盾 の 勇者 の 成り 上がり 2 Chapter 10
翌日 、 洋裁 屋 に 顔 を 出す と 、 あの オタクっぽい 子 が 笑顔 で 出迎えて くれた 。 「 はい は ー い 。 服 は 出来てますよ ー 。 久々に 徹夜 しちゃった 」 その 割に ギンギン と テンション が 高い 様子 の 洋裁 屋 。 その 洋裁 屋 は 、 店 の 奥 から フィーロ の 服 を 持ってきた 。
基本 色 が 白 の ワンピース だった 。 真ん中 に は 青い リボン が 付いて おり 、 所々 青い 色 を 使った コント ラスト が 効いて いる 。 素材 を 活 か して 綺麗に 作られて いる の が わかる 。 着る 相手 を 選び そうな シンプルイズベスト と いう 感じ だ 。
「 ご しゅじん さま ー 、 これ を 着る の ? 」 「 ああ 」 「 わ ー い ! 」 今 まで マント を 羽織って いた フィーロ は その場で 全裸 に なろう と する 。 「 ダメです 」
「 えー 」
それ を ラフタリア が 止めて 、 店 の 奥 へ と 案内 して もらう 。
「 じゃあ 魔物 の 姿 に も 変わって ね 」
洋裁 屋 の 声 が 店 の 奥 から 聞こえて くる 。
「 なんで ー ? 」 「 じゃ ない と リボン が 肉 に 食い込みます よ ー 」 「 や ー ! 」 微妙に 怖い 事 を 言う な 。 「 わかった ー 」
ボフン と 変身 する 時 に 聞こえる 音 が して 、 そして 。
「 うん 。 やっぱり 似合う わ ぁ ……」
なんとも うっとり する ような 声 が 聞こえた 。
「 じゃあ 行きましょう ね 」 「 うん ! 」 店 の 奥 から 女性 陣 が 出て きた 。 そして フィーロ の 方 へ 目 を 向けた 。
…… うん 。 元々 の 容姿 が 良い から か 本格 的に 天使 みたいに なって いる 。
白い ワンピース に 、 純白の 羽 …… 胸 に 青い リボン が アクセント と して 飾られて いる 。 なんて いう か 、 二 次元 の お 子 様 天使 ヒロイン みたいだ 。
「 ご しゅじん さま ー 」
「 あ ? 」 「 どう ? 似合う ? 」 「 まあ 、 似合う んじゃ ない か 」 ここ まで フィーロ の 外見 スペック を 生かした 服 を 作れる と は 、 オタクっぽい 洋裁 屋 、 お前 も なかなか の やり手 な のだろう 。 「 え へ へ 」
照れた フィーロ が 服 を ひらひら と 靡か せて 笑う 。
洋服 屋 を 出て 、 拠点 に して いる リユート 村 へ 戻る ため に 、 フィーロ に 荷車 を 引か せる 。
あの 服 は フィーロ が 魔物 の 姿 に なる と 消えて 、 リボン が フィーロ の 首輪 に 変わる と いう 離れ業 を かます ように なって いた 。 高い だけ あって 便利な 機能 が 備わって いる 。
「 あ 、 盾 の 勇者 様 」
城下町 を 出る 時 に 偶然 魔法 屋 に 会う 。
「 リユート 村 に 行く の かい ? 」 「 ああ 」 「 私 も ちょっと 用事 で 行く んで 。 ついでに 乗せてって くれ ない かい ? 」 魔法 屋 は 笑顔 で 提案 して きた 。 どうせ 目ざす 方向 は 一緒だ し 、 魔法 屋 に は 色々 厄介に なって いる から 断る の も どう か と 思う 。
「 乗り 心地 は 保証 し ない が 良い か ? 」 「 一昨日 も 乗った じゃ ない の 」 「 そう だった な 」
ラフタリア は 既に 乗り物酔い と 戦う ため に なんか 遠く を 見て いる 。
「 じゃあ 失礼 して 」
