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3月のライオン, 3-gatsu no Lion (March comes in like a lion) Episode 15

3- gatsu no Lion ( March comes in like a lion ) Episode 15

( 零 ( れい )) なぜ だろう ?

( 鳥 の 鳴き声 )

急に 思い出した んだ

( 島田 ( しま だ )) 宗谷 ( そう や )?

( 島田 ) そうだ な …

( 零 ) 子供 の ころ —

家 の 庭 に 迷い 込んだ 大きな 翼 の …

白い 鳥

( 島田 ) 鳥 に 似て る

( 関係 者 A ) 宗谷 名人 が 和服 だ !

( 関係 者 B ) 記念 対局 は 双方 スーツ が 通常 だった よ な

( 神宮寺 ( じんぐうじ )) いや ぁ 助かり ました よ 遠野 ( と おの ) 名誉 九 段

( 遠野 ) いやいや 地元 開催 の とき で 良かった

わし の 着物 道楽 が やっと 役 に 立ち ました よ

宗谷 名人 に 着て もらえる なぞ 名誉な こと です

家宝 に さ せて もらい ます よ

( 零 ) 不思議だ

ずっと 物語 の 中 に いた はずな のに —

今 目の前 に 座って いる

息 を して 動いて いる

そして 僕 と 戦う と いう

しっかり しろ ! 昨日 自分 で 言った じゃ ない か

( 零 ) あっという間 に 終わって しまわ ない ように —

集中 して 指し たい … です

今 から 僕 は この 人 と 渡り合わ ねば なら ない のだ

力 の 差 など 分かりきって いる

だが “ 勝つ ため ” 以外 の 心 で 飛び込んだら —

一瞬 で 首 を 吹っ飛ば さ れる

お 願い し ます

♪〜

〜♪

( 関係 者 D ) 相 矢倉 ( あい やぐら ) か ( 関係 者 E ) 初手 合わせ だ から な

( 関係 者 E ) まあ お互い を しっかり 知って おこう と いう と こか

( 関係 者 F ) 自然に 指し 合って いる って 流れ です かな

( 駒 を 打つ 音 )

( 関係 者 D ) うん ? 宗谷 2八 銀 ( 関係 者 E )2八 銀 ?

ホホッ … 質問 状 じゃ な

宗谷 君 から の

“ もしもし あなた は 誰 です か ” って な

( 零 )2八 銀 この 手 は 初めて だ 研究 か ?

… と いう こと は 3八 飛 1九 銀 成

5七 銀 右 8三 香 … か

確かに 脅威 だ けれど 直線 的 すぎる

直撃 さえ 避ければ 問題 ない

むしろ 今 行く べき は 密集 して いる あの —

角 頭 ( かくとう ) だ

( 関係 者 G ) いや ぁ しかし 桐山 ( きり やま ) よく 戦って る よ

( 関係 者 H ) さすが 宗谷 に 次いで 中学生 プロ に なった だけ ある

( 関係 者 I ) う 〜 ん … むしろ この 段階 じゃ —

桐山 の ほう が いい くらい じゃ ない の か ?

( 関係 者 J ) いやいや 新人 の 五 段 と 現 名人 の 対局 の 中盤 で —

“ 新人 の ほう が むしろ 優勢 か ” と か 来たら —

それ は もう ドラマ だったら ただ の 敗北 フラグ だろう

( 遠野 ) ホホホッ … 議論 が 起きる だけ 大した もん じゃ

( 遠野 ) それ だけ の もん が —

あの 子 の 中 に ある って こと じゃ

( 零 ) そうだ 5五 歩 同 銀 左 7五 歩

ここ で ねらい どおり 角 頭 を …

7四 歩 だ

( スパーク 音 )

なぜ だろう ?

駒 から 手 を 離す とき 指先 に かすかに 痛み が 走った

7四 歩 …

違う 何 やって んだ 俺 !

なんで 気づか ない ? 8六 歩 が ある だろう !

ここ で 8六 歩 と とがめ られたら もう あと が ない !

8六 歩 …

ンンッ … ハァ …

( 零 ) 同 歩 …

9五 角

7七 金 寄

( 関係 者 M ) 宗谷 8五 歩 桐山 これ は 厳しい か

( 関係 者 N ) どう する ? ( 関係 者 O ) 同 歩 と 取る か ?

( 関係 者 A ) 9六 歩 ! 同 歩 じゃ ない

( どよめき ) そう か 8五 歩 を 同 歩 と 取る と —

9三 桂 と 跳ね られて 玉 頭 ( ぎょ くとう ) が 支え きれ ない

( 関係 者 P ) なるほど だが ここ まで だろう

( 関係 者 P ) さっき の 7四 歩 が 痛い

( 関係 者 A ) いや でも 宗谷 の 8五 歩 は かわした ぞ

( 遠野 ) お やおや 6八 成 香 と は

宗谷 君 も また 悩ましい 手 を 指して くる

さて さて 桐山 五 段

この 成 香 を 飛車 で 取る か 取ら ぬ か

正解 は …

( 遠野 ) おお エサ に は 手 を 出さ ず じっと 7三 歩 成

淡々と 最善 手 を 指して くる の ぅ

まったく だ から こいつ は 面白い

( 駒 を 打つ 音 )

