世界 一 美しい バラ の 花
せかい|ひと|うつくしい|ばら||か
The most beautiful roses in the world
世界 一 美しい バラ の 花
せかい|ひと|うつくしい|ばら||か
The most beautiful rose flower in the world
むかし むかし 、 偉い 女王 さま が い ました 。
||えらい|じょおう||||
その お 庭 に は 一年中 、 その 時々 の 一 番 美しい 花 や 世界 中 の 国々 から 持って 来た 花 が 咲いて い ました 。
||にわ|||いちねんじゅう||ときどき||ひと|ばん|うつくしい|か||せかい|なか||くにぐに||もって|きた|か||さいて||
The garden was full of the most beautiful flowers of the time and flowers brought from countries all over the world all year round.
けれども 女王 さま の とくに お 気 に 入り の 花 は 、 バラ の 花 です 。
|じょおう|||||き||はいり||か||ばら||か|
ですから バラ の 花 ならば 、 リンゴ の に おい の する 緑色 の 野 バラ から 、 プロヴァンス の 一 番 美しい バラ の 花 まで 、 ありとあらゆる 種類 の バラ の 花 を 持って い ました 。
|ばら||か||りんご||||||みどりいろ||の|ばら||||ひと|ばん|うつくしい|ばら||か|||しゅるい||ばら||か||もって||
So if it was a rose flower, I had all kinds of rose flowers, from the green wild roses that smelled like apples to the most beautiful rose flowers in Provence.
それ ら の バラ は お 城 の 壁 を はいあがり 、 柱 や 窓 わく に からみつき 、 廊下 から 天井 伝い に 広間 と いう 広間 の 中 まで のびて 行き ました 。
|||ばら|||しろ||かべ|||ちゅう||まど||||ろうか||てんじょう|つたい||ひろま|||ひろま||なか|||いき|
The roses climbed up the walls of the castle, entwined with pillars and windows, and stretched from the corridor to the ceiling and into the hall.
そして どの 花 も 、 におい や 形 や 色 が それぞれ 違って い ました 。
||か||||かた||いろ|||ちがって||
ある 日 、 女王 さま が 重い ご 病気 に なって しまい ました 。
|ひ|じょおう|||おもい||びょうき||||
お 医者 たち も 、 「 もう 、 お 亡くなり に なる の を 待つ ほか は ない 」 と 、 言い ました 。
|いしゃ|||||なくなり|||||まつ|||||いい|
The doctors also said, "I have no choice but to wait for my death."
「 しかし 、 女王 さま を お 助け する 道 が 一 つ ございます 」 お 医者 たち の うち で 、 一 番 偉い 人 が 言い ました 。
|じょおう||||たすけ||どう||ひと||||いしゃ|||||ひと|ばん|えらい|じん||いい|
"But there is one way to help the Queen," said one of the greatest doctors.
「 それ は 、 女王 さま に 世界 一 の 美しい バラ の 花 を 差し上げる こと です 。
||じょおう|||せかい|ひと||うつくしい|ばら||か||さしあげる||
それ は 、 この 上 も なく 気高く 、 この 上 も なく 清らかな 愛 を あらわした もの で なければ なり ませ ん 。
|||うえ|||けだかく||うえ|||きよらかな|あい||||||||
It must be the most noble and the most pure love.
女王 さま の お 目 の 光 が 消え ない うち に 、 その様な バラ の 花 を ご覧 に 入れる こと が 出来れば 、 女王 さま は お 亡くなり に は なり ませ ん 」 さあ これ を 聞いて 、 みんな は 自分 たち の 庭 に 咲いて いる 一 番 美しい バラ の 花 を 持って 来 ました 。
じょおう||||め||ひかり||きえ||||その よう な|ばら||か||ごらん||いれる|||できれば|じょおう||||なくなり|||||||||きいて|||じぶん|||にわ||さいて||ひと|ばん|うつくしい|ばら||か||もって|らい|
けれども 、 どの 花 も 捜し 求めて いる の と は 違い ました 。
||か||さがし|もとめて|||||ちがい|
But it wasn't what every flower was looking for.
それ は 、 愛 の 花園 から つみ取って きた 花 で なければ なり ませ ん 。
||あい||はなぞの||つみとって||か|||||
It must be a flower picked from the flower garden of love.
でも 愛 の 花園 の うち の どの 花 が いったい 、 この 上 も なく 気高く 、 この 上 も なく 清らかな 愛 の 象徴 ( しょうちょう ) でしょう か ?
|あい||はなぞの|||||か||||うえ|||けだかく||うえ|||きよらかな|あい||しょうちょう|||
But which of the flowers in the flower garden of love is the most noble and the most pure symbol of love?