魔法 屋 の おばちゃん は 荷車 に 乗る 。
「 よし 、 フィーロ 。 あんまり 速度 を 出さ ない ように 進めよ 」
「 は ー い 」
通りかかった 通行人 が 、 フィーロ の 方 を 見て 驚いて いる 。 喋る 魔物 は 珍しい のだろう 。
トコトコ と 荷車 は 道 を 進んで いく 。
ここ 数 日 は とても 忙しく 感じた 。 いや 、 普段 から 忙しい けど 特に 忙しい と いう か 。
その 全て が フィーロ に 集約 されて いる と いう の が なんとも 。 魔法 屋 か ー …… 魔法 を 覚えたい が 、 ここ で 聞いて も 何 を 言って いる の か わから ない だろう 。 俺 は 自身 の 勉強 不足 を 酷 く 嘆いた 。
俺 は やられた 事 は やり返す 。 良い 意味 でも 悪い 意味 でも な 。
だ から 魔法 屋 から 善意 を 受けた なら それ に 報いたい 。 なるべく 、 覚え なくて は いけない 。
あの クソ 勇者 共 の ような 知識 は 俺 に は 無い のだ 。 だからこそ 、 俺 は 常に 学び 続け なければ いけない のだ 。 文字 翻訳 と か レシピ の 解放 の 可能 性 は この際 考え から 外そう 。
時間 は 掛かる だろう けど 、 覚えて みよう と 決めた 。 じゃ ない と 不便だ 。
「 ふ ぁ …… 軽い 」
トコトコ と 荷車 を 運び ながら 、 フィーロ は 欠 伸 交じり に 呟いた 。
三 人 も 乗って いる 荷車 が 軽い の か 。
良い 傾向 だ 。 俺 に は とある 考え が 既に ある 。 フィーロ が い なくて は でき ない 事 だ 。
リユート 村 に 到着 する と 魔法 屋 は 俺 に 銅貨 二五 枚 を くれた 。
「 これ は ? 」 「 運んで くれた 料金 よ 」 「 ああ 、 なるほど 」
これ も 考え の 一 つ に 入れて おこう 。
リユート 村 は 相 も 変わら ず 復興 中 だ 。 宿屋 に 顔 を 出す と 店主 が 快く 俺 達 を 出迎えて くれる 。
「 さて 、 これ から ラフタリア の 乗り物酔い 克服 訓練 と 材木 運び に 出かける 」
肉 の 代償 と して 復興 の 手伝い を する と 約束 した のだ 。
「 え !?」
ラフタリア が 渋い 顔 を する 。 まあ 、 苦手の 克服 と なったら しょうがない か 。
「 これ から 俺 達 の 移動 手段 は フィーロ の 引く 荷車 に なる んだ ぞ 、 慣れろ 」
「 は 、 はい 」
「 は ー い ! 」 「 フィーロ 、 お前 は 引く 側 だ 」 「 うん ! 」 フィロリアル は 本当に 荷車 を 引く の が 好きな んだ な 。 フィーロ の 目 が メチャクチャ 輝いて る 。
「 あの …… 何 か 考え が ? 」 「 ああ 、 これ から 俺 達 は 行商 を 始めよう と 思う んだ 。 ここ の 領主 に 勧められて な 」 「 行商 、 です か ? 」 「 あんまり 品揃え は 良く ない が 薬 を 基本 に な 。 後 は 運び 屋 と か だ な 。 手広く 行きたい 」 「 は ぁ ……」
ラフタリア は ピンと 来 ない ようだ 。 俺 自身 も 成功 する の か 見通し は 立た ない 。 けど 、 どうせ そろそろ 色々 と 回ら なくちゃ いけない 頃合 な のだ 。
「 と 言う わけで 、 運び 屋 も する と なる と 、 フィーロ の 最 高速で 荷車 を 引いて いく こと も ある だろう 。 その 度 に 乗り物酔い で 倒れられたら 俺 も 困る んだ 」 「 理由 は わかりました けど ……」 「 何 …… 酔い にくい と 言わ れる 場所 を 知っている 。 最初 は そこ で 慣れる と いい さ 」
