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JIN-仁- 完结编, JIN-仁- 完结编 #02

JIN -仁 - 完结 编 #02

( 茜 ) 今 評判 の 安 道 名 津 です よ

脚気 に も 効く 体 に いい お 菓子 だ よ

( 良 順 ) 大 人気 です な 脚気 に 効く 菓子 は

( 仁 ) はい 医学 所 の ほう でも

効用 を 説いて もらう と 助かり ます

実は ある お方 が

脚気 の 疑い が ございまして

あん ドーナツ を 献上 して いただき たい のです

どなた に です か ?

は あ 和 宮 って 人 です か

左 様 で ございます

松本 先生 の 患者 さ …

それ って こ ッ 皇女 ・ 和 宮 !

口 に する の も 畏れ多い お方 で ございます ぞ →

和 宮様 は 亡き 帝 の 内 親王 様 →

上 様 の 御 台所 で あら せ られる 最も 高貴な お方 で ございます

実は 大 の 甘い 物好きで いらっしゃい まして な

近々 お忍び で 田 之助 の 芝居 を 楽しま れる

よい 折 が ございます ので ぜひ その 席 で

田 之助 さん の ?

私 は これ を 皮切り に 先生 を 奥 医師 に と も

ちょっと 待って ください うん ?

( 福田 ) 仁 友 堂 の もの を

本道 の もの と して 和 宮様 に ご 献上 さ れる の は

( 多紀 ) 無論

本道 なり の 工夫 を 施す つもりじゃ

お 主 は これ に 何 が 入って おる の か 述べれば それ で よい

しかし ≪( 多紀 ) 仁 友 堂 は

お 主 の 本道 で 食 うて おる そうで は ない か

教えて もろう て も 罰 は 当たら ぬ と 思う が のう

あの 何 か …

( 佐分利 ) 和 宮様 に

あん ドーナツ を 献上 する こと が 決まった んです

( 山田 ) あ ~ ッ あ ~ ッ あ ~ ッ

皆さん し ~ ッ

くれぐれも 秘密で って 言わ れて ます んで

それ に まだ やる と 決まった わけじゃ あり ませ ん から

え ッ …

いや …

あん ドーナツ の 作り 方 を 松本 先生 に 渡して しまえば

それ で 済む わけです し

おっしゃる とおり で ございます

大奥 は しきたり や 人 と の 交わり が 難しく

些細 な そそう が 命取り に なる 場所 かかわり に なら ぬ の が 一 番

何 言う か !

≪( 山田 ) 和 宮様 で っせ

( 咲 ) 何 か ご 心配な こと が ?

いい んです かね

私 みたいな 人間 が 大奥 に 出入り したり

奥 医師 に なったり と か

当代 一 の 名医 で いらっしゃい ます のに

身元 も 明か せ ない わけだ し

ある 日 突然 い なく なる こと も ある かも しれ ない し

あ ッ …

左 様 で ございます よ ね

先生 は いつか 必ず

いらっしゃら なく なって しまう ので ございます もの ね

すぐに どうこう って こと は ない と 思う んです けど

もう 二 年 も このまま な んだ し

私 と した こと が つい 忘れて おり ました

宮様 の 献上 の 件 は

先生 の よろしき ように なさる の が 一 番 か と 存じ ます

あ ッ …

( 勝 ) この 操 練 所 も 取り 潰し って こと に なり そうだ よ

( 龍 馬 ) 悪い が は 幕府 の 石 頭 ぜ よ →

亀 弥 太 や 北 添 が 池田 屋 で 捕まった が は

やむ に やま れ ぬ あいつ ら の 憤り ゆえ じゃ

それ を 十 把 一 から げ に

攘夷 派 の 巣 くつ じゃ ち

ここ で 皆 で 生きて いけりゃ いい と 思って た んだ けど な

故郷 に 帰れ ねえ 奴 も 多かった から よ

《 もし かして 先生 は ワシ ら の 運命 知 っち ょる が かえ ?》

ワシ ら の 故郷 に は

陸 も 海 も 続 いちゅう

帰れ ん ちゅう が は

まっ と 違う が じゃ

五百 両 !?

南方 様 の ご 注文 は 全て 特別な もの ばかり で ございます し

もう 少し 何とか お 支払い し ましょう

そんな 薩摩 藩 から もらった 治療 代 全部 なくなっちゃ い ます よ

大丈夫です 私 が やりくり いたし ます

でも どう やって

先生 は どうぞ お 先 に 患者 が まいって る や も しれ ませ ぬ

はい

〈 仁 友 堂 に は 金 が ない 〉

〈 たまの 大きな 治療 費 は 医療 道具 に 消え 〉

〈 ペニシリン の 製造 は いまだ 〉

〈 濱口 様 の 援助 に 頼りきり 〉

〈 先生 達 に は 一 度 も 給料 を 払えて い ない 〉

〈 もちろん 咲 さん に も 〉

〈 あん ドーナツ が 御用達 に なれば 仁 友 堂 は 潤う 〉

〈 献上 は ありがたい と いう しか ない 話 だ 〉

〈 だけど ここ の ところ の 俺 は 〉

〈 あまりに も 歴史 上 の 人物 に かかわり すぎて いる 〉

〈 この上 和 宮様 に 会ったり でも したら …〉

〈 こう なって くる と 何だか もう 〉

〈 ここ に 骨 を うずめろ と 言わ れて いる 気 が して くる 〉

〈 江戸 は いい ところ だ けど 〉

〈 ここ で 死んで も いい と 思える か と 聞か れれば 〉

〈「 いい 」 と は 言い切る こと は でき ない 〉

〈 俺 に も 残して きた 親 も いれば 〉

〈 友達 も いる 〉

〈 それ に ここ に いる かぎり 〉

〈 未来 が どう なった か を 知る こと は でき ない 〉

〈 それ でも 〉

〈「 いい 」 と 言い切れる 日 など 来る のだろう か 〉

野 風 さん

先生 が ずっと …

〈 そんな 日 は たぶん …〉

〈 永遠に 来 ない ような 気 が した 〉

長屋 を 追い出さ れた んです か !?

( 野 風 ) 色 目 を 使って いる と 言わ れ ん して なあ

昔 の 旦那衆 に でも 職 を 口利き して もらえ ぬ か と

あの …

お 妾 さん に なる なんて 考えて ないで す よ ね

ちゃんと 堅気に なり ん す

先生 に いただいた 命

大事に 使い ん すよ

あの よかったら 仁 友 堂 で 働き ませ ん か ?

そんな こと 言って も お 給料 と か 出せ ない んです けど

その … 食べる くらい は 困ら ない し

ありがたい お 話 であり ん すけ ん ど

先生 は あ ちき に

何 ゆえ そこ まで ご 親切に

それ は …

野 風 さん に 幸せに なって ほしい から です

せっかく 助ける こと できた んです から

へえ

先生 すっかり 遅く なって しまい …

咲 さ ん

野 風 さん 何 ゆえ ここ に ?

あの … 咲 さ ん 実は

まさか また 岩 が !?

相変わらず で お ざん す なあ 咲 様 は

落ち着き 先 が 決まり ん したら すぐに 出て いき ん す ゆえ

変な 遠慮 は なさら ないで ください

困った とき は お互いさまで ございます

できる だけ の こと は いたし ん す ので

あ ッ おはよう ございます

おはよう ございます

よろしゅう お 願い いた しん す

( 八木 ) こちら こそ

野 風 さん 頑張って くれて ます ね

先生 少し 出て も よろしい です か ?

はい

先生 献上 の 件 は どう なさる お つもりで ?

ちょっと まだ

ちょっと ふんぎり が

お 心 が 決まり ましたら 早 めに お 知らせ ください ませ

また 今日 は 多い です ねえ 人 が 増え ました ゆえ

ああ なるほど

あの あれ は お いくら でしょう か

まけて 一 両 くらい で

一 両 …

( 橘 ) 咲 で は ない か

こんな ところ で 何 を ?

