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幽霊 の 酒盛り
幽霊 の 酒盛り
むかし むかし 、 ある ところ に 、 一 軒 ( けん ) の こっとう 屋 が あり ました 。
今日 は あいにく 主人 夫婦 が 留守 な ので 、 おい っ子 の 忠 兵 衛 ( ちゅう べ え ) が 留守番 を して い ます 。
そこ へ 、 金持ち そう なお 客 が やってき ました 。
「 ふむ 、 山水 ( さんすい ) か 。
図柄 が 、 ち と 平凡じゃ な 。
ふむ 、 書 か 。
これ は また 、 下手くそな 字 じゃ 。
・・・ ああ 、 ど いつも こいつ も 、 ありきたりで つまら ん 」 その 時 、 お 客 の 目 が 光り輝き ました 。
「 む むっ 、 こいつ は 珍しい !
気 に 入った ぞ 。
主人 、 この 掛け軸 は いくら だ ?
」 それ は 、 女 の 幽霊 が 描か れた 掛け軸 でした 。
おじさん が ただ 同然で 買って きた ガラクタ だった ので 、 二十 文 (→ 六百 円 ほど ) も もらえば 十分だ と 思って 、 忠 兵 衛 は お 客 に 指 を 二 本 出して 見せ ました 。
すると お 客 は 、 「 な に 、 二十 両 (→ 百四十万 円 )?
そいつ は 安い !
」 と 、 大喜びです 。
「 えっ ?
両 ?
いや 、 あの 、 その ・・・」 目 を パチクリ さ せて いる 忠 兵 衛 に 、 お 客 は 財布 を 渡して 言い ました 。
「 今 は あいにく と 、 持ち 合わせ が ない 。
だ から 手つけ (→ 契約 金 ) だけ を 、 払って おこう 。
残り の 金 は 明日 持って 来る から 、 誰 に も 売ら ないで ください よ 」 「 へい 、 もちろん です !
」 忠 兵 衛 は お 客 を 見送る と 、 受け取った 財布 の 中身 を 見て びっくり です 。
「 う ひ ゃあ 、 すごい 大金 が 入って いる ぞ !
あの お 客 、 本当に 二十 両 で 買う つもりだ !
」 おじさん 夫婦 の 留守 の 間 に 思わぬ 大金 を 手 に した 忠 兵 衛 は 、 すっかり うれしく なって 幽霊 の 掛け軸 を 相手 に 一 人 で 酒盛り を 始め ました 。
「 いや 、 ゆかい ゆかい 。
ちょっと 店番 を して 、 二十 両 か 。
笑い が 止まら ねえ と は 、 この 事 だ 。
・・・ しかし 二十 両 だ と 思って 見て みる と 、 この 幽霊 は なかなか の 美人 だ な 」 そして 忠 兵 衛 は 、 掛け軸 の 幽霊 に むかって 言い ました 。
「 お前 さん の お陰 で 大金 を かせが せて もらう のに 、 おれ 一 人 で 飲んで ちゃ 申し訳 ねえ な 。
おい 、 お前 さん 。
ちょっと 出て 来て 、 お しゃく (→ お 酒 を つぐ こと ) でも して くれ や 」 する と その とたん 、 夏 だ と いう のに 辺り が スウーッ と 冷たく なり 、 風 も ない のに 明かり が パッと 消えて 、 ふと 気づく と 目の前 に 見知らぬ 女 の 人 が 立って いた のです 。
「 ん ?
ま 、 まさか 、 その 顔 は 」 忠 兵 衛 が 掛け軸 を 見る と 、 掛け軸 は も ぬけ の 空 で 、 まっ 白 です 。
「 ぎ ゃあ ーー !
で 、 出た あー ー !
」 掛け軸 の 幽霊 は 美人 と ほめ られた の が うれしくて 、 本当に お しゃく を し に 出て きた のです 。
初め は 怖 がって いた 忠 兵 衛 も 、 相手 が 美人 の 幽霊 な ので 、 その うち に すっかり いい 気分 に なり ました 。
おまけに この 幽霊 の 、 お 酒 の 強い 事 。
忠 兵 衛 が 歌えば 、 それ に 合わせて 幽霊 が 踊り ます 。
二 人 は 夜通し 、 飲め や 歌え や の どん ちゃん 騒ぎ を し ました 。
次の 朝 、 目 を 覚ました 忠 兵 衛 は 、 ふと 幽霊 の 掛け軸 を 見て びっくり 。
何と 掛け軸 の 絵 の 幽霊 が 、 酒 に 酔って 寝て いる で は あり ませ ん か 。
「 ね 、 寝て る !