( 駒 を 打つ 音 )

( 零 ) それ から は 夢中だった ( 駒 を 打つ 音 )

頭 の 中 で 駒 音 が フラッシュ を たいた みたいに バチバチ と 光った

頭 の 中 で 何 か が どんどん 手 を つなげて いく の が 分かった

まるで …

銀色 に 光る まぶしい 水 が —

隅々 に まで 流れ込んで いく ようだった

( 駒 を 打つ 音 )

( 零 ) 指した 7四 歩 から 手 を 離す とき —

指 の 表面 を 引き 剥がす ような 感覚 が あった

( スパーク 音 )

手 を 離した 瞬間 に 敗 着 だ と 気 が ついた

もう あと が なくなった こと が 分かった

… と 同時に ふと 思った

もし ここ から の 手 を 全て 最善 手 のみ で 指し 通せた と したら …

この 将棋 は どこ まで 行ける の か なって

( 風 の 音 )

風 強い な 台風 太平洋 に 抜ける んじゃ ない の か ?

止まったり し ない と いい な

午後 から は 授業 に 出て 半日 休み 扱い に して ほしい んだ けど

宗谷 さん だ

そ っか 同じ 新幹線 か

随分 早い 列車 で 戻る んだ な

長居 は し ない タイプ だ と は 思って いた けれど

あんまり 他人 と 行動 して いる の を 見た こと が ない

笑って 誰 か と 話して いる ところ も

子供 の ころ から ずっと 見て いた けれど —

記憶 の 中 の この 人 は …

そう だ いつも ひと り だ

そう だ 不思議だ

僕 は 昨日 この 人 と 戦った んだ

戦って そして 負けた

何 だろう ?

この 感じ は 初めて だ

負けた の に 体 が 全然 疲れて い ない

気持ち が 全然 重く ない

勝てる わけ が ない と 思って —

はな から 諦めて 当たった わけで は 決して ない つもりだ

ただ 強く 分かった こと は 経験 も 研究 も —

“ 年 の 差 ” と いう 時間 の 分 だけ —

圧倒 的に 追いつけて い ない と いう こと

( 発車 ベル )

その 差 は どう やって 詰めたら いい の かも —

まだ 分から なかった こと

うまく 言え ない けれど 負けて も すがすがしく —

楽しい 気持ち で いら れる なんて —

本当 は 相手 に とても 失礼な こと に 思える

ただ 相手 を 神棚 に 祀 ( まつ ) って 勝手に 拝んで —

一方的に すっきり して いる ようで

まるで 人 を 人 と も 思って い ない ような 気 が して …

( スパーク 音 )

( 零 ) そう 思って きた のに … な のに …

何 だった んだろう ? 昨日 の 対局 は

ほか の 棋士 と 戦って いる とき は どんなに 力 の 差 が あって も —

相手 の 思考 が ある 程度 は トレース できる のに …

彼 だけ は ただ …

真っ白だった

指して いる 間 2 人 で ずっと 真っ白い 中 に いた

それ が とても 心地よかった

( 関係 者 Q ) 何 だった んでしょう ね ? 昨日 の …

宗谷 名人 と 桐山 五 段 の 感想 戦

( 関係 者 R ) あんな の 初めて 見た

2 人 と も ひと っ 言 も しゃべ ん ない まん ま —

進んで いく んだ もん な

( 関係 者 S ) 対局 が 終わって 感想 戦 に なったら —

いきなり 桐山 が —

黙って すごい 勢い で —

駒 を 並べ 始めた んだ よ な

( 関係 者 Q ) そして 63 手 目 まで 戻って —

本 譜 に は なかった 6六 銀 を 指した

( 関係 者 Q ) 宗谷 名人

あの とき うなずき ました よ ね 小さかった けど

( 関係 者 R ) 桐山 の 敗 着 は やっぱり あの 7四 歩 で —

感想 戦 で 指した 6六 銀 が 有望だった と いう こと な んだろう な

( 関係 者 Q ) … で すごい の は その あと だ

桐山 が 感想 戦 が 終わった とき —

一瞬 自分 の 指 を チラッ と 見た んです よ

ただ それ だけ な のに …

( 宗谷 ) そういう もん だ よ

( 関係 者 Q ) あれ は 何 だった んでしょう ね ?

確かに 言った んです よ 名人 が “ そういう もん だ よ ” って

桐山 は ただ の ひと言 も しゃべって ない のに

( 零 ) あの とき びっくり した んだ

考えて た こと が 口 に 出て しまった の か と 思った

言葉 に して ない の に 通じた

こんな 世界 が ある の か と 思った

静かで 明るくて 何も —

怖く ない 所 に いた

( 零 )12 時 を 過ぎて 仙台 ( せんだい ) 駅 に 入った ところ で —

新幹線 が 動か なく なった

( アナウンス ) 阿武 隈 川 ( あぶく ま がわ ) 水位 上昇 の ため 運行 を 見合わせ ます

なお 運転 再開 の 見通し は 立って おり ませ ん

繰り返し ご 乗車 の …

( 零 ) えっ ? えっ ? 早 ( はや ) っ !

