イタズラ な Kiss 〜Love in TOKYO#4
( 相原 琴子 ( あいはら ことこ )) 生まれて 初めて 書いた ラブレター ―
決して 読んで もらえ ない ラブレター
ひどい 手紙 見た の ?
( 入江 紀子 ( いりえ のりこ )) 琴子 ちゃん は
お 兄ちゃん の お 嫁 さん に なったら いい じゃない の
( 池沢 金之助 ( いけざわ きんのすけ )) 結婚 なんか お 話 に も なら へん で
( 入江 直樹 ( なおき )) 人 の 気持ち なんて 分から ない
今日 は 嫌い でも ―
あした は 好き に なって る かも しれ ない から ね
( 琴子 ) な … 何 言って ん の ?
あーっ 待って !
ハッハッハッ …―
安心 しろ よ おつきあい する つもり ない から
からかった の ?
( 琴子 ) 高校 最後 の 夏 休み の 思い出 は ―
これ と いって 何も なかった けれど ―
入江 君 と 飲んだ モーニング コーヒー の 香り は ―
きっと 忘れ ない
( 琴子 ) 時 の 流れ は 早い もの で ―
季節 は 夏 から 秋 ―
秋 から 冬 へ と 移り変わって いき ―
どうにか 大学 進学 が 決まった の は いい けど ―
私 と 入江 君 の 関係 は ―
相変わらず ―
何も 進展 し ない まま で
( 小森 ( こもり ) じんこ ) かわいい
( 石川 理美 ( いしかわ さとみ )) じんこ も すごい 似合って る ね
( じんこ ) 今年 は 紺 に した の 去年 は 黄色 だった から
( 理美 ) そうだ よ ね ちょっと 大人 の じんこ で キャー
( 理美 ) そうだ よ ね ちょっと 大人 の じんこ で キャー
( 琴子 ) じんこ ! 理美 !
( 琴子 ) じんこ ! 理美 !
( 理美 ・ じんこ ) あーっ !
あけましておめでとう
( 理美 ・ じんこ ) あけましておめでとう 琴子
( 理美 ) あれ ? 今年 は 琴子 も 着物 着た んだ
うん 入江 君 の お 母さん に 着付けて もらった んだ
かわいい 似合って る よ
ウフ ありがとう
あれ ? じんこ ちょっと 太った ?
ちょ … やめて よ 気 に して る んだ から
だけど さ もう 受験 勉強 から 解放 された って 思う と
クリスマス ケーキ も おせち も おいしく って
( 琴子 ) うん 分かる 分かる
でも さ 3 人 と も 同じ 斗南 ( となん ) 大学 に 進めて よかった ね
ほんと 春 から 私 たち も 女子大生 ―
今年 は いい 1 年 に しよう ね
( 琴子 ) うん じゃあ 早速 行く か
( 理美 ) 行く か
( じんこ ) あっ 並んで る ね
( 理美 ) すごい ね
すてき な 大学 生活 に なり ます ように
今年 こそ 彼氏 でき ます ように
( 理美 ) はぁ …
琴子 真剣 だ ね
無言 でも 何 を 願って る か バレバレ ね
( じんこ ) ねえ おみくじ 引こう よ
これ !
( じんこ ) じゃあ 私 は ね これ に しよう
( 理美 ) どれ に しよう か な ―
これっ
おおっ すご ~ い
大吉 だ ~ っ !
大吉 だ ~ っ !
( 理美 ) 来た ~ 私 も !
( 理美 ) 来た ~ 私 も !
( 理美 ) 来た ~ 私 も !
( じんこ ) 何と 私 も !
( じんこ ) 何と 私 も !
( 琴子 ) お ー すごい 3 人 そろって すごい ―
えっ 待って !
えっ 待って !
( 理美 ) え ?
( 理美 ) え ?
( 琴子 )“ 待ち 人 来る 楽しみ に 待ち なさい ”
(3 人 の 歓声 )
どう しよう 大丈夫 ?
どう しよう 大丈夫 ?
