×
We gebruiken cookies om LingQ beter te maken. Als u de website bezoekt, gaat u akkoord met onze
cookiebeleid.
三姉妹探偵団 2 キャンパス篇, 三姉妹探偵団(2) Chapter 07 (1)
三姉妹探偵団(2) Chapter 07 (1)
7 意外な 顔 「 あ 、 綾子 さん !
」 大学 の キャンパス へ 入って 行く と 、 とたん に 呼びかけ られた 。
石原 茂子 が 、 小走り に やって 来る 。
もう 、 昼 休み に なる ところ で 、 早 目 に 講義 の 終った らしい 学生 たち が 、 ポツポツ と 出て 来て いた 。
「 大変だった わ ねえ !
新聞 で 見て 、 びっくり しちゃ った 。
けが 、 ない の ?
」 「 私 、 運 が 強い の 」 と 、 綾子 は 微笑んだ 。
「 それ に 心強い ボディガード も いる し ね 」 「 失礼 ね !
」 夕 里子 は 姉 を にらんだ 。
好きで ついて 来 てる わけじゃ ない の よ !
「 夕 里子 さん 、 学校 の 方 は いい の ?
何なら 、 彼 に 綾子 さん を ガード して もらう わ よ 」 「 大丈夫です 。
それ に 私 、 こういう こと 、 割と 嫌い じゃ ない んです もの 」 だ から 、 もて ない の よ ね 、 と 心 の 中 で 付け加える 。
「 あ 、 そうだ 。
綾子 さん 、 梨 山 先生 が ね 、 部屋 へ 来 いって 」 「 私 に ?
」 「 私 たち に 、 よ 。
文化 祭 の こと で 、 何 か 言い たい らしい わ 」 「 そう ……」 綾子 は 、 情 ない 顔 で 肯 いた 。
夕 里子 は 笑い を かみ殺して いた 。
── まるで 叱ら れ に 行く 小学生 みたいだ わ !
夕 里子 も 、 姉 と ワンセット (?
) と いう こと で 一緒に ついて 、 建物 の 中 へ と 入って 行った 。
こちら は 真 新しい 建物 で 、 中 も 明るい 。
「── 梨 山 先生 の 部屋 って 、 二 階 だった っけ ?
」 と 、 綾子 が 言った 。
「 よく 知って る じゃ ない の 」 「 一 度 行った こと が ある の よ ね 」 階段 を 三 人 が 上り かける と 、 誰 か が 、 ダダッ と 駆け 降りて 来る 足音 が した 。
思わず 足 を 止める 。
「── 危 い !
」 と 、 夕 里子 が 言った 。
その 人物 は 、 凄い 勢い で 駆け 降りて 来た 。
よく 、 足 を 踏み外して 転落 し ない もん だ 、 と 反射 的に 夕 里子 が 考えた ほど である 。
夕 里子 は 大丈夫だった 。
何しろ 、 運動 神経 も 抜群に いい 。
茂子 も 辛うじて よけ られた 。
問題 は 、 やはり 綾子 だった 。
ポカン 、 と 突っ立って いて 、 駆け 降りて 来る 誰 か を 、 よけ られ なかった のである 。
ただ 、 向 う が 瞬間 的に よけて くれた ので 、 正面 衝突 だけ は 避け られた 。
その代り 、 足 が 払わ れる ような 格好に なって 、 二 、 三 段 上って いた 綾子 は 、 「 キャッ !
」 と 声 を 上げて 、 引っくり返って いた 。
みごとに スカート が フワリ と 広がり 、 一 回転 。
── デン 、 と お 尻 を 打って 、 「 痛い !
」 と 言った 。
「 大丈夫 ?
」 夕 里子 が あわてて 助け 起こす 。
「 ああ ── びっくり した !
」 「 けが は ?
」 と 、 茂子 が 訊 いた 。
「 別に ……。
それにしても 、 昨日 から 、 ツイ て ない わ 」 「 爆弾 でも 命拾い を したり 、 転んで けが 一 つ して ない の は 、 ツイ てる と も 言える わ 」 「 なるほど 。
考え ようだ わ ね 」 と 、 綾子 は 感心 して 言った 。
「 今 の 誰 だろう ?
」 と 、 茂子 が 首 を 振る 。
「 早 すぎて 、 全然 何も 見え なかった けど 」 「 女 の 人だった わ 、 コート を 着て て 」 と 、 夕 里子 が 言った 。
「 本当 ?
凄い わ ね !
大した 観察 力 だ わ 」 「 夕 里子 は ね 、 シャーロック ・ ホームズ の 落し 子 な の 」 と 、 綾子 が 珍しい 冗談 を 言った 。
「 じゃ 、 もしかしたら ──」 と 、 茂子 が 呟いた 。
「 え ?
」 「 いえ 。
── 何でもない わ 。
行き ましょう 」 三 人 は 、 階段 を 上って 行った 。
「── 大学 内 でも 、 制限 速度 を 決めて ほしい わ ね 」 と 綾子 が 言った 。
「 マンション の 方 、 どう な の ?
」 と 茂子 が 訊 いた 。
「 ドア が 壊れた だけ な んです 」 と 、 夕 里子 が 説明 した 。
「 今日 中 に ドア を つけ 直して くれる はずです 。
管理人 に 頼んで 来た んで ……」 「 でも 、 どうして あなた の 所 が ──」 「 スパイ と 間違え られた の かも ね 」 綾子 が 真面目な 顔 で 言った 。
「── 講堂 の 方 は 、 まだ 警官 が いる んです か ?
