第 三 章 彼女 は 誰 に 出会った か?【4】
だい|みっ|しょう|かのじょ||だれ||であった|
|||she||||met|
Kapitel 3 Wen hat sie getroffen? [4
Chapter 3 Who did she meet? [4
제3장 그녀는 누구를 만났을까? (4)【제3장】그녀는 누구를 만났을까?
Kapitel 3: Vem träffade hon [4]?
第 3 章 她遇到了谁?[4
朝 の 六 時 を 回った ばかりで 、 てっきり まだ 寝て いる と 思った 鶴田 が 電話 に 出た 。
あさ||むっ|じ||まわった||||ねて|||おもった|つるた||でんわ||でた
|||||||surely||||||||||
|||||||まさか||||||||||
Just after six o'clock in the morning, Tsuruta answered that she thought she was still asleep.
出て ほしく なくて 電話 を かける わけ も ない のだ が 、 実際 に 鶴田 の 声 が 聞こえた とたん 、 増尾 圭 吾 は 「 出て くれる な 」 と 願って いた 自分 に 気づいた 。
でて|||でんわ||||||||じっさい||つるた||こえ||きこえた||ますお|けい|われ||でて||||ねがって||じぶん||きづいた
|want to come out||||||||||||||||||||||||||wishing||||
場所 は 名古屋 市 内 に ある サウナ だった 。
ばしょ||なごや|し|うち|||さうな|
|||||||sauna|
赤い 絨毯 が 敷か れた 廊下 の 先 に は 、 真っ暗な 仮眠 室 が ある 。
あかい|じゅうたん||しか||ろうか||さき|||まっくらな|かみん|しつ||
|carpet||laid||hallway|||||pitch-black|rest area|||
公衆 電話 は 廊下 の 隅 に 置かれて いた 。
こうしゅう|でんわ||ろうか||すみ||おか れて|
|||||corner|||
隣 に 滋養 強壮 剤 など を 売る 自動 販売 機 が ある が 、 五 つ ある ボタン の うち 、 三 つ が 売り切れ に なって いる 。
となり||じよう|きょうそう|ざい|||うる|じどう|はんばい|き||||いつ|||ぼたん|||みっ|||うりきれ|||
||nutrient|nutritious|medicine||||||||||five|||||||||sold out|||
||栄養|nutritional|||||||||||||||||||||||
「 本当に 大丈夫 と や ?
ほんとうに|だいじょうぶ||
受話器 から また 鶴田 の 声 が した 。
じゅわき|||つるた||こえ||
receiver|||||||
寝起き の くせ に 切迫 した その 声 が 、 やはり 現在 の 自分 の 立場 を 思い知ら せる 。
ねおき||||せっぱく|||こえ|||げんざい||じぶん||たちば||おもいしら|
||||urgent||||||||||||made me realize|
「 今 、 どこ に おる と ね ?
いま|||||
鶴田 の 声 が 、 とつぜん 優しく なった 。
つるた||こえ|||やさしく|
|||||gently|
増尾 は 思わず 受話器 を 強く 握った 。
ますお||おもわず|じゅわき||つよく|にぎった
||||||gripped
実家 や 自宅 に かけた の なら いざ 知ら ず 、 まさか 鶴田 の 携帯 まで 逆 探知 されて いる と は 思って いない が 、 妙に 優しく 響いた 鶴田 の 声 が 、 誰 か の 目の前 で 演技 して いる ように 感じられた のだ 。
じっか||じたく||||||しら|||つるた||けいたい||ぎゃく|たんち|さ れて||||おもって|||みょうに|やさしく|ひびいた|つるた||こえ||だれ|||めのまえ||えんぎ||||かんじ られた|
|||||||now|||||||||tracking|||||||||||||||||||||||||
増尾 は フック に かけて いた 指 に 力 を 入れた 。
ますお||||||ゆび||ちから||いれた
||hook||||||||
||hook||||||||
通話 が 切れ 、 何 枚 か の 十 円 玉 が 返却 口 へ 落ちて くる 。
つうわ||きれ|なん|まい|||じゅう|えん|たま||へんきゃく|くち||おちて|
phone call|||||||||coin||returned||||
その 音 が 静かな 廊下 に 響く 。
|おと||しずかな|ろうか||ひびく
||||hallway||
増尾 は 振り返った 。
ますお||ふりかえった
||looked back
廊下 に は 誰 の 姿 も なかった が 、 柱 の 鏡 に 水色 の サウナ 服 を 着た 自分 の 姿 が 映って いた 。
ろうか|||だれ||すがた||||はしら||きよう||みずいろ||さうな|ふく||きた|じぶん||すがた||うつって|
|||||||||pillar|||||||||||||||
増尾 は 受話器 を フック に 戻した 。
ますお||じゅわき||||もどした
公衆 電話 の 受話器 は こんなに 重かった の か と 妙な こと が 気 に なった 。
こうしゅう|でんわ||じゅわき|||おもかった||||みょうな|||き||
public|||||||||||||||