( 理美 ) え 何 ? 何 ? 私 の 何 だ ろ ね …
( 理美 ) え 何 ? 何 ? 私 の 何 だ ろ ね …
( 理美 ) え 何 ? 何 ? 私 の 何 だ ろ ね …
( 琴子 ) うん ?
( 琴子 ) うん ?
“ 来ない けれど 便り あり ” どういう こと だ ? これ は ―
来ない の ? 今年 も 来ない の ?
来ない の ? 今年 も 来ない の ?
( じんこ )〝 野心 を 持つ と 来ない です 〞―
( じんこ )〝 野心 を 持つ と 来ない です 〞―
ええ ~ っ ?
( 銀太郎 ( ぎんたろう )) 兄貴
この こと 琴子 に は 絶対 言う な よ
( 銀太郎 ) でも …
( 銀太郎 ) でも …
ええ から
ええ から
言 ( ゆ ) うな ゆう たら 言う な
兄貴
( 入江 重樹 ( しげき )) おめでとう !
( 紀子 ) おめでとう !
( 相原 重雄 ( しげお )) ホッホー
( クラッカー が 鳴る 音 )
( 紀子 たち の 笑い声 )
( 重樹 ) それ で は 琴子 ちゃん の 大学 進学 決定 を 祝って 乾杯 !
( 紀子 ・ 重雄 ) 乾杯 !
( 紀子 ・ 重雄 ) 乾杯 !
( 重樹 ) はい おめでとう
( 重樹 ) はい おめでとう
琴子 ちゃん おめでとう
( 重雄 ) ああ ~
( 重雄 ) ああ ~
さあ それ で は みんな いただき ましょう
さあ それ で は みんな いただき ましょう
さあ それ で は みんな いただき ましょう
( 重雄 ) さあ いただき ましょう
( 重雄 ) さあ いただき ましょう
( 重雄 ) さあ いただき ましょう
( 紀子 ) わ あ フフフ
私 の ため に 皆さん ほんとに ありがとう ございます
( 重樹 ) いや いや いや
いや ー この 間 まで まだ 小さい と 思って た 琴子 が
春 から もう 大学生 か フフ
天国 で お 母さん が どれ だけ 喜んで る こと か
お 父さん
お 父さん
( 重雄 ) ごめん ―
( 重雄 ) ごめん ―
ごめん ごめん
なあ 直樹 も 琴子 ちゃん に 続いて 受験 頑張 ん ない と な
( 入江 裕樹 ( ゆうき )) お 兄ちゃん は 琴子 みたい な ばか と は 違う
余裕 で 東大 合格 だ
裕樹 ハハハ …
あっ そうだ
はい 入江 君 これ
( 紀子 ) まあ フフフ
( 紀子 ) まあ フフフ
( 重樹 ) おお ?
( 紀子 ) まあ フフフ
( 琴子 ) 私 が 内部 進学 できた の も
入江 君 に テスト 勉強 見て もらった おかげ だ し
お 礼 って ほど じゃない んだ けど
わあ すてき 早く 開けて みせて よ お 兄ちゃん
わあ すてき 早く 開けて みせて よ お 兄ちゃん
( 重樹 ) うん うん うん
( 重樹 ) うん うん うん
フフッ
何 だ あ ? これ
ヘッドマッサージ 器 です
( 重雄 ) ふーん
( 重雄 ) ふーん
( 琴子 ) 入江 君 東大 目指して 外部 受験 する でしょ ?―
( 琴子 ) 入江 君 東大 目指して 外部 受験 する でしょ ?―
まだ 勉強 あって 大変だ と 思う から
泡立て 器 みたい
じじ くせえ
( 重樹 ) こら 裕樹
いい から 使って み なさい よ お 兄ちゃん
いい から 使って み なさい よ お 兄ちゃん
( 重樹 ) ああ そう だ よ そう だ よ
( 重樹 ) ああ そう だ よ そう だ よ
( 直樹 ) 俺 は いい よ
それ に 東大 どころ か
大学 に 行く か どう かも 決めて ない し
( 重樹 の せき払い )
あっ あの 裕樹 ちょっと それ 見 して ごらん なさい
どう やって どう やって 使う ん だろう ね
頭 に
頭 に
( 重樹 ) 頭 に ね
( 重樹 ) 頭 に ね
( 琴子 ) そんな …―
東大 間違い なし の 天才 の 入江 君 が ―
大学 に 行か ない かも しれ ない って ―
どういう こと ?