」 忠 兵 衛 は 寝て いる 幽霊 を 見 ながら 、 泣き そうな 顔 で つぶやき ました 。
「 う ~ ん 、 困った なあ 。
早く 起きて もらわ ない と 、 二十 両 が パー に なっ ちまう よう 」
おしまい
幽霊 の 酒盛り
ゆうれい||さかもり
幽霊 の 酒盛り
ゆうれい||さかもり
むかし むかし 、 ある ところ に 、 一 軒 ( けん ) の こっとう 屋 が あり ました 。
|||||ひと|のき||||や|||
今日 は あいにく 主人 夫婦 が 留守 な ので 、 おい っ子 の 忠 兵 衛 ( ちゅう べ え ) が 留守番 を して い ます 。
きょう|||あるじ|ふうふ||るす||||っこ||ただし|つわもの|まもる|||||るすばん||||
そこ へ 、 金持ち そう なお 客 が やってき ました 。
||かねもち|||きゃく|||
「 ふむ 、 山水 ( さんすい ) か 。
|さんすい||
図柄 が 、 ち と 平凡じゃ な 。
ずがら||||へいぼんじゃ|
ふむ 、 書 か 。
|しょ|
これ は また 、 下手くそな 字 じゃ 。
|||へたくそな|あざ|
・・・ ああ 、 ど いつも こいつ も 、 ありきたりで つまら ん 」 その 時 、 お 客 の 目 が 光り輝き ました 。
|||||||||じ||きゃく||め||ひかりかがやき|
「 む むっ 、 こいつ は 珍しい !
||||めずらしい
気 に 入った ぞ 。
き||はいった|
主人 、 この 掛け軸 は いくら だ ?
あるじ||かけじく|||
」 それ は 、 女 の 幽霊 が 描か れた 掛け軸 でした 。
||おんな||ゆうれい||えがか||かけじく|
おじさん が ただ 同然で 買って きた ガラクタ だった ので 、 二十 文 (→ 六百 円 ほど ) も もらえば 十分だ と 思って 、 忠 兵 衛 は お 客 に 指 を 二 本 出して 見せ ました 。
|||どうぜんで|かって|||||にじゅう|ぶん|ろくひゃく|えん||||じゅうぶんだ||おもって|ただし|つわもの|まもる|||きゃく||ゆび||ふた|ほん|だして|みせ|
すると お 客 は 、 「 な に 、 二十 両 (→ 百四十万 円 )?
||きゃく||||にじゅう|りょう|ひゃくしじま|えん
そいつ は 安い !
そい つ||やすい
」 と 、 大喜びです 。
|おおよろこびです
「 えっ ?
両 ?
りょう
いや 、 あの 、 その ・・・」 目 を パチクリ さ せて いる 忠 兵 衛 に 、 お 客 は 財布 を 渡して 言い ました 。
|||め||||||ただし|つわもの|まもる|||きゃく||さいふ||わたして|いい|
「 今 は あいにく と 、 持ち 合わせ が ない 。
いま||||もち|あわせ||
だ から 手つけ (→ 契約 金 ) だけ を 、 払って おこう 。
||てつけ|けいやく|きむ|||はらって|
残り の 金 は 明日 持って 来る から 、 誰 に も 売ら ないで ください よ 」 「 へい 、 もちろん です !
のこり||きむ||あした|もって|くる||だれ|||うら||||||
」 忠 兵 衛 は お 客 を 見送る と 、 受け取った 財布 の 中身 を 見て びっくり です 。
ただし|つわもの|まもる|||きゃく||みおくる||うけとった|さいふ||なかみ||みて||
「 う ひ ゃあ 、 すごい 大金 が 入って いる ぞ !
||||たいきん||はいって||
あの お 客 、 本当に 二十 両 で 買う つもりだ !