鶴田 に 電話 を かけて 何 か を 言おう と した わけで は なかった 。
つるた||でんわ|||なん|||いおう|||||
捜査 の 様子 を 探ろう と した わけで も なかった 。
そうさ||ようす||さぐろう|||||
investigation||appearance||trying to find|||||
この 数 日 、 誰 と も 言葉 を 交わして い なかった 。
|すう|ひ|だれ|||ことば||かわして||
サウナ や ビジネス ホテル の フロント でも 、 質問 に は 全部 頷いたり 、 首 を 振ったり して 答えて いた 。
さうな||びじねす|ほてる||ふろんと||しつもん|||ぜんぶ|うなずいたり|くび||ふったり||こたえて|
|||||||||||nodded|||nodded|||
さっき 一言 だけ 、「 ああ 、 大丈夫 」 と 鶴田 に 答えた とき 、 久しぶりに 自分 の 声 を 聞いた ような 気 が した 。
|いちげん|||だいじょうぶ||つるた||こたえた||ひさしぶりに|じぶん||こえ||きいた||き||
増尾 は 赤い 絨毯 の 敷か れた 廊下 を 仮眠 室 へ 戻った 。
ますお||あかい|じゅうたん||しか||ろうか||かみん|しつ||もどった
|||carpet|of||||||||
遮 光 カーテン の 向こう から 、 一晩 中 、 増尾 を 悩ま して いた 鼾 が まだ 聞こえて いる 。
さえぎ|ひかり|かーてん||むこう||ひとばん|なか|ますお||なやま|||いびき|||きこえて|
||||||||||troubled|||snoring||||
鼾 の 主 は 増尾 が 陣取った 寝 椅子 の 横 で 眠って いた 。
いびき||おも||ますお||じんどった|ね|いす||よこ||ねむって|
snoring||owner||||taken a position||chair|||||
||||||座っていた|||||||
蹴り 起こそう か と 何 度 思った か 知れ ない 。
けり|おこそう|||なん|たび|おもった||しれ|
kick|||||||||
しかし 、 その 度 に こんな ところ で 問題 を 起こし 、 通報 でも さ れたら 終わり だ と 堪えた 。
||たび|||||もんだい||おこし|つうほう||||おわり|||こらえた
||||||||||report|||||||endured
|||||||||||||||||我慢した
だだっ広い 広間 に は 、 五十 も の 寝 椅子 が 並んで いる 。
だだっぴろい|ひろま|||ごじゅう|||ね|いす||ならんで|
vast|||||||||||
その 一 つ 、 合 革 が 破れ 、 スポンジ が はみ出した 寝 椅子 だけ が 、 今 の 増尾 に は 自由に なる 空間 だった 。
|ひと||ごう|かわ||やぶれ|||はみだした|ね|いす|||いま||ますお|||じゆうに||くうかん|
|||leather|||torn|||was sticking out|||||||increased tail|||||space|
|||||||||はみ出した|||||||||||||
薄暗い サウナ の 仮眠 室 に 入る と 、 気のせい か 獣 の 臭い が すっと 鼻先 を 流れた 。
うすぐらい|さうな||かみん|しつ||はいる||きのせい||けだもの||くさい||す っと|はなさき||ながれた
|||nap|||||just my imagination||beast||||smoothly|||
サウナ で 汗 を 流し 、 風呂 に 入って から だ 中 を きれいに 洗って いる はずの 男 たち でも 、 これ だけ 一 カ所 に 集まって くる と 、 こういう 臭い を 発散 する の かも しれ ない 。
さうな||あせ||ながし|ふろ||はいって|||なか|||あらって|||おとこ|||||ひと|かしょ||あつまって||||くさい||はっさん|||||
||||||||||||||||||||||place||||||||emanate|||||
非常口 の ライト だけ を 頼り に 、 増尾 は さっき まで 横 に なって いた 寝 椅子 へ 向かった 。
ひじょうぐち||らいと|||たより||ますお||||よこ||||ね|いす||むかった
emergency exit|||||relying|||||||||||||
それぞれ の 寝 椅子 で 、 疲れ切った 男 たち が それぞれ の 格好で 眠って いる 。
||ね|いす||つかれきった|おとこ|||||かっこうで|ねむって|
|||||completely exhausted||||||outfits||
|||||||||||服装||
眼鏡 を 額 の 上 に 置いた まま 眠って いる 者 。
めがね||がく||うえ||おいた||ねむって||もの
glasses||forehead||||||||
小さな 毛布 で 器用に から だ の すべて を 覆って いる 者 。
ちいさな|もうふ||きように||||||おおって||もの
|blanket||skillfully||||||||
そして 大口 を 開け 、 相変わらず 高鼾 を かき 続けて いる 隣 の 男 。
|おおぐち||あけ|あいかわらず|たかいびき|||つづけて||となり||おとこ
|||||loud snoring|||||||
|||||いびき|||||||
増尾 は 一 つ 大きく 咳払い する と 、 まだ 自分 の 体温 の 残る 毛布 を 纏って 寝 転がった 。
ますお||ひと||おおきく|せきばらい||||じぶん||たいおん||のこる|もうふ||まとって|ね|ころがった
