|hit|
No, you can't stand the fire.
・・
「 なぜ 。」
Why?
・・
「 小僧 の いふ こと は 、 誰 の 耳 に も きこえ ない のだ から 、 いくら 大きな 声 を した とて 聞え ない 。
こぞう|||||だれ||みみ||||||||おおきな|こえ||||きこえ|
young boy||says||||||||will be heard||||how much|||||after all||
The boy's words are inaudible to all, so no matter how loud he speaks, they will not be heard.
もし かすれば 、 今 じぶん お家 の 門 へ きて 立つ て ゐる かも 知れ ない 。」
||いま||おいえ||もん|||たつ||||しれ|
|if it were to lend||I|||||||||||
If I had, I might be standing at your door right now.
・・
三郎 は そんな 話 を きく と 、 気味 が わるく なりました 。
さぶろう|||はなし||||きみ|||なり ました
|||||to hear||feeling||unpleasant|
Saburo felt bad when he heard such a story.
頭 を 青く すり こく つた 、 赤 はだし の 小僧 の すがた が 、 目 に 見える や うに お も ひました 。
あたま||あおく||||あか|||こぞう||||め||みえる|||||ひ ました
|||rubbed|to rub|||barefoot||young boy||appearance|||||||also||
I was visibly surprised to see a bare-chested boy with his head rubbed blue.
おばあ さん は 、 やさしい 笑み を 浮かべて 、・・
||||えみ||うかべて
||||smile||floating
She smiled kindly and...
「 どれ /\、 一 つ お 餅 でも やいて たべよう 。」
|ひと|||もち|||
||||rice cake||grilled|let's eat
Let's make a rice cake and eat it.
・・
と 云 ひ ながら 、 縫物 を わき へ よせました 。
|うん|||ぬいもの||||よせ ました
||||sewing||side||moved closer
He put his stitches aside and said, "I'm sorry, I'm sorry.
そして 、 こたつ の 火 を つぎたして 、 その 上 へ 金網 を わたしました 。
|||ひ||||うえ||かなあみ||わたし ました
|||||added||||wire netting||passed over
Then he continued to build a fire for the kotatsu and placed a wire netting over it.
お 餅 の やける か うば しい 匂 ひ を かぐ と 、 三郎 は もう 小僧 の こと など 忘れて しま ひました 。
|もち||||||にお|||||さぶろう|||こぞう||||わすれて||ひ ました
|||burning||delicious|already||||smell|||||||||||forgot
When Saburo smelled the delicious smell of the baked rice cakes, he forgot all about the boy.
・・
--
三郎 は 大人 に な つて 、 東京 の にぎやかな 町 なか で くらす や う に なりました 。
さぶろう||おとな||||とうきょう|||まち|||||||なり ました
||||||||lively|town|town||live||||
Saburo became an adult and lived in the middle of the bustling city of Tokyo.
けれど 毎年 冬 に なる と 、 大寒 小寒 の 唄 を おも ひ 出し 、 おばあ さん を 思 ひ 出し する ので ありました 。
|まいとし|ふゆ||||だいかん|しょうかん||うた||||だし||||おも||だし|||あり ました
|||||||||song|||||||||||||
But every winter, I would recall the songs of the "big cold and the little cold" and think of my grandmother.
幼い 三郎 が かさね /″\ 問 ひた づ ねる の を 、 少しも うるさがる こと なく 、 しんせつに 答 へて 下された おばあ さん を 、 どんなに か なつかしく お も ひました こと で せ う 。
おさない|さぶろう|||とい||||||すこしも|||||こたえ||くだされた|||||||||ひ ました||||
young|||repeated||repeatedly||to inquire|||not at all|become annoyed|||kindly||by|was given||||||nostalgically|||felt nostalgic||||
I can only imagine how much he must have missed his grandmother, who answered the questions that the young Saburo asked her without being in any way annoying or annoying.