×

Używamy ciasteczek, aby ulepszyć LingQ. Odwiedzając stronę wyrażasz zgodę na nasze polityka Cookie.


image

銀河英雄伝説 01黎明篇, 第二章 アスターテ会戦 (1)

第 二 章 アスターテ 会戦 (1)

Ⅰ 同盟 軍 第 四 艦隊 司令 官 パストーレ 中将 は 、「 帝国 軍艦 隊 急速 接近 」 の 報 に ショック を うけた 。 艦隊 旗 艦 レオニダス の ディスプレイ ・ スクリーン 全体 に 人工 の 光 点 が 群がり 生じ 、 それ が 一瞬 ごと に 明度 を まし つつ 拡大 して くる 。 見る 者 の 鼓動 を 早め 、 口 の なか を 干上がら せる 、 威圧 感 に みちた 光景 だった 。

「 これ は どういう こと だ 」

中将 は 指揮 官 席 から 身 を おこして うめいた 。

「 帝国 軍 は どういう つもり だ ? なに を 考えて いる ? 」 奇妙な 質問 だ 、 と 思った 者 も いた が 、 その 数 は すくなかった 。 帝国 軍 の 意図 は その 総力 を あげて 第 四 艦隊 を 攻撃 する に ある 。 それ は あきらかな はずであった が 、 三 方向 から 包囲 さ れ つつ ある 敵 が 、 これほど 大胆に 攻勢 を かけて こよう と は 、 同盟 軍 首脳 部 は 想像 して い なかった のである 。

彼ら の 予測 に よれば 、 包囲 態勢 下 に おか れた 帝国 軍 は 、 多数 の 敵 にたいする 防御 本能 に 身 を ゆだね 、 戦線 を 縮小 さ せて 密集 態 形 を とる はずだった 。 それ にたいして 同盟 軍 は 三 方向 から おなじ スピード で 殺到 し 、 厳重な 包囲 網 を しいて 火力 を 集中 さ せ 、 ゆっくり と 、 だが 確実に その 抵抗 力 を そぎとって いけば よい 。 一五六 年 前 、〝 ダゴン の 殲滅 戦 〟 は そのように 戦わ れ 、 勝者 たる 二 名将 の 令 名 が 今日 に 伝わって いる 。 ところが 、 この 敵 は 同盟 軍 の 計算 に のら なかった 。

「 なんという こと だ ! 敵 の 司令 官 は 用 兵 を 知ら ぬ 。 こんな 戦い かた が ある か 」

愚 か しい こと を 中将 は 口走った 。 指揮 官 席 から たちあがり 、 手の甲 で 額 の 汗 を ぬぐう 。 一六・五 度 C に たもた れた 艦 内 で 汗 の 噴きだす はず は ない のだ が ……。

「 司令 官 閣下 、 どう なさいます ? 」 問いかける 幕僚 の 声 も 、 抑制 を 欠いて うわずって いる 。 その 口調 が 、 中将 の 癇 に さわった 。 三 方向 から の 分 進 合 撃 こそ 必勝 の 戦法 である と となえた の は 、 彼ら 幕僚 団 で は なかった の か 。 それ が 失敗 した とき の 対策 を たてる 責任 も 、 当然 、 彼ら に は ある はずだった 。 「 どう なさいます 」 と は なにごと だ ! しかし 怒り に 身 を まかせて いられる 場合 で は なかった 。 帝国 軍艦 隊 は 二万 隻 、 同盟 軍 第 四 艦隊 は 一万二〇〇〇 隻 である 。 完全に 予定 が くるった 。 三 個 艦隊 の 四万 隻 で 二万 隻 の 敵 を 包囲 攻撃 する はずであった のに 、 圧倒 的 多数 の 敵 と 単独 で 戦わ なければ なら なく なった のである 。

「 第 二 、 第 六 の 両 艦隊 に 緊急 連絡 ! α 七・四 、 β 三・九 、 γ マイナス 〇・六 の 宙 域 に おいて 敵 と 衝突 、 ただちに 応援 に 来 られた し 、 と 」

中将 は 命令 した が 、 旗 艦 レオニダス の 通信 長 ナン 技術 少佐 は 絶望 の 動作 と 表情 で それ に 応じた 。 帝国 軍 の 放つ 妨害 電波 が 、 同盟 軍 の 通信 回路 を 貪欲に 侵 蝕 し つつ あった のだ 。 ラインハルト が 散布 さ せた 数 万 の 妨害 電波 発生 器 が 、 宇宙 空間 を 漂い ながら 効力 を 発揮 して いた 。

「 では 連絡 艇 を だせ 、 両 艦隊 に 二 隻 ずつ だ 」

そう どなる 中将 の 顔 を 、 スクリーン から 放た れた 閃光 が 一瞬 、 白く 染め あげた 。 敵 の 攻撃 が はじまり 、 中性子 ビーム 砲 が 斉 射 さ れた のだ 。 膨大な エネルギー の 射 出 と 、 それ に ともなう 発光 は 、 兵士 たち の 眼 底 まで 染色 して しまう か と 思わ せる 。

虹 に も 似た きらめき が 、 同盟 軍艦 隊 の 各 処 に 生じて いた 。 敵 の ビーム を 、 エネルギー 中和 磁場 が さえぎる 、 その 瞬間 に 生じる きらめき だ 。 極 小 の エネルギー 粒子 が 高速で 衝突 し 、 共食 現象 を おこして いる のだった 。

中将 は 腕 を 大きく ふって 叫んだ 。

「 先頭 集団 、 迎撃 せよ ! 全 艦 、 総 力戦 用意 ! 」 パストーレ 中将 の 命令 を 受信 した わけで は なかった が 、 帝国 軍 総 旗 艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 で は 、 ラインハルト が 蒼氷 色 の 瞳 に 冷 嘲 の 波 を ゆらめか せて 独 語 して いた 。 「 無能 者 め 、 反応 が 遅い ! 」 「 戦闘 艇 、 発進 せよ ! 接近 格闘 戦 に うつる ぞ 」

この 命令 は ファーレンハイト 少将 である 。 戦い の 昂 揚 感 に 、 先手 を とった 自信 が くわわって 、 彼 の 表情 と 声 に するどい 生気 を みなぎら せて いた 。 〝 金髪 の 孺子 〟 の 功績 に なる に して も 、 とにかく 勝つ こと だ !