南方 先生 は その …

ご存じ な の か ? お前 が このような こと を して いる の は

つまら ぬ こと で お 心 を 煩わ せ たく は ない のです

よい 話 も 来て おり ます

もう しばし の こと か と 思い ます ので

( 田 之助 ) 松本 先生 が まだ 返事 ない って こぼして たよ

何 迷って ん だい ? 先生 は

作り 方 を 教えて しまえば 誰 でも 作れる もの です し

欲 が ない ねえ

あん が とよ 先生

あん ドーナツ の 作り 方 なんて どう する んです か ?

芝居 ん 中 に こいつ を 作る 場面 を 入れよう と 思って さ

ウケ が よ さ そうじゃ ねえ か

張り切って る んです ね 田 之助 さん

あの 方 は 日本 で 一 番 寂しい お姫様 だ から ね

寂しい ?

相 思 相愛 の 許婚 が いた の に 公 武 合体 だ なん だって

生まれ育った 京 から

言葉 も しきたり も 違う 大奥 に 連れて こ られて さ

もう 一生 故郷 に は 戻れ ねえ んだ よ

一生 ?

つかの間 でも 笑わ して やりて え じゃ ねえ か

そう いえば 野 風 さん お 故郷 は どこ な んです か ?

あ ちき に は 故郷 など あり ん せ ん よ

≪( 佐分利 ) またまた もう 花魁 や ない んです から

吉原 に 行く 前 に 親 は 死に ん したし

故郷 と 呼べる ような ところ は …

( 野 風 ) あん れ …

先生 ?

《( 未来 ) いい よ 仁 先生 》

故郷 が ない んです ね 野 風 さん も

( 佐分利 ) 先生 !

松本 先生 ! 松本 先生 おら れ ます か ?

あん ドーナツ の 献上 やる こと に し はった んで っか

はい 松本 先生 に 先ほど 申し上げて き ました

そう で っか よかった

当日 の 同行 は 女性 を と の こと です ので

咲 さ ん お 願い でき ます か ? は ッ はい

もっと よい 小麦 や 玄米 を 用意 いたし ましょう

では 卵 や 砂糖 を 使って もっと 色々 試して み ましょう か

≪( 山田 ) より やわらかく でき ま する か ?

玄米 の 潰し 方 を 変えて は いかがでしょう

≪( 佐分利 ) 揚げ 具合 も 変えて み ましょう

色々 試して み ましょう か

宮様 に 脚気 に 効く 菓子 を と 進言 した ところ

仁 友 堂 から あん ドーナツ を 献上 する こと が

既に 決まって おる と 告げ られた が

それ は … まったく

献上 を 失敗 に 終わら せよ

それ は …

いよいよ 明日 で ございます な

はい

先生 着物 ちゃんと した の 持って はり ました っけ ?

え ッ … これ じゃ 駄目な んです か ?

相手 は 宮様 で っせ

こんな いい 着物 どうした ん です か ?

兄 に 借り ました

あ ッ ちょうど

ありがとう ございます

あの … 何 ゆえ 急に 献上 を お 決め に ?

初め は あまり 気乗り も せ ぬ ご 様子 でした のに

和 宮様 は 故郷 に 戻れ ない 方 だって 聞いた んです

ある 日 突然

全然 違う 世界 に ほうり込ま れた ん だって

それ を 聞いたら 自分 で 持っていき たく なった と いう か

おじさん が 何 青臭い こと 言って ん だって 感じ です よ ね

いえ 分かり ます

それ に もっと しっかり し なくて は いけない と 思った んです

野 風 さん の こと も ある し

野 風 さん ?

野 風 さん も 実家 が ない らしくて

他 で 働く の も 難し そうだ し

だったら ここ に 居て いただく の が 一 番 だ と 思う んです

そう なる と 自然 と お 金 も かかる わけで

野 風 さん は 未来 さん の ご 先祖 や も しれ ぬ 方 です もの ね

あの 手術 が あって 未来 は もう

生まれ なく なった の かも しれ ない し

もう どう する こと も でき ない かも しれ ない けど

せめて 野 風 さん に は 幸せに なって ほしい と いう か

それ が 未来 に できる 唯一 の 罪滅ぼし と いう か

野 風 さん の 人生 に よって は

新しい 未来 が 生まれる 可能 性 が ある かも しれ ない し

咲 さ ん ?

あの 少し …

その … 少し

情けなく なって しまい まして

情けない ?

私 ども で 変え られ なかった お 気持ち を

野 風 さん いえ …

未来 さん は たやすく 変えて おしまい に なら れる のだ と 思う と

あ ッ …

少し 少し です よ

〈 そこ に あった の は 俺 と 咲 さん の 生活 の 足跡 だった 〉

〈 咲 さん は 着物 や 持ち物 を 売って いた 〉

〈 日々 の 生活 に 消えて いく 些細 な 〉

〈 だけど 欠かせ ない もの の ため に 〉

《 兄 に 借り ました 》

《 あ ッ ちょうど 》

《 少し 情けなく なって しまい まして 》

〈 いつ 消えて しまう かも しれ ない 男 の 〉

〈 たった 一 日 の ため に 〉

〈 でも だからといって 〉

〈 俺 は どう すれば いい んだろう 〉

〈 こんな 中途半端な 身の上 で 〉

〈 中途半端な 気持ち で 〉

〈 何 を 言えば いい んだろう 〉

咲 さ ん

あの …

浅はかな こと を 申し上げ ました

野 風 さん の 手術 を 願った の は 私 で ございます

責め は 私 に も ございます のに

すみません でした

咲 さ ん

さあ 作り ましょう

≪( 山田 ) どう か なさ い ました か ?

ずっと 不思議に 思って いた ので ござ りん す

なぜ 先生 も 咲 様 も

かよう に ご 親切に して くだ さん す の か

早速 お 毒 味 役 に まわして 和 宮様 に 食べて いただき ましょう

はい

宮様 で ございます

( 和 宮 ) 良 順 そこ に ある 箱 を もう 少し 近う へ

中 を

( 御 年寄 ) 宮様 ! それ は まだ 毒 味 も 済んで おり ませ ぬ

これ は お 菓子 で は ない お 薬 であろう

良 順 その者 達 は ?

あん ドーナツ を 考案 いたし ました 南方 と いう 医師 と →

その 弟子 で ございます

面 を 上げよ

先生 一 度 目 は 面 を 上げて は なり ませ ぬ

え ッ !?

え ッ ?

おいしい お 薬 で あり ました

あ … はい !

宮様

お 気 に 召して いただけた ようです ね

はい

( 拍子木 が 鳴る )

宮様 !?→

いかがな さ い ました 宮様 !→

宮様 ッ !

御簾 を 下ろせ !

胸 が 胸 が …

治療 し やすい 別室 へ 移し 急ぎ 油 を お 飲ま せ せよ

宮様 宮様 …

≪( 御 年寄 ) 宮様 !

松本 先生 一体 何 が ?

宮様 は 毒 を 盛ら れた ようで ございます

症状 から して 恐らくは ヒ素

あの どのような 治療 を ? 油 を 飲ま せ その後 ミョウバン の 粉 を

胃 の 腑 を 洗って は どう でしょう い … 胃 の 腑 を 洗う !?

胃 の 中 に 入って る 毒 を 洗いだす の が

最も はやく 確実な 治療 だ と 思い ませ ん か ?

しかし そのような 治療 は 誰 も でき ませ ぬ し

奥 医師 で は ない 先生 が 宮様 を … 方法 は お 教え し ます

奥 医師 で も ない 者 に お 任せ する こと は でき ませ ぬ

この 者 は 指示 を する のみ 治療 を する の は 私 で ございます

今 は 何より 宮様 の 命 を 救う こと が 大事

お 含み ください ませ !