「 そんな 所 が ある んです か ? 」 「 ああ 」 と 、 本日 の 仕事 を 始める 前 に 、 俺 は ラフタリア を 酔い にくい 場所 …… フィーロ の 背中 に 乗せる 。
「 ご しゅじん さま が 良い のに 、 なんで お 姉ちゃん を 背中 に 乗せ なきゃ いけない の ……」
フィーロ は ラフタリア を 背中 に 乗せて ブツブツ と 呟く 。
「 それ は こちら も 同じです 。 これ 、 かなり 恥ずかしい んです よ 」
フクロウ みたいな 体形 を して いる フィーロ が 中腰 で ラフタリア を 乗せる と なんか 変な 感じ だ な 。
「 きつく は ない か ? 」 「 うん 。 楽だ よ ー 」
元々 の 体形 に 近い から な の か 、 フィーロ 自身 は 問題 ない らしい 。
「 じゃあ 行く か 」
「 うん ! フィーロ の 方 が 役 に 立つ もん ! お 姉ちゃん に は 負け ない よ ー 」
「 何 を 競って いる のです か ! 」 「 ご しゅじん さま は フィーロ の 方 が 大事だ もん ! 」 「 負けません ! 」 フィーロ は ラフタリア を 乗せ ながら 荷車 を 引いて 行く 。 荷車 と 合わせて 結構な 重量 が ある はずな のに 、 本人 曰 く そこ まで 重く ない と か 。 と いう か 何 を 言い争って いる の やら 。 俺 は その 間 に 、 翻訳 し ながら 中級 レシピ の 本 の 解読 を 始めた 。
…… ゴトゴト 。
………… ゴトゴト 。
心地 の 好 い 車輪 音 を バック ミュージック に 難解な 異 世界 言語 に 集中 して いる と 。
「 あの …… 何故 その 姿 に ? 」 「 えー ? こうした 方 が ご しゅじん さま 喜ぶ でしょ ? 」 ……………… ゴトゴト 。 「 絶対 に 怒ります から 、 やめ なさい 」 「 でも ご しゅじん さま 、 お 姉ちゃん みたいな の が 好きな んでしょ ? 」 ん ? ふと 気 が 付いて フィーロ の 方 を 見る と 、 何故 か 人 型 に なって ラフタリア を 背負って いる 。 ラフタリア が 困り 顔 で 話し掛けて いた のだった 。
ヒソヒソ と 通りすがり の 冒険 者 が 俺 達 を 指差し ながら 囁き 合って いる 。
「 変な 噂 が 出る ような 事 を する んじゃ ない ! 」 奴隷 の 女の子 に 女の子 を 背負わ せた 挙句 、 荷車 を 引か せて 強制 労働 さ せて いる …… なんて おかしな 噂 が 流れたら やっと 良く なって きた 俺 の 風聞 が 、 また 悪く なる 。 「 えー …… ダメな の ? 」 「 荷車 を 引いて いる 時 も 人 化 する な 」 「 は ぁい 」
不満 そうに フィーロ は 頷き 、 魔物 の 姿 に 戻る 。 たぶん 、 退屈な んだろう 。
ラフタリア も まだ 乗り物酔い を して いない ようだ 。 ならば 少し ハードに して も 大丈夫 か 。
「 よし 、 じゃあ スピード アップ だ 」
「 わ ー い ! 」 俺 の 指示 に フィーロ は テンション を 上げて 頷き 、 走り出す 。 ガラガラ と 荷車 の 車輪 が 音 を 立てて 回る 。
「 わ ! 」 ラフタリア が 驚き の 声 を 出し 、 フィーロ に しがみつく 。 まあ 、 目的 地 まで 早く 辿り着ける だろう 。
このあと も 、 ラフタリア の 乗り物酔い 克服 訓練 は しばらく 続いた 。