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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 32. 飴だま - 新美南吉

32. 飴 だ ま - 新美 南 吉

飴 だ ま - 新美 南 吉

春 の あたたかい 日 の こと 、 わたし 舟 に ふた り の 小さな 子ども を つれた 女 の 旅人 が のりました 。 舟 が 出よう と する と 、

「 お オ い 、 ちょっと まって くれ 。」

と 、 どて の 向こう から 手 を ふり ながら 、 さむらい が ひとり 走って きて 、 舟 に とびこみました 。 舟 は 出ました 。 さむらい は 舟 の まん 中 に どっかり すわって いました 。 ぽかぽか あたたかい ので 、 その うち に いねむり を はじめました 。 黒い ひげ を はやして 、 つよ そうな さむらい が 、 こっくりこっく りする ので 、 子ども たち は おかしくて 、 ふ ふ ふと 笑いました 。 お母さん は 口 に 指 を あてて 、 「 だまって おい で 。」

と いいました 。 さむらい が おこって はたいへんだ から です 。 子ども たち は だまりました 。 しばらく する と ひと り の 子ども が 、

「 かあちゃん 、 飴 だ ま ちょうだい 。」

と 手 を さしだしました 。 する と 、 もう ひと り の 子ども も 、

「 かあちゃん 、 あたし に も 。」

と いいました 。 お母さん は ふところ から 、 紙 の ふくろ を とりだしました 。 ところが 、 飴 だ ま は もう 一 つ しか ありません でした 。 「 あたし に ちょうだい 。」

「 あたし に ちょうだい 。」

ふた り の 子ども は 、 りょうほう から せがみました 。 飴 だ ま は 一 つ しか ない ので 、 お母さん は こまって しまいました 。 「 いい 子 たち だ から 待って おいで 、 向こう へ ついたら 買って あげる から ね 。」

と いって きかせて も 、 子ども たち は 、 ちょうだい よ オ 、 ちょうだい よ オ 、 と だ だ を こねました 。 いねむり を して いた はずの さむらい は 、 ぱっちり 眼 を あけて 、 子ども たち が せがむ の を みて いました 。 お母さん は おどろきました 。 いねむり を じゃま さ れた ので 、 この お さむらい は おこって いる の に ちがいない 、 と 思いました 。 「 おとなしく して おい で 。」

と 、 お母さん は 子ども たち を なだめました 。 けれど 子ども たち は ききません でした 。 する と さむらい が 、 すらりと 刀 を ぬいて 、 お母さん と 子ども たち の まえ に やってきました 。 お母さん は まっさおに なって 、 子ども たち を かばいました 。 いねむり の じゃま を した 子ども たち を 、 さむらい が きりころす と 思った のです 。

「 飴 だ ま を 出せ 。」

と さむらい は いいました 。 お母さん は おそるおそる 飴 だ ま を さしだしました 。 さむらい は それ を 舟 の へり に のせ 、 刀 で ぱ ちん と 二 つ に わりました 。 そして 、

「 そ オ れ 。」

と ふた り の 子ども に わけて やりました 。 それ から 、 また もと の ところ に かえって 、 こっく りこっく り ねむり はじめました 。

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32. 飴 だ ま - 新美 南 吉 あめ|||にいみ|みなみ|きち |is||new beauty|| 32. amedama - Nankichi Niimi 32. candy ball - NANKICHI NIIMI 32. amedama - Nankichi Niimi 32. amedama - Nankichi Niimi 32. 사탕 - 신미 난키치 32. amedama - Nankichi Niimi 32. amedama - Nankichi Niimi 32. 糖果球 - 新见南吉 32. 糖果球 - 新見南吉

飴 だ ま - 新美 南 吉 あめ|||にいみ|みなみ|きち candy|is|||| Candy Dama-Nankichi Niimi

春 の あたたかい 日 の こと 、 わたし 舟 に ふた り の 小さな 子ども を つれた 女 の 旅人 が のりました 。 はる|||ひ||||ふね|||||ちいさな|こども|||おんな||たびびと||のり ました ||warm|||||||two||||||brought|||traveler||boarded On a warm spring day, a woman traveler with a small child boarded my boat. 舟 が 出よう と する と 、 ふね||でよう||| ||will depart||| When the boat was about to leave,

「 お オ い 、 ちょっと まって くれ 。」 honorific prefix|oh||||please Hey, hey, wait a minute.

と 、 どて の 向こう から 手 を ふり ながら 、 さむらい が ひとり 走って きて 、 舟 に とびこみました 。 |||むこう||て|||||||はしって||ふね||とびこみ ました |embankment||||||||samurai|||||||jumped Then, waving his hands from the other side of the street, a Samurai came running toward the boat and jumped into it. 舟 は 出ました 。 ふね||で ました ||departed The boat left. さむらい は 舟 の まん 中 に どっかり すわって いました 。 ||ふね|||なか||||い ました |||||||heavily|sitting heavily| The samurai was sitting in the middle of the boat. ぽかぽか あたたかい ので 、 その うち に いねむり を はじめました 。 ||||||||はじめ ました warm||||||dozing||started dozing off It was warm and warm, so I started to sleep in it. 黒い ひげ を はやして 、 つよ そうな さむらい が 、 こっくりこっく りする ので 、 子ども たち は おかしくて 、 ふ ふ ふと 笑いました 。 くろい|||||そう な|||こ っく りこ っく|||こども|||||||わらい ました |beard||growing|strong||||nodding off|to nod|||||funny||||laughed The children were amused and giggled as the samurai with a black beard and a tough appearance walked over and over. お母さん は 口 に 指 を あてて 、 お かあさん||くち||ゆび|| ||||finger||touched The mother put her finger to her mouth, 「 だまって おい で 。」 quietly|| "Shut up and stay out of it."