」 「 ええ 、 今日 一 杯 は 立入 禁止 と かって 、 太田 さん が 言って た わ 」 夕 里子 は 、 さり 気 なく 、 「 私 たち 、 ゆうべ ホテル P に 泊った んです よ 、 ね 、 お 姉さん 」 と 言った 。
夕 里子 の 目 に は 、 茂子 の 表情 が 、 いくぶん 固く なった ように 思えた 。
「 そう だった の 」 「 太田 さん って 人 、 ホテル P で ガードマン を やって らし たん でしょう ?
」 「 ええ 、 そう な の 。
でも 、 勤務 時間 が 不規則だ から いや だって 、 辞めた そう よ 」 茂子 が 、 辞めた 理由 を 、 訊 かれ も し ない 内 に 言う の が 、 何だか 変だ 、 と 夕 里子 に は 思えた 。
── きっと 、 本当の 理由 を 知っている んだ わ 。
「 太田 さん に 一 度 紹介 して 下さい 」 と 、 夕 里子 は 言った 。
「 素敵な 人 だって 、 お 姉さん から 聞か さ れて ます から 」 「 まあ 、 それ に は ちょっと 異論 ある な 」 茂子 は 笑って 、「 紹介 なんて 、 大げさな こと し なくて も 、 講堂 の 前 に 立って る はずだ わ 」 「 じゃ 、 後 で 見物 に 行こう っと 」 「 何 よ 、 夕 里子 、 その 言い 方 」 と 、 綾子 が たしなめる 。
「 いい わ よ 。
当人 も きっと 喜ぶ わ 。
わざわざ 若い 子 が 見 に 来た と 知ったら 。
── あっ 、 ここ よ 」 「 ここ が どうした の ?
」 と 、 綾子 が 言った 。
「 梨 山 先生 の 部屋 じゃ ない 」 「 あ 、 そう か 」 ── 頼りない こと 、 夕 里子 は ため息 を ついた 。
ノック して 、 「 失礼 し ます 」 と 、 茂子 が ドア を 開ける と 、 とたん に 、 「 キャッ 、 ハハハ !
」 と けたたましい 笑い声 が 飛び出して 来て 、 三 人 と も びっくり した 。
「 誰 だい ?
」 と 梨 山 の 声 。
「 石原 です 。
あの ── さっき 呼ば れた ──」 「 ああ 、 そう か 。
入って くれ 」 三 人 が 入って 行く と 、 ミニスカート の 若い 女の子 が 、 梨 山 の 膝 に チョコン と 腰かけて いる 。
「 おい 、 やめ なさい !
仕事 の 話 が ある んだ から !
」 梨 山 が 渋い 顔 で 言った が 、 そう 言う そば から ニタニタ して いる のだ から 、 しまら ない 。
「 じゃ 、 また 後 で ね 」 その 女の子 は 、 ヒョイ と 梨 山 の 膝 から 降りて 、 「 バイバイ 」 と 手 を 振った 。
「 次 は ちゃんと レポート を 出せよ 」 「 は あい 」 甘ったれた 声 で 言って 、 教授 室 を 出て 行った が ……。
夕 里子 は 、 アッ と 思った 。
── ゆうべ 、 ホテル P の 廊下 で 、 裸 で もめて た 女の子 だ !
「 一 年生 な んだ 。
全く 、 甘ったれ で 困る 」 梨 山 は 、 エヘン と 咳払い した 。
「 あの 、 ご用 は ……」 「 うん 。
他 で も ない が 、 三 日 の 文化 祭 の コンサート は 、 君 たち の 担当 だ そうだ ね 」 「 はい 」 と 茂子 が 答える 。
「 開け そう か ?
どう な んだ ?
」 「 殺人 事件 が あって 、 今日 中 は 使え ない んです が 、 明日 から は 大丈夫 と いう こと です 。
何とか やれる と 思い ます 」 「 思い ます 、 じゃ 困る んだ よ 」 梨 山 は 首 を 振った 。
「 予算 も もう 取って ある わけだ 。
もし 中止 に でも なって 、 余ら せて しまう と 、 来 年度 の 予算 を 大幅に 削ら れる こと に なり かね ない 。
ただ で さえ 、 理事 会 の 方 じゃ 、 タレント なんか 招 んで ショー を 開く のに 何 十万 も 出す の は 、 けしからん 、 と いう 意見 も ある んだ 」 「 は あ 」 「 この ところ 、 学校 も 苦しい から ね 。
少し でも 支出 を 減らし たい 、 と いう の が 本音 だろう 。
僕 も 、 学生 たち の ため に 頑張って は いる が 、 理事 会 の 決定 に は 従わ ざる を 得 ない 。
分 って くれる ね ?
」 夕 里子 は 、 聞いて いて 、 馬鹿らしく なった 。
── 何の こと は ない 。
要するに 責任 逃れ を して おき たい のだ 。
何 か あって 、 コンサート が 中止 に なったら 、 「 だ から 言って おいた じゃ ない か 」 と 言い たい わけだ 。
やれやれ 、 と 夕 里子 は 話 を 聞く 気 に も なれ ず 、 目 を 、 本棚 の 方 へ 向けた 。
どうやら 、 英文 学 の 教授 らしく 、 それ らしい 、 分厚い 本 が 並んで いる 。
開けた こと ある の かしら 、 と 夕 里子 は 思った 。
それにしても 、 あの 女の子 ……。
一 歳 違い か 。
大した もん ね !
夕 里子 が 短大 に 入った って 、 とても あんな 風 に は なれ ない 。
まあ 、 ああいう こと は 、 学校 と は 関係ない わけだ が 。
あそこ まで アッケラカン と やられる と 、 腹 も 立た ない 。
きっと 、 この 先生 など も 、 鼻 の 下 を 長く して いる んだろう 。
あれ ?