( アナウンス ) 台風 2 号 の 影響 で 運行 を 見合わせて おり ます

繰り返し ます

台風 2 号 の 影響 で 運行 を 見合わせて おり ます

お 急ぎ の ところ 大変 申し訳 あり ませ ん

台風 2 号 の 影響 で 運行 を 見合わせて おり ます

( 零 ) あっ …

( 零 ) 寝て る

宗谷 さん あの …

あの … 宗谷 さん

どう しよう

( 零 ) あの … ( 宗谷 ) うん ?

( 宗谷 ) ハッ … ( 零 ) あっ …

すいません

あの … でも この 電車 もう 動か ない みたいな んで

ハァ …

( 零 ) 宗谷 さん ?

今日 は もう 運転 の 再開 の 見込み は ない みたいだ って さっき 放送 で …

な ので チケット の 払い戻し と あと …

( 零 ) 何も 届いて い ない か の ような 表情 に —

胸 が ザワザワ と 騒ぎ だした

今晩 泊まる 所 を 押さえ ない と

全て の ピース が 合致 した

放って は おけ ない と 思い 手 を 引いた

この 人 の 周り から 音 が 消えて 見えた ので は なかった

この 人 の 中 に 音 が ない のだ

どうして ? いつ から ?

分から ない

この 人 の 耳 に は もう 何も 届いて は い ない のだ

( 雨 の 音 )

( アナウンス ) 運転 再開 の 見込み は …

( 零 ) 駅 に は アナウンス が 流れ 続け 重たい 雨 の 湿気 の 中 —

構内 は たくさんの 人 で ごった返して いた

今日 は もう 動か ない

… と いう こと は 特急 券 の 払い戻し を すれば いい の か

( アナウンス ) 台風 2 号 の 影響 の ため …

( 零 ) 切符 売り場 混 んで そうだ な ちょっと 出遅れた から

え 〜 っと … それ じゃ いったん 改札 を 出 ましょう

僕 が 並んで え 〜 特急 券 の 精算 を して くる ので …

うん ? 宗谷 さん ?

あっ …

( 零 ) どうも

そ っか 払い戻し だ から ここ でも できる の か なるほど

これ で 払い戻し と 乗車 券 の 手続き は 済んだ から

え 〜 っと 次 は … そうだ 泊まる 所 泊まる 所 を 確保 し ない と

大きな 駅 だ から きっと 案内 板 と か が …

うん ?

あっ あった

え 〜 っと … どれ が いい んだ ?

とにかく 雨 が すご そうだ から なるべく 駅 から 近くて —

地下 道 と か で つながって る 所

( 零 ) そうです か 満室 です か

分かり ました ありがとう ございます はい

駅 から すぐ の ホテル は もう みんな アウト か

でも じゃ あと ホテル って どれ が いい んだ ?

自分 だけ なら 何でも いい んだ けど

あっ …

“ 盛 泉 ( せいせん ) イン ”… あ 〜 東京 に も よく ある やつ だ

そこ なら 歩いて 行け ます ね そんなに 遠く ない

はい 空いて ます か ? はい シングル 2( ふた ) 部屋 で

はい これ から 行き ます はい

( 電話 を 切る 音 ) よ 〜 し 取れ ました 良かった

さあ 行き ましょう

( 零 ) きっと この グレー の 所 が 地下 道 だ から —

ギリギリ まで 下 で 行って 上 に 出 ましょう

そう だ 傘 ! 傘 買わ ない と

ハッ … ない !

( 零 ) 良かった あった 傘 あり ました

一斉に なくなる んです ね 危なかった

さあ 行き ましょう

( 零 ) 現 実感 が なかった

でも 不思議な 高揚 感 が あった

( 雷鳴 )

きっと 全部 この 台風 の せい だ

( 零 ) ウワッ … タクシー すごい 列

ウオッ … 雨 す ご っ !

( 零 ) あれ ? え 〜 っと … なんか お 店 に なった ぞ

こっち から 出 られる の か な …

( 雨 の 音 )

( 零 ) あれ ? え 〜 っと これ は … トラック ?

搬入 口 か ? こっか ら 出て いい の か な …

おもむろに ?

( 零 ) あっ …

今 の 分 夜 の 分 と 朝 の か

え 〜 っと あと は サンドイッチ と おにぎり と カップ ラーメン と …

よし うん

買い 過ぎ かも しれ ない けど —

この 雨 じゃ もう 買い に 来 られ ない から な

( 店員 ) 合計 で 1,540 円 です

それ だけ ? … てい うか なに か 非 常食 っぽい ラインナップ

( 店員 ) 合計 で 2,980 円 です

えっ ? あれ ? そんなに ?

( ドア チャイム ) ( 店員 ) ありがとう ございました

見えた

多分 あれ だ

♪〜

〜♪

( 零 ) 歩き だす と —

歩き だす

立ち止まる と —

立ち止まる

僕 の あと を 静かに —

神さま が ついてくる

( 神宮寺 ) 俺 だ 俺 お前 大丈夫 か ?