宮様 を 寝 台 に 左側 を 下 に して 寝か せて ください

もう 少し 上 に

止めて ください

その あたり が 胃 の 中 10 センチ

あ ッ … 3 寸 程度 の 位置 に くる はずです

口 の ところ に 印 を つけて ください は い

その 先端 に 油 を 塗り つけ ゴム 管 を 挿入 して ください

( 良 順 ) お 開け ください

印 の ところ まで 入り ました ぞ

スポイト を 管 に つないで 胃 の 中 の もの を 吸引 して ください

よし

もう 何も 出 ませ ぬ で は 洗浄 に 移り ます

スポイト を 抜き 漏斗 を つないで ください

止めて ください その 位置 から 湯 を 流し 入れ ます

一 回 の 量 は 一 合 から 一 合 半 で

急激に 入れる と おう吐 を 誘発 し ます ので

ゆっくり お 願い し ます

終わり ました

では 管 を 下 へ はい

何と いい んです それ を

液 が 透明に なる まで 繰り返して ください

南方 先生

透明に なり ました ぞ

続いて これ を … 炭 を 溶かした 湯 に 下剤 を 混ぜた もの です

残って る 毒 を 炭 に 吸着 さ せ 体 外 に 排出 さ せ ます

もう 大丈夫です あと は 自然に 排せつ さ れる の を 待ち ましょう

ありがとう ございました いえ 間に合って よかった です

≪( 女 中 ) 橘 咲 吟味 の ため そ なた を 捕 縛 す !

咲 さ ん 南方 仁 →

吟味 の ため そ なた を 捕 縛 す !

お 待ち くだされ これ は 一体 何の まね だ !

宮様 は その者 の 菓子 を 召し上がら れ ました

菓子 は 毒 味 した で は ない か

毒 味 前 の もの も 召し上がら れて おいで です

あの とき の もの が 原因 なら 症状 が 出る まで に 時 が たち すぎて おる

その者 は 奥 医師 である 松本 殿 で すら

知ら ぬ 治療 を 示して みせ ました →

自ら 毒 を 盛り 力 を 示し

出世 を たくらんだ の や も しれ ませ ぬ

それ は あまり の お 言葉

先生 は ここ に 来る こと すら 畏れ多い と 悩ま れて おり ました

先生 は … この 者 ども を お 目付 へ

私 達 は 何も して ませ ん

その 人 だけ でも 離して ください

咲 さ ん 咲 さ ん !

咲 さ ん !

いずれ に せよ あの 者 ら は 吟味 さ れる べきです

そう でしょう な

毒 味 役 そのほか 大奥 の 皆様 方 も 等しく

牢 入り

おい ッ

大 牢 二 人 の うち 入れ墨 一 人 ~

早く 入れ

≪( 囚人 達 ) 入れ墨 さあ 来い ! まけて やる ぞ →

新 入り さあ 来い …

( 不気味な 声 が 続く )

( 牢 名主 ) よく 来た なあ 新 入り

( 戸 を 叩く 音 )

≪( 橘 ) 誰 か !

誰 か ある !

≪( 牢 名主 ) お前 ら !

命 の ツル は 持ってきた か ?

≪( 新 囚人 ) へ い 二 両 二 分 で →

着物 に 縫い 込んで あり ます

しけて や がん な

≪( 牢 名主 ) お前 は ?

あの ツル って ?

俺 達 に 渡す 金 だ !

そ ッ そんな 金 は …

牢 を 甘く 見 んじゃ ねえ ! や ~ ッ

代わり に やる よ

兄貴

( 小便 を する 音 )

( 穴 の 隠居 ) 宿 に 行って なあ ツル を 持ってこ させれば

出 られる ぞ え

あの … 女 の 人 も こんな 目 に あう んです か ?

( 穴 の 隠居 が 笑う )

( 楽し そうに 手 を 洗う )

一体 何 が 起こった ん や

当 家 に 伝え に きた 役人 も

詳しい こと は 知ら さ れて おら ぬ ようであった

お 調べ は 行わ れる んです やろ ? ほしたら 先生 の 無実 は 必ず

しかし 大 牢送 り である から な

大 牢 の 中 で は お 裁き に よら ず 無法に 殺さ れる 者 も 多い と 聞く

え ッ !?

≪( 山田 ) ツル が あれば 免れる や も しれ ぬ が

≪( 佐分利 ) ツル と は ?

牢 名主 や 役人 に 渡す 賄賂 の こと だ

( 佐分利 ) そんな 金 など

では あ ちき は これ で

ここ に とどまり お 仲間 と みなさ れて は

どのような おと が め を 受ける か 分かり ん せ ん

ちょうど よき 働き 口 も 見つかり ん して なあ

お 二 人 に は よろしく お 伝え くださ ん し

( 横 松 ) あれ が 吉原 の 流儀 な んです か ?

福田 先生 どうか なされた のです か ?

もしや 何 か ご存じ で おら れる の か

( 佐分利 ) 何 や ?

何 を 知 っと る ん や 吐け !

かわいそうだ けど よ

あの 男 殺さ れる ぜ

え ッ ?

医者 は 普通 揚がり 屋 に 送ら れ んだ 大 牢 に 送ら れる って こと は

お上 は あわよくば 牢 の 中 で 死んで くれ と 思って る って こと だ

何 ゆえ 先生 が そのような 目 に

お 待ち ください 何 ゆえ で ございます か !

〈 何も 分から なかった 〉

〈 誰 が 何の ため に 和 宮様 に ヒ素 を 盛った んだろう 〉

〈 俺 に 罪 を なすりつける ため に ?〉

〈 それとも 俺 を 陥れる ため に ?〉

《≪( 象 山 ) お前 の やった こと が 意 に 沿わ ぬ こと であったら →》

《 神 は 容赦 なく お前 の やった こと を 取り消す 》

〈 これ は 〉

〈 そういう こと な の か ?〉

死体 …

≪( 牢 名主 ) ツル を 払わ ねえ と こう なる んだ よ

どう だ え ッ ?

払え ませ ん

私 が 持って る 金 は 患者 が 払った なけなし の 金

命 の ツル です

一緒に 働いて くれる 仲間 は

それ に 手 を つけよう と も せ ず

ツメ に 火 を ともす ように 暮らして ます

あなた 方 に 払う 金 は

あり ませ ん

う ッ う ~ ッ …

〈 俺 は このまま ここ で 取り消さ れて しまう の か ?〉

〈 それ が 神 の 意志 な の か ?〉

《 咲 さ ん !》

口 で は 分かった ような こと を 言い ながら

私 は ずっと 心 の 底 で は 望んで おり ました

先生 が お 戻り に なる 日 など 来 なければ よい

できる なら

ずっと ここ に 居て ほしい … と

もしや そんな 私 を 哀れ と 思い

願い を お 聞き届け くださった のでしょう か

なれば どうか

もう 一 度 だけ 哀れ と 思う て ください ませ

どうか 先生 を お 助け ください

今 すぐに

今 すぐに 先生 を 未来 へ お 戻し ください ませ

〈 これ は 幻 か ?〉

〈 それとも このまま 死ねば 俺 は 戻れる の か ?〉

〈 でも ここ で 戻って しまったら 〉

〈 どう なる んだろう ?〉

〈 咲 さん が どう なった か を 未来 から 知る こと は 〉

〈 きっと でき ない 〉

〈 あの 不器用な 優し さ に 応える こと は でき ない 〉

〈 あの 笑顔 を 見る こと は でき ない 〉

〈 それ でも いつか 新しい 日々 の 中 で 〉

〈「 それ で よかった 」 と 言い切れる 日 が 〉

〈 来る んだろう か 〉

〈 そんな 日 など 〉

〈 そんな 日 など …〉

〈 絶対 に 来 ない と 思う なら 〉

( 囚人 ) あ ~ ッ

元 [ 外 :6 B 60 DB 49332 DF 70 F 090 FA 736992 B 8556] は うち の 医師 に

献上 を うまく いか ぬ ように しろ と 脅し を かけて た んです

本道 の 奥 医師 ならば 大奥 と 通じる こと も でき ます

これ は 医学 館 の 陰謀 で は …

そう であれば もう どうにも なら ない かも しれ ぬ

この 件 の お 調べ は 医学 館 が する こと に なった のだ

〈 俺 は ここ で 〉

〈 生きる しか ない んだ 〉

この 野郎 !