♪~
( 琴子 の あくび )
( じんこ ) 口 ( くち ) 口 っ
( 理美 ) でかい 口
( じんこ ) 受験 勉強 の ない 3 学期 って 天国 ね
( 理美 ) ほんと
あっ 見て 見て 見て 見て
( じんこ ) 何か すごい 風景
私 たち が 余裕 で 遊んで る のに A 組 が 必死 なんて
何か 不思議 だ よ ね
うん まあ もう すぐ センター 試験 だ から ね ~
( じんこ ) だが 入江 直樹 だけ は 余裕 … と
( 理美 ) 信じらんない ―
この 時期 に 受験 に 関係ない 本 を 悠々 と 読んで られる なんて
ねえ 入江 直樹 の 第一 志望 って やっぱ 東大 な の ?
東大 どころ か
大学 に 行く か どう か も 決めて ない し
( じんこ ) 琴子 ―
琴子
えっ ?
ああ どう なん だろう ね
受かったら 行く ん じゃない ?
何 言って ん の 入江 なら 受かる に 決まって ん じゃん
でも 琴子 さみしく なっ ちゃう ね
大学 ばらばら に なっ ちゃう なんて
でも 入江 君 の 将来 の ため だ もん 応援 し ちゃう !
応援 し ちゃう !
( 理美 ) じんこ 無理 が ある ハハ 八ッ
( 理美 ) じんこ 無理 が ある ハハ 八ッ
( じんこ ) 無理 ある ? うそ でしょ
おば 様 あの …
( 紀子 ) うん ?
裁縫 道具 を お 借り する こと って でき ます か ?
あっ いい わ よ あっ ちょっと 待って て ね
はい
♪~
あっ 曲がっ ちゃった
大丈夫 よ ゆっくり やって みて
はい
その お守り お 兄ちゃん に ?
ありがと ね 琴子 ちゃん
お 兄ちゃん の 大学 受験 の こと 一番 思って くれて る の は
実は 琴子 ちゃん かも ね フフフ …
入江 君 大学 行か ない かも しれ ない なんて
うそ です よ ね ?
うーん
大学 に 行き たく ない わけ じゃない ん だろう けど
もしかしたら パパ の 期待 が 大き すぎる の かも
パパ 自分 が 東大 出身 でしょ
それ で お 兄ちゃん に も 同じ 東大 に 行って
いずれ は パパ の 会社 を
継いで ほしい って 思って る んだ けど
そういう ふう に 期待 されて る こと が
もしかしたら お 兄ちゃん に は 重荷 な の かも ね
( 直樹 ) はい
ちょっと いい かな ?
( 琴子 ) はい
あした センター 試験 でしょ ? だ から
受ける よ ね ? センター 試験
願書 は 出した
よかった
他 に 行き たい 大学 が あったら 仕方ない けど
でも 東大 に 行ったら
おじさん も おばさん も 喜ぶ と 思う よ
私 なんか 親 に 迷惑 かけ っぱなし だ し さ
そんな ふう に 親 を 喜ば せる チャンス が
たくさん ある 入江 君 が うらやましい
あ … じゃあ それ だけ
お前 さ
大学 行って どう する の ?
どう する って …
勉強 したり 友達 作ったり
好き でも ない 勉強 を わざわざ し に 行く 気 か よ
分かんない よ な
何で みんな そんなに 必死 に 大学 に 行き たい の か
そりゃあ 入江 君 みたい な 人 が 勉強 する ため に
大学 は ある ん だろう けど
俺 大学 なんて 行き たい と 思って ない よ
別に 大学 で 教えて もらわ なくて も
勉強 し た けりゃ 自分 で できる し
でも それ だけ じゃない でしょ
将来 やり たい こと の ため の 資格 と か
じゃあ お前 は 何 やり たい の ?