( 零 ) 現 実感 が まるで なかった

( 神宮寺 ) もう ずっと —

〝 聞こえる 〞 と 〝 聞こえ ない 〞 を —

行ったり 来たり して いる

( 零 ) あの 雨 の 中 —

2 人 で 確かに 一緒に 歩いた のに …

( 神宮寺 ) あそこ の 露天 風呂 最高な んだ よ な

桐山 ちゃん も 入れば よかった のに


3- gatsu no Lion ( March comes in like a lion ) Episode 15

( 零 ( れい )) なぜ だろう ? ぜろ|||

( 鳥 の 鳴き声 ) ちょう||なきごえ

急に 思い出した んだ きゅうに|おもいだした|

( 島田 ( しま だ )) 宗谷 ( そう や )? しまだ|||そうや||

( 島田 ) そうだ な … しまだ|そう だ|

( 零 ) 子供 の ころ — ぜろ|こども||

家 の 庭 に 迷い 込んだ 大きな 翼 の … いえ||にわ||まよい|こんだ|おおきな|つばさ|

白い 鳥 しろい|ちょう

( 島田 ) 鳥 に 似て る しまだ|ちょう||にて|

( 関係 者 A ) 宗谷 名人 が 和服 だ ! かんけい|もの||そうや|めいじん||わふく|

( 関係 者 B ) 記念 対局 は 双方 スーツ が 通常 だった よ な かんけい|もの||きねん|たいきょく||そうほう|すーつ||つうじょう|||

( 神宮寺 ( じんぐうじ )) いや ぁ 助かり ました よ 遠野 ( と おの ) 名誉 九 段 じんぐうじ||||たすかり|||とおの|||めいよ|ここの|だん

( 遠野 ) いやいや 地元 開催 の とき で 良かった とおの||じもと|かいさい||||よかった

わし の 着物 道楽 が やっと 役 に 立ち ました よ ||きもの|どうらく|||やく||たち||

宗谷 名人 に 着て もらえる なぞ 名誉な こと です そうや|めいじん||きて|||めいよな||

家宝 に さ せて もらい ます よ かほう||||||

( 零 ) 不思議だ ぜろ|ふしぎだ

ずっと 物語 の 中 に いた はずな のに — |ものがたり||なか||||

今 目の前 に 座って いる いま|めのまえ||すわって|

息 を して 動いて いる いき|||うごいて|

そして 僕 と 戦う と いう |ぼく||たたかう||

しっかり しろ ! 昨日 自分 で 言った じゃ ない か ||きのう|じぶん||いった|||

( 零 ) あっという間 に 終わって しまわ ない ように — ぜろ|あっというま||おわって|||よう に

集中 して 指し たい … です しゅうちゅう||さし||

今 から 僕 は この 人 と 渡り合わ ねば なら ない のだ いま||ぼく|||じん||わたりあわ||||

力 の 差 など 分かりきって いる ちから||さ||わかりきって|

だが “ 勝つ ため ” 以外 の 心 で 飛び込んだら — |かつ||いがい||こころ||とびこんだら

一瞬 で 首 を 吹っ飛ば さ れる いっしゅん||くび||ふっとば||

お 願い し ます |ねがい||

♪〜

〜♪

( 関係 者 D ) 相 矢倉 ( あい やぐら ) か ( 関係 者 E ) 初手 合わせ だ から な かんけい|もの||そう|やぐら||||かんけい|もの||しょて|あわせ|||

( 関係 者 E ) まあ お互い を しっかり 知って おこう と いう と こか かんけい|もの|||おたがい|||しって|||||

( 関係 者 F ) 自然に 指し 合って いる って 流れ です かな かんけい|もの||しぜんに|さし|あって|||ながれ||

( 駒 を 打つ 音 ) こま||うつ|おと

( 関係 者 D ) うん ?  宗谷 2八 銀 ( 関係 者 E )2八 銀 ? かんけい|もの|||そうや|やっ|ぎん|かんけい|もの||やっ|ぎん

ホホッ …  質問 状 じゃ な |しつもん|じょう||

宗谷 君 から の そうや|きみ||

“ もしもし あなた は 誰 です か ” って な |||だれ||||

( 零 )2八 銀 この 手 は 初めて だ   研究 か ? ぜろ|やっ|ぎん||て||はじめて||けんきゅう|

… と いう こと は 3八 飛 1九 銀 成 ||||やっ|と|ここの|ぎん|しげ

5七 銀 右 8三 香 … か なな|ぎん|みぎ|みっ|かおり|

確かに 脅威 だ けれど 直線 的 すぎる たしかに|きょうい|||ちょくせん|てき|

直撃 さえ 避ければ 問題 ない ちょくげき||さければ|もんだい|

むしろ 今 行く べき は 密集 して いる あの — |いま|いく|||みっしゅう|||

角 頭 ( かくとう ) だ かど|あたま||

( 関係 者 G ) いや ぁ しかし 桐山 ( きり やま ) よく 戦って る よ かんけい|もの|||||きりやま||||たたかって||

( 関係 者 H ) さすが 宗谷 に 次いで 中学生 プロ に なった だけ ある かんけい|もの|||そうや||ついで|ちゅうがくせい|ぷろ||||

( 関係 者 I ) う 〜 ん … むしろ この 段階 じゃ — かんけい|もの||||||だんかい|

桐山 の ほう が いい くらい じゃ ない の か ? きりやま|||||||||

( 関係 者 J ) いやいや   新人 の 五 段 と 現 名人 の 対局 の 中盤 で — かんけい|もの|||しんじん||いつ|だん||げん|めいじん||たいきょく||ちゅうばん|

