賢 者 の 贈り物 The Gift of the Magi かしこ|もの||おくりもの|the|gift|||magi The Gift of the Magi

オー ・ ヘンリー 作 結城 浩 訳 おー||さく|ゆうき|ひろし|やく Oh · Henry's translation of Yuuki Hiroshi

１ ドル ８７ セント 。 どる|せんと それ で 全部 。 ||ぜんぶ しかも その うち ６０ セント は 小銭 でした 。 |||せんと||こぜに| 小銭 は 一 回 の 買い物 に つき 一 枚 か 二 枚 づつ 浮か せた もの です 。 こぜに||ひと|かい||かいもの|||ひと|まい||ふた|まい||うか||| Münzen sind eine oder zwei Münzen, die bei jedem Kauf ausgegeben werden. Purses are floated one or two for each shopping. 乾物 屋 や 八百屋 や 肉屋 に 無理矢理 まけ させた ので 、 しまい に 、 こんなに 値切る なんて と いう 無言 の 非難 で 頬 が 赤く なる ほど でした 。 かんぶつ|や||やおや||にくや||むりやり||さ せた|||||ねぎる||||むごん||ひなん||ほお||あかく||| Because I forced it to a dry matter shop, a grocery store, and a butcher, in my opinion, my cheeks got red as a result of a silent blame saying that I should price as much. デラ は 三 回 数えて み ました 。 ||みっ|かい|かぞえて|| Della tried counting three times. でも やっぱり １ ドル ８７ セント 。 ||どる|せんと But after all it is 1 dollar 87 cents. 明日 は クリスマス だ と いう のに 。 あした||くりすます|||| Tomorrow is Christmas.

これ で は 、 まったく の ところ 、 粗末な 小 椅子 に 突 っ 伏して 泣く しか あり ませ ん 。 ||||||そまつな|しょう|いす||つ||ふして|なく|||| With this, there is no choice but to lie down and cry on a poor chair. ですから デラ は そう し ました 。 そう して いる うち に 、 人生 と いう もの は 、 わ あわ あ 泣く の と 、 しくしく 泣く の と 、 微笑み と で できて おり 、 しかも 、 わ あわ あ 泣く の が 大部分 を 占めて いる と 思う ように なり ました 。 |||||じんせい||||||||なく||||なく|||ほおえみ|||||||||なく|||だいぶぶん||しめて|||おもう|||

この 家 の 主婦 が 第 一 段階 から 第 二 段階 へ と 少し づつ 移行 して いる 間 に 、 家 の 様子 を 見て おき ましょう 。 |いえ||しゅふ||だい|ひと|だんかい||だい|ふた|だんかい|||すこし||いこう|||あいだ||いえ||ようす||みて|| ここ は 週 ８ ドル の 家具 付き アパート です 。 ||しゅう|どる||かぐ|つき|あぱーと| 全く 筆舌 に 尽くし がたい と いう わけで は ない けれど 、 浮 浪 者 一掃 部隊 に 気 を つける ため に アパート と いう 名前 を つけた に 違い あり ませ ん 。 まったく|ひつぜつ||つくし||||||||うか|ろう|もの|いっそう|ぶたい||き|||||あぱーと|||なまえ||||ちがい||| It's not hard to say at all, but it must have been named the apartment to be aware of the Vagrant Cleanup Unit.

階下 に は 郵便 受け が あり ました が 手紙 が 入る 様子 は なく 、 呼び鈴 は あり ました が 人間 の 指 で は 鳴ら せ そう も あり ませ ん 。 かいか|||ゆうびん|うけ|||||てがみ||はいる|ようす|||よびりん|||||にんげん||ゆび|||なら|||||| その 上 に は 「 ミスター ・ ジェームズ ・ ディリンガム ・ ヤング 」 と いう 名前 が 書か れた 名刺 が 貼って あり ました 。 |うえ|||みすたー|||やんぐ|||なまえ||かか||めいし||はって||