巨大な 母艦 から 、 X 字 翼 の 単 座 式 戦闘 艇 〝 ワルキューレ 〟 が つぎつぎ と 発進 する 。 超 高速で 宇宙 空間 を 疾走 する 母艦 から きり離さ れた 時点 で 、 慣性 に よって すでに 母艦 以上 の 速度 に 達して おり 、 滑走 路 や 射 出 装置 は 不要な のだ 。 ワルキューレ は 小型である から 火力 は おちる が 、 運動 性 に 富み 、 接近 格闘 戦 に おいて 大いに 効力 を 発揮 する 。

ワルキューレ に 対応 する 単 座 式 戦闘 艇 は 同盟 軍 に も あり 、〝 スパルタニアン 〟 と 称されて いた 。 各 処 に 核 融合 炉 爆発 の 閃光 が はしり 、 解放 さ れた エネルギー の 乱 流 が 無秩序な うねり で 両軍 艦艇 を 揺りうごかす 。 その なか を あらたな エネルギー の 束 が 切り裂き 、 それ を かい くぐって ワルキューレ が 飛翔 する 。 銀色 に 輝く 四 枚 の 翼 を もった 死 の 天使 だ 。 同盟 軍 の スパルタニアン は 格闘 戦 能力 に おいて ワルキューレ に 劣る もの で は なかった が 、 機先 を 制さ れた 不利 は 大きく 、 母艦 から 離脱 する 瞬間 を 狙撃 されて は 乗員 もろとも ビーム で 粉砕 されて いった 。 …… 戦闘 開始 後 一 時間 、 帝国 軍 ファーレンハイト 部隊 の 苛烈 な 攻撃 に よって 、 第 四 艦隊 先頭 集団 は ほとんど 潰 滅 状態 に なって いた 。

二六〇〇 隻 の 艦艇 中 、 戦闘 に 参加 して いる もの は 二 割 に みたない 。 核 融合 炉 爆発 を 生じて 蒸発 した 艦 、 爆発 は まぬがれた もの の 大破 して 戦闘 続行 不能 と なった 艦 、 艦 体 の 損傷 は かるい が 乗員 のたいはん を 失って むなしく 宙 を 漂流 して いる 艦 ―― 惨憺たる 状態 で 、 戦線 崩壊 まで は 、 半 歩 の 距離 も ない もの と 思わ れた 。 戦艦 ネストル に いたって は 、 損傷 部分 は 艦 底 の ただ 一 カ 処 に すぎ なかった が 、 艦 内 に 侵入 して 炸裂 した 中性子 弾頭 が 、 荒れくるう 殺人 粒子 の 波 濤 を うんで 全 艦 を 席 捲 し 、 一瞬にして この 巨艦 を 将兵 六六〇 名 の 柩 に して しまった 。

この ため 、 乗員 を 失った ネストル は 、 航 宙 士 の さだめた 最後 の 針路 を まもって 、 惰性 の みえ ざる レール の うえ を 突進 し 、 僚艦 レムノス の 艦 首 を かすめた 。 それ は レムノス の 前部 主砲 が 敵 艦 めがけて 斉 射 さ れた 瞬間 であった 。 ネストル は 至近 距離 から 光子 砲 を 撃ちこま れ 、 一瞬 の のち 、 音 も なく 爆発 した 。 不運な レムノス も ただちに その あと を 追った 。 核 融合 炉 爆発 の エネルギー が 、 中和 磁場 を 突き破って レムノス の 艦 体 を 直撃 した のである 。

白色 の 閃光 が 双生児 の ように 連鎖 して 生じ 、 それ が 消えさった あと に は 無機 物 の ひと かけら さえ 残ら なかった のだ 。 レムノス の 乗員 は 僚艦 を 消滅 さ せた ほうび と して 死 を あたえ られた のだった 。

「 なに を やっとる のだ ! 」 その 声 は パストーレ 中将 であり 、 「 なに を やって いやがる 」

と つぶやいた の は ファーレンハイト 少将 であった 。

両者 と も 旗 艦 の スクリーン を とおして 、 その 光景 を ながめて いた のである 。 一方 は 絶望 と あせり の 叫び であり 、 他方 は 余裕 に みちた 嘲 弄 だった 。 その 差 は 同時に 戦況 の 差 であった 。

Ⅱ この とき 、 同盟 軍 第 二 ・ 第 六 両 艦隊 は かろうじて 知った 事態 の 急 展開 に 驚き ながら も 、 当初 の 作戦 を 変更 する 決心 が つか ぬ まま 、 以前 と おなじ 速力 で 戦場 へ すすみ つつ ある 。 第 二 艦隊 司令 官 パエッタ 中将 は 旗 艦 パトロクロス の 指揮 官 席 に すわって 、 他人 から みえ ぬ ところ で 貧乏 ゆすり を やって いた 。 焦燥 感 が 彼 の ひざ を 間断 なく 揺さぶって いた のだ 。 指揮 官 の 心理 が 部下 に 投影 し 、 艦 橋 内 の 空気 は 帯 電 して いる か の ようだった 。