夕 里子 は 、 ふと 、 場違いな 本 の タイトル に 目 を 止めた ……。
「 よろしく 、 って 言って ました よ 」 と 、 夕 里子 は 言った 。
「 憶 えて て くれた んだ なあ 」 太田 は 嬉し そうだった 。
── お 昼 ご飯 を 、 四 人 で 食べて いた 。
夕 里子 、 綾子 、 石原 茂子 、 太田 の 四 人 である 。
学生 食堂 は 、 大変な 混雑 な ので 、 カレーライス を 皿 ごと 外 へ 持ち出して 、 表 の 石段 に 腰かけて 食べて いる のだった 。
水っぽい カレー も 、 こうして 食べる と 、 結構 旨 い 。
「── 警察 の 調査 の 方 は どう ?
」 と 、 茂子 が 訊 いた 。
「 うん 、 さっき 、 あの 刑事 さん ── 何て いった っけ 。
国 ……」 「 国友 さん です か 」 「 そうそう 。
さっき 顔 を 出して 、 ハッパ を かけて た よ 。
── いい 人 だ な 、 なかなか 」 「 妹 の 恋人 な んです 」 綾子 が 、 いつも やられて いる お返し を した 。
「 いい でしょ 」 と 、 夕 里子 は 平然と 、「 恋 に 年齢 は あり ませ ん !
とかい って ……。
あ 、 あそこ に いた !
」 見れば 、 国友 も カレー の 皿 を 手 に 、 外 へ 出て キョロキョロ して いる 。
「 夕 里子 、 行って あげたら ?
」 「 言わ れ なくて も 行き ます よ 、 だ 」 夕 里子 と して は 、 ちょうど 国友 と 話 も し たかった のである 。
「 や あ 、 ここ に いた の か 」 国友 は 笑顔 に なった 。
「 一緒に いかが ?
」 「 いい ね 」 「 食べ 終る まで は 、 二 人 で いま しょ 。
── そこ に 座って 」 「 なかなか 乙 な もん だ ね 」 「 ハイキング みたい ね 」 二 人 は 、 綾子 たち と 少し 離れて 座った 。
「── 手がかり は つかめた ?
」 と 、 夕 里子 は 訊 いた 。
「 はかばかしく ない ね 」 国友 は 首 を 振った 。
「 どっち も だ 。
黒木 殺し と 、 あの 爆弾 事件 」 「 黒木 の 奥さん は ?
」 「 神 山田 タカシ と ホテル に いた 。
── 証人 も いる んだ 。
アリバイ は かなり しっかり して いる よ 」 「 黒木 って 人 を 恨んで る に して も 、 あそこ で 殺した 理由 が 分 ら ない わ 」 「 そう な んだ 。
── それ に 君 の 姉さん を 狙った 理由 も ね 」 「 爆弾 の 方 は ?
」 「 素人 の 手作り らしい 。
そう 精巧な もの じゃ ない ようだ よ 。
ちょっと した 化学 の 知識 が あれば 作れる 、 って こと だった 」 夕 里子 は 、 さっき 行った 梨 山 と いう 教授 の こと が 気 に なって いた 。
あの 本棚 に 、 一 冊 だけ 、 なぜ か 〈 火薬 の 話 〉 と いう 本 が 紛れ込んだ ように 並んで いた のだ ……。
「 ちょっと した ニュース が ある の 」 と 、 夕 里子 は 言った 。
「 ほう 」 「 世間話 を して る ような 顔 で 聞いて 」 「 おいおい ──」 と 、 国友 は 夕 里子 を 見て 、「 また やって る の かい ?
危 い ぞ 。
探偵 の 真似 は やめた 方 が いい 」 「 探偵 の 真似 なんて して ない わ 」 と 夕 里子 は やり返した 。
「 探偵 そのもの を やって る の 」 「 もっと 悪い ぞ 」 「 聞いて 。
── あの 太田 さん って ガードマン ね 、 神山 田 タカシ を 殴って 、 ホテル を クビ に なった の よ 」 「 何 だって ?
」 夕 里子 が 、 ホテル P で 、 北山 から 聞いた こと を 話して やる と 、 国友 は ため息 を ついた 。
「 君 に 教え られる んじゃ 、 困った もん だ な 、 我々 も 」 「 もう 一 つ ある の 」 「 ほう ?
」 「 その 乱暴 さ れた 女の子 の こと 」 「 名前 も 分 ら ない んじゃ 、 捜し よう が ない な 。
── いや 、 待てよ 。
きっと ファンク ラブ に 入って いた だろう 。
そして その後 、 やめ てる はずだ な 」 国友 は 肯 いて 、「 よし 、 これ で 調べ られる ぞ !
」 「 それ も いい けど ──」 夕 里子 は カレー を 平らげて 、「 今 、 その 子 は 二十 歳 ぐらい よ 。
その とき の 事件 が きっかけ で 、 その 優しい ガードマン と 恋 仲 に なって も おかしく ない わ 」 国友 は 啞然 と して 、 「 あの 女の子 ── 石原 茂子 が ?
」 と 言った 。
「 しっ !
聞こえる わ 」 「 どうして そう 思った ?
」 「 別に 」 と 、 肩 を すくめて 、「 でも 、 きっと そう よ 。
だから って 、 あの 人 が 黒木 を 殺した と は 言って ない けど 」 「 うん 。
しかし ……」 国友 は 考え込んだ 。
「 その とき 、 神山 田 と 黒木 も いた と する と 、 充分に 殺害 の 動機 に なる な 」 「 でも 、 今さら ?