( 牢 名主 の 悲鳴 )

JIN -仁 - 完结 编 #02 |しとし|かん结|

( 茜 ) 今   評判 の 安 道 名 津 です よ あかね|いま|ひょうばん||やす|どう|な|つ||

脚気 に も 効く 体 に いい   お 菓子 だ よ かっけ|||きく|からだ||||かし||

( 良 順 ) 大 人気 です な   脚気 に 効く 菓子 は よ|じゅん|だい|にんき|||かっけ||きく|かし|

( 仁 ) はい   医学 所 の ほう でも しとし||いがく|しょ|||

効用 を 説いて もらう と 助かり ます こうよう||といて|||たすかり|

実は   ある お方 が じつは||おかた|

脚気 の 疑い が ございまして かっけ||うたがい||

あん ドーナツ を 献上 して いただき たい のです |どーなつ||けんじょう||||の です

どなた に です か ?

は あ   和 宮 って 人 です か ||わ|みや||じん||

左 様 で ございます ひだり|さま||

松本 先生 の 患者 さ … まつもと|せんせい||かんじゃ|

それ って   こ ッ   皇女 ・ 和 宮 ! ||||おうじょ|わ|みや

口 に する の も 畏れ多い お方 で ございます ぞ → くち|||||おそれおおい|おかた|||

和 宮様 は   亡き 帝 の 内 親王 様 → わ|みやさま||なき|みかど||うち|しんのう|さま

上 様 の 御 台所 で あら せ られる 最も 高貴な お方 で ございます うえ|さま||ご|だいどころ|||||もっとも|こうきな|おかた||

実は   大 の 甘い 物好きで いらっしゃい まして な じつは|だい||あまい|ものずきで|||

近々   お忍び で 田 之助 の 芝居 を 楽しま れる ちかぢか|おしのび||た|ゆきじょ||しばい||たのしま|

よい 折 が ございます ので ぜひ   その 席 で |お||||||せき|

田 之助 さん の ? た|ゆきじょ||

私 は   これ を 皮切り に 先生 を   奥 医師 に と も わたくし||||かわきり||せんせい||おく|いし|||

ちょっと 待って ください うん ? |まって||

( 福田 ) 仁 友 堂 の もの を ふくた|しとし|とも|どう|||

本道 の もの と して 和 宮様 に   ご 献上 さ れる の は ほんどう|||||わ|みやさま|||けんじょう||||

( 多紀 ) 無論 たき|むろん

本道 なり の 工夫 を 施す つもりじゃ ほんどう|||くふう||ほどこす|

お 主 は   これ に 何 が 入って おる の か 述べれば   それ で よい |おも||||なん||はいって||||のべれば|||

しかし ≪( 多紀 ) 仁 友 堂 は |たき|しとし|とも|どう|

お 主 の 本道 で 食 うて おる そうで は ない か |おも||ほんどう||しょく|||そう で|||

教えて もろう て も 罰 は 当たら ぬ と 思う が のう おしえて||||ばち||あたら|||おもう||

あの   何 か … |なん|

( 佐分利 ) 和 宮様 に さぶり|わ|みやさま|

あん ドーナツ を 献上 する こと が 決まった んです |どーなつ||けんじょう||||きまった|ん です

( 山田 ) あ ~ ッ   あ ~ ッ   あ ~ ッ やまだ||||||

皆さん   し ~ ッ みなさん||

くれぐれも 秘密で って 言わ れて ます んで |ひみつで||いわ|||

それ に まだ   やる と 決まった わけじゃ あり ませ ん から |||||きまった|||||

え ッ …

いや …

あん ドーナツ の 作り 方 を 松本 先生 に 渡して しまえば |どーなつ||つくり|かた||まつもと|せんせい||わたして|

それ で 済む わけです し ||すむ|わけ です|

おっしゃる とおり で ございます

大奥 は   しきたり や 人 と の 交わり が 難しく おおおく||||じん|||まじわり||むずかしく

些細 な   そそう が 命取り に なる 場所 かかわり に なら ぬ の が 一 番 ささい||||いのちとり|||ばしょ|||||||ひと|ばん

何   言う か ! なん|いう|

≪( 山田 ) 和 宮様 で っせ やまだ|わ|みやさま||

( 咲 ) 何 か   ご 心配な こと が ? さ|なん|||しんぱいな||

いい んです かね |ん です|

私 みたいな 人間 が 大奥 に 出入り したり わたくし||にんげん||おおおく||でいり|

奥 医師 に なったり と か おく|いし||||

当代 一 の 名医 で いらっしゃい ます のに とうだい|ひと||めいい||||

身元 も 明か せ ない わけだ し みもと||あか||||

ある 日   突然   い なく なる こと も ある かも しれ ない し |ひ|とつぜん||||||||||

あ ッ …

左 様 で ございます よ ね ひだり|さま||||

先生 は   いつか 必ず せんせい|||かならず

いらっしゃら なく なって しまう ので ございます もの ね

すぐに   どうこう って こと は ない と 思う んです けど |||||||おもう|ん です|

もう 二 年 も   このまま な んだ し |ふた|とし|||||

私 と した こと が つい   忘れて おり ました わたくし||||||わすれて||

宮様 の 献上 の 件 は みやさま||けんじょう||けん|

先生 の   よろしき ように なさる の が 一 番 か と 存じ ます せんせい|||よう に||||ひと|ばん|||ぞんじ|

あ ッ …

( 勝 ) この 操 練 所 も 取り 潰し って こと に なり そうだ よ か||みさお|ね|しょ||とり|つぶし|||||そう だ|

( 龍 馬 ) 悪い が は   幕府 の 石 頭 ぜ よ → りゅう|うま|わるい|||ばくふ||いし|あたま||

亀 弥 太 や 北 添 が 池田 屋 で 捕まった が は かめ|わたる|ふと||きた|そえ||いけだ|や||つかまった||

やむ に やま れ ぬ あいつ ら の 憤り ゆえ じゃ ||||||||いきどおり||

それ を   十 把 一 から げ に ||じゅう|わ|ひと|||

攘夷 派 の 巣 くつ じゃ ち じょうい|は||す|||

ここ で   皆 で 生きて いけりゃ いい と 思って た んだ けど な ||みな||いきて||||おもって||||

故郷 に 帰れ ねえ 奴 も 多かった から よ こきょう||かえれ||やつ||おおかった||

《 もし かして 先生 は   ワシ ら の 運命 知 っち ょる が かえ ?》 ||せんせい||わし|||うんめい|ち||||

ワシ ら の 故郷 に は わし|||こきょう||

陸 も 海 も 続 いちゅう りく||うみ||つづ|

帰れ ん ちゅう が は かえれ||||

まっ と 違う が じゃ ||ちがう||

五百 両 !? ごひゃく|りょう

南方 様 の ご 注文 は   全て 特別な もの ばかり で ございます し なんぽう|さま|||ちゅうもん||すべて|とくべつな|||||

もう 少し   何とか お 支払い し ましょう |すこし|なんとか||しはらい||

そんな   薩摩 藩 から もらった 治療 代 全部   なくなっちゃ い ます よ |さつま|はん|||ちりょう|だい|ぜんぶ||||

大丈夫です 私 が   やりくり いたし ます だいじょうぶ です|わたくし||||

でも   どう やって

先生 は   どうぞ   お 先 に 患者 が   まいって る や も しれ ませ ぬ せんせい||||さき||かんじゃ||||||||

はい

〈 仁 友 堂 に は   金 が ない 〉 しとし|とも|どう|||きむ||

〈 たまの 大きな 治療 費 は 医療 道具 に 消え 〉 |おおきな|ちりょう|ひ||いりょう|どうぐ||きえ

〈 ペニシリン の 製造 は   いまだ 〉 ||せいぞう||

〈 濱口 様 の 援助 に 頼りきり 〉 はまぐち|さま||えんじょ||たよりきり

〈 先生 達 に は 一 度 も   給料 を 払えて い ない 〉 せんせい|さとる|||ひと|たび||きゅうりょう||はらえて||