その 「 ディリンガム 」 の 文字 は 、 その 名 の 持ち主 に 週 ３０ ドル の 収入 が あった 繁栄 の 時代 に は そよ風 に はためいて き ました 。 |||もじ|||な||もちぬし||しゅう|どる||しゅうにゅう|||はんえい||じだい|||そよかぜ|||| でも いまや 収入 は ２０ ドル に 減って しまい 、 文字 たち は もっと 慎 ま しく 謙遜 な 「 Ｄ 」 一 文字 に 押し 縮めよう か と 真剣に 考えて いる ようでした 。 ||しゅうにゅう||どる||へって||もじ||||まこと|||けんそん||ｄ|ひと|もじ||おし|ちぢめよう|||しんけんに|かんがえて|| しかし 、 ジェームズ ・ ディリンガム ・ ヤング 氏 が 家 に 帰って 二 階 の アパート に 着く と 、 すでに デラ と して ご 紹介 済み の ジェームズ ・ ディリンガム ・ ヤング 夫人 が 、 「 ジム 」 と 呼び ながら 、 いつでも ぎ ゅう っと 夫 を 抱きしめる のでした 。 |||やんぐ|うじ||いえ||かえって|ふた|かい||あぱーと||つく|||||||しょうかい|すみ||||やんぐ|ふじん||じむ||よび||||||おっと||だきしめる| これ は たいへん 結構な こと です ね 。 |||けっこうな|||

デラ は 泣く の を やめ 、 頬 に 白 粉 を はたく の に 意識 を 集中 さ せ ました 。 ||なく||||ほお||しろ|こな|||||いしき||しゅうちゅう||| デラ は 窓 辺 に 立ち 、 灰色 の 裏庭 に ある 灰色 の 塀 の 上 を 灰色 の 猫 が 歩いて いる の を 物 憂 げ に 見 ました 。 ||まど|ほとり||たち|はいいろ||うらにわ|||はいいろ||へい||うえ||はいいろ||ねこ||あるいて||||ぶつ|ゆう|||み| 明日 は クリスマス だ と いう のに 、 ジム に 贈り物 を 買う お 金 が １ ドル ８７ セント しか あり ませ ん 。 あした||くりすます|||||じむ||おくりもの||かう||きむ||どる|せんと|||| 何 月 も 何 月 も コツコツ と ためて きた のに 、 これ が その 結果 な のです 。 なん|つき||なん|つき||こつこつ||||||||けっか|| 週 ２０ ドル で は 、 大した こと は でき ませ ん 。 しゅう|どる|||たいした||||| 支出 は デラ が 計算 した 以上 に あり ました 。 ししゅつ||||けいさん||いじょう||| 支出 と いう もの は いつ だって そういう もの でした 。 ししゅつ||||||||| ジム へ の 贈り物 を 買う のに １ ドル ８７ セント しか ない なんて 。 じむ|||おくりもの||かう||どる|せんと||| 大切な ジム な のに 。 たいせつな|じむ|| デラ は 、 ジム の ため に 何 か すばらしい もの を あげよう と 、 長い 間 計画 して いた のです 。 ||じむ||||なん|||||||ながい|あいだ|けいかく||| 何 か 、 すてきで 、 めったに ない もの ―― ジム の 所有 物 と なる 栄誉 を 受ける に 少し でも 値する 何 か を 。 なん||||||じむ||しょゆう|ぶつ|||えいよ||うける||すこし||あたいする|なん||

その 部屋 の 窓 と 窓 の 間 に は 姿 見 の 鏡 が 掛け られて い ました 。 |へや||まど||まど||あいだ|||すがた|み||きよう||かけ||| たぶん あなた も ８ ドル の 安 アパート で 見た こと の ある ような 姿 見 でした 。 |||どる||やす|あぱーと||みた|||||すがた|み| たいそう 細身 で 機敏な 人 だけ が 、 縦 に 細長い 列 に 映る 自分 を すばやく 見てとって 、 全身 像 を 非常に 正確に 把握 する こと が できる のでしょう 。 |ほそみ||きびんな|じん|||たて||ほそながい|れつ||うつる|じぶん|||みてとって|ぜんしん|ぞう||ひじょうに|せいかくに|はあく||||| デラ は すら っと して いた ので 、 その 技術 を 会得 して おり ました 。 ||||||||ぎじゅつ||えとく|||

急に デラ は 窓 から くるり と 身 を ひるがえし 、 その 鏡 の 前 に 立ち ました 。 きゅうに|||まど||||み||||きよう||ぜん||たち| デラ の 目 は きらきら と 輝いて い ました が 、 顔 は ２０ 秒 の 間 、 色 を 失って いた のでした 。 ||め||||かがやいて||||かお||びょう||あいだ|いろ||うしなって|| デラ は 手早く 髪 を 下ろし 、 その 長 さ いっぱい まで 垂らし ました 。 ||てばやく|かみ||おろし||ちょう||||たらし|