歌人 たち は 世界 一 の 美しい バラ の 花 を 歌って 、 めいめい 自分 の 花 こそ それ だ と 言い ました 。
かじん|||せかい|ひと||うつくしい|ばら||か||うたって||じぶん||か|||||いい|
The singers sang the most beautiful rose flower in the world and said that it was their own flower.
ですが 、 「 まだ 誰 も 、 求める 花 を 名ざして きた 者 は ない !
||だれ||もとめる|か||なざして||もの||
However, "No one has named the flower they are looking for yet!
」 と 、 医者 は 言い ました 。
|いしゃ||いい|
「 私 は 、 その 花 の 咲いて いる ところ を 存じて おり ます !
わたくし|||か||さいて||||ぞんじて||
」 と 、 乳飲み子 を だいた 幸福 そうな 母親 が 、 女王 さま の 床 の そば に きて 言い ました 。
|ちのみご|||こうふく|そう な|ははおや||じょおう|||とこ|||||いい|
The happy mother, who had a baby, came to the Queen's floor and said.
「 私 は 、 世界 一 の 美しい バラ の 花 の ありか を 存じて おり ます !
わたくし||せかい|ひと||うつくしい|ばら||か||||ぞんじて||
この 上 も なく 気高く 、 この 上 も なく 清らかな 愛 の 象徴 である バラ の 花 、 それ は 私 の かわいい 坊や の つやつや した ほお に 咲き 出る ので ございます 。
|うえ|||けだかく||うえ|||きよらかな|あい||しょうちょう||ばら||か|||わたくし|||ぼうや||||||さき|でる||
The rose flower, which is the most noble and the most pure symbol of love, blooms on the shiny cheeks of my cute little boy.
この 子 が 眠り から 覚めて 、 きげん よく目 を パッチリ と 開いて 、 愛 そのもの の 様 に 私 に 笑い かけ ます 時 、 その 花 は 開く ので ございます 」 「 なるほど 、 その バラ の 花 は 美しい 。
|こ||ねむり||さめて||よくめ||||あいて|あい|その もの||さま||わたくし||わらい|||じ||か||あく|||||ばら||か||うつくしい
When this child wakes up from sleep, opens his eyes and laughs at me like love itself, the flowers open. "" I see, the roses are beautiful.
だが 、 もっと 美しい 花 が ある はずじゃ 」 と 、 医者 は 言い ました 。
||うつくしい|か|||||いしゃ||いい|
「 はい 。
もっと 、 ずっと 美しい の が ございます 」 と 、 侍女 の 一 人 が 言い ました 。
||うつくしい|||||じじょ||ひと|じん||いい|
There is something much more beautiful, "said one of the maids.
「 私 は 、 それ を 見た こと が ございます 。
わたくし||||みた|||
"I have seen it.
それ より も 気高い 神々しい バラ の 花 は 、 どこ に も 咲いて おり ませ ん 。
|||けだかい|こうごうしい|ばら||か|||||さいて|||
けれども それ は 、 コウシンバラ の ように 青白う ございました 。
|||||よう に|あおじろう|
However, it was pale like a roses.
女王 さま の ほお の 上 に 、 私 は それ を 見た ので ございます 。
じょおう|||||うえ||わたくし||||みた||
Above the Queen's cheeks, I saw it.
いつぞや 女王 さま は 王冠 ( おうかん ) を お ぬぎ に なり 、 ご 病気 の お 子 さま を お 抱き に なって 、 長い 悲しみ の 一夜 を まんじ り と も なさら ず に 涙 を お 流し に なって は 、 お 子 さま に キス を なさって いらっしゃい ました 。
|じょおう|||おうかん||||||||びょうき|||こ||||いだき|||ながい|かなしみ||いちや|||||||||なみだ|||ながし|||||こ|||きす||||
そして 世 の 母親 が 悲しみ の おり に いたし ます ように 、 神さま に お 祈り を なさ い ました 」 「 悲しみ の 白い バラ の 花 に は 、 確かに 神々しく も 不思議な 力 が こもって いる 。
|よ||ははおや||かなしみ||||||よう に|かみさま|||いのり||な さ|||かなしみ||しろい|ばら||か|||たしかに|こうごうしく||ふしぎな|ちから|||
And I prayed to God, just as the mother of the world would mourn. "" The white rose flower of grief certainly has a divine and mysterious power.