〈 もちろん   咲 さん に も 〉 |さ|||

〈 あん ドーナツ が 御用達 に なれば 仁 友 堂 は 潤う 〉 |どーなつ||ごようたし|||しとし|とも|どう||うるおう

〈 献上 は ありがたい と いう しか ない 話 だ 〉 けんじょう|||||||はなし|

〈 だけど   ここ の ところ の 俺 は 〉 |||||おれ|

〈 あまりに も   歴史 上 の 人物 に かかわり すぎて いる 〉 ||れきし|うえ||じんぶつ||||

〈 この上 和 宮様 に 会ったり でも したら …〉 このうえ|わ|みやさま||あったり||

〈 こう なって くる と   何だか もう 〉 ||||なんだか|

〈 ここ に 骨 を うずめろ と 言わ れて いる 気 が して くる 〉 ||こつ||||いわ|||き|||

〈 江戸 は   いい ところ だ けど 〉 えど|||||

〈 ここ で   死んで も いい と 思える か と 聞か れれば 〉 ||しんで||||おもえる|||きか|

〈「 いい 」 と は 言い切る こと は でき ない 〉 |||いいきる||||

〈 俺 に も   残して きた 親 も いれば 〉 おれ|||のこして||おや||

〈 友達 も いる 〉 ともだち||

〈 それ に   ここ に いる かぎり 〉

〈 未来 が   どう なった か を 知る こと は でき ない 〉 みらい||||||しる||||

〈 それ でも 〉

〈「 いい 」 と 言い切れる 日 など 来る のだろう か 〉 ||いいきれる|ひ||くる||

野 風 さん の|かぜ|

先生 が   ずっと … せんせい||

〈 そんな 日 は   たぶん …〉 |ひ||

〈 永遠に 来 ない ような 気 が した 〉 えいえんに|らい|||き||

長屋 を   追い出さ れた んです か !? ながや||おいださ||ん です|

( 野 風 ) 色 目 を 使って いる と 言わ れ ん して なあ の|かぜ|いろ|め||つかって|||いわ||||

昔 の 旦那衆 に でも 職 を 口利き して もらえ ぬ か と むかし||だんなしゅう|||しょく||くちきき|||||

あの …

お 妾 さん に なる なんて 考えて ないで す よ ね |めかけ|||||かんがえて||||

ちゃんと 堅気に なり ん す |かたぎに|||

先生 に   いただいた 命 せんせい|||いのち

大事に 使い ん すよ だいじに|つかい||

あの   よかったら 仁 友 堂 で 働き ませ ん か ? ||しとし|とも|どう||はたらき|||

そんな こと 言って も お 給料 と か   出せ ない んです けど ||いって|||きゅうりょう|||だせ||ん です|

その …  食べる くらい は 困ら ない し |たべる|||こまら||

ありがたい お 話 であり ん すけ ん ど ||はなし|||||

先生 は   あ ちき に せんせい||||

何 ゆえ   そこ まで   ご 親切に なん|||||しんせつに

それ は …

野 風 さん に 幸せに なって ほしい から です の|かぜ|||しあわせに||||

せっかく 助ける こと   できた んです から |たすける|||ん です|

へえ

先生   すっかり 遅く なって しまい … せんせい||おそく||

咲 さ ん さ||

野 風 さん   何 ゆえ   ここ に ? の|かぜ||なん|||

あの …  咲 さ ん   実は |さ|||じつは

まさか   また 岩 が !? ||いわ|

相変わらず で お ざん す なあ   咲 様 は あいかわらず||||||さ|さま|

落ち着き 先 が 決まり ん したら すぐに 出て いき ん す ゆえ おちつき|さき||きまり||||でて||||

変な 遠慮 は   なさら ないで ください へんな|えんりょ||||

困った とき は お互いさまで ございます こまった|||おたがいさまで|

できる だけ の こと は いたし ん す ので

あ ッ   おはよう ございます

おはよう ございます

よろしゅう お 願い いた しん す ||ねがい|||

( 八木 ) こちら こそ やぎ||

野 風 さん   頑張って くれて ます ね の|かぜ||がんばって|||

先生   少し 出て も よろしい です か ? せんせい|すこし|でて||||

はい

先生   献上 の 件 は どう なさる お つもりで ? せんせい|けんじょう||けん|||||

ちょっと   まだ

ちょっと   ふんぎり が

お 心 が 決まり ましたら 早 めに   お 知らせ ください ませ |こころ||きまり||はや|||しらせ||

また 今日 は   多い です ねえ 人 が 増え ました ゆえ |きょう||おおい|||じん||ふえ||

ああ   なるほど

あの   あれ は   お いくら でしょう か

まけて   一 両 くらい で |ひと|りょう||

一 両 … ひと|りょう

( 橘 ) 咲 で は ない か たちばな|さ||||

こんな ところ で   何 を ? |||なん|

南方 先生 は   その … なんぽう|せんせい||

ご存じ な の か ?  お前 が このような こと を して いる の は ごぞんじ||||おまえ||||||||

つまら ぬ こと で お 心 を 煩わ せ たく は ない のです |||||こころ||わずらわ|||||の です

よい 話 も 来て おり ます |はなし||きて||

もう しばし の こと か と 思い ます ので ||||||おもい||

( 田 之助 ) 松本 先生 が まだ 返事 ない って   こぼして たよ た|ゆきじょ|まつもと|せんせい|||へんじ||||

何   迷って ん だい ?  先生 は なん|まよって|||せんせい|

作り 方 を 教えて しまえば 誰 でも   作れる もの です し つくり|かた||おしえて||だれ||つくれる|||

欲 が ない ねえ よく|||

あん が とよ   先生 |||せんせい

あん ドーナツ の 作り 方 なんて どう する んです か ? |どーなつ||つくり|かた||||ん です|

芝居 ん 中 に   こいつ を 作る 場面 を 入れよう と 思って さ しばい||なか||||つくる|ばめん||いれよう||おもって|

ウケ が よ さ そうじゃ ねえ か ||||そう じゃ||

張り切って る んです ね   田 之助 さん はりきって||ん です||た|ゆきじょ|

あの 方 は 日本 で 一 番 寂しい   お姫様 だ から ね |かた||にっぽん||ひと|ばん|さびしい|おひめさま|||

寂しい ? さびしい

相 思 相愛 の 許婚 が いた の に 公 武 合体 だ なん だって そう|おも|そうあい||いいなずけ|||||おおやけ|ぶ|がったい|||

生まれ育った 京 から うまれそだった|けい|

言葉 も   しきたり も 違う 大奥 に 連れて こ られて さ ことば||||ちがう|おおおく||つれて|||

もう 一生   故郷 に は 戻れ ねえ んだ よ |いっしょう|こきょう|||もどれ|||

一生 ? いっしょう

つかの間 でも 笑わ して やりて え じゃ ねえ か つかのま||わらわ||||||

そう いえば   野 風 さん お 故郷 は   どこ な んです か ? ||の|かぜ|||こきょう||||ん です|

あ ちき に は 故郷 など   あり ん せ ん よ ||||こきょう||||||

≪( 佐分利 ) またまた もう 花魁 や ない んです から さぶり|||おいらん|||ん です|

吉原 に 行く 前 に   親 は 死に ん したし よしはら||いく|ぜん||おや||しに||

故郷 と 呼べる ような ところ は … こきょう||よべる|||

( 野 風 ) あん れ … の|かぜ||

先生 ? せんせい

《( 未来 ) いい よ   仁 先生 》 みらい|||しとし|せんせい

故郷 が ない んです ね   野 風 さん も こきょう|||ん です||の|かぜ||

( 佐分利 ) 先生 ! さぶり|せんせい

松本 先生 ! 松本 先生   おら れ ます か ? まつもと|せんせい|まつもと|せんせい||||

