65. チユーリツプ - 新美 南 吉
|にいみ|みなみ|きち
departure|||
65. thyuritsup - NANKICHI NIIMI
65. tyulitsp - Nankichi Niimi
65. tyulitsp - Nankichi Niimi
65. tyulitsp - Nankichi Niimi
チユーリツプ - 新美 南 吉
|にいみ|みなみ|きち
學 校 の 歸 り に 君子 さん は お 友達 の ノリ子 さん に うち の チユーリツプ の 自慢 を しました 。
まなぶ|こう||き|||くんし||||ともだち||のりこ|||||||じまん||
|||return|||||||||Noriko|||||curriculum||||
.
「 うち で 咲いた チユーリツプ は 、 お 花屋 さん が 賣 り に 來 る の より 五 倍 も 綺麗な の よ 。」
||さいた||||はなや|||ばい|||らい||||いつ|ばい||きれいな||
|||||||||selling||||||||||||
.
「 あら 、 い ゝ わ ね 。」
と お 友達 の ノリ子 さん は 羨 し さ う に きいて 首 を かしげました 。
||ともだち||のりこ|||うらや||||||くび||
|||||||||||||||tilted
My friend Noriko was envious and tilted her head.
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「 クレイヨン の 赤 とど つち が 赤い か くらべて 見た の よ 。
||あか||||あかい|||みた||
crayon|||||||||||
そし たら クレイヨン の 赤 の 方 が づつ と うすく つて 汚い の 。」
||||あか||かた||||||きたない|
||||||||||lightly|||
Then the red crayon would smudge and become dirty.
.
「 あらそ を を 。」
argument||
. Oh, no, no, no.
.
「 うち の 母さん が いつ て たわ 、 この 花 から 口紅 が とれ や し ないだら う かつて 。」
||かあさん||||||か||くちべに|||||||
My mother used to say, "I wonder if I can ever get lipstick off these flowers. My mother used to say that you could never get lipstick off this flower.
.
「 そ を を 。」
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--.
「 ノリ子 ちや ん が あの 花 寫生 な さつ たら 最 優等 よ 、 きつ と 。」
のりこ|||||か|しゃせい||||さい|ゆうとう|||
||||||sketching||||||||
.
「 あら 、 そんな こと ありません わ 。」
.
「 昨日 球根 を 埋めた んだ けど 、 まだ 二 つ か 三 つ 殘 つて たから 、 母さん に きいて ノリ子 ちや んに あげて も い ゝ わ 。」
きのう|きゅうこん||うずめた||||ふた|||みっ||ざん|||かあさん|||のりこ|||||||
|bulbs|||||||||||left|||||||||||||
.
「 頂いて も よく つて 。」
いただいて|||
.
「 きつ と 母 さんい ゝ つ てい ふわ よ 。」
||はは||||||
.
ちや うど その 時 ノリ子 さん の お家 の 前 に 來ました 。
|||じ|のりこ|||おいえ||ぜん||らいました
|||||||||||came
.
「 それ ぢや 明日 の 朝 持つ て 來 て あげる わ ね 」 とい つて 君子 さん は ノリ子 さん と 別れました 。
||あした||あさ|もつ||らい|||||||くんし|||のりこ|||わかれました
家 に 歸 つて お母さん に きく と 、 あげ なさい 、 と 仰 言いました 。
いえ||き||お かあさん|||||||あお|いいました
そこ で 次の 朝 ノリ子 さん を 誘 ひに いく 時 二 つ の 球根 を 乾 葡萄 の 空 箱 に 入れて 持つ ていきました 。
||つぎの|あさ|のりこ|||さそ|||じ|ふた|||きゅうこん||いぬい|ぶどう||から|はこ||いれて|もつ|
||||||||||||||||||||||||went
.
「 ノーリ 子 ちや ん 。」
|こ||
と 君子 さん は 垣根 越し に 呼びました 。
|くんし|||かきね|こし||よびました
||||fence|||
すると ノリ子 さん の 代り に 、 ノリ子 さん の お 姉さん が 、.
|のりこ|||かわり||のりこ||||ねえさん|
「 は ー い 」 と 返事 なさいました 。
|-|||へんじ|なさ いました
|||||replied
あら 、 と 思 つて ゐる と お 姉さん が 玄 關 から 出てい ら して 、.
||おも|||||ねえさん||げん|かん||しゅってい||
||||||||||entrance||||
「 ノリ ちや ん は お 熱 が ある ので 學 校 へ いけません の よ 。」
のり|||||ねつ||||まなぶ|こう||||
と 仰 言いました 。
|あお|いいました
あまり 驚いた ので 君子 さん は チユーリツプ の 球根 の こと も 忘れて しま つて 「 そ を を 」 と いつ たき り 、 何も い は ない で 學 校 へ 來 て しま ひました 。
|おどろいた||くんし|||||きゅうこん||||わすれて||||||||||なにも|||||まなぶ|こう||らい|||
.