さて 、 ジェームズ ・ ディリンガム ・ ヤング 家 に は 、 誇る べき 二 つ の もの が あり ました 。 |||やんぐ|いえ|||ほこる||ふた|||||| 一 つ は ジム の 金 時計 です 。 ひと|||じむ||きむ|とけい| かつて は ジム の 父 、 そして その 前 に は ジム の 祖父 が 持って いた と いう 金 時計 。 ||じむ||ちち|||ぜん|||じむ||そふ||もって||||きむ|とけい もう 一 つ は デラ の 髪 でした 。 |ひと|||||かみ| シバ の 女王 が 通風 縦 孔 の 向こう側 の アパート に 住んで いた と し ましょう 。 ||じょおう||つうふう|たて|あな||むこうがわ||あぱーと||すんで|||| ある 日 、 デラ が 窓 の 外 に ぬれた 髪 を 垂らして 乾かそう と したら 、 それ だけ で 、 女王 様 の 宝石 や 宝物 は 色あせて しまった こと でしょう 。 |ひ|||まど||がい|||かみ||たらして|かわかそう||||||じょおう|さま||ほうせき||たからもの||いろあせて||| また 、 ソロモン 王 が ビル の 管理人 を やって いて 、 宝物 は 地下 室 に 山積み して いた と し ましょう 。 |そろもん|おう||びる||かんりにん||||たからもの||ちか|しつ||やまづみ||||| ジム が 通りがかり に 時計 を 出す たび 、 王様 は うらやまし さ の あまり 、 ひげ を かきむしった こと でしょう 。 じむ||とおりがかり||とけい||だす||おうさま||||||||||

さて 、 その デラ の 美しい 髪 は 褐色 の 小さな 滝 の ように さざなみ を うち 、 輝き ながら 彼女 の まわり を 流れ 落ちて いき ました 。 ||||うつくしい|かみ||かっしょく||ちいさな|たき||||||かがやき||かのじょ||||ながれ|おちて|| 髪 は デラ の 膝 の あたり まで 届き 、 まるで 長い 衣 の ようでした 。 かみ||||ひざ||||とどき||ながい|ころも|| やがて デラ は 神経質 そうに また 手早く 髪 を まとめ あげ ました 。 |||しんけいしつ|そう に||てばやく|かみ|||| ためらい ながら １ 分間 じっと 立って い ました 。 ||ぶん かん||たって|| が 、 その うち に 涙 が 一 粒 、 二 粒 、 すりきれた 赤い カーペット に 落ち ました 。 ||||なみだ||ひと|つぶ|ふた|つぶ||あかい|||おち|

デラ は 褐色 の 古い ジャケット を 羽織り 、 褐色 の 古い 帽子 を かぶり ました 。 ||かっしょく||ふるい|じゃけっと||はおり|かっしょく||ふるい|ぼうし||| スカート を はためか せ 、 目 に は まだ 涙 を 光ら せて 、 ドア の 外 に 出る と 、 表通り へ 続く 階段 を 降りて いき ました 。 すかーと||||め||||なみだ||ひから||どあ||がい||でる||おもてどおり||つづく|かいだん||おりて||

デラ が 立ち止まった ところ の 看板 に は 、 「 マダム ・ ソフロニー 。 ||たちどまった|||かんばん|||| ヘア 用品 なら 何でも 。」 へあ|ようひん||なんでも と 書いて あり ました 。 |かいて|| デラ は 階段 を 一 つ かけ のぼり 、 胸 を どきどき さ せ ながら も 気持ち を 落ち着け ました 。 ||かいだん||ひと||||むね|||||||きもち||おちつけ| 女 主人 は 大柄で 、 色 は 白 すぎ 、 冷ややかで 、 とうてい 「 ソフロニー 」 と いう 名前 の ように は 見え ませ ん でした 。 おんな|あるじ||おおがらで|いろ||しろ||ひややかで|||||なまえ||||みえ|||

