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Fairy Tales, あぶらあげ

あぶらあげ

むかし 江戸 に 、 おいしい と 評判 の あぶらあげ 屋 が あり ました 。 ある 日 、 この あぶらあげ 屋 に 、 身なり の いい キツネ 目 の さむらい が 現れて 主人 に たのみ ました 。 「 百 文 (→ 三千 円 ) ほど 、 いただき たい 」 「 はい 、 ありがとう ございます 」 主人 が 百 文 分 の あぶらあげ を お 皿 に のせて 差し出す と 、 さむらい は 店先 に 腰 を かけて ペロリ と たいらげ ました 。 「 うん 、 これ は 評判 通り だ 」

それ から 何 日 かする と 、 あの さむらい が また やってきて 、 前 と 同じ ように 百 文 分 の あぶらあげ を ペロリ と たいらげ ました 。 「 うまい 。 わたし は 日本 中 の あぶらあげ を たべて いる が 、 ここ の あぶらあげ こそ 天下一 品 。 なかま に も しらせよう 」 それ を 聞く と 、 主人 は おかみ さん に 言い ました 。 「 おい 、 今 の を 聞いた か ? あの お方 は 、 いなり さん の 使い の キツネ に ちがいない ぞ 。 大事に すれば 、 わが家 は ますます さかえる 」

それ から 何 日 かする と 、 また あの さむらい が やってきて 、 百 文 分 の あぶらあげ を ペロリ と たいらげ ました 。 けれど ためいき を ついたり して 、 これ まで と は 様子 が ちがい ます 。 「 お 客 さま 。 何 か 、 心配事 で も ある のです か ? 」 主人 が たずねる と 、 さむらい は 恥ずかし そうに いい ました 。 「 実は 、 急に 京 へ のぼら ねば なら なく なった のだ が 、 旅費 ( りょひ ) が たら ん のだ 」 「 そう で ございました か 。 あの 、 お 客 さま は 、 大 の お 得意 さ まで す ので 、 旅費 でしたら 、 わたし ども に お まかせ ください 。 で 、 いかほど 、 ご 入り用な のです ? 」 「 十五 両 (→ 百万 円 ほど ) も あれば よい 」 ( 高い なあ 。 ・・・ だ が 、 わが家 が はんえい する の なら 、 安い もの だ ) 主人 は 喜んで 、 十五 両 の お 金 を わたし ました 。 お 金 を 受け取った さむらい は 、 「 五 日 たてば もどる 。 それ まで 、 これ を あずけて おく 」 と 、 キツネ の 宝物 の 『 宝珠 の 玉 ( ほうしゅ の たま )』 でも 入って い そうな 包み を 差し出して 、 そのまま 立ち去って いき ました 。 「 おい 、 今 の を 聞いた か ? 五 日 で 京 へ 行って 戻る と は 、 やはり 人間 わざ で は ない 。 きっと 、 いなり 神社 の 大もと の 『 伏見 ( ふし み ) いなり 』 へ 行か れた のだろう 」 「 そう でしょう と も 。 これ で 、 ごりやく は 間違い あり ませ ん ね 」 主人 も おかみ さん も 、 すっかり その 気 に なり ました 。

ところが さむらい は 十 日 たって も 、 百 日 たって も 帰って はき ませ ん 。 「 これ は おかしい 。 どうも 変だ ぞ 」 主人 が 預かって いた つつみ を あけた ところ 、 ただ の 石ころ が ゴロン と 出て きた そうです 。

おしまい


あぶらあげ

むかし 江戸 に 、 おいしい と 評判 の あぶらあげ 屋 が あり ました 。 |えど||||ひょうばん|||や||| ある 日 、 この あぶらあげ 屋 に 、 身なり の いい キツネ 目 の さむらい が 現れて 主人 に たのみ ました 。 |ひ|||や||みなり|||きつね|め||||あらわれて|あるじ||| 「 百 文 (→ 三千 円 ) ほど 、 いただき たい 」 「 はい 、 ありがとう ございます 」   主人 が 百 文 分 の あぶらあげ を お 皿 に のせて 差し出す と 、 さむらい は 店先 に 腰 を かけて ペロリ と たいらげ ました 。 ひゃく|ぶん|さんせん|えん|||||||あるじ||ひゃく|ぶん|ぶん|||||さら|||さしだす||||みせさき||こし|||ぺろり||| 「 うん 、 これ は 評判 通り だ 」 |||ひょうばん|とおり|