三 年 も たって る の よ 」 「 逆に 、 太田 の 方 が やった と も 考え られる な 」 「 時間 よ 。
時間 が たち すぎて る わ 」 と 、 夕 里子 は 言った 。
茂子 が 立ち上って 、 やって 来た 。
「 お 皿 を 返して 来て あげる わ 」 「 あ 、 自分 で やり ます 」 「 どうせ 、 ついで よ 」 と 、 茂子 は 微笑んだ 。
「 すみません 」 「 じゃ 刑事 さん の も ──」 「 そうかい ?
悪い ね 」 「 いいえ 、 重ねて 下さい 。
── じゃ 、 すぐに 置いて 来 ます 」 と 、 茂子 は 、 食堂 の 方 へ と 歩き 出した 。
「 いい 人 だ わ 」 と 、 夕 里子 は 言った 。
三姉妹探偵団(2) Chapter 07 (1)
みっ しまい たんてい だん|chapter
7 意外な 顔
「 あ 、 綾子 さん !
いがいな|かお||あやこ|
」
大学 の キャンパス へ 入って 行く と 、 とたん に 呼びかけ られた 。
だいがく||きゃんぱす||はいって|いく||||よびかけ|
石原 茂子 が 、 小走り に やって 来る 。
いしはら|しげこ||こばしり|||くる
もう 、 昼 休み に なる ところ で 、 早 目 に 講義 の 終った らしい 学生 たち が 、 ポツポツ と 出て 来て いた 。
|ひる|やすみ|||||はや|め||こうぎ||しまった||がくせい|||ぽつぽつ||でて|きて|
「 大変だった わ ねえ !
たいへんだった||
新聞 で 見て 、 びっくり しちゃ った 。
しんぶん||みて|||
けが 、 ない の ?
」
「 私 、 運 が 強い の 」
と 、 綾子 は 微笑んだ 。
わたくし|うん||つよい|||あやこ||ほおえんだ
「 それ に 心強い ボディガード も いる し ね 」
「 失礼 ね !
||こころづよい||||||しつれい|
」
夕 里子 は 姉 を にらんだ 。
ゆう|さとご||あね||
好きで ついて 来 てる わけじゃ ない の よ !
すきで||らい|||||
I like it and I am not following!
「 夕 里子 さん 、 学校 の 方 は いい の ?
ゆう|さとご||がっこう||かた|||
何なら 、 彼 に 綾子 さん を ガード して もらう わ よ 」
「 大丈夫です 。
なんなら|かれ||あやこ|||がーど|||||だいじょうぶです
それ に 私 、 こういう こと 、 割と 嫌い じゃ ない んです もの 」
だ から 、 もて ない の よ ね 、 と 心 の 中 で 付け加える 。
||わたくし|||わりと|きらい|||||||||||||こころ||なか||つけくわえる
To it, I do not dislike this kind of thing, I do not dislike it ", so I add it in my mind that you do not have it.
「 あ 、 そうだ 。
|そう だ
綾子 さん 、 梨 山 先生 が ね 、 部屋 へ 来 いって 」
「 私 に ?
あやこ||なし|やま|せんせい|||へや||らい||わたくし|
」
「 私 たち に 、 よ 。
わたくし|||
文化 祭 の こと で 、 何 か 言い たい らしい わ 」
「 そう ……」
綾子 は 、 情 ない 顔 で 肯 いた 。
ぶんか|さい||||なん||いい|||||あやこ||じょう||かお||こう|
夕 里子 は 笑い を かみ殺して いた 。
ゆう|さとご||わらい||かみころして|
── まるで 叱ら れ に 行く 小学生 みたいだ わ !
|しから|||いく|しょうがくせい||
夕 里子 も 、 姉 と ワンセット (?
ゆう|さとご||あね||わん せっと
) と いう こと で 一緒に ついて 、 建物 の 中 へ と 入って 行った 。
||||いっしょに||たてもの||なか|||はいって|おこなった
こちら は 真 新しい 建物 で 、 中 も 明るい 。
||まこと|あたらしい|たてもの||なか||あかるい
「── 梨 山 先生 の 部屋 って 、 二 階 だった っけ ?
なし|やま|せんせい||へや||ふた|かい||
」
と 、 綾子 が 言った 。
|あやこ||いった
「 よく 知って る じゃ ない の 」
「 一 度 行った こと が ある の よ ね 」
階段 を 三 人 が 上り かける と 、 誰 か が 、 ダダッ と 駆け 降りて 来る 足音 が した 。
|しって|||||ひと|たび|おこなった|||||||かいだん||みっ|じん||のぼり|||だれ|||||かけ|おりて|くる|あしおと||
思わず 足 を 止める 。
おもわず|あし||とどめる
「── 危 い !
き|
」
と 、 夕 里子 が 言った 。
|ゆう|さとご||いった
その 人物 は 、 凄い 勢い で 駆け 降りて 来た 。
|じんぶつ||すごい|いきおい||かけ|おりて|きた
よく 、 足 を 踏み外して 転落 し ない もん だ 、 と 反射 的に 夕 里子 が 考えた ほど である 。
|あし||ふみはずして|てんらく||||||はんしゃ|てきに|ゆう|さとご||かんがえた||
夕 里子 は 大丈夫だった 。
ゆう|さとご||だいじょうぶだった
何しろ 、 運動 神経 も 抜群に いい 。
なにしろ|うんどう|しんけい||ばつぐんに|
茂子 も 辛うじて よけ られた 。
しげこ||かろうじて||
問題 は 、 やはり 綾子 だった 。
もんだい|||あやこ|
ポカン 、 と 突っ立って いて 、 駆け 降りて 来る 誰 か を 、 よけ られ なかった のである 。
||つったって||かけ|おりて|くる|だれ||||||
ただ 、 向 う が 瞬間 的に よけて くれた ので 、 正面 衝突 だけ は 避け られた 。
|むかい|||しゅんかん|てきに||||しょうめん|しょうとつ|||さけ|
その代り 、 足 が 払わ れる ような 格好に なって 、 二 、 三 段 上って いた 綾子 は 、
「 キャッ !