|||||throat clearing||||||body temperature|||||wrapped||
|||||咳払い|||||||||||||
咳払い を して も 、 激しく 寝返り を 打って も 横 の 男 の 醜い 鼾 は 止まら ない 。
せきばらい||||はげしく|ねがえり||うって||よこ||おとこ||みにくい|いびき||とまら|
throat-clearing||||intensely|||||||||||||
それ でも 目 を 閉じる と 、 電話 の 向こう で 狼狽 した であろう 鶴田 の 顔 が 浮かんで くる 。
||め||とじる||でんわ||むこう||ろうばい|||つるた||かお||うかんで|
||||||||||fluster||||||||
||||||||||狼狽して||||||||
なぜ 電話 を しよう と 思った の か 。
|でんわ||||おもった||
なぜ 電話 を しよう と 思った 相手 が 鶴田 だった の か 。
|でんわ||||おもった|あいて||つるた|||
鶴田 なら この 窮地 から 救って くれる と でも 思って いた の か 。
つるた|||きゅうち||すくって||||おもって|||
|||predicament||save me|||||||
考えれば 考える ほど 、 増尾 は 馬鹿らしく なった 。
かんがえれば|かんがえる||ますお||ばからしく|
|||||ridiculous|
学 内 でも 学 外 でも 、 友人 知人 は 多い ほう だった 。
まな|うち||まな|がい||ゆうじん|ちじん||おおい||
|||study||||||||
ただ 、 こんな とき に 電話 を かけられる 相手 が 浮かば なかった 。
||||でんわ||かけ られる|あいて||うかば|
||||||to call||||
自分 の 周り に は よく 人 が 集まって くる 。
じぶん||まわり||||じん||あつまって|
それ は 増尾 も 自覚 して いる 。
||ますお||じかく||
||||awareness||
ただ 、 集まって くる の は ど いつも こいつ も 張り合い の ない 奴 ら ばかり で 、 心底 そい つら を 馬鹿に して 付き合って いる 自分 が いた 。
|あつまって||||||||はりあい|||やつ||||しんそこ||||ばかに||つきあって||じぶん||
|||||||||competitive spirit|||||||truly||those guys||making fun||||||
止ま ない 隣 の 男 の 鼾 を 聞き ながら 、 増尾 は 無理に でも 少し 寝よう と 、 強く 目 を 閉じた 。
やま||となり||おとこ||いびき||きき||ますお||むりに||すこし|ねよう||つよく|め||とじた
|||||||||||||||to sleep|||||
強く 閉じる と 、 まるで 果物 を 絞る ように 、 記憶 が 押し潰さ れ 、 あの 夜 、 偶然 、 東公園 の 前 で 石橋 佳乃 と 出くわした とき の 光景 が 、 嫌で も 脳裏 に 浮かんで きて しまう 。
つよく|とじる|||くだもの||しぼる||きおく||おしつぶさ|||よ|ぐうぜん|ひがしこうえん||ぜん||いしばし|よしの||でくわした|||こうけい||いやで||のうり||うかんで||
||||fruit||||||crushed|||||East Park|||||||ran into|||||||mind||||
||||||||||||||||||||||出会った|||||||||||
なんで あんな 女 の ため に 、 この 俺 が 逃げ回ら なければ なら ない の か 。
||おんな|||||おれ||にげまわら|||||
|||||||||running around|||||
こんな サウナ で 見知らぬ 男 の 鼾 を 聞か さ れ ながら 。
|さうな||みしらぬ|おとこ||いびき||きか|||
考えれば 考える ほど 腹 が 立って くる 。
かんがえれば|かんがえる||はら||たって|
それにしても 、 なんで あんな 場所 で 、 あんな 女 と ばったり 再会 した の か 。
|||ばしょ|||おんな|||さいかい|||
||||||||suddenly|reunion|||
||||||||偶然||||
あそこ で 小便 を 我慢 して 、 マンション へ 帰って さえ いれば 、 こんな 目 に は 遭わ ず に 済んだ のだ 。
||しょうべん||がまん||まんしょん||かえって||||め|||あわ|||すんだ|
|||||||||||||||experienced|||avoided|
あの 夜 、 ムシャクシャ して いた の は 確かだ 。
|よ|むしゃくしゃ|||||たしかだ
||frustrated|||||
||イライラ|||||
ムシャクシャ して 天神 の バー で 飲んだ あと だった 。
むしゃくしゃ||てんじん||ばー||のんだ||
そのまま マンション へ 戻る つもりで 路上 駐車 して いた 車 に 乗り込んだ 。
|まんしょん||もどる||ろじょう|ちゅうしゃ|||くるま||のりこんだ
|||||street||||||
バー から マンション まで 五 分 と かから なかった のに 、 なぜ か 無性に 気 が 立って 、 そのまま 車 を 走ら せる こと に した 。
ばー||まんしょん||いつ|ぶん|||||||ぶしょうに|き||たって||くるま||はしら||||