あん ドーナツ の 献上 やる こと に し はった んで っか |どーなつ||けんじょう|||||||

はい   松本 先生 に 先ほど   申し上げて き ました |まつもと|せんせい||さきほど|もうしあげて||

そう で っか   よかった

当日 の 同行 は 女性 を と の こと です ので とうじつ||どうこう||じょせい||||||

咲 さ ん   お 願い でき ます か ? は ッ   はい さ||||ねがい||||||

もっと よい 小麦 や 玄米 を 用意 いたし ましょう ||こむぎ||げんまい||ようい||

では   卵 や 砂糖 を 使って もっと 色々   試して み ましょう か |たまご||さとう||つかって||いろいろ|ためして|||

≪( 山田 ) より   やわらかく でき ま する か ? やまだ||||||

玄米 の 潰し 方 を 変えて は いかがでしょう げんまい||つぶし|かた||かえて||

≪( 佐分利 ) 揚げ 具合 も 変えて み ましょう さぶり|あげ|ぐあい||かえて||

色々   試して み ましょう か いろいろ|ためして|||

宮様 に   脚気 に 効く 菓子 を と 進言 した ところ みやさま||かっけ||きく|かし|||しんげん||

仁 友 堂 から あん ドーナツ を 献上 する こと が しとし|とも|どう|||どーなつ||けんじょう|||

既に   決まって おる と 告げ られた が すでに|きまって|||つげ||

それ は …  まったく

献上 を 失敗 に 終わら せよ けんじょう||しっぱい||おわら|

それ は …

いよいよ 明日 で ございます な |あした|||

はい

先生   着物   ちゃんと した の 持って はり ました っけ ? せんせい|きもの||||もって|||

え ッ …  これ じゃ 駄目な んです か ? ||||だめな|ん です|

相手 は   宮様 で っせ あいて||みやさま||

こんな   いい 着物 どうした ん です か ? ||きもの||||

兄 に 借り ました あに||かり|

あ ッ   ちょうど

ありがとう ございます

あの … 何 ゆえ   急に 献上 を お 決め に ? |なん||きゅうに|けんじょう|||きめ|

初め は   あまり 気乗り も せ ぬ ご 様子 でした のに はじめ|||きのり|||||ようす||

和 宮様 は   故郷 に 戻れ ない 方 だって 聞いた んです わ|みやさま||こきょう||もどれ||かた||きいた|ん です

ある 日   突然 |ひ|とつぜん

全然   違う 世界 に ほうり込ま れた ん だって ぜんぜん|ちがう|せかい||ほうりこま|||

それ を 聞いたら   自分 で 持っていき たく なった と いう か ||きいたら|じぶん||もっていき|||||

おじさん が 何   青臭い こと 言って ん だって 感じ です よ ね ||なん|あおくさい||いって|||かんじ|||

いえ   分かり ます |わかり|

それ に   もっと しっかり し なくて は いけない と 思った んです |||||||||おもった|ん です

野 風 さん の こと も ある し の|かぜ||||||

野 風 さん ? の|かぜ|

野 風 さん も   実家 が ない らしくて の|かぜ|||じっか|||

他 で 働く の も 難し そうだ し た||はたらく|||むずかし|そう だ|

だったら   ここ に 居て いただく の が 一 番 だ と 思う んです |||いて||||ひと|ばん|||おもう|ん です

そう なる と 自然 と   お 金 も かかる わけで |||しぜん|||きむ|||

野 風 さん は   未来 さん の ご 先祖 や も しれ ぬ 方 です もの ね の|かぜ|||みらい||||せんぞ|||||かた|||

あの 手術 が あって   未来 は もう |しゅじゅつ|||みらい||

生まれ なく なった の かも しれ ない し うまれ|||||||

もう   どう する こと も でき ない かも しれ ない けど

せめて   野 風 さん に は 幸せに なって ほしい と いう か |の|かぜ||||しあわせに|||||

それ が   未来 に できる 唯一 の 罪滅ぼし と いう か ||みらい|||ゆいいつ||つみほろぼし|||

野 風 さん の 人生 に よって は の|かぜ|||じんせい|||

新しい 未来 が   生まれる 可能 性 が ある かも しれ ない し あたらしい|みらい||うまれる|かのう|せい||||||

咲 さ ん ? さ||

あの   少し … |すこし

その …  少し |すこし

情けなく なって しまい まして なさけなく|||

情けない ? なさけない

私 ども で 変え られ なかった   お 気持ち を わたくし|||かえ||||きもち|

野 風 さん   いえ … の|かぜ||

未来 さん は   たやすく 変えて おしまい に なら れる のだ と 思う と みらい||||かえて|||||||おもう|

あ ッ …

少し   少し です よ すこし|すこし||

〈 そこ に あった の は 俺 と 咲 さん の 生活 の 足跡 だった 〉 |||||おれ||さ|||せいかつ||あしあと|

〈 咲 さん は 着物 や 持ち物 を 売って いた 〉 さ|||きもの||もちもの||うって|

〈 日々 の 生活 に 消えて いく   些細 な 〉 ひび||せいかつ||きえて||ささい|

〈 だけど   欠かせ ない もの の ため に 〉 |かかせ|||||

《 兄 に 借り ました 》 あに||かり|

《 あ ッ   ちょうど 》

《 少し 情けなく なって しまい まして 》 すこし|なさけなく|||

〈 いつ 消えて しまう かも しれ ない 男 の 〉 |きえて|||||おとこ|

〈 たった 一 日 の ため に 〉 |ひと|ひ|||

〈 でも   だからといって 〉

〈 俺 は   どう すれば いい んだろう 〉 おれ|||||

〈 こんな 中途半端な 身の上 で 〉 |ちゅうとはんぱな|みのうえ|

〈 中途半端な 気持ち で 〉 ちゅうとはんぱな|きもち|

〈 何 を 言えば   いい んだろう 〉 なん||いえば||

咲 さ ん さ||

あの …

浅はかな こと を 申し上げ ました あさはかな|||もうしあげ|

野 風 さん の 手術 を 願った の は 私 で ございます の|かぜ|||しゅじゅつ||ねがった|||わたくし||

責め は   私 に も ございます のに せめ||わたくし||||

すみません でした

咲 さ ん さ||

さあ   作り ましょう |つくり|

≪( 山田 ) どう か なさ い ました か ? やまだ|||な さ|||

ずっと 不思議に 思って いた ので ござ りん す |ふしぎに|おもって|||||

なぜ   先生 も 咲 様 も |せんせい||さ|さま|

かよう に ご 親切に して くだ さん す の か |||しんせつに||||||

早速   お 毒 味 役 に まわして 和 宮様 に 食べて いただき ましょう さっそく||どく|あじ|やく|||わ|みやさま||たべて||

はい

宮様 で ございます みやさま||

( 和 宮 ) 良 順   そこ に ある 箱 を もう 少し   近う へ わ|みや|よ|じゅん||||はこ|||すこし|ちかう|

中 を なか|

( 御 年寄 ) 宮様 !  それ は まだ 毒 味 も 済んで おり ませ ぬ ご|としより|みやさま||||どく|あじ||すんで|||

これ は お 菓子 で は ない   お 薬 であろう |||かし|||||くすり|

良 順   その者 達 は ? よ|じゅん|そのもの|さとる|

あん ドーナツ を 考案 いたし ました 南方 と いう 医師 と → |どーなつ||こうあん|||なんぽう|||いし|

その 弟子 で ございます |でし||

面 を 上げよ おもて||あげよ

先生   一 度 目 は 面 を 上げて は なり ませ ぬ せんせい|ひと|たび|め||おもて||あげて||||

え ッ !?

え ッ ?

おいしい   お 薬 で あり ました ||くすり|||

あ …  はい !