「 髪 を 買って ください ます か 」 と デラ は 尋ね ました 。 かみ||かって|||||||たずね|

「 買う さ 」 と 女 主人 は 言い ました 。 かう|||おんな|あるじ||いい| 「 帽子 を 取って 見せ なさい よ 」 ぼうし||とって|みせ||

褐色 の 滝 が さざなみ の ように こぼれ落ち ました 。 かっしょく||たき|||||こぼれおち|

「２０ ドル 」 手 馴 れた 手つき で 髪 を 持ち 上げて 女 主人 は 言い ました 。 どる|て|じゅん||てつき||かみ||もち|あげて|おんな|あるじ||いい|

「 すぐ に ください 」 と デラ は 言い ました 。 ||||||いい|

ああ 、 それ から 、 薔薇 の ような 翼 に 乗って ２ 時間 が 過ぎて いき ました 。 |||ばら|||つばさ||のって|じかん||すぎて|| … なんて 、 使い古さ れた 比喩 は 忘れて ください 。 |つかいふるさ||ひゆ||わすれて| デラ は ジム へ の 贈り物 を 探して お 店 を 巡って おり ました 。 ||じむ|||おくりもの||さがして||てん||めぐって||

そして とうとう デラ は 見つけた のです 。 ||||みつけた| それ は 確かに ジム の ため 、 ジム の ため だけ に 作ら れた もの でした 。 ||たしかに|じむ|||じむ|||||つくら||| それほど すばらしい もの は どの 店 に も あり ませ ん でした 。 |||||てん|||||| デラ は 全部 の 店 を ひっくり返さ ん ばかりに 見た のです から 。 ||ぜんぶ||てん||ひっくりかえさ|||みた|| それ は プラチナ の 時計 鎖 で 、 デザイン は シンプルで 上品でした 。 ||ぷらちな||とけい|くさり||でざいん||しんぷるで|じょうひんでした ごてごて した 飾り で は なく 、 素材 のみ が その 価値 を 主張 して いた のです ―― すべて の よき もの が そう ある べきな のです が 。 ||かざり||||そざい||||かち||しゅちょう||||||||||||| その 鎖 は 彼 の 時計 に つける の に ふさわしい と まで 言える もの でした 。 |くさり||かれ||とけい||||||||いえる|| その 鎖 を 見た とたん 、 これ は ジム の もの だ 、 と デラ に は わかり ました 。 |くさり||みた||||じむ||||||||| この 鎖 は ジム に 似て い ました 。 |くさり||じむ||にて|| 寡黙だ が 、 価値 が ある ―― この 表現 は 鎖 と ジム の 両者 に 当てはまり ました 。 かもくだ||かち||||ひょうげん||くさり||じむ||りょうしゃ||あてはまり| その 鎖 に は ２１ ドル かかり 、 デラ は ８７ セント を もって 家 に 急いで 帰り ました 。 |くさり|||どる||||せんと|||いえ||いそいで|かえり| この 鎖 を 時計 に つければ 、 どんな 人 の 前 でも ちゃんと 時間 を 気 に する こと が できる ように なる でしょう 。 |くさり||とけい||||じん||ぜん|||じかん||き|||||||| 時計 は すばらしかった のです が 、 鎖 の 代わり に 古い 皮 紐 を つけて いた ため 、 ジム は こそこそ と 見る とき も あった のです 。 とけい|||||くさり||かわり||ふるい|かわ|ひも|||||じむ||||みる||||

デラ が 家 に 着いた とき 、 興奮 は やや 醒 め 、 分別 と 理性 が 頭 を もたげて き ました 。 ||いえ||ついた||こうふん|||せい||ぶんべつ||りせい||あたま|||| ヘアアイロン を 取り出し 、 ガス を 着ける と 、 愛 に 気前 の 良 さ を 加えて 生じた 被害 の 跡 を 修繕 する 作業 に かかり ました 。 ||とりだし|がす||つける||あい||きまえ||よ|||くわえて|しょうじた|ひがい||あと||しゅうぜん||さぎょう||| そういう の は いつも 大変な 仕事 な のです よ 、 ねえ あなた ―― とてつもなく 大きな 仕事 な のです よ 。 ||||たいへんな|しごと|||||||おおきな|しごと|||