||||||||||||irrationally|||||||||||
||||||||||||無性に|||||||||||
酔って いた 。
よって|
drunk|
今 と なって は 、 どこ を どのように 走って 、 東公園 まで 行った の かも 覚えて いない 。
いま|||||||はしって|ひがしこうえん||おこなった|||おぼえて|
とにかく ムシャクシャ して 仕方なかった 。
|むしゃくしゃ||しかたなかった
|イライラ||
自分 が 何 に ムシャクシャ して いる の か 分から ず 、 それ が また 自分 を ムシャクシャ さ せた 。
じぶん||なん||むしゃくしゃ|||||わから|||||じぶん||むしゃくしゃ||
たとえば 電話 一 本 かけ さえ すれば 、 すぐに でも ヤラ して くれる 女 の 顔 など いくら でも 浮かんだ 。
|でんわ|ひと|ほん|||||||||おんな||かお||||うかんだ
|||||||||do|||||||||
|||||||||やら|||||||||
ただ 、 あの 夜 、 抱えて いた の は もっと 凶暴な 欲求 で 、 たとえば 互い の 肌 を 噛み合って 血まみれに なりたい ような 、 そんな 獰猛な もの だった 。
||よ|かかえて|||||きょうぼうな|よっきゅう|||たがい||はだ||かみあって|ちまみれに|なり たい|||どうもうな||
|||carrying|||||fierce||||||||biting each other|covered in blood||||fierce||
|||||||||||||||||||||獰猛な||
今 と なって みれば 、 女 と ヤリ たかった ので は なくて 、 男 と 殴り合い たかった の かも しれ ない と 増尾 は 思う 。
いま||||おんな||やり|||||おとこ||なぐりあい|||||||ますお||おもう
||||||hook up|||||||fight|||||||||
しかし 今さら 気づいて も 、 あの 夜 に 戻れる わけ も ない 。
|いまさら|きづいて|||よ||もどれる|||
||realize||||||||
とにかく 博多 の 街 を 二 時間 近く 走り 続けて いる と 、 飲み 過ぎた 酒 の せい で 尿 意 を 感じた 。
|はかた||がい||ふた|じかん|ちかく|はしり|つづけて|||のみ|すぎた|さけ||||にょう|い||かんじた
||||||||||||||||||urine|||
通り の 先 に 森 の ような 東公園 が 見え 、 公園 ならば 公衆 便所 が ある だろう と 車 を 停めた 。
とおり||さき||しげる|||ひがしこうえん||みえ|こうえん||こうしゅう|べんじょ|||||くるま||とめた
street||||||||||||||||||||
公園 沿い の 路上 パーキング に は 、 他の 車 が ちらほら と 停車 して いた 。
こうえん|ぞい||ろじょう|ぱーきんぐ|||たの|くるま||||ていしゃ||
||||||||||here and there||||
||||||||||ぽつぽつ||||
車 を 走ら せて いる うち に 、 すっかり 酔い も 醒 め ていた 。
くるま||はしら||||||よい||せい||
||||||||drunkenness||awake||
車 を 降りる と 、 通り の 先 で 若い 男 が 立ち 小便 して いた 。
くるま||おりる||とおり||さき||わかい|おとこ||たち|しょうべん||
街灯 で 男 の 髪 が 金色 に 染められて いる の が 分かった 。
がいとう||おとこ||かみ||きんいろ||そめ られて||||わかった
||||||||dyed||||
ガード レール を 跨ぎ 、 増尾 は 真っ暗な 園 内 に 入った 。
がーど|れーる||またぎ|ますお||まっくらな|えん|うち||はいった
|||straddling||||park|||
公衆 便所 は すぐに 見つかった 。
こうしゅう|べんじょ|||みつかった
public||||
駆け込んで 、 汚れた 便器 に 酒 臭い 小便 を して いる と 、 個室 から 妙な 鼻息 が 漏れ 聞こえた 。
かけこんで|けがれた|べんき||さけ|くさい|しょうべん|||||こしつ||みょうな|はないき||もれ|きこえた
||||||||||||||breathing|||
気味 は 悪かった が 、 小便 を 途中 で 止める こと も でき ない 。
きみ||わるかった||しょうべん||とちゅう||とどめる||||
扉 が 開いた の は その とき で 、 一瞬 、 ビクッ と からだ を 縮める と 、 ジッパー を 広げた 指 に 小便 が かかった 。
とびら||あいた||||||いっしゅん|||||ちぢめる||じっぱー||ひろげた|ゆび||しょうべん||
|||||||||with a start||||shrink|||||||||
個室 から 出て きた の は 、 同 世代 の 男 だった 。
こしつ||でて||||どう|せだい||おとこ|
|||||||generation|||
嫌な 目つき で こちら を 見て いる 。
いやな|めつき||||みて|
|look|||||
増尾 は 咄嗟に 男 の 素性 を 理解 した 。
ますお||とっさに|おとこ||すじょう||りかい|
||on the spur of the moment|||background|||
||瞬時に|||background|||
酔った 勢い も あって 、 出て 行こう と する 男 に 、「 しゃぶら せちゃ ろか ?