そんな なか で ただ ひと り 、 おちついた 表情 の 者 が いる こと に 中将 は 気づいた 。 一瞬 ためらった あと 、 声 を かける 。

「 ヤン 准将 ! 」 「 はい ? 」 「 貴 官 は この 事態 を どう みる ? 意見 を 言って みた まえ 」

自 席 から たちあがった ヤン は また ベレー 帽 を ぬぎ 、 黒い 頭髪 を かるく 片手 で かきまわした 。

「 敵 が 各 個 撃破 に でて きた と いう こと でしょう 。 まず もっとも 少数 の 第 四 艦隊 を 処理 に かかった の は 当然の 策 です 。 彼ら は 、 分散 した 同盟 軍 の なか から 当面 の 敵 を 選択 する 権利 を 行使 した わけです 」

「…… 第 四 艦隊 は もちこたえる こと が できる だろう か ? 」 「 両軍 は 正面 から 衝突 し ました 。 と いう こと は 、 数 に おいて 相手 を うわまわり 、 しかも 機先 を 制した 側 が 有利に なります 」 ヤン の 表情 も 声 も 淡々と して いた 。 それ を 見て いた パエッタ 中将 は 、 いらだた し さ を ふりはらう ように 掌 を 開閉 さ せた 。

「 とにかく 戦場 に 急行 して 第 四 艦隊 を 救援 し なくて は なら ん 。 うまく いけば 、 帝国 軍 の 側 背 を つく こと も 可能だろう 。 そう すれば いっきょに 戦局 は 有利に なる 」

「 おそらく 無益でしょう 」

ヤン の 声 は やはり 淡々と して いた ので 、 パエッタ 中将 は あやうく 聞きながして しまう ところ だった 。 中将 は スクリーン に むき かけた 顔 を ふたたび 若い 幕僚 に むけた 。

「 どういう 意味 だ ? 」 「 吾々 が 到着 した とき 、 戦闘 は すでに 終わって います 。 敵 は 戦場 を 離脱 し 、 第 二 ・ 第 六 の 両 艦隊 が 合流 する より 早く 、 どちら か の 側 背 に まわって 攻撃 を かけて くる でしょう 。 そして 少数 の 第 六 艦隊 が 狙わ れる こと は ほぼ 確実です 。 吾々 は 先手 を とら れ 、 しかも 現在 の ところ 、 とら れっぱなし です 。 これ 以上 、 敵 の 思惑 に のる 必要 は ない と 考えます が 」 「 では 、 どう しろ と 言う のだ ? 」 「 手順 を 変える のです 。 第 六 艦隊 と 戦場 で 合流 する ので は なく 、 まず 一刻 も 早く 第 六 艦隊 と 合流 し 、 その 宙 域 に 新 戦場 を 設定 します 。 両 艦隊 を 合 すれば 二万八〇〇〇 隻 に なり 、 それ 以後 は 五 分 以上 の 勝負 を いどむ こと が できる でしょう 」

「…… する と 、 きみ は 、 第 四 艦隊 を 見殺し に しろ と 言う の か ? 」 中将 の 口調 に は 非難 の 意思 が 露骨だった 。 あまりに 冷徹な こと を 言う と 思った のである 。

「 いま から 行って も 、 どうせ 間にあいません 」 中将 の 心理 を 知って か 否 か 、 ヤン の 口調 は 素 気 ない 。

「 しかし 友軍 の 危機 を 放置 して は おけ ん 」

中将 の 声 に 、 ヤン は かるく 肩 を すくめた 。

「 では けっき よく 、 三 艦隊 いずれ も が 、 敵 の 各 個 撃破 戦法 の 好 餌 と なって しまいます 」 「 そう と は かぎら ん 、 第 四 艦隊 とて むざむざ 敗れ は すま い 。 彼ら が もちこたえて いれば ……」

「 無理だ と 先刻 も 申しあげ ました が ……」

「 ヤン 准将 、 現実 は 貴 官 の 言う ような 計算 だけ で は 成立 せ ん のだ 。 敵 の 指揮 官 は ローエングラム 伯 だ 。 若くて 経験 も すくない 。 それ に くらべて パストーレ 中将 は 百 戦 錬磨 だ 」

「 司令 官 閣下 、 経験 が すくない と おっしゃいます が 、 彼 の 戦略 構想 は ……」 「 もう いい 、 准将 」

にがにがし げ に 中将 は さえぎった 。


第 二 章 アスターテ 会戦 (1) だい|ふた|しょう||かいせん

Ⅰ 同盟 軍 第 四 艦隊 司令 官 パストーレ 中将 は 、「 帝国 軍艦 隊 急速 接近 」 の 報 に ショック を うけた 。 どうめい|ぐん|だい|よっ|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう||ていこく|ぐんかん|たい|きゅうそく|せっきん||ほう||しょっく|| I. Lieutenant General Pastore, Commander of the 4th Fleet of the Alliance Army, was shocked by the news of the "Rapid Approach of the Imperial Army Fleet." 艦隊 旗 艦 レオニダス の ディスプレイ ・ スクリーン 全体 に 人工 の 光 点 が 群がり 生じ 、 それ が 一瞬 ごと に 明度 を まし つつ 拡大 して くる 。 かんたい|き|かん|||でぃすぷれい|すくりーん|ぜんたい||じんこう||ひかり|てん||むらがり|しょうじ|||いっしゅん|||めいど||||かくだい|| Fleet flagship Leonidas' display screen A swarm of artificial light spots all over the screen, which expands with increasing brightness every moment. 見る 者 の 鼓動 を 早め 、 口 の なか を 干上がら せる 、 威圧 感 に みちた 光景 だった 。 みる|もの||こどう||はや め|くち||||ひあがら||いあつ|かん|||こうけい| It was an intimidating sight, accelerating the heartbeat of the viewer and letting the mouth dry up.