と いいました 。 |いい ました |said I said, "I'm sorry, I'm not sure. さむらい が おこって はたいへんだ から です 。 |||は たいへんだ|| ||angry|it's serious|| The reason for this is that it is very dangerous for a samurai to get up and do anything. 子ども たち は だまりました 。 こども|||だまり ました |||fell silent The children were silent. しばらく する と ひと り の 子ども が 、 ||||||こども| for a while||||||| After a while, a child came along,

「 かあちゃん 、 飴 だ ま ちょうだい 。」 |あめ||| mom||||please give Mommy, give me some candy.

と 手 を さしだしました 。 |て||さしだし ました |||extended する と 、 もう ひと り の 子ども も 、 ||||||こども| And then there was another child,

「 かあちゃん 、 あたし に も 。」 "Mommy, give me one too."

と いいました 。 |いい ました I said, "I'm sorry, I'm not sure. お母さん は ふところ から 、 紙 の ふくろ を とりだしました 。 お かあさん||||かみ||||とりだし ました mother||pocket||paper||bag||took out ところが 、 飴 だ ま は もう 一 つ しか ありません でした 。 |あめ|||||ひと|||あり ませ ん| but|||||||||| However, there was only one more candy ball. 「 あたし に ちょうだい 。」 Take one for me.

「 あたし に ちょうだい 。」 Take one for me.

ふた り の 子ども は 、 りょうほう から せがみました 。 |||こども||||せがみ ました |||||both||climbed The two children begged from both sides. 飴 だ ま は 一 つ しか ない ので 、 お母さん は こまって しまいました 。 あめ||||ひと|||||お かあさん|||しまい ました |||||||||||troubled| There is only one candy, so the mother was troubled. 「 いい 子 たち だ から 待って おいで 、 向こう へ ついたら 買って あげる から ね 。」 |こ||||まって||むこう|||かって||| ||||||come|over there||arrive at|||| "Because you are good children, wait a bit. Once we arrive over there, I will buy it for you."

と いって きかせて も 、 子ども たち は 、 ちょうだい よ オ 、 ちょうだい よ オ 、 と だ だ を こねました 。 ||||こども|||||||||||||こね ました ||let me hear|||||please|||||||dough|||stamped When I let them try, they kept asking for more, more, more. いねむり を して いた はずの さむらい は 、 ぱっちり 眼 を あけて 、 子ども たち が せがむ の を みて いました 。 |||||||ぱっ ちり|がん|||こども|||||||い ました nap|||||||wide open|||||||begging|||| Samurais, who should have been sleeping, opened his eyes wide and watched as the children cried out to him. お母さん は おどろきました 。 お かあさん||おどろき ました ||was surprised The mother was surprised. いねむり を じゃま さ れた ので 、 この お さむらい は おこって いる の に ちがいない 、 と 思いました 。 ||||||||||||||||おもい ました ||interrupted|||||||||||||| I was disturbed by the sleepiness, so I thought that this osamurai must have happened. 「 おとなしく して おい で 。」 quietly||| "Behave yourselves now."

と 、 お母さん は 子ども たち を なだめました 。 |お かあさん||こども|||なだめ ました ||||||calmed down With that, the mother calmed the children. けれど 子ども たち は ききません でした 。 |こども|||きき ませ ん| ||||did not listen| But the children did not listen. する と さむらい が 、 すらりと 刀 を ぬいて 、 お母さん と 子ども たち の まえ に やってきました 。 |||||かたな|||お かあさん||こども|||||やってき ました ||||smoothly|||pulled out|||||||| Then the samurai swiftly drew his sword and came before the mother and her children. お母さん は まっさおに なって 、 子ども たち を かばいました 。 お かあさん||||こども|||かばい ました ||bright blue|turned||||protected The mother turned pale and shielded her children. いねむり の じゃま を した 子ども たち を 、 さむらい が きりころす と 思った のです 。 |||||こども|||||||おもった| ||||||||||would kill||| The samurai thought he would kill the children who had disturbed his nap.

「 飴 だ ま を 出せ 。」 あめ||||だせ candy|is|||give me Bring out the candy.

と さむらい は いいました 。 |||いい ました The samurai said. お母さん は おそるおそる 飴 だ ま を さしだしました 。 お かあさん|||あめ||||さしだし ました ||timidly|||||offered The mother cautiously handed over a candy. さむらい は それ を 舟 の へり に のせ 、 刀 で ぱ ちん と 二 つ に わりました 。 ||||ふね|||||かたな|||||ふた|||わり ました ||||||edge||||||with a snap|||||broke apart The samurai placed it on the edge of the boat and split it into two with his sword. そして 、 And ,

「 そ オ れ 。」

と ふた り の 子ども に わけて やりました 。 ||||こども|||やり ました I divided it and gave it to the two children. それ から 、 また もと の ところ に かえって 、 こっく りこっく り ねむり はじめました 。 ||||||||こ っく|りこ っく|||はじめ ました |||||||returned|nodding|sleeping||sleep| After that, I returned to where I was and began to doze off.