よった|いきおい|||でて|いこう|||おとこ||||
||||||||||suck|let|
The man was drunk and was about to leave when I asked him if he wanted me to suck his dick.
」 と 笑い かける と 、 ピタッ と 足 を 止めた 男 が 、「 フン 、 お め ぇが しゃぶれ 」 と 鼻 で 笑った 。
|わらい|||||あし||とどめた|おとこ||ふん||||||はな||わらった
||||suddenly||||||||||guy|sucked||nose||
||||ぴたり|||||||||||||||
一瞬 、 カッ と なった が 、 殴り かかる に も 、 まだ 勢い よく 小便 が 出て いて 身動き でき ない 。
いっしゅん|||||なぐり|||||いきおい||しょうべん||でて||みうごき||
|snap|||||||||||||||||
|カッ|||||||||||||||||
やっと 小便 を 終わら せ 、 増尾 は 若い 男 を 追って 公衆 便所 を 飛び出した 。
|しょうべん||おわら||ますお||わかい|おとこ||おって|こうしゅう|べんじょ||とびだした
ぽつ ん ぽつんと 立って いる 街灯 が 、 園 内 を より 暗く 見せて いた 。
|||たって||がいとう||えん|うち|||くらく|みせて|
one by one|||||streetlight||||||dark||
||ぽつんと|||||||||||
増尾 は 目 を こらして 男 を 探した が 、 茂み に も 遊歩道 に も その 姿 は なかった 。
ますお||め|||おとこ||さがした||しげみ|||ゆうほどう||||すがた||
||||focused|||||bush|||pedestrian path||||||
||||凝らして||||||||||||||
馬鹿に した ヤツ に 、 逆に 馬鹿に されて しまった 悔し さ が 、 からだ 全体 に 伝わって いた 。
ばかに||やつ||ぎゃくに|ばかに|さ れて||くやし||||ぜんたい||つたわって|
寒風 の 中 、 縮こまって も よ さ そうな から だ が 、 かっと 燃える ような 苛立ち だった 。
かんぷう||なか|ちぢこまって||||そう な||||か っと|もえる||いらだち|
|||||||||||suddenly|||irritation|
||||||||||||||苛立ち|
男 を 見つけ出して 殴り かかれば 、 今夜 の この 鬱憤 が 晴れて くれ そうな 気 が した 。
おとこ||みつけだして|なぐり||こんや|||うっぷん||はれて||そう な|き||
||find out|attacking|were to attack||||pent-up frustration||cleared|||||
||||||||鬱憤|||||||
殴った 分 だけ 殴られて 、 鼻血 でも 噴き出せば 、 この 意味 不明な 苛立ち が すっと 解消 し そうな 気 が した 。
なぐった|ぶん||なぐら れて|はなぢ||ふきだせば||いみ|ふめいな|いらだち||す っと|かいしょう||そう な|き||
hit|||being hit|nosebleed||gushing||||||||||||
結局 、 公園 を 出る まで に 取り逃がした 男 を 見つける こと は でき ず 、 舌打ち し ながら 公園 の 柵 を 跨いだ 。
けっきょく|こうえん||でる|||とりにがした|おとこ||みつける|||||したうち|||こうえん||さく||またいだ
||||||missed||||||||clicked her tongue|||||fence||straddled
||||||逃した|||||||||||||||
オレンジ色 の 街灯 が アスファルト 道路 を 照らして いた 。
おれんじいろ||がいとう|||どうろ||てらして|
通り の 向こう から 歩いて くる 女 が 見えた の は その とき だった 。
とおり||むこう||あるいて||おんな||みえた|||||
誰 か と 待ち合わせ でも して いる の か 、 女 は 通り に 停められた 車 を 一 台 ずつ 確認 する ように 歩いて きた 。
だれ|||まちあわせ||||||おんな||とおり||とめ られた|くるま||ひと|だい||かくにん|||あるいて|
|||||||||||street||||||||||||
公園 の 柵 を 跨いだ 増尾 は 、 植え込み から 歩道 へ 飛び降りた 。
こうえん||さく||またいだ|ますお||うえこみ||ほどう||とびおりた
||fence|||||flower bed||||jumped
|||||||bushes||||
その 瞬間 だった 。
|しゅんかん|
ちょうど その 女 と 増尾 の 中間 辺り に 停 まって いた 車 が 「 ファン !