「 これ は どういう こと だ 」 "What does this mean?"

中将 は 指揮 官 席 から 身 を おこして うめいた 。 ちゅうじょう||しき|かん|せき||み||| The lieutenant general woke up from the commander's seat and moaned.

「 帝国 軍 は どういう つもり だ ? ていこく|ぐん|||| "What is the Imperial Army going to do? なに を 考えて いる ? ||かんがえて| 」 奇妙な 質問 だ 、 と 思った 者 も いた が 、 その 数 は すくなかった 。 きみょうな|しつもん|||おもった|もの|||||すう|| Some thought it was a strange question, but the number was small. 帝国 軍 の 意図 は その 総力 を あげて 第 四 艦隊 を 攻撃 する に ある 。 ていこく|ぐん||いと|||そうりょく|||だい|よっ|かんたい||こうげき||| それ は あきらかな はずであった が 、 三 方向 から 包囲 さ れ つつ ある 敵 が 、 これほど 大胆に 攻勢 を かけて こよう と は 、 同盟 軍 首脳 部 は 想像 して い なかった のである 。 |||||みっ|ほうこう||ほうい|||||てき|||だいたんに|こうせい||||||どうめい|ぐん|しゅのう|ぶ||そうぞう||||

彼ら の 予測 に よれば 、 包囲 態勢 下 に おか れた 帝国 軍 は 、 多数 の 敵 にたいする 防御 本能 に 身 を ゆだね 、 戦線 を 縮小 さ せて 密集 態 形 を とる はずだった 。 かれら||よそく|||ほうい|たいせい|した||||ていこく|ぐん||たすう||てき||ぼうぎょ|ほんのう||み|||せんせん||しゅくしょう|||みっしゅう|なり|かた||| それ にたいして 同盟 軍 は 三 方向 から おなじ スピード で 殺到 し 、 厳重な 包囲 網 を しいて 火力 を 集中 さ せ 、 ゆっくり と 、 だが 確実に その 抵抗 力 を そぎとって いけば よい 。 ||どうめい|ぐん||みっ|ほうこう|||すぴーど||さっとう||げんじゅうな|ほうい|あみ|||かりょく||しゅうちゅう||||||かくじつに||ていこう|ちから|||| 一五六 年 前 、〝 ダゴン の 殲滅 戦 〟 は そのように 戦わ れ 、 勝者 たる 二 名将 の 令 名 が 今日 に 伝わって いる 。 いちごろく|とし|ぜん|||せんめつ|いくさ||そのよう に|たたかわ||しょうしゃ||ふた|めいしょう||れい|な||きょう||つたわって| ところが 、 この 敵 は 同盟 軍 の 計算 に のら なかった 。 ||てき||どうめい|ぐん||けいさん|||

「 なんという こと だ ! 敵 の 司令 官 は 用 兵 を 知ら ぬ 。 てき||しれい|かん||よう|つわもの||しら| The enemy commander is unaware of the soldiers. こんな 戦い かた が ある か 」 |たたかい||||

愚 か しい こと を 中将 は 口走った 。 ぐ|||||ちゅうじょう||くちばしった The lieutenant general said something stupid. 指揮 官 席 から たちあがり 、 手の甲 で 額 の 汗 を ぬぐう 。 しき|かん|せき|||てのこう||がく||あせ|| Get up from the commander's seat and wipe the sweat on your forehead with the back of your hand. 一六・五 度 C に たもた れた 艦 内 で 汗 の 噴きだす はず は ない のだ が ……。 いちろく|いつ|たび|||||かん|うち||あせ||ふきだす|||||

「 司令 官 閣下 、 どう なさいます ? しれい|かん|かっか|| "What do you do, Commander-in-Chief? 」 問いかける 幕僚 の 声 も 、 抑制 を 欠いて うわずって いる 。 といかける|ばくりょう||こえ||よくせい||かいて|| The voices of the staff members asking are also screaming without restraint. その 口調 が 、 中将 の 癇 に さわった 。 |くちょう||ちゅうじょう||かん|| 三 方向 から の 分 進 合 撃 こそ 必勝 の 戦法 である と となえた の は 、 彼ら 幕僚 団 で は なかった の か 。 みっ|ほうこう|||ぶん|すすむ|ごう|う||ひっしょう||せんぽう||||||かれら|ばくりょう|だん||||| Wasn't it the staff members who said that defeat in detail from three directions was the tactic of victory? それ が 失敗 した とき の 対策 を たてる 責任 も 、 当然 、 彼ら に は ある はずだった 。 ||しっぱい||||たいさく|||せきにん||とうぜん|かれら|||| Of course, they should have been responsible for taking action when it failed. 「 どう なさいます 」 と は なにごと だ ! しかし 怒り に 身 を まかせて いられる 場合 で は なかった 。 |いかり||み|||いら れる|ばあい||| But it wasn't the case when he was left to anger. 帝国 軍艦 隊 は 二万 隻 、 同盟 軍 第 四 艦隊 は 一万二〇〇〇 隻 である 。 ていこく|ぐんかん|たい||にまん|せき|どうめい|ぐん|だい|よっ|かんたい||いちまんに|せき| 完全に 予定 が くるった 。 かんぜんに|よてい|| The schedule is completely over. 三 個 艦隊 の 四万 隻 で 二万 隻 の 敵 を 包囲 攻撃 する はずであった のに 、 圧倒 的 多数 の 敵 と 単独 で 戦わ なければ なら なく なった のである 。 みっ|こ|かんたい||しまん|せき||にまん|せき||てき||ほうい|こうげき||||あっとう|てき|たすう||てき||たんどく||たたかわ|||||