“ 新人 の ほう が むしろ 優勢 か ” と か 来たら — しんじん|||||ゆうせい||||きたら

それ は もう ドラマ だったら ただ の 敗北 フラグ だろう |||どらま||||はいぼく||

( 遠野 ) ホホホッ … 議論 が 起きる だけ 大した もん じゃ とおの||ぎろん||おきる||たいした||

( 遠野 ) それ だけ の もん が — とおの|||||

あの 子 の 中 に ある って こと じゃ |こ||なか|||||

( 零 ) そうだ  5五 歩 同 銀 左 7五 歩 ぜろ|そう だ|いつ|ふ|どう|ぎん|ひだり|いつ|ふ

ここ で ねらい どおり 角 頭 を … ||||かど|あたま|

7四 歩 だ よっ|ふ|

( スパーク 音 ) |おと

なぜ だろう ?

駒 から 手 を 離す とき 指先 に かすかに 痛み が 走った こま||て||はなす||ゆびさき|||いたみ||はしった

7四 歩 … よっ|ふ

違う 何 やって んだ 俺 ! ちがう|なん|||おれ

なんで 気づか ない ? 8六 歩 が ある だろう ! |きづか||むっ|ふ|||

ここ で 8六 歩 と とがめ られたら もう あと が ない ! ||むっ|ふ|||||||

8六 歩 … むっ|ふ

ンンッ …  ハァ …

( 零 ) 同 歩 … ぜろ|どう|ふ

9五 角 いつ|かど

7七 金 寄 なな|きむ|よ

( 関係 者 M ) 宗谷 8五 歩   桐山 これ は 厳しい か かんけい|もの||そうや|いつ|ふ|きりやま|||きびしい|

( 関係 者 N ) どう する ? ( 関係 者 O ) 同 歩 と 取る か ? かんけい|もの||||かんけい|もの||どう|ふ||とる|

( 関係 者 A ) 9六 歩 !  同 歩 じゃ ない かんけい|もの||むっ|ふ|どう|ふ||

( どよめき ) そう か 8五 歩 を 同 歩 と 取る と — |||いつ|ふ||どう|ふ||とる|

9三 桂 と 跳ね られて 玉 頭 ( ぎょ くとう ) が 支え きれ ない みっ|かつら||はね||たま|あたま||||ささえ||

( 関係 者 P ) なるほど   だが ここ まで だろう かんけい|もの||||||

( 関係 者 P ) さっき の 7四 歩 が 痛い かんけい|もの||||よっ|ふ||いたい

( 関係 者 A ) いや でも 宗谷 の 8五 歩 は かわした ぞ かんけい|もの||||そうや||いつ|ふ|||

( 遠野 ) お やおや  6八 成 香 と は とおの|||やっ|しげ|かおり||

宗谷 君 も また 悩ましい 手 を 指して くる そうや|きみ|||なやましい|て||さして|

さて さて 桐山 五 段 ||きりやま|いつ|だん

この 成 香 を 飛車 で 取る か 取ら ぬ か |しげ|かおり||ひしゃ||とる||とら||

正解 は … せいかい|

( 遠野 ) おお   エサ に は 手 を 出さ ず じっと 7三 歩 成 とおの||えさ|||て||ださ|||みっ|ふ|しげ

淡々と 最善 手 を 指して くる の ぅ たんたんと|さいぜん|て||さして|||

まったく   だ から こいつ は 面白い |||||おもしろい

( 駒 を 打つ 音 ) こま||うつ|おと

( 駒 を 打つ 音 ) こま||うつ|おと

( 零 ) それ から は 夢中だった ( 駒 を 打つ 音 ) ぜろ||||むちゅうだった|こま||うつ|おと

頭 の 中 で 駒 音 が フラッシュ を たいた みたいに バチバチ と 光った あたま||なか||こま|おと||ふらっしゅ||||||ひかった

頭 の 中 で 何 か が どんどん 手 を つなげて いく の が 分かった あたま||なか||なん||||て||||||わかった

まるで …

銀色 に 光る まぶしい 水 が — ぎんいろ||ひかる||すい|

隅々 に まで 流れ込んで いく ようだった すみずみ|||ながれこんで||

( 駒 を 打つ 音 ) こま||うつ|おと

( 零 ) 指した 7四 歩 から 手 を 離す とき — ぜろ|さした|よっ|ふ||て||はなす|

指 の 表面 を 引き 剥がす ような 感覚 が あった ゆび||ひょうめん||ひき|はがす||かんかく||

( スパーク 音 ) |おと

手 を 離した 瞬間 に 敗 着 だ と 気 が ついた て||はなした|しゅんかん||はい|ちゃく|||き||

もう あと が なくなった こと が 分かった ||||||わかった

… と 同時に ふと 思った |どうじに||おもった

もし ここ から の 手 を 全て 最善 手 のみ で 指し 通せた と したら … ||||て||すべて|さいぜん|て|||さし|とおせた||

この 将棋 は どこ まで 行ける の か なって |しょうぎ||||いける|||

( 風 の 音 ) かぜ||おと

風 強い な   台風 太平洋 に 抜ける んじゃ ない の か ? かぜ|つよい||たいふう|たいへいよう||ぬける||||

止まったり し ない と いい な とまったり|||||

午後 から は 授業 に 出て 半日 休み 扱い に して ほしい んだ けど ごご|||じゅぎょう||でて|はんにち|やすみ|あつかい|||||

宗谷 さん だ そうや||

そ っか   同じ 新幹線 か ||おなじ|しんかんせん|

随分 早い 列車 で 戻る んだ な ずいぶん|はやい|れっしゃ||もどる||