宮様 みやさま

お 気 に 召して いただけた ようです ね |き||めして||よう です|

はい

( 拍子木 が 鳴る ) ひょうしぎ||なる

宮様 !?→ みやさま

いかがな さ い ました   宮様 !→ ||||みやさま

宮様 ッ ! みやさま|

御簾 を 下ろせ ! みす||おろせ

胸 が   胸 が … むね||むね|

治療 し やすい 別室 へ 移し 急ぎ   油 を   お 飲ま せ せよ ちりょう|||べっしつ||うつし|いそぎ|あぶら|||のま||

宮様   宮様 … みやさま|みやさま

≪( 御 年寄 ) 宮様 ! ご|としより|みやさま

松本 先生   一体   何 が ? まつもと|せんせい|いったい|なん|

宮様 は 毒 を 盛ら れた ようで ございます みやさま||どく||もら|||

症状 から して 恐らくは   ヒ素 しょうじょう|||おそらくは|ひそ

あの   どのような 治療 を ? 油 を 飲ま せ   その後   ミョウバン の 粉 を ||ちりょう||あぶら||のま||そのご|||こな|

胃 の 腑 を 洗って は   どう でしょう い …  胃 の 腑 を 洗う !? い||ふ||あらって|||||い||ふ||あらう

胃 の 中 に 入って る 毒 を 洗いだす の が い||なか||はいって||どく||あらいだす||

最も   はやく 確実な 治療 だ と 思い ませ ん か ? もっとも||かくじつな|ちりょう|||おもい|||

しかし   そのような 治療 は 誰 も   でき ませ ぬ し ||ちりょう||だれ|||||

奥 医師 で は ない 先生 が   宮様 を … 方法 は   お 教え し ます おく|いし||||せんせい||みやさま||ほうほう|||おしえ||

奥 医師 で も ない 者 に お 任せ する こと は でき ませ ぬ おく|いし||||もの|||まかせ||||||

この 者 は   指示 を する のみ 治療 を する の は   私 で ございます |もの||しじ||||ちりょう|||||わたくし||

今 は   何より 宮様 の 命 を 救う こと が 大事 いま||なにより|みやさま||いのち||すくう|||だいじ

お 含み ください ませ ! |ふくみ||

宮様 を 寝 台 に 左側 を 下 に して 寝か せて ください みやさま||ね|だい||ひだりがわ||した|||ねか||

もう 少し   上 に |すこし|うえ|

止めて ください とどめて|

その あたり が   胃 の 中  10 センチ |||い||なか|せんち

あ ッ … 3 寸 程度 の 位置 に くる はずです ||すん|ていど||いち|||はず です

口 の ところ に 印 を つけて ください は い くち||||いん|||||

その 先端 に 油 を 塗り つけ ゴム 管 を 挿入 して ください |せんたん||あぶら||ぬり||ごむ|かん||そうにゅう||

( 良 順 ) お 開け ください よ|じゅん||あけ|

印 の ところ まで   入り ました ぞ いん||||はいり||

スポイト を 管 に つないで 胃 の 中 の もの を 吸引 して ください すぽいと||かん|||い||なか||||きゅういん||

よし

もう 何も 出 ませ ぬ で は   洗浄 に 移り ます |なにも|だ|||||せんじょう||うつり|

スポイト を 抜き 漏斗 を   つないで ください すぽいと||ぬき|ろうと|||

止めて ください その 位置 から   湯 を 流し 入れ ます とどめて|||いち||ゆ||ながし|いれ|

一 回 の 量 は   一 合 から 一 合 半 で ひと|かい||りょう||ひと|ごう||ひと|ごう|はん|

急激に 入れる と おう吐 を 誘発 し ます ので きゅうげきに|いれる||おうと||ゆうはつ|||

ゆっくり   お 願い し ます ||ねがい||

終わり ました おわり|

では   管 を 下 へ はい |かん||した||

何と いい んです   それ を なんと||ん です||

液 が 透明に なる まで 繰り返して ください えき||とうめいに|||くりかえして|

南方 先生 なんぽう|せんせい

透明に なり ました ぞ とうめいに|||

続いて これ を …  炭 を 溶かした 湯 に 下剤 を 混ぜた もの です つづいて|||すみ||とかした|ゆ||げざい||まぜた||

残って る 毒 を   炭 に 吸着 さ せ 体 外 に 排出 さ せ ます のこって||どく||すみ||きゅうちゃく|||からだ|がい||はいしゅつ|||

もう 大丈夫です   あと は 自然に 排せつ さ れる の を 待ち ましょう |だいじょうぶ です|||しぜんに|はいせつ|||||まち|

ありがとう ございました いえ   間に合って   よかった です |||まにあって||

≪( 女 中 ) 橘 咲   吟味 の ため そ なた を 捕 縛 す ! おんな|なか|たちばな|さ|ぎんみ||||||ほ|しば|

咲 さ ん 南方 仁 → さ|||なんぽう|しとし

吟味 の ため   そ なた を 捕 縛 す ! ぎんみ||||||ほ|しば|

お 待ち くだされ これ は 一体   何の まね だ ! |まち||||いったい|なんの||

宮様 は   その者 の 菓子 を 召し上がら れ ました みやさま||そのもの||かし||めしあがら||

菓子 は 毒 味 した で は ない か かし||どく|あじ|||||

毒 味 前 の もの も 召し上がら れて おいで です どく|あじ|ぜん||||めしあがら|||

あの とき の もの が 原因 なら   症状 が 出る まで に 時 が たち すぎて おる |||||げんいん||しょうじょう||でる|||じ||||

その者 は 奥 医師 である   松本 殿 で すら そのもの||おく|いし||まつもと|しんがり||

知ら ぬ 治療 を 示して みせ ました → しら||ちりょう||しめして||

自ら   毒 を 盛り   力 を 示し おのずから|どく||さかり|ちから||しめし

出世 を たくらんだ の や も しれ ませ ぬ しゅっせ||||||||

それ は   あまり の お 言葉 |||||ことば

先生 は   ここ に 来る こと すら 畏れ多い と   悩ま れて おり ました せんせい||||くる|||おそれおおい||なやま|||

先生 は … この 者 ども を   お 目付 へ せんせい|||もの||||めつき|

私 達 は   何も して ませ ん わたくし|さとる||なにも|||

その 人 だけ でも   離して ください |じん|||はなして|

咲 さ ん   咲 さ ん ! さ|||さ||

咲 さ ん ! さ||

いずれ に せよ   あの 者 ら は 吟味 さ れる べきです ||||もの|||ぎんみ|||べき です

そう でしょう な

毒 味 役   そのほか 大奥 の 皆様 方 も 等しく どく|あじ|やく||おおおく||みなさま|かた||ひとしく

牢 入り ろう|はいり

おい ッ

大 牢   二 人 の うち 入れ墨   一 人 ~ だい|ろう|ふた|じん|||いれずみ|ひと|じん

早く   入れ はやく|いれ

≪( 囚人 達 ) 入れ墨   さあ 来い ! まけて やる ぞ → しゅうじん|さとる|いれずみ||こい|||

新 入り   さあ 来い … しん|はいり||こい

( 不気味な 声 が 続く ) ぶきみな|こえ||つづく

( 牢 名主 ) よく 来た なあ   新 入り ろう|なぬし||きた||しん|はいり

( 戸 を 叩く 音 ) と||たたく|おと

≪( 橘 ) 誰 か ! たちばな|だれ|

誰 か   ある ! だれ||

≪( 牢 名主 ) お前 ら ! ろう|なぬし|おまえ|

命 の ツル は   持ってきた か ? いのち||つる||もってきた|

≪( 新 囚人 ) へ い   二 両 二 分 で → しん|しゅうじん|||ふた|りょう|ふた|ぶん|

着物 に 縫い 込んで あり ます きもの||ぬい|こんで||

しけて や がん な

≪( 牢 名主 ) お前 は ? ろう|なぬし|おまえ|

あの   ツル って ? |つる|

俺 達 に 渡す 金 だ ! おれ|さとる||わたす|きむ|