４０ 分 の うち に 、 デラ の 髪 は 小さく 集まった カール で 覆わ れ ました 。 ぶん||||||かみ||ちいさく|あつまった|||おおわ|| 髪 型 の せい で 、 まるで 、 ずる 休み した 学童 みたいに 見え ました 。 かみ|かた||||||やすみ||がくどう||みえ| デラ は 、 鏡 に うつる 自分 の 姿 を 、 長い 間 、 注意深く 、 ため つ す がめつ 見つめ ました 。 ||きよう|||じぶん||すがた||ながい|あいだ|ちゅういぶかく|||||みつめ|

「 わたし の こと を 殺し は し ない だろう けれど 」 と デラ は 独り言 を いい ました 。 ||||ころし|||||||||ひとりごと||| 「 ジム は わたし の こと を 見る なり 、 コニーアイランド の コーラス ガール みたい だって 言う わ 。 じむ||||||みる||||こーらす|がーる|||いう| でも わたし に 何 が できる の ―― ああ 、 ほんとうに １ ドル ８７ セント で 何 が できる って いう の ？ |||なん||||||どる|せんと||なん||||| ７ 時 に は コーヒー の 用意 が でき 、 フライパン は ストーブ の 上 に のり 、 チョップ を 焼く 準備 が でき ました 。 じ|||こーひー||ようい|||ふらいぱん||すとーぶ||うえ|||||やく|じゅんび|||

ジム は 決して 遅れる こと は あり ませ ん でした 。 じむ||けっして|おくれる|||||| デラ は 時計 の 鎖 を 手 の 中 で 二 重 に 巻き 、 彼 が いつも 入って くる ドア の 近く の テーブル の 隅 に 座り ました 。 ||とけい||くさり||て||なか||ふた|おも||まき|かれ|||はいって||どあ||ちかく||てーぶる||すみ||すわり| やがて 、 ジム が はじめ の 階段 を 上って くる 足音 が 聞こえる と 、 デラ は 一瞬 顔 が 青ざめ ました 。 |じむ||||かいだん||のぼって||あしおと||きこえる||||いっしゅん|かお||あおざめ| デラ は 毎日 の ちょっと した こと で も 小さな 祈り を 静かに 唱える 習慣 が あり ました が 、 この とき は 「 神さま 。 ||まいにち|||||||ちいさな|いのり||しずかに|となえる|しゅうかん||||||||かみさま どうか ジム が わたし の こと を 今 で も かわいい と 思って くれ ます ように 」 と ささやき ました 。 |じむ||||||いま|||||おもって||||||

ドア が 開き 、 ジム が 入り 、 ドア を 閉め ました 。 どあ||あき|じむ||はいり|どあ||しめ| ジム は やせて いて 、 生真面目な 顔つき を して い ました 。 じむ||||きまじめな|かおつき|||| かわいそうに 、 まだ ２２ 歳 な のに ―― 彼 は 家庭 を 背負って いる のです 。 ||さい|||かれ||かてい||せおって|| 新しい オーバー も 必要だ し 、 手袋 も して い ませ ん でした 。 あたらしい|おーばー||ひつようだ||てぶくろ||||||

ジム は 、 ドア の 内 で 立ち止まり ました 。 じむ||どあ||うち||たちどまり| うず ら の 匂い に じっと して いる 猟犬 と 同じ ように 、 そのまま 動き ませ ん でした 。 |||におい|||||りょうけん||おなじ|||うごき||| ジム の 目 は デラ に 釘付け でした 。 じむ||め||||くぎづけ| そして その 目 に は 読み 取る こと の でき ない 感情 が 込め られて いて 、 デラ は 恐く なって しまい ました 。 ||め|||よみ|とる|||||かんじょう||こめ|||||こわく||| それ は 憤怒 で は なく 、 驚嘆 でも なく 、 拒否 でも なく 、 恐怖 でも なく 、 デラ が 心して いた どんな 感情 で も あり ませ ん でした 。 ||ふんぬ||||きょうたん|||きょひ|||きょうふ|||||こころして|||かんじょう|||||| ジム は 顔 に その 奇妙な 表情 を 浮かべ ながら 、 ただ 、 じっと デラ を 見つめて いた のです 。 じむ||かお|||きみょうな|ひょうじょう||うかべ||||||みつめて||