そんな の まだ 分かんない けど …
あっ そうだ
大学 行く 時間 って それ を 探し に 行く 時間 な んだ よ ―
将来 自分 が 何 を やり たい の か を
入江 君 は さ その 頭脳 を 独り占め しちゃ 駄目だ よ
日本 の 発展 に 役立た せ ない と ね
お前 って すごい よ な
前 から 思って た んだ けど
何で そんなに 一生懸命に なれる んだろう って
そんで 一生懸命 に やる のに
何で それ が でき ない の か な あって
感心 しちゃ って
何 それ 嫌 み ?
何 か …
そっち の 方 が うらやましい 気 が する
あした 早い から もう 寝る わ
うん おやすみ
あっ じゃあ これ 付け とく ね
( ドア が 開く 音 )
( ドア が 閉まる 音 )
フフッ ―
ヒヒヒ …
完璧
ファイト
お 兄ちゃん 遅い わ ね
( 重樹 ) あ … あいつ まさか
センター 試験 受け ない 気 じゃない だろう なあ
大丈夫 たい イリ ちゃん の 気持ち は 届い とう
( 重樹 ) うーん でも 思い込んだら 頑固 な とこ ある け ね
( 直樹 ) 何 ?
ああっ おはよう お 兄ちゃん
いい 朝 ねえ ―
いい 朝 ねえ ―
( 重樹 ) うん
( 重樹 ) うん
( 重樹 ) うん
はい お 弁当
はい お 弁当
ありがとう
( せき込み )
どうした ? 直樹
何か ちょっと 熱っぽい
風邪 ひいた みたい
こんな 大事 な 日 に
大変 だ わ あっ 卵酒 卵酒
いやいや 喉 に は ネギ を
( 裕樹 ) 薬 薬 薬 !
( 重樹 ) ああ ぬかみそ も あった か
いい よ もう 行く から
( 紀子 ) えっ ? あっ 朝 御飯 は ?
( 直樹 ) 食欲 ない これ で いい
( 紀子 ) え えっ ?
( 琴子 ) 入江 君 入江 君 これ 飲んで この 薬 ―
よく 効く の よ
うん これ で 安心 だ
まさか と は 思う けど この 薬 眠く なら ない よ な ?
はっ !
服用 後 は 自動車 の 運転 を 避けて ください …
( 重樹 が 鼻 を 鳴らす 音 )
( 重樹 ) 吐け 直樹 吐く んだ 直樹 !
( 重雄 ) イリ ちゃん 俺 が 押さえ とく けん 指 入れ !
( 重雄 ) イリ ちゃん 俺 が 押さえ とく けん 指 入れ !
( 紀子 ) 洗面 器 持ってきて 早く 早く !
( 紀子 ) 洗面 器 持ってきて 早く 早く !
( 紀子 ) 洗面 器 持ってきて 早く 早く !
( 重樹 ) あーん して あーん して
( 紀子 ) 洗面 器 持ってきて 早く 早く !
( 紀子 ) 洗面 器 持ってきて 早く 早く !
( 直樹 ) もう いい よ !―
( 直樹 ) もう いい よ !―
いってきます
入江 君 大丈夫 かな ?
( 渡辺 ( わたなべ )) ハァ ハァ … おはよう
( 直樹 ) おはよう
( 渡辺 ) あれ ? その お守り 手作り ?―
もしかして 一緒に 住んで る 彼女 が 作って くれた と か ?
会場 に 着いたら 捨てる
( 渡辺 ) そんな ! かわいそう じゃん
俺 彼女 結構 好み だ けど なあ
( 女性 ) すいません 降り ます
ありがとう ございました
( 渡辺 ) どうした ? 入江
あいつ
( 渡辺 ) お守り が ドア に 挟まって る 引きちぎれ よ
( 渡辺 ) おい びくとも して ない ぞ
はぁ …
( 渡辺 ) 入江 急げ
( 直樹 ) 渡辺 お前 先 に 行け
でも お前 は ?