「 第 二 、 第 六 の 両 艦隊 に 緊急 連絡 ! だい|ふた|だい|むっ||りょう|かんたい||きんきゅう|れんらく "Urgent contact with both the 2nd and 6th fleets! α 七・四 、 β 三・九 、 γ マイナス 〇・六 の 宙 域 に おいて 敵 と 衝突 、 ただちに 応援 に 来 られた し 、 と 」 |なな|よっ||みっ|ここの||まいなす|むっ||ちゅう|いき|||てき||しょうとつ||おうえん||らい||| In the space of α7 ・ 4, β3 ・ 9, γ minus 〇 ・ 6, he collided with the enemy and immediately came to support him. "

中将 は 命令 した が 、 旗 艦 レオニダス の 通信 長 ナン 技術 少佐 は 絶望 の 動作 と 表情 で それ に 応じた 。 ちゅうじょう||めいれい|||き|かん|||つうしん|ちょう||ぎじゅつ|しょうさ||ぜつぼう||どうさ||ひょうじょう||||おうじた The lieutenant general ordered, but Major Nan, the chief of communications for the flagship Leonidas, responded with desperate movements and facial expressions. 帝国 軍 の 放つ 妨害 電波 が 、 同盟 軍 の 通信 回路 を 貪欲に 侵 蝕 し つつ あった のだ 。 ていこく|ぐん||はなつ|ぼうがい|でんぱ||どうめい|ぐん||つうしん|かいろ||どんよくに|おか|むしば|||| Interfering radio waves emitted by the Imperial Army were greedily eroding the communication circuits of the Alliance Army. ラインハルト が 散布 さ せた 数 万 の 妨害 電波 発生 器 が 、 宇宙 空間 を 漂い ながら 効力 を 発揮 して いた 。 ||さんぷ|||すう|よろず||ぼうがい|でんぱ|はっせい|うつわ||うちゅう|くうかん||ただよい||こうりょく||はっき||

「 では 連絡 艇 を だせ 、 両 艦隊 に 二 隻 ずつ だ 」 |れんらく|てい|||りょう|かんたい||ふた|せき||

そう どなる 中将 の 顔 を 、 スクリーン から 放た れた 閃光 が 一瞬 、 白く 染め あげた 。 ||ちゅうじょう||かお||すくりーん||はなた||せんこう||いっしゅん|しろく|しめ| 敵 の 攻撃 が はじまり 、 中性子 ビーム 砲 が 斉 射 さ れた のだ 。 てき||こうげき|||ちゅうせいし||ほう||ひとし|い||| 膨大な エネルギー の 射 出 と 、 それ に ともなう 発光 は 、 兵士 たち の 眼 底 まで 染色 して しまう か と 思わ せる 。 ぼうだいな|えねるぎー||い|だ|||||はっこう||へいし|||がん|そこ||せんしょく|||||おもわ|

虹 に も 似た きらめき が 、 同盟 軍艦 隊 の 各 処 に 生じて いた 。 にじ|||にた|||どうめい|ぐんかん|たい||かく|しょ||しょうじて| 敵 の ビーム を 、 エネルギー 中和 磁場 が さえぎる 、 その 瞬間 に 生じる きらめき だ 。 てき||||えねるぎー|ちゅうわ|じば||||しゅんかん||しょうじる|| 極 小 の エネルギー 粒子 が 高速で 衝突 し 、 共食 現象 を おこして いる のだった 。 ごく|しょう||えねるぎー|りゅうし||こうそくで|しょうとつ||ともぐい|げんしょう||||

中将 は 腕 を 大きく ふって 叫んだ 。 ちゅうじょう||うで||おおきく||さけんだ

「 先頭 集団 、 迎撃 せよ ! せんとう|しゅうだん|げいげき| 全 艦 、 総 力戦 用意 ! ぜん|かん|そう|りきせん|ようい 」 パストーレ 中将 の 命令 を 受信 した わけで は なかった が 、 帝国 軍 総 旗 艦 ブリュンヒルト の 艦 橋 で は 、 ラインハルト が 蒼氷 色 の 瞳 に 冷 嘲 の 波 を ゆらめか せて 独 語 して いた 。 |ちゅうじょう||めいれい||じゅしん||||||ていこく|ぐん|そう|き|かん|||かん|きょう|||||あおこおり|いろ||ひとみ||ひや|あざけ||なみ||||どく|ご|| 「 無能 者 め 、 反応 が 遅い ! むのう|もの||はんのう||おそい 」 「 戦闘 艇 、 発進 せよ ! せんとう|てい|はっしん| 接近 格闘 戦 に うつる ぞ 」 せっきん|かくとう|いくさ|||