デラ は テーブル を 回って ジム の 方 へ 歩み寄り ました 。 ||てーぶる||まわって|じむ||かた||あゆみより|

「 ジム 、 ねえ 、 あなた 」 デラ は 声 を あげ ました 。 じむ|||||こえ||| 「 そんな 顔 して 見 ないで 。 |かお||み| 髪 の 毛 は 切って 、 売っちゃ った の 。 かみ||け||きって|うっちゃ|| だって 、 あなた に プレゼント 一 つ あげ ず に クリスマス を 過ごす なんて 絶対 でき ない んだ もの 。 |||ぷれぜんと|ひと|||||くりすます||すごす||ぜったい|||| 髪 は また 伸びる わ ―― 気 に し ない 、 でしょ ？ かみ|||のびる||き|||| こう し なきゃ 駄目だった の 。 |||だめだった| ほら 、 わたし の 髪 って すごく 早く 伸びる し 。 |||かみ|||はやく|のびる| 『 メリー ・ クリスマス 』 って 言って よ 、 ジム 。 |くりすます||いって||じむ そして 楽しく 過ごし ま しょ 。 |たのしく|すごし|| どんなに 素敵な ―― 綺麗で 素敵な プレゼント を あなた に 用意 した か 、 当て られ ない わ よ 」 |すてきな|きれいで|すてきな|ぷれぜんと||||ようい|||あて||||

「 髪 を 切った って ？ かみ||きった| 」 と ジム は 苦労 し つつ 尋ね ました 。 |じむ||くろう|||たずね| まるで 、 懸命に 頭 を 働か せて も 明白な 事実 に たどり着け ない ような ありさま でした 。 |けんめいに|あたま||はたらか|||めいはくな|じじつ||たどりつけ||||

「 切って 、 売っちゃ った の 」 と デラ は 言い ました 。 きって|うっちゃ||||||いい| 「 それ でも 、 わたし の こと 、 変わら ず に 好きで いて くれる わ よ ね 。 |||||かわら|||すきで||||| 髪 が なくて も 、 わたし は わたし 、 よ ね ？ かみ|||||||| ジム は 部屋 を さがし もの でも する か の よう に 見まわ し ました 。 じむ||へや||||||||||みまわ||

「 髪 が なくなっちゃ った って ？ かみ|||| 」 ジム は 何だか 馬鹿に なった ように 言い ました 。 じむ||なんだか|ばかに|||いい|

「 探さ なくて も いい の よ 」 と デラ は 言い ました 。 さがさ|||||||||いい| 「 売っちゃ った の 。 うっちゃ|| だから 、―― 売っちゃ った から なくなった の よ 。 |うっちゃ||||| ねえ 、 クリスマスイブ でしょ 。 優しく して 。 やさしく| 髪 が なくなった の は 、 あなた の ため な の よ 。 かみ|||||||||| たぶん 、 わたし の 髪 の 毛 の 一 本 一 本 まで 神様 に は 数え られて いる でしょう ね 」 デラ は 急に 真面目に なり 、 優しく 続け ました 。 |||かみ||け||ひと|ほん|ひと|ほん||かみさま|||かぞえ|||||||きゅうに|まじめに||やさしく|つづけ| 「 でも 、 わたし が あなた を どれ だけ 愛して いる か は 、 誰 に も はかる こと は でき ない わ 。 |||||||あいして||||だれ|||||||| チョップ を かけて も いい 、 ジム ？ |||||じむ ジム は ぼうっと した 状態 から はっと 戻り 、 デラ を 抱きしめ ました 。 じむ||||じょうたい|||もどり|||だきしめ| さて 、 それでは ここ で １０ 秒間 、 趣 を 変えた ささやかな 事柄 に ついて 控え目に 吟味 を して み ましょう 。 ||||びょうかん|おもむき||かえた||ことがら|||ひかえめに|ぎんみ|||| 週 ８ ドル と 年 １００万 ドル ―― その 違い は 何 でしょう か 。 しゅう|どる||とし|よろず|どる||ちがい||なん|| 数学 者 や 知恵 者 に 尋ねたら 、 誤った 答え が 返って 来る でしょう 。 すうがく|もの||ちえ|もの||たずねたら|あやまった|こたえ||かえって|くる| 東方 の 賢 者 は 高価な 贈り物 を 持って き ました が 、 その 中 に 答え は あり ませ ん でした 。 とうほう||かしこ|もの||こうかな|おくりもの||もって|||||なか||こたえ||||| 何だか 暗い こと を 申し ました が 、 ここ で 述べた 言明 は 、 後 に はっきり と 光り輝く こと に なる のです 。 なんだか|くらい|||もうし|||||のべた|げんめい||あと||||ひかりかがやく||||