俺 は 早めに なんとか する から
( 発車 の ベル )
悪い 先 行く ぞ 後 で 会場 で な
( 直樹 ) おう
すいません
( ブザー 音 )
すいません エレベーター が 停止 し ました
すいません
( 渡辺 ) はぁ …
( 直樹 ) おい !
よかった 入江 随分 かかった な
( 直樹 ) 駅員 に しこたま 絞られた
何か いたずら で エレベーター 止める の が
はやって る らしく って
今 まで の も お前 が 犯人 なん じゃない か って
話 は 後 だ さっ 中 行こう
( 渡辺 ) そう いえば あの お守り は どう した んだ ?
( 直樹 ) あっ
( 渡辺 ) しぶとい なあ
それ 縁起 悪い んじゃ ない か ?
( 直樹 ) だ よ な ―
外し ちまおう
何か やたら あっさり 取れた わ
( 渡辺 ) 入江 !
( 男子 生徒 ) 階段 から 人 が 落ちた ぞ
( 男子 生徒 ) 誰 か 誰か いません か ?
( 養護 教諭 )2 人 と も 保健室 へ 運んで 今 すぐ !
( 渡辺 ) 何て 恐ろしい お守り
( 男子 生徒 ) せーの
( 養護 教諭 ) ゆっくり で いい よ
♪~
( ドア が 開く 音 )
すいません 遅く なり ました
( 試験 官 ) 階段 から 落ちた 生徒 だ ね ? さあ 急いで 残り 時間 30 分 だ
はい
あの とき だ
ありがとう
( 渡辺 ) なあ 入江 ―
聞く の も 悪い けど どう だった ?
問題 は ほとんど 見ず に 想像 で 答え を 書いた
( 渡辺 ) まあ お前 なら なんとか なって る よ
( 琴子 ) ファイト !
あの 女
( 渡辺 ) どうした ?
もし かして その お 弁当 も あの 子 が 作った と か ?
食わ ない 方 が いい 腹 でも 下したら 大変
こんなん で よかったら
ありがとう 恩 に 着る
なあ 余計 な お世話 だ けど
あの お守り も 捨てた 方 が いい ぞ
保健室 で 気付いたら なく なって た よ
それ は よかった これ で 災い も 去った な
♪~
残り 10 分 だ よ
♪~
( 渡辺 ) 大変だった なあ 入江
でも お前 は これ くらい の アクシデント が あって ―
ちょうど 普通 ぐらい の 人 だ よ
… って フォロー に なって ない か
( 養護 教諭 ) あら あなた
今日 は 大変だった わ ね
先ほど は ありがとう ございました
まあ 骨 は 折れて ない けど しばらく は 安静に ね
はい ありがとう ございます
あ … あっ そうだ
あなた のだ と は 思う んだ けど 階段 に 落ちて いた お守り
胸 の ポケット に 入れて おいた わ よ ―
手作り だった から ―
大事な もの な んじゃ ない か な と 思って
フフッ お守り の ご利益 ある と いい わ ね ―
ああ うらやましい
俺 あの 子 と お前 は 一生 一緒に いる 気 が する
やめろ
お 兄ちゃん そろそろ 帰って くる 時間 な のに 遅い わ ねえ
( ドア が 開く 音 )
( 紀子 ) あっ ウフ
( 裕樹 ) お 兄ちゃん だ
( 裕樹 ) お 兄ちゃん だ
( 紀子 ) お 兄ちゃん どうした の ? 一体 何 が あった の ?
転んだ
( 紀子 ) え えっ ? それ に した って ひどい けが
お守り 効か なかった んだ
いや ものすごーく 効いた よ
それ どういう 意味 ?