長居 は し ない タイプ だ と は 思って いた けれど ながい||||たいぷ||||おもって||

あんまり 他人 と 行動 して いる の を 見た こと が ない |たにん||こうどう|||||みた|||

笑って 誰 か と 話して いる ところ も わらって|だれ|||はなして|||

子供 の ころ から ずっと 見て いた けれど — こども|||||みて||

記憶 の 中 の この 人 は … きおく||なか|||じん|

そう だ   いつも ひと り だ

そう だ   不思議だ ||ふしぎだ

僕 は 昨日 この 人 と 戦った んだ ぼく||きのう||じん||たたかった|

戦って そして 負けた たたかって||まけた

何 だろう ? なん|

この 感じ は 初めて だ |かんじ||はじめて|

負けた の に 体 が 全然 疲れて い ない まけた|||からだ||ぜんぜん|つかれて||

気持ち が 全然 重く ない きもち||ぜんぜん|おもく|

勝てる わけ が ない と 思って — かてる|||||おもって

はな から 諦めて 当たった わけで は 決して ない つもりだ ||あきらめて|あたった|||けっして||

ただ 強く 分かった こと は 経験 も 研究 も — |つよく|わかった|||けいけん||けんきゅう|

“ 年 の 差 ” と いう 時間 の 分 だけ — とし||さ|||じかん||ぶん|

圧倒 的に 追いつけて い ない と いう こと あっとう|てきに|おいつけて|||||

( 発車 ベル ) はっしゃ|べる

その 差 は どう やって 詰めたら いい の かも — |さ||||つめたら|||

まだ 分から なかった こと |わから||

うまく 言え ない けれど 負けて も すがすがしく — |いえ|||まけて||

楽しい 気持ち で いら れる なんて — たのしい|きもち||||

本当 は 相手 に とても 失礼な こと に 思える ほんとう||あいて|||しつれいな|||おもえる

ただ 相手 を 神棚 に 祀 ( まつ ) って 勝手に 拝んで — |あいて||かみだな||し|||かってに|おがんで

一方的に すっきり して いる ようで いっぽうてきに||||

まるで 人 を 人 と も 思って い ない ような 気 が して … |じん||じん|||おもって||||き||

( スパーク 音 ) |おと

( 零 ) そう 思って きた のに …  な のに … ぜろ||おもって||||

何 だった んだろう ?  昨日 の 対局 は なん|||きのう||たいきょく|

ほか の 棋士 と 戦って いる とき は どんなに 力 の 差 が あって も — ||きし||たたかって|||||ちから||さ|||

相手 の 思考 が ある 程度 は トレース できる のに … あいて||しこう|||ていど||とれーす||

彼 だけ は ただ … かれ|||

真っ白だった まっしろだった

指して いる 間 2 人 で ずっと 真っ白い 中 に いた さして||あいだ|じん|||まっしろい|なか||

それ が とても 心地よかった |||ここちよかった

( 関係 者 Q ) 何 だった んでしょう ね ?  昨日 の … かんけい|もの||なん||||きのう|

宗谷 名人 と 桐山 五 段 の 感想 戦 そうや|めいじん||きりやま|いつ|だん||かんそう|いくさ

( 関係 者 R ) あんな の 初めて 見た かんけい|もの||||はじめて|みた

2 人 と も ひと っ 言 も しゃべ ん ない まん ま — じん|||||げん||||||

進んで いく んだ もん な すすんで||||

( 関係 者 S ) 対局 が 終わって 感想 戦 に なったら — かんけい|もの||たいきょく||おわって|かんそう|いくさ||

いきなり 桐山 が — |きりやま|

黙って すごい 勢い で — だまって||いきおい|

駒 を 並べ 始めた んだ よ な こま||ならべ|はじめた|||

( 関係 者 Q ) そして 63 手 目 まで 戻って — かんけい|もの|||て|め||もどって

本 譜 に は なかった 6六 銀 を 指した ほん|ふ||||むっ|ぎん||さした

( 関係 者 Q ) 宗谷 名人 かんけい|もの||そうや|めいじん

あの とき うなずき ました よ ね 小さかった けど ||||||ちいさかった|

( 関係 者 R ) 桐山 の 敗 着 は やっぱり あの 7四 歩 で — かんけい|もの||きりやま||はい|ちゃく||||よっ|ふ|

感想 戦 で 指した 6六 銀 が 有望だった と いう こと な んだろう な かんそう|いくさ||さした|むっ|ぎん||ゆうぼうだった||||||

( 関係 者 Q ) … で すごい の は その あと だ かんけい|もの||||||||

桐山 が 感想 戦 が 終わった とき — きりやま||かんそう|いくさ||おわった|

一瞬 自分 の 指 を チラッ と 見た んです よ いっしゅん|じぶん||ゆび||||みた|ん です|

ただ それ だけ な のに …

( 宗谷 ) そういう もん だ よ そうや||||

( 関係 者 Q ) あれ は 何 だった んでしょう ね ? かんけい|もの||||なん|||

確かに 言った んです よ 名人 が “ そういう もん だ よ ” って たしかに|いった|ん です||めいじん||||||