||おんな||ますお||ちゅうかん|あたり||てい|||くるま||ふぁん
||||||middle||||||||fan
」 と クラクション を 鳴らした のだ 。
|||ならした|
乾いた クラクション は 公園 沿い の アスファルト 道路 に 響いた 。
かわいた|||こうえん|ぞい|||どうろ||ひびいた
dry|honking||||||road||
クラクション に 驚いた 女 が 立ち止まる 。
||おどろいた|おんな||たちどまる
|||||stopped
先 に 気づいた の は 女 の ほう だった 。
さき||きづいた|||おんな|||
街灯 で 少し 影 に なった その 顔 に さっと 笑み が 広がる の が 増尾 に も 見えた 。
がいとう||すこし|かげ||||かお|||えみ||ひろがる|||ますお|||みえた
|||shadow||||||quickly|smile||||||||
女 は すぐに 駆け寄って きた 。
おんな|||かけよって|
歩道 を 蹴る ブーツ の 音 が 暗い 園 内 に 吸い込まれて いく ようだった 。
ほどう||ける|ぶーつ||おと||くらい|えん|うち||すいこま れて||
||kicking|boots||||||||being sucked in||
駆け寄って くる 途中 、 女 は ちらっと クラクション を 鳴らした 車 の 中 を 覗き込んだ が 、 歩調 は 弛 め なかった 。
かけよって||とちゅう|おんな|||||ならした|くるま||なか||のぞきこんだ||ほちょう||ち||
running up|||||glanced||||||||||pace||slack||
ちょうど その 車 を 通り過ぎた ころ 、 増尾 は その 女 が 天神 の バー で 会った あと 、 しつこく メール を 送って くる 石橋 佳乃 だ と 気 が ついた 。
||くるま||とおりすぎた||ますお|||おんな||てんじん||ばー||あった|||めーる||おくって||いしばし|よしの|||き||
|||||||||||||||||persistently|||||||||||
「 増尾 くん !
ますお|
声 を かけられ 、 増尾 も とりあえず 片手 を 挙げて 応えた 。
こえ||かけ られ|ますお|||かたて||あげて|こたえた
|||||||||responded
ただ 、 クラクション を 鳴らした 車 の ほう も 気 に なって 、 そちら へ 目 を 向ける と 、 ルーム ライト の ついた 運転 席 に 、 若い 男 の 顔 が ぼんやり と 浮かんで 見える 。
|||ならした|くるま||||き|||||め||むける||るーむ|らいと|||うんてん|せき||わかい|おとこ||かお||||うかんで|みえる
|||||||||||||||||||||||||||||vaguely|||
はっきり 見えた わけで は なかった が 、 髪 の 色 と いい 、 さっき そこ で 立ち 小便 を して いた 男らしかった 。
|みえた|||||かみ||いろ||||||たち|しょうべん||||おとこらしかった
|||||||||||||||||||manly
待ち合わせ して いた らしい 男 に 声 も かけ ず に 、 佳乃 は 増尾 の 元 へ 駆け寄って きた 。
まちあわせ||||おとこ||こえ|||||よしの||ますお||もと||かけよって|
|||||||||||||||former|||
「 なん しち ょる と ?
|seven||
こんな 所 で 」
|しょ|
薄暗い 通り でも 、 佳乃 の 顔 に 浮かんだ 喜色 が はっきり と 見てとれる 。
うすぐらい|とおり||よしの||かお||うかんだ|きしょく||||みてとれる
||||||||expression of joy||||apparent
||||||||喜びの色||||
「 ちょっと 小便 」
|しょうべん
増尾 は 抱きつか ん ばかりに 駆け寄って きた 佳乃 から 一 歩 あと ず さった 。
ますお||だきつか|||かけよって||よしの||ひと|ふ|||
||wrapped her arms around||||||||step||not|slower
||抱きつく||だけの|ran over||||||||
「 偶然 や ねぇ 。
ぐうぜん||
私 たち の 寮 、 ここ の 裏 に ある と よ 」
わたくし|||りょう|||うら||||
|||dormitory|||back||||
訊 いて も いない のに 、 佳乃 が 暗い 公園 を 指さして 教えて くれる 。
じん|||||よしの||くらい|こうえん||ゆびさして|おしえて|
「 車 で 来た と ?