この 命令 は ファーレンハイト 少将 である 。 |めいれい|||しょうしょう| 戦い の 昂 揚 感 に 、 先手 を とった 自信 が くわわって 、 彼 の 表情 と 声 に するどい 生気 を みなぎら せて いた 。 たたかい||たかし|よう|かん||せんて|||じしん|||かれ||ひょうじょう||こえ|||せいき|||| 〝 金髪 の 孺子 〟 の 功績 に なる に して も 、 とにかく 勝つ こと だ ! きんぱつ||じゅし||こうせき|||||||かつ||

巨大な 母艦 から 、 X 字 翼 の 単 座 式 戦闘 艇 〝 ワルキューレ 〟 が つぎつぎ と 発進 する 。 きょだいな|ぼかん|||あざ|つばさ||ひとえ|ざ|しき|せんとう|てい|||||はっしん| 超 高速で 宇宙 空間 を 疾走 する 母艦 から きり離さ れた 時点 で 、 慣性 に よって すでに 母艦 以上 の 速度 に 達して おり 、 滑走 路 や 射 出 装置 は 不要な のだ 。 ちょう|こうそくで|うちゅう|くうかん||しっそう||ぼかん||きりはなさ||じてん||かんせい||||ぼかん|いじょう||そくど||たっして||かっそう|じ||い|だ|そうち||ふような| ワルキューレ は 小型である から 火力 は おちる が 、 運動 性 に 富み 、 接近 格闘 戦 に おいて 大いに 効力 を 発揮 する 。 ||こがたである||かりょく||||うんどう|せい||とみ|せっきん|かくとう|いくさ|||おおいに|こうりょく||はっき|

ワルキューレ に 対応 する 単 座 式 戦闘 艇 は 同盟 軍 に も あり 、〝 スパルタニアン 〟 と 称されて いた 。 ||たいおう||ひとえ|ざ|しき|せんとう|てい||どうめい|ぐん||||||そやされて| 各 処 に 核 融合 炉 爆発 の 閃光 が はしり 、 解放 さ れた エネルギー の 乱 流 が 無秩序な うねり で 両軍 艦艇 を 揺りうごかす 。 かく|しょ||かく|ゆうごう|ろ|ばくはつ||せんこう|||かいほう|||えねるぎー||らん|りゅう||むちつじょな|||りょうぐん|かんてい||ゆりうごかす その なか を あらたな エネルギー の 束 が 切り裂き 、 それ を かい くぐって ワルキューレ が 飛翔 する 。 ||||えねるぎー||たば||きりさき|||||||ひしょう| 銀色 に 輝く 四 枚 の 翼 を もった 死 の 天使 だ 。 ぎんいろ||かがやく|よっ|まい||つばさ|||し||てんし| 同盟 軍 の スパルタニアン は 格闘 戦 能力 に おいて ワルキューレ に 劣る もの で は なかった が 、 機先 を 制さ れた 不利 は 大きく 、 母艦 から 離脱 する 瞬間 を 狙撃 されて は 乗員 もろとも ビーム で 粉砕 されて いった 。 どうめい|ぐん||||かくとう|いくさ|のうりょく|||||おとる||||||きせん||せいさ||ふり||おおきく|ぼかん||りだつ||しゅんかん||そげき|||じょういん||||ふんさい|| …… 戦闘 開始 後 一 時間 、 帝国 軍 ファーレンハイト 部隊 の 苛烈 な 攻撃 に よって 、 第 四 艦隊 先頭 集団 は ほとんど 潰 滅 状態 に なって いた 。 せんとう|かいし|あと|ひと|じかん|ていこく|ぐん||ぶたい||かれつ||こうげき|||だい|よっ|かんたい|せんとう|しゅうだん|||つぶ|めつ|じょうたい|||

二六〇〇 隻 の 艦艇 中 、 戦闘 に 参加 して いる もの は 二 割 に みたない 。 にろく|せき||かんてい|なか|せんとう||さんか|||||ふた|わり|| 核 融合 炉 爆発 を 生じて 蒸発 した 艦 、 爆発 は まぬがれた もの の 大破 して 戦闘 続行 不能 と なった 艦 、 艦 体 の 損傷 は かるい が 乗員 のたいはん を 失って むなしく 宙 を 漂流 して いる 艦 ―― 惨憺たる 状態 で 、 戦線 崩壊 まで は 、 半 歩 の 距離 も ない もの と 思わ れた 。 かく|ゆうごう|ろ|ばくはつ||しょうじて|じょうはつ||かん|ばくはつ|||||たいは||せんとう|ぞっこう|ふのう|||かん|かん|からだ||そんしょう||||じょういん|||うしなって||ちゅう||ひょうりゅう|||かん|さんたんたる|じょうたい||せんせん|ほうかい|||はん|ふ||きょり|||||おもわ| 戦艦 ネストル に いたって は 、 損傷 部分 は 艦 底 の ただ 一 カ 処 に すぎ なかった が 、 艦 内 に 侵入 して 炸裂 した 中性子 弾頭 が 、 荒れくるう 殺人 粒子 の 波 濤 を うんで 全 艦 を 席 捲 し 、 一瞬にして この 巨艦 を 将兵 六六〇 名 の 柩 に して しまった 。 せんかん|||||そんしょう|ぶぶん||かん|そこ|||ひと||しょ|||||かん|うち||しんにゅう||さくれつ||ちゅうせいし|だんとう||あれくるう|さつじん|りゅうし||なみ|とう|||ぜん|かん||せき|まく||いっしゅんにして||きょかん||しょうへい|ろくろく|な||ひつぎ|||