桐山 は ただ の ひと言 も しゃべって ない のに きりやま||||ひとこと||||

( 零 ) あの とき びっくり した んだ ぜろ|||||

考えて た こと が 口 に 出て しまった の か と 思った かんがえて||||くち||でて|||||おもった

言葉 に して ない の に 通じた ことば||||||つうじた

こんな 世界 が ある の か と 思った |せかい||||||おもった

静かで 明るくて 何も — しずかで|あかるくて|なにも

怖く ない 所 に いた こわく||しょ||

( 零 )12 時 を 過ぎて 仙台 ( せんだい ) 駅 に 入った ところ で — ぜろ|じ||すぎて|せんだい||えき||はいった||

新幹線 が 動か なく なった しんかんせん||うごか||

( アナウンス ) 阿武 隈 川 ( あぶく ま がわ ) 水位 上昇 の ため 運行 を 見合わせ ます あなうんす|あぶ|くま|かわ||||すいい|じょうしょう|||うんこう||みあわせ|

なお 運転 再開 の 見通し は 立って おり ませ ん |うんてん|さいかい||みとおし||たって|||

繰り返し ご 乗車 の … くりかえし||じょうしゃ|

( 零 ) えっ ?  えっ ?  早 ( はや ) っ ! ぜろ|||はや||

( アナウンス ) 台風 2 号 の 影響 で 運行 を 見合わせて おり ます あなうんす|たいふう|ごう||えいきょう||うんこう||みあわせて||

繰り返し ます くりかえし|

台風 2 号 の 影響 で 運行 を 見合わせて おり ます たいふう|ごう||えいきょう||うんこう||みあわせて||

お 急ぎ の ところ 大変 申し訳 あり ませ ん |いそぎ|||たいへん|もうし わけ|||

台風 2 号 の 影響 で 運行 を 見合わせて おり ます たいふう|ごう||えいきょう||うんこう||みあわせて||

( 零 ) あっ … ぜろ|

( 零 ) 寝て る ぜろ|ねて|

宗谷 さん   あの … そうや||

あの …  宗谷 さん |そうや|

どう しよう

( 零 ) あの … ( 宗谷 ) うん ? ぜろ||そうや|

( 宗谷 ) ハッ … ( 零 ) あっ … そうや||ぜろ|

すいません

あの …  でも この 電車 もう 動か ない みたいな んで |||でんしゃ||うごか|||

ハァ …

( 零 ) 宗谷 さん ? ぜろ|そうや|

今日 は もう 運転 の 再開 の 見込み は ない みたいだ って さっき 放送 で … きょう|||うんてん||さいかい||みこみ||||||ほうそう|

な ので チケット の 払い戻し と あと … ||ちけっと||はらいもどし||

( 零 ) 何も 届いて い ない か の ような 表情 に — ぜろ|なにも|とどいて||||||ひょうじょう|

胸 が ザワザワ と 騒ぎ だした むね||||さわぎ|

今晩 泊まる 所 を 押さえ ない と こんばん|とまる|しょ||おさえ||

全て の ピース が 合致 した すべて||ぴーす||がっち|

放って は おけ ない と 思い 手 を 引いた はなって|||||おもい|て||ひいた

この 人 の 周り から 音 が 消えて 見えた ので は なかった |じん||まわり||おと||きえて|みえた|||

この 人 の 中 に 音 が ない のだ |じん||なか||おと|||

どうして ?  いつ から ?

分から ない わから|

この 人 の 耳 に は もう 何も 届いて は い ない のだ |じん||みみ||||なにも|とどいて||||

( 雨 の 音 ) あめ||おと

( アナウンス ) 運転 再開 の 見込み は … あなうんす|うんてん|さいかい||みこみ|

( 零 ) 駅 に は アナウンス が 流れ 続け 重たい 雨 の 湿気 の 中 — ぜろ|えき|||あなうんす||ながれ|つづけ|おもたい|あめ||しっけ||なか

構内 は たくさんの 人 で ごった返して いた こうない|||じん||ごったがえして|

今日 は もう 動か ない きょう|||うごか|

… と いう こと は 特急 券 の 払い戻し を すれば いい の か ||||とっきゅう|けん||はらいもどし|||||

( アナウンス ) 台風 2 号 の 影響 の ため … あなうんす|たいふう|ごう||えいきょう||

( 零 ) 切符 売り場 混 んで そうだ な ちょっと 出遅れた から ぜろ|きっぷ|うりば|こん||そう だ|||でおくれた|

え 〜 っと …  それ じゃ いったん 改札 を 出 ましょう |||||かいさつ||だ|

僕 が 並んで え 〜 特急 券 の 精算 を して くる ので … ぼく||ならんで||とっきゅう|けん||せいさん||||

うん ?  宗谷 さん ? |そうや|

あっ …

( 零 ) どうも ぜろ|

そ っか   払い戻し だ から ここ でも できる の か   なるほど ||はらいもどし||||||||

これ で 払い戻し と 乗車 券 の 手続き は 済んだ から ||はらいもどし||じょうしゃ|けん||てつづき||すんだ|

え 〜 っと 次 は …  そうだ 泊まる 所 泊まる 所 を 確保 し ない と ||つぎ||そう だ|とまる|しょ|とまる|しょ||かくほ|||

大きな 駅 だ から きっと 案内 板 と か が … おおきな|えき||||あんない|いた|||

うん ?