もう いい
寝る
お 兄ちゃん
( チャイム )
( 女子 生徒 ) センター 駄目だった
( 女子 生徒 ) 私 も もう 私立 に 懸ける しか ない や
入江 は 大丈夫だ よ 全国 一 の 天才 だ よ
いや 今回 ばかり は そう と も 言え ない 気 が …
( 理美 ) 琴子 ! じんこ !
聞いた ? 入江 東大 受ける って
うそ ! それ どこ で 聞いて きた の ?
今 職員室 で うわさ に なって た の
東大 受ける 生徒 の 中 でも ぶっちぎり の 成績 だって
さっすが 天才
ちょ … ちょっと 琴子 あんた 何で 泣いて る の よ ?
いや …
うれしくて
フフッ 私 入江 君 に おめでとう って 言って くる ね
フフフフッ
青春 だ ね うん うん
( 琴子 ) あんな けが して た のに ちゃんと 結果 を 出す なんて ―
私 の 好き な 人 は ほんとに かっこいい んだ ―
もしかして ―
あの お守り も ちょっと は 役 に 立った の か なあ
ヒヒヒヒッ
東大 を 受け られる の も 全て 君 の お守り の おかげ だ よ
ありがとう
( 渡辺 ) あっ 危ない !
あっ ! A 組 の 人
ちょっと ! どうした ん です か ?―
おっ ちょっ … もしかして センター 試験 の 結果 が ?
やっぱり
やっぱり 入江 センター 試験 駄目 だった の ?
何 言って る んです か ? 入江 君 は 大丈夫 です よ
東大 も 受け られる みたい です
え えっ !?―
すごい あの 状態 で ?
あの 状態 ?
そりゃあ 悲惨 の 一言 だった よ
あんな 入江 見た こと なかった
あの お守り の せい だ と して も
あの お守り ?
やばっ !
ちょっ そ … それ どういう こと です か ?
( 渡辺 ) 何でもない 何でもない から
( 琴子 ) 気 に なる んだ から 教えて ください
( 渡辺 ) やめて くれ 話す よ 話す から
( 琴子 ) わっ ―
すいません
俺 は これ から 第一 志望 の 早稲田 の 受験 を 控えて いる んだ
ほんと 君 の デス パワー って すごい ね
デス パワー ?
今 と なって は 笑い話 だ けど
あの 日 君 の お守り の パワー で 大変な こと が …
( 琴子 ) けが も 何もかも ―
お守り の せい だった なんて ―
私 …―
入江 君 に ものすごい 迷惑 かけ ちゃった
( 琴子 ) どう か 入江 君 が 東大 に 受かり ます ように ―
入江 家 の みんな の 夢 が かない ます ように ―
( 琴子 ) きっと この とおり に なる ―
ちょっと 気 が 早い かも しれ ない けど ―
試験 の 翌日 バレンタイン に これ 渡す んだ
はっ …
( 琴子 ) そして 運命 の 日 が やってきた
( 直樹 ) いってきます
… って みんな で そろって 見送る こと ない だろう
だって 心配 で
何 だったら 車 で 送って いこう か ?
大丈夫だ よ 足 の けが だって 治った んだ し
いってきます
気 を 付けて ね
( 重樹 ・ 重雄 ) いってらっしゃい
いってらっしゃい
( ドア が 閉まる 音 )
( 渡辺 ) そりゃあ 悲惨 の 一言 だった よ
あんな 入江 見た こと なかった ―
あの お守り の せい だ と して も
( 紀子 ) あっ 琴子 ちゃん ?
( 琴子 ) 私 入江 君 が 東大 の 門 くぐる まで 見送って き ます
何か あったら 心配 な ので
いってきます
( 紀子 ) いってらっしゃい
( 重樹 ・ 重雄 ) いってらっしゃい
♪~
ついてきて る の バレバレ な んです けど
ハハハ … 東大 の 前 まで お 見送り しよう か と 思って
おおっ 滑った !―
おお … お … お …
ごめんなさい 受験 生 の 前 で
何で バナナ ?
あ 痛っ
( 琴子 ) おお さすが みんな 頭 よさ そう
お前 何か 歩き 方 変 じゃない ?