だが 、 今 求めて いる 花 は それ で は ない 」 「 おお 、 それ それ !
|いま|もとめて||か||||||||
わし は 世界 一 の 美しい バラ の 花 を 、 主 の 聖 壇 ( せいだん ) の 前 で 見 ました ぞ 」 と 、 年 取った 信心深い 司教 が 言い ました 。
||せかい|ひと||うつくしい|ばら||か||おも||せい|だん|||ぜん||み||||とし|とった|しんじんぶかい|しきょう||いい|
「 わし は 、 それ が 天使 ( てんし ) の 顔 の 様 に 輝く の を 見 ました 。
||||てんし|||かお||さま||かがやく|||み|
若い 娘 たち が 主 の 聖 餐台 ( せい さんだい ) の 前 に 進み 出て 、 洗礼 ( せんれい ) の 聖 約 を 新たに いたし ました 。
わかい|むすめ|||おも||せい|さんだい||||ぜん||すすみ|でて|せんれい|||せい|やく||あらたに||
その 時 、 娘 たち の みずみずしい ほお に バラ の 花 が 赤らみ 、 また 、 青ざめ ました 。
|じ|むすめ||||||ばら||か||あからみ||あおざめ|
さて 、 その 中 に 一 人 の 娘 が おり ました が 、 この 娘 は 純潔 と 愛 と に 満ちた 魂 を いだいて 神 を 仰いで おり ました 。
||なか||ひと|じん||むすめ||||||むすめ||じゅんけつ||あい|||みちた|たましい|||かみ||あおいで||
これ こそ この 上 も なく 清らかな 、 この 上 も なく 気高い 愛 の 象徴 で あり ました ぞ 」 「 神 の 恵み 、 その 娘 の 上 に あれ !
|||うえ|||きよらかな||うえ|||けだかい|あい||しょうちょう|||||かみ||めぐみ||むすめ||うえ||
」 と 、 賢者 は 言い ました 。
|けん しゃ||いい|
「 だが あなた がた の うち 、 まだ 誰 も 世界 一 の 美しい バラ の 花 を 名ざした もの は あり ませ ん 」 その 時 、 一 人 の 子ども が 部屋 の 中 に 入って 来 ました 。
||||||だれ||せかい|ひと||うつくしい|ばら||か||なざした|||||||じ|ひと|じん||こども||へや||なか||はいって|らい|
それ は 、 女王 さま の 小さな 王子 でした 。
||じょおう|||ちいさな|おうじ|
見れば 涙 が 目 に あふれて 、 ほお に 流れて い ます 。
みれば|なみだ||め|||||ながれて||
王子 は 、 大きな 本 を ひろげて 持って い ました 。
おうじ||おおきな|ほん|||もって||
ビロード の 表紙 に は 、 大きな 銀 の 金具 が ついて い ました 。
びろーど||ひょうし|||おおきな|ぎん||かなぐ||||
「 お 母 さま !
|はは|
」 と 、 小さい 王子 は 言い ました 。
|ちいさい|おうじ||いい|
「 ねえ 、 ぼく が 今 読んだ 言葉 を 聞いて ちょうだい !
|||いま|よんだ|ことば||きいて|
」 こう 言って 王子 は ベッド の そば に 腰 を おろして 『 主 の 書 』、 世 の 人々 を 、 いえ 、 まだ 生まれて こ ない 後 の 世 の 人々 を も 救う ため に 進んで 十字架 に お かかり に なった 、 主 の 書 の 中 の 一節 を 読み ました 。
|いって|おうじ||べっど||||こし|||おも||しょ|よ||ひとびと||||うまれて|||あと||よ||ひとびと|||すくう|||すすんで|じゅうじか||||||おも||しょ||なか||いっせつ||よみ|
「 これ より も 、 大きな 愛 は ない !
|||おおきな|あい||
」 その 時 、 女王 さま の ほお の 上 に バラ 色 の 光 が さして き ました 。
|じ|じょおう|||||うえ||ばら|いろ||ひかり||||
そして 目 が 大きく 、 そして 明るく 開か れ ました 。
|め||おおきく||あかるく|あか||
なぜなら 女王 さま は その 本 の ぺージ の 中 から 、 世界 一 の 美しい バラ の 花 が 浮かび あがって くる の を ご覧 に なった から です 。
|じょおう||||ほん||ぺ -ジ||なか||せかい|ひと||うつくしい|ばら||か||うかび|||||ごらん||||
それ は 十字架 の 上 に 流さ れた キリスト の 血 の 中 から 咲き 出た 、 あの バラ の 花 の 姿 でした 。
||じゅうじか||うえ||ながさ||きりすと||ち||なか||さき|でた||ばら||か||すがた|
「 私 に は 、 バラ の 花 が 見え ます !
わたくし|||ばら||か||みえ|
」 と 、 女王 さま は 言い ました 。
|じょおう|||いい|
「 この世 で 一 番 美しい バラ の 花 を 見た 者 は 、 決して 死ぬ こと は あり ませ ん 」
このよ||ひと|ばん|うつくしい|ばら||か||みた|もの||けっして|しぬ|||||
"Wer die schönsten Rosen der Welt sieht, wird niemals sterben."
おしまい