お家 に 歸 つて から 君子 さん は チユーリツプ の 球根 を 庭 の ゆ すら 梅 の かげ に 埋めました 。
おいえ||き|||くんし|||||きゅうこん||にわ||||うめ||||うずめました
そして 春 に な つて 花 が 咲いたら ノリ子 さん に あげよう と きめました 。
|はる||||か||さいたら|のりこ|||||
|||||||||||||decided
.
ノリ子 さん は ご 病 氣 が 癒 ら ない らしく 、 一 週間 たつ て も 二 週間 たつ て も 學 校 へ 來ません でした 。
のりこ||||びょう|き||いや||||ひと|しゅうかん||||ふた|しゅうかん||||まなぶ|こう||らいません|
||||||||||||||||||||||||did not come|
その うち に 寒い 冬 が 來 て 、 クリスマス が 來 て お 正月 が 來 て 、 それ から たう とう 春 が や つて 來ました 。
|||さむい|ふゆ||らい||くりすます||らい|||しょうがつ||らい||||||はる||||らいました
梢 が 見え ない ほど 高い 欅 に 、 細い 芽 が ちよ くち よく 顏 を 出して 來ました 。
こずえ||みえ|||たかい|けやき||ほそい|め|||||かお||だして|らいました
top||||||zelkova|||||||||||
.
或日 學 校 の 歸 り に 君子 さん が ノリ子 さん の お家 の 前 を 通り か ゝ る と 、 生垣 の 中 で 聲 が して ゐま した ので 、 隙間 から 覗いて 見ました 。
あるにち|まなぶ|こう||き|||くんし|||のりこ|||おいえ||ぜん||とおり|||||いけがき||なか||こえ||||||すきま||のぞいて|みました
||||||||||||||||||||||hedge|||||||||||||
.
庭 に は ピジヤマ を 着た ノリ子 さん が お 姉さん に 手 を ひかれて 、 そろりそろり 歩いて ゐま した 。
にわ|||||きた|のりこ||||ねえさん||て||||あるいて||
|||pajamas||||||||||||slowly|||
縁側 に は お母さん が 立つ て 見て ゐら つ しや いました 。
えんがわ|||お かあさん||たつ||みて||||
.
「 姉さん 、 もう 一ぺん 垣根 の とこ まで いきま しよう 。」
ねえさん||いっぺん|かきね|||||
と ノリ子 さん がい ひました 。
|のりこ|||
.
「 そんなに 歩いて も い ゝ の ?
|あるいて||||
」 と 姉さん は あやぶま れました 。
|ねえさん|||
|||startled|
でも 、 ノリ子 さん が こんなに 歩か れる や うに な つた こと が うれしくて たまらない らしく 、 赤ん坊 みたいに 兩手 を と つて ノリ子 さん を 垣根 の 方 へ 歩ま せて 來られました 。
|のりこ||||あるか|||||||||||あかんぼう||りょうて||||のりこ|||かきね||かた||あゆま||らいられました
||||||||||||||||||both hands|||||||||||||was brought
.
「 あら 、 姉さん 、 と つて も きれいな 夕 燒 ね 。」
|ねえさん|||||ゆう|やき|
|||||||sunset|
と ノリ子 さん が 立ち止りました 。
|のりこ|||たちどまりました
||||stopped
姉さん も 空 を 仰いで 、.
ねえさん||から||あおいで
「 本 當 。」
ほん|とう
とお つ しや いました 。
姉さん の 美しい 眼 が 涙 で 光 つて ゐる こと が 垣根 の 蔭 で 覗いて る 君子 さん に すぐ 解りました 。
ねえさん||うつくしい|がん||なみだ||ひかり|||||かきね||おん||のぞいて||くんし||||わかりました
||||||||||||||||||||||understood
君子 さん も 何だか 泣きたい や う な 氣持 に なりました 。
くんし|||なんだか|なきたい||||きもち||
||||||||feeling||
.
もう 十 日 も たつ たら ノリ さん 、 學 校 へ いか れる かも 知れ ない ―― と 思 ひ ながら 家 へ 歸 つて 見る と 、 ノリ子 さん に あげる 筈 の チユーリツプ の 蕾 が ゆ すら うめ の かげ で 綻び かけて ゐま した 。 .
|じゅう|ひ||||のり||まなぶ|こう|||||しれ|||おも|||いえ||き||みる||のりこ||||はず||||つぼみ||||||||ほころび|||
||||||||school||||||||||||||returned||||||||||||bud||||||||opening|||