この ため 、 乗員 を 失った ネストル は 、 航 宙 士 の さだめた 最後 の 針路 を まもって 、 惰性 の みえ ざる レール の うえ を 突進 し 、 僚艦 レムノス の 艦 首 を かすめた 。 ||じょういん||うしなった|||わたる|ちゅう|し|||さいご||しんろ|||だせい||||れーる||||とっしん||りょうかん|||かん|くび|| それ は レムノス の 前部 主砲 が 敵 艦 めがけて 斉 射 さ れた 瞬間 であった 。 ||||ぜんぶ|しゅほう||てき|かん||ひとし|い|||しゅんかん| ネストル は 至近 距離 から 光子 砲 を 撃ちこま れ 、 一瞬 の のち 、 音 も なく 爆発 した 。 ||しきん|きょり||てるこ|ほう||うちこま||いっしゅん|||おと|||ばくはつ| 不運な レムノス も ただちに その あと を 追った 。 ふうんな|||||||おった 核 融合 炉 爆発 の エネルギー が 、 中和 磁場 を 突き破って レムノス の 艦 体 を 直撃 した のである 。 かく|ゆうごう|ろ|ばくはつ||えねるぎー||ちゅうわ|じば||つきやぶって|||かん|からだ||ちょくげき||

白色 の 閃光 が 双生児 の ように 連鎖 して 生じ 、 それ が 消えさった あと に は 無機 物 の ひと かけら さえ 残ら なかった のだ 。 はくしょく||せんこう||そうせいじ||よう に|れんさ||しょうじ|||きえさった||||むき|ぶつ|||||のこら|| レムノス の 乗員 は 僚艦 を 消滅 さ せた ほうび と して 死 を あたえ られた のだった 。 ||じょういん||りょうかん||しょうめつ||||||し||||

「 なに を やっとる のだ ! 」 その 声 は パストーレ 中将 であり 、 |こえ|||ちゅうじょう| 「 なに を やって いやがる 」

と つぶやいた の は ファーレンハイト 少将 であった 。 |||||しょうしょう|

両者 と も 旗 艦 の スクリーン を とおして 、 その 光景 を ながめて いた のである 。 りょうしゃ|||き|かん||すくりーん||||こうけい|||| 一方 は 絶望 と あせり の 叫び であり 、 他方 は 余裕 に みちた 嘲 弄 だった 。 いっぽう||ぜつぼう||||さけび||たほう||よゆう|||あざけ|もてあそ| その 差 は 同時に 戦況 の 差 であった 。 |さ||どうじに|せんきょう||さ|

Ⅱ この とき 、 同盟 軍 第 二 ・ 第 六 両 艦隊 は かろうじて 知った 事態 の 急 展開 に 驚き ながら も 、 当初 の 作戦 を 変更 する 決心 が つか ぬ まま 、 以前 と おなじ 速力 で 戦場 へ すすみ つつ ある 。 ||どうめい|ぐん|だい|ふた|だい|むっ|りょう|かんたい|||しった|じたい||きゅう|てんかい||おどろき|||とうしょ||さくせん||へんこう||けっしん|||||いぜん|||そくりょく||せんじょう|||| 第 二 艦隊 司令 官 パエッタ 中将 は 旗 艦 パトロクロス の 指揮 官 席 に すわって 、 他人 から みえ ぬ ところ で 貧乏 ゆすり を やって いた 。 だい|ふた|かんたい|しれい|かん||ちゅうじょう||き|かん|||しき|かん|せき|||たにん||||||びんぼう|||| 焦燥 感 が 彼 の ひざ を 間断 なく 揺さぶって いた のだ 。 しょうそう|かん||かれ||||かんだん||ゆさぶって|| 指揮 官 の 心理 が 部下 に 投影 し 、 艦 橋 内 の 空気 は 帯 電 して いる か の ようだった 。 しき|かん||しんり||ぶか||とうえい||かん|きょう|うち||くうき||おび|いなずま|||||

そんな なか で ただ ひと り 、 おちついた 表情 の 者 が いる こと に 中将 は 気づいた 。 |||||||ひょうじょう||もの|||||ちゅうじょう||きづいた 一瞬 ためらった あと 、 声 を かける 。 いっしゅん|||こえ||

「 ヤン 准将 ! |じゅんしょう 」 「 はい ? 」 「 貴 官 は この 事態 を どう みる ? とうと|かん|||じたい||| 意見 を 言って みた まえ 」 いけん||いって||

自 席 から たちあがった ヤン は また ベレー 帽 を ぬぎ 、 黒い 頭髪 を かるく 片手 で かきまわした 。 じ|せき|||||||ぼう|||くろい|とうはつ|||かたて||

「 敵 が 各 個 撃破 に でて きた と いう こと でしょう 。 てき||かく|こ|げきは||||||| まず もっとも 少数 の 第 四 艦隊 を 処理 に かかった の は 当然の 策 です 。 ||しょうすう||だい|よっ|かんたい||しょり|||||とうぜんの|さく| 彼ら は 、 分散 した 同盟 軍 の なか から 当面 の 敵 を 選択 する 権利 を 行使 した わけです 」 かれら||ぶんさん||どうめい|ぐん||||とうめん||てき||せんたく||けんり||こうし||わけ です

「…… 第 四 艦隊 は もちこたえる こと が できる だろう か ? だい|よっ|かんたい||||||| 」 「 両軍 は 正面 から 衝突 し ました 。 りょうぐん||しょうめん||しょうとつ|| と いう こと は 、 数 に おいて 相手 を うわまわり 、 しかも 機先 を 制した 側 が 有利に なります 」 ||||すう|||あいて||||きせん||せいした|がわ||ゆうりに| ヤン の 表情 も 声 も 淡々と して いた 。 ||ひょうじょう||こえ||たんたんと|| それ を 見て いた パエッタ 中将 は 、 いらだた し さ を ふりはらう ように 掌 を 開閉 さ せた 。 ||みて|||ちゅうじょう|||||||よう に|てのひら||かいへい||