そう ? 普通 だ よ
顔色 も 悪い けど
あ … ただ 緊張 して る だけ
お前 が 緊張 して どう す んだ よ ?
受験 す ん の 俺 だ ぞ
あっ …―
うん ―
うう …
( 琴子 ) どう しよう こんな お腹 の 痛み 初めて ―
でも 駄目 ―
入江 君 が 東大 の 門 を くぐる まで は ―
それ まで は ―
心配 かけ ちゃ 駄目
おい お前 本当に 大丈夫 か ?
ああ もちろん
試験 頑張って ね いってらっしゃい
あっ うっ
トイレ … トイレ …
ああ … あっ
( 女性 ) どうした ん です か ?
誰か ! 誰か いません か ?
( 女性 ) 大丈夫 です か ? どうした ん です か ?
いきなり 倒れて …
( 女性 ) 大丈夫 です か ? しっかり して ください
( 直樹 ) すいません ―
おい 大丈夫 か ?―
すいません 病院 病院 どこ です か ?
( 女性 ) あっ 確か 向こう に
( 琴子 ) 入江 君 ―
試験 に 行って ―
入江 君 遅れ ちゃう よ ―
試験 受けて ―
おじ 様 も おば 様 も ―
裕樹 君 も ―
みんな ―
応援 して る んだ から
( 紀子 ) 琴子 ちゃん ―
( 紀子 ) 琴子 ちゃん ―
( 重雄 ) 琴子 琴子
( 重雄 ) 琴子 琴子
( 重雄 ) 琴子 琴子
琴子 ちゃん
( 重雄 ) 琴子 琴子
( 重樹 ) 琴子 ちゃん
お 父さん
おば 様 ―
おじ 様 ―
私 …―
何で ここ に ?
( 紀子 ) 琴子 ちゃん 大丈夫 ?
( 重雄 ) 急性 盲腸炎 だった んだ ―
でも 薬 で 散らした から もう 大丈夫 だ ―
今日 中 に 家 に 帰れる から な
( 重樹 ) よかった な 琴子 ちゃん
( 琴子 ) 入江 君 は ?
私 たち が 来た とき に は もう い なかった わ
きっと うち に 電話 して から すぐに 東大 に 向かった の よ
今頃 は 試験 の 真っ最中 じゃない ?
よかった
私 の せい で 入江 君 が 東大 受け られ なかったら
人生 が 狂っ ちゃったら どう しよう か と …
琴子 ちゃん
自分 が こんなに 苦しい とき に
お 兄ちゃん の こと 一番 に 心配 して くれる なんて
( 直樹 ) 俺 が どうした って ?
直樹 !
お お前 受験 に 行った ん じゃない の か ?
( 直樹 ) 腹 減った から 飯 食い に 出て た
じゃあ 受験 は ?
東大 は ?
東大 ? 受けて ない けど
はあ !?
( 紀子 ) ああ …
そんな …
そんな …
( 重雄 ) イリ ちゃん 奥さん 坊っちゃん ほんとに 申し訳ない
( 重樹 ) アイ ちゃん
うち の 娘 の せい で 大事 な 息子 さん を 大変 な 目 に …
( 重樹 ) なん … 頭 上げん ね ―
受験 に 行か ん やった ん は 直樹 が 勝手に やった こと や け
( 紀子 ) そう です よ それ に いくら 東大 に 受かって も ―
あそこ で 琴子 ちゃん を 見捨てる ような 子 だったら
私 は がっかり です よ
( 重雄 ) でも …
( 重雄 ) でも …
( 重樹 ) いや そう たい そう たい ―
( 重樹 ) いや そう たい そう たい ―
こう なる 運命 やった ん や け ―
こう なる 運命 やった ん や け ―
( 重雄 ) いや もう …
( 重雄 ) いや もう …
( 重雄 ) いや もう …
ええ て ええ けえ …―
ええ て ええ けえ …―
ええ て ええ けえ …―
( 紀子 ) 頭 頭 上げて ください
( 紀子 ) 頭 頭 上げて ください
アイ ちゃん ええ って
( 琴子 ) 私 の せい で ―
入江 家 に とって 最悪 の こと が 起こって しまった
♪~
( 琴子 ) “ 入江 家 の 皆さん ”―
“ 今 まで ありがとう ございました ”
さようなら 入江 君
( 琴子 ) “ これ 以上 皆さん に 迷惑 を かける こと は でき ません ”―
“ 私 は ”―
“ 皆さん の 目 の 届か ない 所 で 生きて いき ます ”
どこ 行こう
寒い
( 直樹 ) なら 缶 コーヒー 持つ か ?