くるま||きた|
」 と 佳乃 が 辺り を 見回す 。
|よしの||あたり||みまわす
|||surroundings||
「 あ 、 うん 」
増尾 は 曖昧に 答え ながら も 、 すぐ そこ に 停められて いる 車 の 中 で 、 じっと こちら を 見つめて いる 金髪 の 男 を 気 に して いた 。
ますお||あいまいに|こたえ||||||とめ られて||くるま||なか|||||みつめて||きんぱつ||おとこ||き|||
||vaguely|||||||||||||intently|||||blond|||||||
「 よか と ?
okay|
増尾 が その 車 の ほう へ 顎 を しゃ くる と 、 今 、 思い出した ように 振り返った 佳乃 が 、「 ああ 」 と 面倒臭 そうに 顔 を 歪め 、「 よか と 、 よか と 」 と 首 を 振る 。
ますお|||くるま||||あご|||||いま|おもいだした||ふりかえった|よしの||||めんどうくさ|そう に|かお||ゆがめ||||||くび||ふる
|||||||||||||||looked back|||||||||grimaced||||||||shaking
「 でも 、 待ち合わせ し とった と やろ ?
|まちあわせ||||
「…… そう やけど 、 ほんとに 気 に せ んで 」
|||き|||
「 気 に せ んでって ……」 増尾 は 呆れて 言い返した 。
き|||んで って|ますお||あきれて|いいかえした
|||and|||amazed|
佳乃 が 諦めた ように 、「 ちょっと 、 ちょっと だけ 待っとって 」 と 言い残し 、 男 が 待つ 車 の ほう へ 駆け 戻る 。
よしの||あきらめた|||||ま っと って||いいのこし|おとこ||まつ|くるま||||かけ|もどる
||given up|||||||leaving a message||||||direction|||
別に 佳乃 と 会う つもりで ここ へ 来た わけで は なかった 。
べつに|よしの||あう||||きた|||
だが 、 佳乃 の 勢い に 押されて しまい 、 彼女 を 置いて いく わけに も いか なく なった 。
|よしの||いきおい||おさ れて||かのじょ||おいて||||||
|||momentum||overwhelmed||||behind||||||
佳乃 が 駆けて 行く と 、 ルーム ライト に 浮かんで いた 男 の 顔 が ちょっと だけ 弛 んだ 。
よしの||かけて|いく||るーむ|らいと||うかんで||おとこ||かお||||ち|
||||||||||||||||relaxed|
しかし 、 車 に 駆け寄った 佳乃 は 助手 席 の ドア を 開け 、 何やら 一言 二 言 、 男 に 告げた だけ で 、 すぐに ドア を 閉め 、 また 増尾 の ほう へ 駆け 戻って くる 。
|くるま||かけよった|よしの||じょしゅ|せき||どあ||あけ|なにやら|いちげん|ふた|げん|おとこ||つげた||||どあ||しめ||ますお||||かけ|もどって|
||||||||||||something|a few words|||||||||||||||||||
ドア の 閉め 方 が あまりに も 乱暴で 、 その 音 が 閉まった あと も ずっと 通り に 響いて いる ようだった 。
どあ||しめ|かた||||らんぼうで||おと||しまった||||とおり||ひびいて||
|||||||rough||||||||||||
「 ごめん ね 」
戻って きた 佳乃 は 、 なぜ か そう 謝る と 、「 あの 人 、 友達 の 友達 なん やけど 、 前 に ちょっと お 金貸し とって 」 と 、 迷惑 そうな 顔 を する 。
もどって||よしの|||||あやまる|||じん|ともだち||ともだち|||ぜん||||かねかし|||めいわく|そう な|かお||
|||||||apologize|||||||||||||money lender|||||||
「 金 、 返して もらわ んで よ か と ?
きむ|かえして|||||
「 よか と 、 よか と 。
"Good, good, good.
あと で 私 の 口座 に 振り込んでって 、 今 、 頼んで きた 」 佳乃 は さらっと そう 言った 。
||わたくし||こうざ||ふりこんで って|いま|たのんで||よしの||||いった
||||account||transferred||asked||||casually||
||||||||||||軽く||
増尾 は 車 へ 目 を 向けた 。
ますお||くるま||め||むけた
男 は まだ こちら を じっと 見て いた 。
おとこ||||||みて|
「 寮 に 帰る と ?