||きゃく|ほんとうに|にじゅう|りょう||かう|
」 おじさん 夫婦 の 留守 の 間 に 思わぬ 大金 を 手 に した 忠 兵 衛 は 、 すっかり うれしく なって 幽霊 の 掛け軸 を 相手 に 一 人 で 酒盛り を 始め ました 。
|ふうふ||るす||あいだ||おもわぬ|たいきん||て|||ただし|つわもの|まもる|||||ゆうれい||かけじく||あいて||ひと|じん||さかもり||はじめ|
「 いや 、 ゆかい ゆかい 。
ちょっと 店番 を して 、 二十 両 か 。
|みせばん|||にじゅう|りょう|
笑い が 止まら ねえ と は 、 この 事 だ 。
わらい||とまら|||||こと|
・・・ しかし 二十 両 だ と 思って 見て みる と 、 この 幽霊 は なかなか の 美人 だ な 」 そして 忠 兵 衛 は 、 掛け軸 の 幽霊 に むかって 言い ました 。
|にじゅう|りょう|||おもって|みて||||ゆうれい||||びじん||||ただし|つわもの|まもる||かけじく||ゆうれい|||いい|
「 お前 さん の お陰 で 大金 を かせが せて もらう のに 、 おれ 一 人 で 飲んで ちゃ 申し訳 ねえ な 。
おまえ|||おかげ||たいきん|||||||ひと|じん||のんで||もうしわけ||
おい 、 お前 さん 。
|おまえ|
ちょっと 出て 来て 、 お しゃく (→ お 酒 を つぐ こと ) でも して くれ や 」 する と その とたん 、 夏 だ と いう のに 辺り が スウーッ と 冷たく なり 、 風 も ない のに 明かり が パッと 消えて 、 ふと 気づく と 目の前 に 見知らぬ 女 の 人 が 立って いた のです 。
|でて|きて||||さけ||||||||||||なつ|||||あたり||||つめたく||かぜ||||あかり||ぱっと|きえて||きづく||めのまえ||みしらぬ|おんな||じん||たって||
「 ん ?
ま 、 まさか 、 その 顔 は 」 忠 兵 衛 が 掛け軸 を 見る と 、 掛け軸 は も ぬけ の 空 で 、 まっ 白 です 。
|||かお||ただし|つわもの|まもる||かけじく||みる||かけじく|||||から|||しろ|
「 ぎ ゃあ ーー !
||--
で 、 出た あー ー !
|でた||-
」 掛け軸 の 幽霊 は 美人 と ほめ られた の が うれしくて 、 本当に お しゃく を し に 出て きた のです 。
かけじく||ゆうれい||びじん|||||||ほんとうに||||||でて||
初め は 怖 がって いた 忠 兵 衛 も 、 相手 が 美人 の 幽霊 な ので 、 その うち に すっかり いい 気分 に なり ました 。
はじめ||こわ|||ただし|つわもの|まもる||あいて||びじん||ゆうれい||||||||きぶん|||
おまけに この 幽霊 の 、 お 酒 の 強い 事 。
||ゆうれい|||さけ||つよい|こと
忠 兵 衛 が 歌えば 、 それ に 合わせて 幽霊 が 踊り ます 。
ただし|つわもの|まもる||うたえば|||あわせて|ゆうれい||おどり|
二 人 は 夜通し 、 飲め や 歌え や の どん ちゃん 騒ぎ を し ました 。
ふた|じん||よどおし|のめ||うたえ|||||さわぎ|||
次の 朝 、 目 を 覚ました 忠 兵 衛 は 、 ふと 幽霊 の 掛け軸 を 見て びっくり 。
つぎの|あさ|め||さました|ただし|つわもの|まもる|||ゆうれい||かけじく||みて|
何と 掛け軸 の 絵 の 幽霊 が 、 酒 に 酔って 寝て いる で は あり ませ ん か 。
なんと|かけじく||え||ゆうれい||さけ||よって|ねて|||||||
「 ね 、 寝て る !
|ねて|
」 忠 兵 衛 は 寝て いる 幽霊 を 見 ながら 、 泣き そうな 顔 で つぶやき ました 。
ただし|つわもの|まもる||ねて||ゆうれい||み||なき|そう な|かお|||
「 う ~ ん 、 困った なあ 。
||こまった|
早く 起きて もらわ ない と 、 二十 両 が パー に なっ ちまう よう 」
はやく|おきて||||にじゅう|りょう||||な っ|ち まう|
おしまい
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