入江 君 ―
ど して ?
別に
寝れ なかった から ちょっと 散歩
( 琴子 ) あったかい
止め ないで
私 これ 以上 入江 君 に …
別に 止めて ない けど
じゃあ さよなら
俺 が 東大 行か なかった から 出て 行く の か よ ?
私 って やっぱり 入江 君 の 疫病神 だ と 思って
東大 だけ じゃない センター 試験 の こと だって
聞いた の
A 組 の 渡辺 君 に
もしかして
私 って 入江 君 に とって 何か とんでもない 人間 な の かも
そう かも な
ほんと ―
お前 と いて いい こと が あった ためし が ない もん な
俺 の ペース が いつも めちゃくちゃ に されて
学校 で は うわさ 立て られる し
勉強 教え させ られる し
しまい に は 受験 まで
私 って 最悪
でも …
結構 面白かった
あんなに ハラハラ した の 生まれて 初めて だった
試験 の 結果 が 怖かった の も 初めて
すごい 体験 だった よ
でも 東大 は ?
言っ とく けど
東大 受け なかった の は お前 の せい じゃない から
( 琴子 ) え ?
お前 を 病院 に 置いた 後 に 行った って
受験 に は 十分 間に合った んだ
じゃあ 何で ?
お前 が 大学 は 何 を する の か
決め に 行く 場所 だって 言って た だろ ?
だったら 最近 お前 と いて
ハラハラ する の も 刺激 が あって 面白い し
このまま エスカレーター で 斗南 に 残る の も 悪く ない なって
まあ 前 から 東大 行って 何 する んだ って 思って た し
私 が いる から 同じ 大学 に した って こと ?
別に そういう 意味 じゃない よ
でも
( 直樹 ) いい から もう 行け ―
元気 で な
( 琴子 ) あっ ちょ ちょっと 待って
あの 私 もう 少し 入江 家 に いて も いい ?
もう 迷惑 は かけ ない から
( 直樹 ) うそつけ
お前 が 迷惑 かけ ない わけない だろ
そう よ ね
じゃあ 刺激 の ある 生活 を お 約束 する わ
調子 の いい やつ だ な お前 は
ああ
おっ !
ねえ 今日 って もう バレンタイン だ よ ね ?
だから 何 な んだ よ ?
チョコ でも くれ ん の ?
ごめん もしかして 期待 して た ?
別に
♪~
ある じゃん
まずっ
( 琴子 ) ホワイト バレンタイン ―
今年 は 私 の 思い は 空回り して しまった けれど ―
いつか きっと ―
私 の 思い が ―
伝わり ます ように
♪~
ファースト キッス ?
( 理美 ) 卒業 式 の 日 に キス した カップル は 永遠 に 結ばれる って いう
( じんこ ・ 琴子 ・ 理美 ) おーっ
( じんこ ) 最高 の 卒業 式 と 謝恩会 に しよう ね
( 金之助 ) 琴子 俺 や あかん か !
( 琴子 ) 私 金 ちゃん の こと 嫌い って いう わけじゃ
( 金之助 ) 俺 は な 今夜 琴子 と キス す ん の や
( 直樹 ) 夢 なら 寝て みれば ?
琴子 は 俺 の こと 好き に なって くれる ん か ?
( 金之助 ) 誰 が 一番 自分 を 大事 に して くれる かって こと に ―
気付いた ん やろ
この 冷血 男 !