あっ あった

え 〜 っと …  どれ が いい んだ ?

とにかく 雨 が すご そうだ から なるべく 駅 から 近くて — |あめ|||そう だ|||えき||ちかくて

地下 道 と か で つながって る 所 ちか|どう||||||しょ

( 零 ) そうです か   満室 です か ぜろ|そう です||まんしつ||

分かり ました ありがとう ございます   はい わかり||||

駅 から すぐ の ホテル は もう みんな アウト か えき||||ほてる||||あうと|

でも じゃ あと ホテル って どれ が いい んだ ? |||ほてる|||||

自分 だけ なら 何でも いい んだ けど じぶん|||なんでも|||

あっ …

“ 盛 泉 ( せいせん ) イン ”… あ 〜 東京 に も よく ある やつ だ さかり|いずみ||いん||とうきょう||||||

そこ なら 歩いて 行け ます ね そんなに 遠く ない ||あるいて|いけ||||とおく|

はい   空いて ます か ? はい   シングル 2( ふた ) 部屋 で |あいて||||しんぐる||へや|

はい これ から 行き ます   はい |||いき||

( 電話 を 切る 音 ) よ 〜 し 取れ ました   良かった でんわ||きる|おと|||とれ||よかった

さあ 行き ましょう |いき|

( 零 ) きっと この グレー の 所 が 地下 道 だ から — ぜろ|||ぐれー||しょ||ちか|どう||

ギリギリ まで 下 で 行って 上 に 出 ましょう ぎりぎり||した||おこなって|うえ||だ|

そう だ 傘 !  傘 買わ ない と ||かさ|かさ|かわ||

ハッ …  ない !

( 零 ) 良かった   あった   傘 あり ました ぜろ|よかった||かさ||

一斉に なくなる んです ね 危なかった いっせいに||ん です||あぶなかった

さあ 行き ましょう |いき|

( 零 ) 現 実感 が なかった ぜろ|げん|じっかん||

でも 不思議な 高揚 感 が あった |ふしぎな|こうよう|かん||

( 雷鳴 ) らいめい

きっと 全部 この 台風 の せい だ |ぜんぶ||たいふう|||

( 零 ) ウワッ …  タクシー すごい 列 ぜろ||たくしー||れつ

ウオッ …  雨 す ご っ ! |あめ|||

( 零 ) あれ ?  え 〜 っと … なんか お 店 に なった ぞ ぜろ||||||てん|||

こっち から 出 られる の か な … ||だ||||

( 雨 の 音 ) あめ||おと

( 零 ) あれ ? え 〜 っと これ は …  トラック ? ぜろ||||||とらっく

搬入 口 か ? こっか ら 出て いい の か な … はんにゅう|くち||||でて||||

おもむろに ?

( 零 ) あっ … ぜろ|

今 の 分 夜 の 分 と 朝 の か いま||ぶん|よ||ぶん||あさ||

え 〜 っと あと は サンドイッチ と おにぎり と カップ ラーメン と … ||||さんどいっち||||かっぷ|らーめん|

よし   うん

買い 過ぎ かも しれ ない けど — かい|すぎ||||

この 雨 じゃ もう 買い に 来 られ ない から な |あめ|||かい||らい||||

( 店員 ) 合計 で 1,540 円 です てんいん|ごうけい||えん|

それ だけ ? … てい うか なに か 非 常食 っぽい ラインナップ ||||||ひ|じょうしょく||

( 店員 ) 合計 で 2,980 円 です てんいん|ごうけい||えん|

えっ ?  あれ ?  そんなに ?

( ドア チャイム ) ( 店員 ) ありがとう ございました どあ|ちゃいむ|てんいん||

見えた みえた

多分 あれ だ たぶん||

♪〜

〜♪

( 零 ) 歩き だす と — ぜろ|あるき||

歩き だす あるき|

立ち止まる と — たちどまる|

立ち止まる たちどまる

僕 の あと を 静かに — ぼく||||しずかに

神さま が ついてくる かみさま||

( 神宮寺 ) 俺 だ 俺 お前 大丈夫 か ? じんぐうじ|おれ||おれ|おまえ|だいじょうぶ|

( 零 ) 現 実感 が まるで なかった ぜろ|げん|じっかん|||

( 神宮寺 ) もう ずっと — じんぐうじ||

〝 聞こえる 〞 と 〝 聞こえ ない 〞 を — きこえる||きこえ||

行ったり 来たり して いる おこなったり|きたり||

( 零 ) あの 雨 の 中 — ぜろ||あめ||なか

2 人 で 確かに 一緒に 歩いた のに … じん||たしかに|いっしょに|あるいた|

( 神宮寺 ) あそこ の 露天 風呂 最高な んだ よ な じんぐうじ|||ろてん|ふろ|さいこうな|||

桐山 ちゃん も 入れば よかった のに きりやま|||はいれば||