そのかわり|あし||はらわ|||かっこうに||ふた|みっ|だん|のぼって||あやこ||
」
と 声 を 上げて 、 引っくり返って いた 。
|こえ||あげて|ひっくりかえって|
みごとに スカート が フワリ と 広がり 、 一 回転 。
|すかーと||ふわり||ひろがり|ひと|かいてん
── デン 、 と お 尻 を 打って 、
「 痛い !
|||しり||うって|いたい
」
と 言った 。
|いった
「 大丈夫 ?
だいじょうぶ
」
夕 里子 が あわてて 助け 起こす 。
ゆう|さとご|||たすけ|おこす
「 ああ ── びっくり した !
」
「 けが は ?
」
と 、 茂子 が 訊 いた 。
|しげこ||じん|
「 別に ……。
べつに
それにしても 、 昨日 から 、 ツイ て ない わ 」
「 爆弾 でも 命拾い を したり 、 転んで けが 一 つ して ない の は 、 ツイ てる と も 言える わ 」
「 なるほど 。
|きのう||つい||||ばくだん||いのちびろい|||ころんで||ひと||||||つい||||いえる||
考え ようだ わ ね 」
と 、 綾子 は 感心 して 言った 。
かんがえ|||||あやこ||かんしん||いった
「 今 の 誰 だろう ?
いま||だれ|
」
と 、 茂子 が 首 を 振る 。
|しげこ||くび||ふる
「 早 すぎて 、 全然 何も 見え なかった けど 」
「 女 の 人だった わ 、 コート を 着て て 」
と 、 夕 里子 が 言った 。
はや||ぜんぜん|なにも|みえ|||おんな||ひとだった||こーと||きて|||ゆう|さとご||いった
「 本当 ?
ほんとう
凄い わ ね !
すごい||
大した 観察 力 だ わ 」
「 夕 里子 は ね 、 シャーロック ・ ホームズ の 落し 子 な の 」
と 、 綾子 が 珍しい 冗談 を 言った 。
たいした|かんさつ|ちから|||ゆう|さとご||||ほーむず||おとし|こ||||あやこ||めずらしい|じょうだん||いった
「 じゃ 、 もしかしたら ──」
と 、 茂子 が 呟いた 。
|||しげこ||つぶやいた
「 え ?
」
「 いえ 。
── 何でもない わ 。
なんでもない|
行き ましょう 」
三 人 は 、 階段 を 上って 行った 。
いき||みっ|じん||かいだん||のぼって|おこなった
「── 大学 内 でも 、 制限 速度 を 決めて ほしい わ ね 」
と 綾子 が 言った 。
だいがく|うち||せいげん|そくど||きめて|||||あやこ||いった
「 マンション の 方 、 どう な の ?
まんしょん||かた|||
」
と 茂子 が 訊 いた 。
|しげこ||じん|
「 ドア が 壊れた だけ な んです 」
と 、 夕 里子 が 説明 した 。
どあ||こぼれた|||||ゆう|さとご||せつめい|
「 今日 中 に ドア を つけ 直して くれる はずです 。
きょう|なか||どあ|||なおして||
管理人 に 頼んで 来た んで ……」
「 でも 、 どうして あなた の 所 が ──」
「 スパイ と 間違え られた の かも ね 」
綾子 が 真面目な 顔 で 言った 。
かんりにん||たのんで|きた||||||しょ||すぱい||まちがえ|||||あやこ||まじめな|かお||いった
「── 講堂 の 方 は 、 まだ 警官 が いる んです か ?
こうどう||かた|||けいかん||||
」
「 ええ 、 今日 一 杯 は 立入 禁止 と かって 、 太田 さん が 言って た わ 」
夕 里子 は 、 さり 気 なく 、
「 私 たち 、 ゆうべ ホテル P に 泊った んです よ 、 ね 、 お 姉さん 」
と 言った 。
|きょう|ひと|さかずき||たちいり|きんし|||おおた|||いって|||ゆう|さとご|||き||わたくし|||ほてる|p||とまった|||||ねえさん||いった
夕 里子 の 目 に は 、 茂子 の 表情 が 、 いくぶん 固く なった ように 思えた 。
ゆう|さとご||め|||しげこ||ひょうじょう|||かたく|||おもえた
「 そう だった の 」
「 太田 さん って 人 、 ホテル P で ガードマン を やって らし たん でしょう ?
|||おおた|||じん|ほてる|p||がーどまん|||||
」
「 ええ 、 そう な の 。
でも 、 勤務 時間 が 不規則だ から いや だって 、 辞めた そう よ 」
茂子 が 、 辞めた 理由 を 、 訊 かれ も し ない 内 に 言う の が 、 何だか 変だ 、 と 夕 里子 に は 思えた 。
|きんむ|じかん||ふきそくだ||||やめた|||しげこ||やめた|りゆう||じん|||||うち||いう|||なんだか|へんだ||ゆう|さとご|||おもえた
── きっと 、 本当の 理由 を 知っている んだ わ 。
|ほんとうの|りゆう||しっている||
「 太田 さん に 一 度 紹介 して 下さい 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
おおた|||ひと|たび|しょうかい||ください||ゆう|さとご||いった
「 素敵な 人 だって 、 お 姉さん から 聞か さ れて ます から 」
「 まあ 、 それ に は ちょっと 異論 ある な 」
茂子 は 笑って 、「 紹介 なんて 、 大げさな こと し なくて も 、 講堂 の 前 に 立って る はずだ わ 」
「 じゃ 、 後 で 見物 に 行こう っと 」
「 何 よ 、 夕 里子 、 その 言い 方 」
と 、 綾子 が たしなめる 。
すてきな|じん|||ねえさん||きか||||||||||いろん|||しげこ||わらって|しょうかい||おおげさな|||||こうどう||ぜん||たって|||||あと||けんぶつ||いこう||なん||ゆう|さとご||いい|かた||あやこ||
「 いい わ よ 。
当人 も きっと 喜ぶ わ 。
とうにん|||よろこぶ|
わざわざ 若い 子 が 見 に 来た と 知ったら 。
|わかい|こ||み||きた||しったら
── あっ 、 ここ よ 」
「 ここ が どうした の ?