ジム は オーバー の ポケット から 包み を 取り出す と 、 テーブル に 投げ出し ました 。 じむ||おーばー||ぽけっと||つつみ||とりだす||てーぶる||なげだし|

「 ねえ デラ 、 僕 の こと を 勘違い し ないで 。 ||ぼく||||かんちがい|| 髪 型 と か 肌 剃 と か シャンプー と か 、 そんな もの で 僕 の かわいい 女の子 を 嫌いに なったり する もん か 。 かみ|かた|||はだ|てい|||しゃんぷー||||||ぼく|||おんなのこ||きらいに|||| でも 、 その 包み を 開けたら 、 はじめ の うち しばらく 、 どうして 僕 が あんな 風 だった か わかる と 思う よ 」 ||つつみ||あけたら||||||ぼく|||かぜ|||||おもう|

白い 指 が すばやく 紐 を ちぎり 紙 を 破り ました 。 しろい|ゆび|||ひも|||かみ||やぶり| そして 歓喜 の 叫び が 上がり 、 それ から 、 ああ 、 ヒステリック な 涙 と 嘆き へ と 女性 らしく すぐさま 変わって いった のです 。 |かんき||さけび||あがり||||||なみだ||なげき|||じょせい|||かわって|| いそいで 、 その アパート の 主人 が 必死に なって 慰め なければ なり ませ ん でした 。 ||あぱーと||あるじ||ひっしに||なぐさめ|||||

包み の 中 に は 櫛 （ くし ） が 入って いた のです ―― セット に なった 櫛 で 、 横 と 後ろ に 刺す ように なって いる もの でした 。 つつみ||なか|||くし|||はいって|||せっと|||くし||よこ||うしろ||さす||||| その 櫛 の セット は 、 デラ が ブロードウェイ の お 店 の 窓 で 、 長い 間 あがめ ん ばかりに 思って いた もの でした 。 |くし||せっと|||||||てん||まど||ながい|あいだ||||おもって||| 美しい 櫛 、 ピュア な 亀 甲 で できて いて 、 宝石 で 縁取り が して あって ―― 売って なく なった 美しい 髪 に ぴったりでした 。 うつくしい|くし|||かめ|こう||||ほうせき||ふちどり||||うって|||うつくしい|かみ|| その 櫛 が 高価だ と いう こと を デラ は 知って い ました 。 |くし||こうかだ|||||||しって|| ですから 、 心 の うち で は 、 その 櫛 が ただ もう 欲しくて 欲しくて たまら なかった のです けれど 、 実際 に 手 に 入る なんて いう 望み は ちっとも 抱いて い なかった のです 。 |こころ||||||くし||||ほしくて|ほしくて|||||じっさい||て||はいる|||のぞみ|||いだいて||| そして 、 いま 、 この 櫛 が 自分 の もの に なった のです 。 |||くし||じぶん||||| けれども 、 この 髪 飾り に よって 飾ら れる べき 髪 の 方 が すでに なくなって いた のでした 。 ||かみ|かざり|||かざら|||かみ||かた|||||

しかし 、 デラ は 櫛 を 胸 に 抱き ました 。 |||くし||むね||いだき| そして やっと の 思い で 涙 で 濡れた 目 を あげ 、 微笑んで こう 言う こと が でき ました 。 |||おもい||なみだ||ぬれた|め|||ほおえんで||いう|||| 「 わたし の 髪 は ね 、 とっても 早く 伸びる の よ 、 ジム ！ ||かみ||||はやく|のびる|||じむ そして デラ は 火 で 焼か れた 小 猫 の ように ジャンプ して 声 を あげ ました 。 |||ひ||やか||しょう|ねこ|||じゃんぷ||こえ||| 「 き ゃっ 、 そう だ ！ 自分 が もらう 美しい 贈り物 を ジム は まだ 見て い ない のです 。 じぶん|||うつくしい|おくりもの||じむ|||みて||| デラ は 手のひら に 贈り物 を 乗せ 、 ジム に 思い を 込めて 差し出し ました 。 ||てのひら||おくりもの||のせ|じむ||おもい||こめて|さしだし| 貴金属 の 鈍い 光 は 、 デラ の 輝く ばかりの 熱心な 気持ち を 反射 して いる か の よう でした 。 ききんぞく||にぶい|ひかり||||かがやく||ねっしんな|きもち||はんしゃ||||||