それ から 何 日 かする と 、 あの さむらい が また やってきて 、 前 と 同じ ように 百 文 分 の あぶらあげ を ペロリ と たいらげ ました 。 ||なん|ひ||||||||ぜん||おなじ||ひゃく|ぶん|ぶん||||ぺろり||| 「 うまい 。 わたし は 日本 中 の あぶらあげ を たべて いる が 、 ここ の あぶらあげ こそ 天下一 品 。 ||にっぽん|なか|||||||||||てんかいち|しな なかま に も しらせよう 」   それ を 聞く と 、 主人 は おかみ さん に 言い ました 。 ||||||きく||あるじ|||||いい| 「 おい 、 今 の を 聞いた か ? |いま|||きいた| あの お方 は 、 いなり さん の 使い の キツネ に ちがいない ぞ 。 |おかた|||||つかい||きつね||| 大事に すれば 、 わが家 は ますます さかえる 」 だいじに||わがや|||

それ から 何 日 かする と 、 また あの さむらい が やってきて 、 百 文 分 の あぶらあげ を ペロリ と たいらげ ました 。 ||なん|ひ||||||||ひゃく|ぶん|ぶん||||ぺろり||| けれど ためいき を ついたり して 、 これ まで と は 様子 が ちがい ます 。 |||||||||ようす||| 「 お 客 さま 。 |きゃく| 何 か 、 心配事 で も ある のです か ? なん||しんぱいごと||||| 」   主人 が たずねる と 、 さむらい は 恥ずかし そうに いい ました 。 あるじ||||||はずかし|そう に|| 「 実は 、 急に 京 へ のぼら ねば なら なく なった のだ が 、 旅費 ( りょひ ) が たら ん のだ 」 「 そう で ございました か 。 じつは|きゅうに|けい|||||||||りょひ||||||||| あの 、 お 客 さま は 、 大 の お 得意 さ まで す ので 、 旅費 でしたら 、 わたし ども に お まかせ ください 。 ||きゃく|||だい|||とくい|||||りょひ||||||| で 、 いかほど 、 ご 入り用な のです ? |||いりような| 」 「 十五 両 (→ 百万 円 ほど ) も あれば よい 」 ( 高い なあ 。 じゅうご|りょう|ひゃくまん|えん|||||たかい| ・・・ だ が 、 わが家 が はんえい する の なら 、 安い もの だ )   主人 は 喜んで 、 十五 両 の お 金 を わたし ました 。 ||わがや||||||やすい|||あるじ||よろこんで|じゅうご|りょう|||きむ||| お 金 を 受け取った さむらい は 、 「 五 日 たてば もどる 。 |きむ||うけとった|||いつ|ひ|| それ まで 、 これ を あずけて おく 」 と 、 キツネ の 宝物 の 『 宝珠 の 玉 ( ほうしゅ の たま )』 でも 入って い そうな 包み を 差し出して 、 そのまま 立ち去って いき ました 。 |||||||きつね||たからもの||たから しゅ||たま|||||はいって||そう な|つつみ||さしだして||たちさって|| 「 おい 、 今 の を 聞いた か ? |いま|||きいた| 五 日 で 京 へ 行って 戻る と は 、 やはり 人間 わざ で は ない 。 いつ|ひ||けい||おこなって|もどる||||にんげん|||| きっと 、 いなり 神社 の 大もと の 『 伏見 ( ふし み ) いなり 』 へ 行か れた のだろう 」 「 そう でしょう と も 。 ||じんじゃ||おおもと||ふしみ|||||いか|||||| これ で 、 ごりやく は 間違い あり ませ ん ね 」   主人 も おかみ さん も 、 すっかり その 気 に なり ました 。 ||||まちがい|||||あるじ|||||||き|||

ところが さむらい は 十 日 たって も 、 百 日 たって も 帰って はき ませ ん 。 |||じゅう|ひ|||ひゃく|ひ|||かえって||| 「 これ は おかしい 。 どうも 変だ ぞ 」   主人 が 預かって いた つつみ を あけた ところ 、 ただ の 石ころ が ゴロン と 出て きた そうです 。 |へんだ||あるじ||あずかって||||||||いしころ||||でて||そう です

おしまい