」
と 、 綾子 が 言った 。
|あやこ||いった
「 梨 山 先生 の 部屋 じゃ ない 」
「 あ 、 そう か 」
── 頼りない こと 、 夕 里子 は ため息 を ついた 。
なし|やま|せんせい||へや||||||たよりない||ゆう|さとご||ためいき||
ノック して 、
「 失礼 し ます 」
と 、 茂子 が ドア を 開ける と 、 とたん に 、
「 キャッ 、 ハハハ !
||しつれい||||しげこ||どあ||あける|||||
」
と けたたましい 笑い声 が 飛び出して 来て 、 三 人 と も びっくり した 。
||わらいごえ||とびだして|きて|みっ|じん||||
「 誰 だい ?
だれ|
」
と 梨 山 の 声 。
|なし|やま||こえ
「 石原 です 。
いしはら|
あの ── さっき 呼ば れた ──」
「 ああ 、 そう か 。
||よば||||
入って くれ 」
三 人 が 入って 行く と 、 ミニスカート の 若い 女の子 が 、 梨 山 の 膝 に チョコン と 腰かけて いる 。
はいって||みっ|じん||はいって|いく||||わかい|おんなのこ||なし|やま||ひざ||||こしかけて|
「 おい 、 やめ なさい !
仕事 の 話 が ある んだ から !
しごと||はなし||||
」
梨 山 が 渋い 顔 で 言った が 、 そう 言う そば から ニタニタ して いる のだ から 、 しまら ない 。
なし|やま||しぶい|かお||いった|||いう|||||||||
「 じゃ 、 また 後 で ね 」
その 女の子 は 、 ヒョイ と 梨 山 の 膝 から 降りて 、
「 バイバイ 」
と 手 を 振った 。
||あと||||おんなのこ||||なし|やま||ひざ||おりて|||て||ふった
「 次 は ちゃんと レポート を 出せよ 」
「 は あい 」
甘ったれた 声 で 言って 、 教授 室 を 出て 行った が ……。
つぎ|||れぽーと||だせよ|||あまったれた|こえ||いって|きょうじゅ|しつ||でて|おこなった|
夕 里子 は 、 アッ と 思った 。
ゆう|さとご||||おもった
── ゆうべ 、 ホテル P の 廊下 で 、 裸 で もめて た 女の子 だ !
|ほてる|p||ろうか||はだか||||おんなのこ|
「 一 年生 な んだ 。
ひと|ねんせい||
全く 、 甘ったれ で 困る 」
梨 山 は 、 エヘン と 咳払い した 。
まったく|あまったれ||こまる|なし|やま||||せきばらい|
「 あの 、 ご用 は ……」
「 うん 。
|ごよう||
他 で も ない が 、 三 日 の 文化 祭 の コンサート は 、 君 たち の 担当 だ そうだ ね 」
「 はい 」
と 茂子 が 答える 。
た|||||みっ|ひ||ぶんか|さい||こんさーと||きみ|||たんとう||そう だ||||しげこ||こたえる
「 開け そう か ?
あけ||
どう な んだ ?
」
「 殺人 事件 が あって 、 今日 中 は 使え ない んです が 、 明日 から は 大丈夫 と いう こと です 。
さつじん|じけん|||きょう|なか||つかえ||||あした|||だいじょうぶ||||
何とか やれる と 思い ます 」
「 思い ます 、 じゃ 困る んだ よ 」
梨 山 は 首 を 振った 。
なんとか|||おもい||おもい|||こまる|||なし|やま||くび||ふった
「 予算 も もう 取って ある わけだ 。
よさん|||とって||
もし 中止 に でも なって 、 余ら せて しまう と 、 来 年度 の 予算 を 大幅に 削ら れる こと に なり かね ない 。
|ちゅうし||||あまら||||らい|ねんど||よさん||おおはばに|けずら||||||
ただ で さえ 、 理事 会 の 方 じゃ 、 タレント なんか 招 んで ショー を 開く のに 何 十万 も 出す の は 、 けしからん 、 と いう 意見 も ある んだ 」
「 は あ 」
「 この ところ 、 学校 も 苦しい から ね 。
|||りじ|かい||かた||たれんと||まね||しょー||あく||なん|じゅうまん||だす||||||いけん||||||||がっこう||くるしい||
少し でも 支出 を 減らし たい 、 と いう の が 本音 だろう 。
すこし||ししゅつ||へらし||||||ほんね|
僕 も 、 学生 たち の ため に 頑張って は いる が 、 理事 会 の 決定 に は 従わ ざる を 得 ない 。
ぼく||がくせい|||||がんばって||||りじ|かい||けってい|||したがわ|||とく|
分 って くれる ね ?