「 ねえ 素敵じゃ ない ？ |すてきじゃ| 町 中 を 探して 見つけた の よ 。 まち|なか||さがして|みつけた|| あなた の 時計 に この 鎖 を つけたら 、 一 日 に 百 回 でも 時間 を 調べ たく なる わ よ 。 ||とけい|||くさり|||ひと|ひ||ひゃく|かい||じかん||しらべ|||| 時計 、 貸して よ 。 とけい|かして| この 鎖 を つけたら どんな 風 に なる か 見 たい の 」 |くさり||||かぜ||||み||

デラ の この 言葉 に は 従わ ず 、 ジム は 椅子 に ど さ り と 腰 を 下ろし 、 両手 を 首 の 後ろ に 組んで にっこり と 微笑み ました 。 |||ことば|||したがわ||じむ||いす||||||こし||おろし|りょうて||くび||うしろ||くんで|||ほおえみ|

「 ねえ デラ 。 僕 達 の クリスマス プレゼント は 、 しばらく の 間 、 どこ か に しまって おく こと に しよう よ 。 ぼく|さとる||くりすます|ぷれぜんと||||あいだ||||||||| いま すぐ 使う に は 上等 すぎる よ 。 ||つかう|||じょうとう|| 櫛 を 買う お 金 を 作る ため に 、 僕 は 時計 を 売っちゃ った の さ 。 くし||かう||きむ||つくる|||ぼく||とけい||うっちゃ||| さあ 、 チョップ を 火 に かけて くれ よ 」 |||ひ||||

東方 の 賢 者 は 、 ご存知 の ように 、 賢い 人 たち でした ―― すばらしく 賢い 人 たち だった んです ―― 飼葉 桶 の 中 に いる 御 子 に 贈り物 を 運んで きた のです 。 とうほう||かしこ|もの||ごぞんじ|||かしこい|じん||||かしこい|じん||||かいば|おけ||なか|||ご|こ||おくりもの||はこんで|| 東方 の 賢 者 が クリスマス プレゼント を 贈る 、 と いう 習慣 を 考え 出した のです ね 。 とうほう||かしこ|もの||くりすます|ぷれぜんと||おくる|||しゅうかん||かんがえ|だした|| 彼 ら は 賢明な 人 たち でした から 、 もちろん 贈り物 も 賢明な もの でした 。 かれ|||けんめいな|じん|||||おくりもの||けんめいな|| たぶん 贈り物 が だ ぶったり した とき に は 、 別の 品 と 交換 を する こと が できる 特典 も あった でしょう ね 。 |おくりもの||||||||べつの|しな||こうかん||||||とくてん|||| さて 、 わたくし は これ まで 、 つたない ながら も 、 アパート に 住む 二 人 の 愚かな 子供 たち に 起こった 、 平凡な 物語 を お 話 して まいり ました 。 ||||||||あぱーと||すむ|ふた|じん||おろかな|こども|||おこった|へいぼんな|ものがたり|||はなし||| 二 人 は 愚かな こと に 、 家 の 最も すばらしい 宝物 を 互い の ため に 台無しに して しまった のです 。 ふた|じん||おろかな|||いえ||もっとも||たからもの||たがい||||だいなしに||| しかしながら 、 今日 の 賢 者 たち へ の 最後 の 言葉 と して 、 こう 言わ せて いただき ましょう 。 |きょう||かしこ|もの||||さいご||ことば||||いわ||| 贈り物 を する すべて の 人 の 中 で 、 この 二 人 が 最も 賢明だった のです 。 おくりもの|||||じん||なか|||ふた|じん||もっとも|けんめいだった| 贈り物 を やりとり する すべて の 人 の 中 で 、 この 二 人 の ような 人 たち こそ 、 最も 賢い 人 たち な のです 。 おくりもの||||||じん||なか|||ふた|じん|||じん|||もっとも|かしこい|じん||| 世界 中 の どこ であって も 、 このような 人 たち が 最高の 賢 者 な のです 。 せかい|なか||||||じん|||さいこうの|かしこ|もの|| 彼 ら こそ 、 本当の 、 東方 の 賢 者 な のです 。 かれ|||ほんとうの|とうほう||かしこ|もの||