「 とにかく 戦場 に 急行 して 第 四 艦隊 を 救援 し なくて は なら ん 。 |せんじょう||きゅうこう||だい|よっ|かんたい||きゅうえん||||| うまく いけば 、 帝国 軍 の 側 背 を つく こと も 可能だろう 。 ||ていこく|ぐん||がわ|せ|||||かのうだろう そう すれば いっきょに 戦局 は 有利に なる 」 |||せんきょく||ゆうりに|

「 おそらく 無益でしょう 」 |むえきでしょう

ヤン の 声 は やはり 淡々と して いた ので 、 パエッタ 中将 は あやうく 聞きながして しまう ところ だった 。 ||こえ|||たんたんと|||||ちゅうじょう|||ききながして||| 中将 は スクリーン に むき かけた 顔 を ふたたび 若い 幕僚 に むけた 。 ちゅうじょう||すくりーん||||かお|||わかい|ばくりょう||

「 どういう 意味 だ ? |いみ| 」 「 吾々 が 到着 した とき 、 戦闘 は すでに 終わって います 。 われ々||とうちゃく|||せんとう|||おわって| 敵 は 戦場 を 離脱 し 、 第 二 ・ 第 六 の 両 艦隊 が 合流 する より 早く 、 どちら か の 側 背 に まわって 攻撃 を かけて くる でしょう 。 てき||せんじょう||りだつ||だい|ふた|だい|むっ||りょう|かんたい||ごうりゅう|||はやく||||がわ|せ|||こうげき|||| そして 少数 の 第 六 艦隊 が 狙わ れる こと は ほぼ 確実です 。 |しょうすう||だい|むっ|かんたい||ねらわ|||||かくじつ です 吾々 は 先手 を とら れ 、 しかも 現在 の ところ 、 とら れっぱなし です 。 われ々||せんて|||||げんざい||||| これ 以上 、 敵 の 思惑 に のる 必要 は ない と 考えます が 」 |いじょう|てき||おもわく|||ひつよう||||かんがえます| 「 では 、 どう しろ と 言う のだ ? ||||いう| 」 「 手順 を 変える のです 。 てじゅん||かえる|の です 第 六 艦隊 と 戦場 で 合流 する ので は なく 、 まず 一刻 も 早く 第 六 艦隊 と 合流 し 、 その 宙 域 に 新 戦場 を 設定 します 。 だい|むっ|かんたい||せんじょう||ごうりゅう||||||いっこく||はやく|だい|むっ|かんたい||ごうりゅう|||ちゅう|いき||しん|せんじょう||せってい| 両 艦隊 を 合 すれば 二万八〇〇〇 隻 に なり 、 それ 以後 は 五 分 以上 の 勝負 を いどむ こと が できる でしょう 」 りょう|かんたい||ごう||にまんはち|せき||||いご||いつ|ぶん|いじょう||しょうぶ||||||

「…… する と 、 きみ は 、 第 四 艦隊 を 見殺し に しろ と 言う の か ? ||||だい|よっ|かんたい||みごろし||||いう|| 」 中将 の 口調 に は 非難 の 意思 が 露骨だった 。 ちゅうじょう||くちょう|||ひなん||いし||ろこつだった あまりに 冷徹な こと を 言う と 思った のである 。 |れいてつな|||いう||おもった|

「 いま から 行って も 、 どうせ 間にあいません 」 ||おこなって|||まにあいません 中将 の 心理 を 知って か 否 か 、 ヤン の 口調 は 素 気 ない 。 ちゅうじょう||しんり||しって||いな||||くちょう||そ|き|

「 しかし 友軍 の 危機 を 放置 して は おけ ん 」 |ゆうぐん||きき||ほうち||||

中将 の 声 に 、 ヤン は かるく 肩 を すくめた 。 ちゅうじょう||こえ|||||かた||

「 では けっき よく 、 三 艦隊 いずれ も が 、 敵 の 各 個 撃破 戦法 の 好 餌 と なって しまいます 」 |||みっ|かんたい||||てき||かく|こ|げきは|せんぽう||よしみ|えさ||| 「 そう と は かぎら ん 、 第 四 艦隊 とて むざむざ 敗れ は すま い 。 |||||だい|よっ|かんたい|||やぶれ||| 彼ら が もちこたえて いれば ……」 かれら|||

「 無理だ と 先刻 も 申しあげ ました が ……」 むりだ||せんこく||もうしあげ||

「 ヤン 准将 、 現実 は 貴 官 の 言う ような 計算 だけ で は 成立 せ ん のだ 。 |じゅんしょう|げんじつ||とうと|かん||いう||けいさん||||せいりつ||| 敵 の 指揮 官 は ローエングラム 伯 だ 。 てき||しき|かん|||はく| 若くて 経験 も すくない 。 わかくて|けいけん|| それ に くらべて パストーレ 中将 は 百 戦 錬磨 だ 」 ||||ちゅうじょう||ひゃく|いくさ|れんま|

「 司令 官 閣下 、 経験 が すくない と おっしゃいます が 、 彼 の 戦略 構想 は ……」 しれい|かん|かっか|けいけん||||||かれ||せんりゃく|こうそう| 「 もう いい 、 准将 」 ||じゅんしょう

にがにがし げ に 中将 は さえぎった 。 |||ちゅうじょう||