ぶん|||
」
夕 里子 は 、 聞いて いて 、 馬鹿らしく なった 。
ゆう|さとご||きいて||ばからしく|
── 何の こと は ない 。
なんの|||
要するに 責任 逃れ を して おき たい のだ 。
ようするに|せきにん|のがれ|||||
何 か あって 、 コンサート が 中止 に なったら 、
「 だ から 言って おいた じゃ ない か 」
と 言い たい わけだ 。
なん|||こんさーと||ちゅうし|||||いって||||||いい||
やれやれ 、 と 夕 里子 は 話 を 聞く 気 に も なれ ず 、 目 を 、 本棚 の 方 へ 向けた 。
||ゆう|さとご||はなし||きく|き|||||め||ほんだな||かた||むけた
どうやら 、 英文 学 の 教授 らしく 、 それ らしい 、 分厚い 本 が 並んで いる 。
|えいぶん|まな||きょうじゅ||||ぶあつい|ほん||ならんで|
開けた こと ある の かしら 、 と 夕 里子 は 思った 。
あけた||||||ゆう|さとご||おもった
それにしても 、 あの 女の子 ……。
||おんなのこ
一 歳 違い か 。
ひと|さい|ちがい|
大した もん ね !
たいした||
夕 里子 が 短大 に 入った って 、 とても あんな 風 に は なれ ない 。
ゆう|さとご||たんだい||はいった||||かぜ||||
まあ 、 ああいう こと は 、 学校 と は 関係ない わけだ が 。
||||がっこう|||かんけいない||
あそこ まで アッケラカン と やられる と 、 腹 も 立た ない 。
||||||はら||たた|
きっと 、 この 先生 など も 、 鼻 の 下 を 長く して いる んだろう 。
||せんせい|||はな||した||ながく|||
あれ ?
夕 里子 は 、 ふと 、 場違いな 本 の タイトル に 目 を 止めた ……。
ゆう|さとご|||ばちがいな|ほん||たいとる||め||とどめた
「 よろしく 、 って 言って ました よ 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
||いって||||ゆう|さとご||いった
「 憶 えて て くれた んだ なあ 」
太田 は 嬉し そうだった 。
おく||||||おおた||うれし|そう だった
── お 昼 ご飯 を 、 四 人 で 食べて いた 。
|ひる|ごはん||よっ|じん||たべて|
夕 里子 、 綾子 、 石原 茂子 、 太田 の 四 人 である 。
ゆう|さとご|あやこ|いしはら|しげこ|おおた||よっ|じん|
学生 食堂 は 、 大変な 混雑 な ので 、 カレーライス を 皿 ごと 外 へ 持ち出して 、 表 の 石段 に 腰かけて 食べて いる のだった 。
がくせい|しょくどう||たいへんな|こんざつ|||||さら||がい||もちだして|ひょう||いしだん||こしかけて|たべて||
水っぽい カレー も 、 こうして 食べる と 、 結構 旨 い 。
みずっぽい|かれー|||たべる||けっこう|むね|
「── 警察 の 調査 の 方 は どう ?
けいさつ||ちょうさ||かた||
」
と 、 茂子 が 訊 いた 。
|しげこ||じん|
「 うん 、 さっき 、 あの 刑事 さん ── 何て いった っけ 。
|||けいじ||なんて||
国 ……」
「 国友 さん です か 」
「 そうそう 。
くに|くにとも||||そう そう
さっき 顔 を 出して 、 ハッパ を かけて た よ 。
|かお||だして|||||
── いい 人 だ な 、 なかなか 」
「 妹 の 恋人 な んです 」
綾子 が 、 いつも やられて いる お返し を した 。
|じん||||いもうと||こいびと|||あやこ|||||おかえし||
「 いい でしょ 」
と 、 夕 里子 は 平然と 、「 恋 に 年齢 は あり ませ ん !
|||ゆう|さとご||へいぜんと|こい||ねんれい||||
とかい って ……。
あ 、 あそこ に いた !
」
見れば 、 国友 も カレー の 皿 を 手 に 、 外 へ 出て キョロキョロ して いる 。
みれば|くにとも||かれー||さら||て||がい||でて|||
「 夕 里子 、 行って あげたら ?
ゆう|さとご|おこなって|
」
「 言わ れ なくて も 行き ます よ 、 だ 」
夕 里子 と して は 、 ちょうど 国友 と 話 も し たかった のである 。
いわ||||いき||||ゆう|さとご|||||くにとも||はなし||||
「 や あ 、 ここ に いた の か 」
国友 は 笑顔 に なった 。
|||||||くにとも||えがお||
「 一緒に いかが ?
いっしょに|
」
「 いい ね 」
「 食べ 終る まで は 、 二 人 で いま しょ 。
||たべ|おわる|||ふた|じん|||
── そこ に 座って 」
「 なかなか 乙 な もん だ ね 」
「 ハイキング みたい ね 」
二 人 は 、 綾子 たち と 少し 離れて 座った 。
||すわって||おつ|||||はいきんぐ|||ふた|じん||あやこ|||すこし|はなれて|すわった
「── 手がかり は つかめた ?
てがかり||
」
と 、 夕 里子 は 訊 いた 。
|ゆう|さとご||じん|
「 はかばかしく ない ね 」
国友 は 首 を 振った 。
|||くにとも||くび||ふった
「 どっち も だ 。
黒木 殺し と 、 あの 爆弾 事件 」
「 黒木 の 奥さん は ?