りょう||かえる|
dormitory|||
」 と 増尾 は 尋ねた 。
|ますお||たずねた
|||asked
待ち合わせ して いた 男 を 放ったら か して 、 わざわざ 戻って きた に も かかわら ず 、 佳乃 は じっと 増尾 を 見つめた まま 、 次の 言葉 を 待って いる 。
まちあわせ|||おとこ||はなったら||||もどって||||||よしの|||ますお||みつめた||つぎの|ことば||まって|
|||||let go|||||||||||||||||||||
「 う 、 うん ……」
増尾 の 質問 に 、 佳乃 は 曖昧な 笑み を 浮かべた 。
ますお||しつもん||よしの||あいまいな|えみ||うかべた
||||||vague|||
正直 、 この 手 の 女 は 苦手だった 。
しょうじき||て||おんな||にがてだった
honestly||woman||woman||not good at
何 か を 待って いる くせ に 、 何も 待って いない ふり を して 、 待って いる だけ の ように 見せかけて 、 その実 、 様々な もの を 要求 して いる 。
なん|||まって||||なにも|まって|||||まって|||||みせかけて|そのじつ|さまざまな|||ようきゅう||
||||||||||||||||||pretending|actually||||demand||
||||||||||||||||||見せかけて|||||||
もしも 、 この とき 、 佳乃 と 待ち合わせて いた 男 の 車 が 、 その 場 から 立ち去って いたら 、 増尾 は 自分 の 車 に 佳乃 を 乗せて い なかった と 思う 。
|||よしの||まちあわせて||おとこ||くるま|||じょう||たちさって||ますお||じぶん||くるま||よしの||のせて||||おもう
|||||waiting|||||||||left||||||||||||||
「 そんじゃ 、 俺 、 帰る から 」 と 、 その 場 に 佳乃 を 置いて 立ち去る こと など 、 増尾 に とって 難しい こと で は なかった 。
|おれ|かえる||||じょう||よしの||おいて|たちさる|||ますお|||むずかしい||||
|||||||||||left||||||difficult||||
だが 、 佳乃 の 肩 越し に じっと 動か ない 車 が あった 。
|よしの||かた|こし|||うごか||くるま||
||||across|||||||
運転 席 に は ルーム ライト に ぼんやり と 浮かび上がった 男 の 顔 が ある 。
うんてん|せき|||るーむ|らいと||||うかびあがった|おとこ||かお||
driving|seat||||||vaguely|||||||
怒って いる ように も 、 悲しんで いる ように も 見えた 。
いかって||||かなしんで||||みえた
angrily||||sorrowful||||
男 が 車 から 降りて くる 気配 は ない 。
おとこ||くるま||おりて||けはい||
佳乃 の ほう も 男 の 車 に 戻る 素振り を 見せ ない 。
よしの||||おとこ||くるま||もどる|そぶり||みせ|
|||||||||pretense|||
「 寮 、 近い と ?
りょう|ちかい|
沈黙 を 埋める ように 増尾 が 尋ねる と 、 佳乃 は 一瞬 、 答え に 迷って 、 近い と も 近く ない と も 取れる ような 笑み を 浮かべた 。
ちんもく||うずめる||ますお||たずねる||よしの||いっしゅん|こたえ||まよって|ちかい|||ちかく||||とれる||えみ||うかべた
silence||fill|||||||||||hesitated||||||||||||
「 送ろう か ?
おくろう|
増尾 の 言葉 に 佳乃 は 嬉し そうに 頷いた 。
ますお||ことば||よしの||うれし|そう に|うなずいた
||||||||nodded
キーロック を 解除 し 、 ガード レール を 跨いだ 。
||かいじょ||がーど|れーる||またいだ
keylock||release|||||
助手 席 の ドア を 開けて やる と 、 佳乃 は 這う ように 乗り込んだ 。
じょしゅ|せき||どあ||あけて|||よしの||はう||のりこんだ
||||||||||crawled||
寒風 の 中 、 外 で 立ち話 を して いる とき に は 気づか なかった が 、「 やっぱり 車 の 中 、 暖かい ね ー 」 と 身 を 震わせた 佳乃 の 口臭 が 、 やけに ニンニク 臭かった 。
かんぷう||なか|がい||たちばなし|||||||きづか||||くるま||なか|あたたかい||-||み||ふるわせた|よしの||こうしゅう|||にんにく|くさかった
|||||||||||||||||||||||||shivered|||bad breath||unusually|garlic|smelled like garlic
||||||||||||||||||||||||||||口臭|||ニンニク臭|
気分 が 変わった の は 、 運転 席 に 乗り込んだ とき だった 。
きぶん||かわった|||うんてん|せき||のりこんだ||
その 夜 、 感じて いた 苛立ち を 、 この 女 に なら ぶつけられ そうな 気 が した 。
|よ|かんじて||いらだち|||おんな|||ぶつけ られ|そう な|き||
||||irritation||||||be directed||||
||||||||||ぶつけられそう||||
「 時間 ない ?
じかん|
エンジン を かけ ながら 尋ねる と 、「 なんで ?
えんじん||||たずねる||
」 と 佳乃 が 訊 いて くる 。
|よしの||じん||
「 ちょっと ドライブ せ ん ?
|どらいぶ||
」 と 増尾 は 訊 いた 。
|ますお||じん|
「 ドライブ ?
どらいぶ
どこ に ?
断る 気 も ない くせ に 、 佳乃 が 首 を 傾げる 。
ことわる|き|||||よしの||くび||かしげる
to refuse|||||||||(object marker)|
「 別に どこ でも いい けど ……、 三瀬 峠 の ほう に 肝 試しに 行こう か ?
べつに|||||みつせ|とうげ||||かん|ためしに|いこう|
||||||||||test of courage|||
増尾 は からかう ように そう 言った 。
ますお|||||いった
||teased|||
||tease|||
言い ながら すでに アクセル を 踏んで いた 。
いい|||あくせる||ふんで|
走り出した 車 の ルームミラー に 、 金髪 男 の 白い スカイライン が 映って いた 。
はしりだした|くるま||||きんぱつ|おとこ||しろい|すかいらいん||うつって|
|||||blonde|||||||