そ ッ   そんな 金 は … |||きむ|

牢 を 甘く 見 んじゃ ねえ !  や ~ ッ ろう||あまく|み||||

代わり に   やる よ かわり|||

兄貴 あにき

( 小便 を する 音 ) しょうべん|||おと

( 穴 の 隠居 ) 宿 に 行って なあ ツル を 持ってこ させれば あな||いんきょ|やど||おこなって||つる||もってこ|さ せれば

出 られる ぞ え だ|||

あの …  女 の 人 も こんな 目 に   あう んです か ? |おんな||じん|||め|||ん です|

( 穴 の 隠居 が 笑う ) あな||いんきょ||わらう

( 楽し そうに 手 を 洗う ) たのし|そう に|て||あらう

一体   何 が 起こった ん や いったい|なん||おこった||

当 家 に 伝え に きた 役人 も とう|いえ||つたえ|||やくにん|

詳しい こと は 知ら さ れて おら ぬ ようであった くわしい|||しら|||||

お 調べ は 行わ れる んです やろ ? ほしたら   先生 の 無実 は 必ず |しらべ||おこなわ||ん です|||せんせい||むじつ||かならず

しかし   大 牢送 り である から な |だい|ろうそう||||

大 牢 の 中 で は   お 裁き に よら ず 無法に 殺さ れる 者 も 多い と 聞く だい|ろう||なか||||さばき||||むほうに|ころさ||もの||おおい||きく

え ッ !?

≪( 山田 ) ツル が あれば 免れる や も しれ ぬ が やまだ|つる|||まぬがれる|||||

≪( 佐分利 ) ツル と は ? さぶり|つる||

牢 名主 や 役人 に 渡す   賄賂 の こと だ ろう|なぬし||やくにん||わたす|わいろ|||

( 佐分利 ) そんな   金 など さぶり||きむ|

では   あ ちき は   これ で

ここ に   とどまり お 仲間 と   みなさ れて は ||||なかま||みな さ||

どのような   おと が め を 受ける か 分かり ん せ ん |||||うける||わかり|||

ちょうど   よき 働き 口 も 見つかり ん して なあ ||はたらき|くち||みつかり|||

お 二 人 に は よろしく お 伝え くださ ん し |ふた|じん|||||つたえ|||

( 横 松 ) あれ が 吉原 の 流儀 な んです か ? よこ|まつ|||よしはら||りゅうぎ||ん です|

福田 先生 どうか なされた のです か ? ふくた|せんせい|||の です|

もしや 何 か   ご存じ で おら れる の か |なん||ごぞんじ|||||

( 佐分利 ) 何 や ? さぶり|なん|

何 を 知 っと る ん や   吐け ! なん||ち|||||はけ

かわいそうだ けど よ

あの 男   殺さ れる ぜ |おとこ|ころさ||

え ッ ?

医者 は 普通   揚がり 屋 に 送ら れ んだ 大 牢 に 送ら れる って こと は いしゃ||ふつう|あがり|や||おくら|||だい|ろう||おくら||||

お上 は   あわよくば   牢 の 中 で 死んで くれ と 思って る って こと だ おかみ|||ろう||なか||しんで|||おもって||||

何 ゆえ   先生 が   そのような 目 に なん||せんせい|||め|

お 待ち ください 何 ゆえ で ございます か ! |まち||なん||||

〈 何も 分から なかった 〉 なにも|わから|

〈 誰 が   何の ため に 和 宮様 に   ヒ素 を 盛った んだろう 〉 だれ||なんの|||わ|みやさま||ひそ||もった|

〈 俺 に 罪 を   なすりつける ため に ?〉 おれ||ざい||||

〈 それとも   俺 を 陥れる ため に ?〉 |おれ||おとしいれる||

《≪( 象 山 ) お前 の やった こと が 意 に 沿わ ぬ こと であったら →》 ぞう|やま|おまえ|||||い||そわ|||

《 神 は   容赦 なく お前 の やった こと を 取り消す 》 かみ||ようしゃ||おまえ|||||とりけす

〈 これ は 〉

〈 そういう こと な の か ?〉

死体 … したい

≪( 牢 名主 ) ツル を 払わ ねえ と こう なる んだ よ ろう|なぬし|つる||はらわ||||||

どう だ   え ッ ?

払え ませ ん はらえ||

私 が 持って る 金 は 患者 が 払った   なけなし の 金 わたくし||もって||きむ||かんじゃ||はらった|||きむ

命 の ツル です いのち||つる|

一緒に 働いて くれる 仲間 は いっしょに|はたらいて||なかま|

それ に 手 を つけよう と も せ ず ||て||||||

ツメ に 火 を ともす ように 暮らして ます つめ||ひ|||よう に|くらして|

あなた 方 に 払う 金 は |かた||はらう|きむ|

あり ませ ん

う ッ   う ~ ッ …

〈 俺 は   このまま   ここ で 取り消さ れて しまう の か ?〉 おれ|||||とりけさ||||

〈 それ が   神 の 意志 な の か ?〉 ||かみ||いし|||

《 咲 さ ん !》 さ||

口 で は 分かった ような こと を 言い ながら くち|||わかった||||いい|

私 は   ずっと 心 の 底 で は 望んで おり ました わたくし|||こころ||そこ|||のぞんで||

先生 が   お 戻り に なる 日 など 来 なければ よい せんせい|||もどり|||ひ||らい||

できる なら

ずっと   ここ に 居て ほしい  … と |||いて||

もしや   そんな 私 を 哀れ と 思い ||わたくし||あわれ||おもい

願い を   お 聞き届け くださった のでしょう か ねがい|||ききとどけ|||

なれば   どうか

もう 一 度 だけ 哀れ と 思う て ください ませ |ひと|たび||あわれ||おもう|||

どうか   先生 を お 助け ください |せんせい|||たすけ|

今 すぐに いま|

今 すぐに   先生 を 未来 へ お 戻し ください ませ いま||せんせい||みらい|||もどし||

〈 これ は   幻 か ?〉 ||まぼろし|

〈 それとも   このまま 死ねば 俺 は   戻れる の か ?〉 ||しねば|おれ||もどれる||

〈 でも   ここ で 戻って しまったら 〉 |||もどって|

〈 どう なる んだろう ?〉

〈 咲 さん が   どう なった か を 未来 から 知る こと は 〉 さ|||||||みらい||しる||

〈 きっと   でき ない 〉

〈 あの 不器用な 優し さ に 応える こと は でき ない 〉 |ぶきような|やさし|||こたえる||||

〈 あの 笑顔 を 見る こと は でき ない 〉 |えがお||みる||||

〈 それ でも   いつか 新しい 日々 の 中 で 〉 |||あたらしい|ひび||なか|

〈「 それ で よかった 」 と 言い切れる 日 が 〉 ||||いいきれる|ひ|

〈 来る んだろう か 〉 くる||

〈 そんな 日 など 〉 |ひ|

〈 そんな 日 など …〉 |ひ|

〈 絶対 に 来 ない と 思う なら 〉 ぜったい||らい|||おもう|

( 囚人 ) あ ~ ッ しゅうじん||

元 [ 外 :6 B 60 DB 49332 DF 70 F 090 FA 736992 B 8556] は   うち の 医師 に もと|がい||||||||||いし|

献上 を   うまく いか ぬ ように しろ と 脅し を かけて た んです けんじょう|||||よう に|||おどし||||ん です

本道 の 奥 医師 ならば 大奥 と 通じる こと も でき ます ほんどう||おく|いし||おおおく||つうじる||||

これ は   医学 館 の 陰謀 で は … ||いがく|かん||いんぼう||

そう であれば もう   どうにも なら ない かも しれ ぬ

この 件 の お 調べ は 医学 館 が する こと に なった のだ |けん|||しらべ||いがく|かん||||||

〈 俺 は   ここ で 〉 おれ|||

〈 生きる しか ない んだ 〉 いきる|||

この 野郎 ! |やろう

( 牢 名主 の 悲鳴 ) ろう|なぬし||ひめい