くろき|ころし|||ばくだん|じけん|くろき||おくさん|
」
「 神 山田 タカシ と ホテル に いた 。
かみ|やまだ|たかし||ほてる||
── 証人 も いる んだ 。
しょうにん|||
アリバイ は かなり しっかり して いる よ 」
「 黒木 って 人 を 恨んで る に して も 、 あそこ で 殺した 理由 が 分 ら ない わ 」
「 そう な んだ 。
ありばい|||||||くろき||じん||うらんで|||||||ころした|りゆう||ぶん||||||
── それ に 君 の 姉さん を 狙った 理由 も ね 」
「 爆弾 の 方 は ?
||きみ||ねえさん||ねらった|りゆう|||ばくだん||かた|
」
「 素人 の 手作り らしい 。
しろうと||てづくり|
そう 精巧な もの じゃ ない ようだ よ 。
|せいこうな|||||
ちょっと した 化学 の 知識 が あれば 作れる 、 って こと だった 」
夕 里子 は 、 さっき 行った 梨 山 と いう 教授 の こと が 気 に なって いた 。
||かがく||ちしき|||つくれる||||ゆう|さとご|||おこなった|なし|やま|||きょうじゅ||||き|||
あの 本棚 に 、 一 冊 だけ 、 なぜ か 〈 火薬 の 話 〉 と いう 本 が 紛れ込んだ ように 並んで いた のだ ……。
|ほんだな||ひと|さつ||||かやく||はなし|||ほん||まぎれこんだ||ならんで||
「 ちょっと した ニュース が ある の 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
||にゅーす|||||ゆう|さとご||いった
「 ほう 」
「 世間話 を して る ような 顔 で 聞いて 」
「 おいおい ──」
と 、 国友 は 夕 里子 を 見て 、「 また やって る の かい ?
|せけんばなし|||||かお||きいて|||くにとも||ゆう|さとご||みて|||||
危 い ぞ 。
き||
探偵 の 真似 は やめた 方 が いい 」
「 探偵 の 真似 なんて して ない わ 」
と 夕 里子 は やり返した 。
たんてい||まね|||かた|||たんてい||まね||||||ゆう|さとご||やりかえした
「 探偵 そのもの を やって る の 」
「 もっと 悪い ぞ 」
「 聞いて 。
たんてい|その もの||||||わるい||きいて
── あの 太田 さん って ガードマン ね 、 神山 田 タカシ を 殴って 、 ホテル を クビ に なった の よ 」
「 何 だって ?
|おおた|||がーどまん||かみやま|た|たかし||なぐって|ほてる||くび|||||なん|
」
夕 里子 が 、 ホテル P で 、 北山 から 聞いた こと を 話して やる と 、 国友 は ため息 を ついた 。
ゆう|さとご||ほてる|p||きたやま||きいた|||はなして|||くにとも||ためいき||
「 君 に 教え られる んじゃ 、 困った もん だ な 、 我々 も 」
「 もう 一 つ ある の 」
「 ほう ?
きみ||おしえ|||こまった||||われわれ|||ひと||||
」
「 その 乱暴 さ れた 女の子 の こと 」
「 名前 も 分 ら ない んじゃ 、 捜し よう が ない な 。
|らんぼう|||おんなのこ|||なまえ||ぶん||||さがし||||
── いや 、 待てよ 。
|まてよ
きっと ファンク ラブ に 入って いた だろう 。
|ふぁんく|らぶ||はいって||
そして その後 、 やめ てる はずだ な 」
国友 は 肯 いて 、「 よし 、 これ で 調べ られる ぞ !
|そのご|||||くにとも||こう|||||しらべ||
」
「 それ も いい けど ──」
夕 里子 は カレー を 平らげて 、「 今 、 その 子 は 二十 歳 ぐらい よ 。
||||ゆう|さとご||かれー||たいらげて|いま||こ||にじゅう|さい||
その とき の 事件 が きっかけ で 、 その 優しい ガードマン と 恋 仲 に なって も おかしく ない わ 」
国友 は 啞然 と して 、
「 あの 女の子 ── 石原 茂子 が ?
|||じけん|||||やさしい|がーどまん||こい|なか|||||||くにとも||啞ぜん||||おんなのこ|いしはら|しげこ|
」
と 言った 。
|いった
「 しっ !
聞こえる わ 」
「 どうして そう 思った ?
きこえる||||おもった
」
「 別に 」
と 、 肩 を すくめて 、「 でも 、 きっと そう よ 。
べつに||かた||||||
だから って 、 あの 人 が 黒木 を 殺した と は 言って ない けど 」
「 うん 。
|||じん||くろき||ころした|||いって|||
しかし ……」
国友 は 考え込んだ 。
|くにとも||かんがえこんだ
「 その とき 、 神山 田 と 黒木 も いた と する と 、 充分に 殺害 の 動機 に なる な 」
「 でも 、 今さら ?
||かみやま|た||くろき||||||じゅうぶんに|さつがい||どうき|||||いまさら
三 年 も たって る の よ 」
「 逆に 、 太田 の 方 が やった と も 考え られる な 」
「 時間 よ 。
みっ|とし||||||ぎゃくに|おおた||かた|||||かんがえ|||じかん|
時間 が たち すぎて る わ 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
じかん|||||||ゆう|さとご||いった
茂子 が 立ち上って 、 やって 来た 。
しげこ||たちのぼって||きた
「 お 皿 を 返して 来て あげる わ 」
「 あ 、 自分 で やり ます 」
「 どうせ 、 ついで よ 」
と 、 茂子 は 微笑んだ 。
|さら||かえして|きて||||じぶん||||||||しげこ||ほおえんだ
「 すみません 」
「 じゃ 刑事 さん の も ──」
「 そうかい ?
||けいじ||||
悪い ね 」
「 いいえ 、 重ねて 下さい 。
わるい|||かさねて|ください
── じゃ 、 すぐに 置いて 来 ます 」
と 、 茂子 は 、 食堂 の 方 へ と 歩き 出した 。
||おいて|らい|||しげこ||しょくどう||かた|||あるき|だした
「 いい 人 だ わ 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
|じん||||ゆう|さとご||いった