三
すると こんど も 、 お となり の 欲ばり お じいさん と おばあ さん が それ を 知って うらやましがって 、 また ずうずうしく うす を かりに きました 。 人 の いい お じいさん と おばあ さん は 、 こんど も うっかり うす を かして やりました 。 うす を かりる と さっそく 、 欲ばり お じいさん は 、 うす の なか に お 米 を 入れて 、 おばあ さん を あいて に 、「 ぺん たら こっこ 、 ぺん たら こっこ 」 と 、 つき はじめました が 、 どうして お 米 が わき出す どころ か 、 こんど も ぷん と いやな に おい が して 、 なか から うじゃうじゃ 、 きたない もの が 出て きて 、 うす に あふれて 、 そと に こぼれ 出して 、 やがて 、 台所 いっぱい 、 きたない もの だらけ に なりました 。 欲ばり お じいさん は 、 また かんしゃく を おこして 、 うす を たたき こわして 、 薪 に して も して しまいました 。 正直 お じいさん は 、 うす を 返して もらい に 行きます と 、 灰 に なって いました から 、 びっくり しました 。 でも 、 も して しまった もの は しかた が ありません から 、 がっかり し ながら 、 ざる の なか に 、 のこった 灰 を かきあつめて 、 しおしお うち へ 帰りました 。 「 おばあ さん 、 白 の まつ の 木 が 、 灰 に なって しまった よ 」
こう いって お じいさん は 、 お 庭 の すみ の 白 の お 墓 の ところ まで 、 灰 を かかえて 行って まきます と 、 どこ から か 、 す うすう あたたかい 風 が 吹いて きて 、 ぱっと 、 灰 を お 庭 いっぱい に 吹き ちらしました 。 すると どう でしょう 、 そこら に 枯れ木 の まま 立って いた うめ の 木 や 、 さくら の 木 が 、 灰 を かぶる と 、 みるみる それ が 花 に なって 、 よそ は まだ 冬 の さなか な のに 、 お じいさん の お 庭 ばかり は 、 すっかり 春 げ しき に なって しまいました 。 お じいさん は 、 手 を たたいて よろこびました 。 「 これ は おもしろい 。 ついでに 、 いっそ 、 ほうぼう の 木 に 花 を 咲か せて やりましょう 」 そこ で 、 お じいさん は 、 ざる に のこった 灰 を かかえて 、「 花咲 かじ じい 、 花咲 かじ じい 、 日本 一 の 花咲 かじ じい 、 枯れ木 に 花 を 咲か せましょう 」 と 、 往来 を よんで あるきました 。 すると 、 むこう から 殿さま が 、 馬 に のって 、 おおぜい 家来 を つれて 、 狩 から 帰って きました 。 殿さま は 、 お じいさん を よんで 、「 ほう 、 めずらしい じ じい だ 。 では そこ の さくら の 枯れ木 に 、 花 を 咲か せて 見せよ 」 と いいつけました 。 お じいさん は 、 さっそく ざる を かかえて 、 さくら の 木 に 上がって 、「 金 の さくら 、 さらさら 。 銀 の さくら 、 さらさら 」 と いい ながら 、 灰 を つかんで ふりまきます と 、 みるみる 花 が 咲き 出して 、 やがて いちめん 、 さくら の 花ざかり に なりました 。 殿さま は びっくり して 、「 これ は みごとだ 。 これ は ふしぎだ 」 と いって 、 お じいさん を ほめて 、 たくさんに ご ほうび を くださ いました 。 すると また 、 お となり の 欲ばり お じいさん が 、 それ を きいて 、 うらやましがって 、 のこって いる 灰 を かきあつめて ざる に 入れて 、 正直 お じいさん の まね を して 、「 花咲 かじ じい 、 花咲 かじ じい 、 日本 一 の 花咲 かじ じい 、 枯れ木 に 花 を 咲か せましょう 」 と 、 往来 を どなって あるきました 。 すると こんど も 、 殿さま が とおりかかって 、「 こない だの 花咲 かじ じい が きた な 。 また 花 を 咲か せて 見せよ 」 と いいました 。 欲ばり お じいさん は 、 とくい らしい 顔 を し ながら 、 灰 を 入れた ざる を かかえて 、 さくら の 木 に 上がって 、 おなじ ように 、「 金 の さくら 、 さらさら 。 銀 の さくら 、 さらさら 」 と となえ ながら 、 やたらに 灰 を ふりまきました が 、 いっこうに 花 は 咲きません 。 する うち 、 どっと ひどい 風 が 吹いて きて 、 灰 は 遠慮 なし に 四方八方 へ 、 ばらばら 、 ばらばら ちって 、 殿さま や ご 家来 の 目 や 鼻 の なか へ はいりました 。 そこ でも ここ でも 、 目 を こする やら 、 くしゃみ を する やら 、 あたま の 毛 を はらう やら 、たいへんな さわぎ に なりました 。 殿さま はたいそう お 腹立ち に なって 、「 にせもの の 花咲 かじ じい に ちがいない 。 ふとどきな やつ だ 」 と いって 、 欲ばり お じいさん を 、 しばら せて しまいました 。 お じいさん は 、「 ごめんなさい 。 ごめんなさい 」 と いいました が 、 とうとう ろう屋 へ つれて 行か れました 。