ご ん 狐 (Full , 2nd reading)
||きつね|full||
honored||||fox|gon
Gon fox (Vollständige , 2. Lesung)
Gon Kitsune (Full , 2nd reading)
Gon fox (intégrale, 2ème lecture)
곤 狐 (Full , 2nd reading)
Gon vos (Volledige , 2e lezing)
Gon fox (Integral, 2ª leitura)
Gon fox (Tam, 2. okuma)
贡狐(全文二读)
ご ん 狐 - 新美 南 吉
||きつね|にいみ|みなみ|きち
||fox|Shinbi||good
Gon, the Little Fox-Nankichi Niimi
一 .
ひと
One.
これ は 、 私 が 小さい とき に 、 村 の 茂平 と いう お じいさん から きいた お 話 です 。
||わたくし||ちいさい|||むら||もへい||||||||はなし|
|||||||village||Shigehira|||||||||
This is a story I heard from an old man named Shigehira in the village when I was little.
むかし は 、 私 たち の 村 の ちかく の 、 中山 と いう ところ に 小さな お 城 が あって 、 中山 さま と いう お とのさま が 、 おら れた そうです 。
||わたくし|||むら||||なかやま|||||ちいさな||しろ|||なかやま|||||||||そう です
|||||||near||Nakayama|||||||||||||||lord||||
Once upon a time, there was a small castle near Nakayama in our village, and there was an adult named Nakayama.
その 中山 から 、 少し は なれた 山 の 中 に 、「 ご ん 狐 」 と いう 狐 が いました 。
|なかやま||すこし|||やま||なか||||きつね|||きつね||い ました
|||||||||||||||fox||
There was a fox called "Gon fox" in the mountain a little away from that Nakayama.
ご ん は 、 一 人 ぼっち の 小 狐 で 、 しだ の 一 ぱい しげった 森 の 中 に 穴 を ほって 住んで いました 。
|||ひと|じん|ぼ っち||しょう|きつね||||ひと|||しげる||なか||あな|||すんで|い ました
|||||all alone||||||||a lot|lush|||||||||
He was a lone little fox, and lived in a small forest with a hole in it.
そして 、 夜 でも 昼 でも 、 あたり の 村 へ 出て きて 、 いたずら ばかり しました 。
|よ||ひる||||むら||でて||||し ました
Then, night or day, he would come out to the nearby villages and play mischief.
はたけ へ 入って 芋 を ほり ちらしたり 、 菜種 がら の 、 ほして ある の へ 火 を つけたり 、 百姓 家 の 裏手 に つるして ある とんがら し を むしり とって 、 いったり 、 いろんな こと を しました 。
||はいって|いも||||なたね|||||||ひ|||ひゃくしょう|いえ||うらて|||||||||||||し ました
farm|||||dug up|scattered|rapeseed|husks||harvested|||||||farmer|||back||hung||corn|||pulled|pulled|||||
I went into the hatake and smashed the potatoes, lit the rapeseed and the rapeseed, and plucked the tongue that was hung on the back of the peasant family.
或秋 の こと でした 。
あるあき|||
or autumn|||
It was an autumn.
二 、 三 日 雨 が ふりつづいた その 間 、 ご ん は 、 外 へ も 出られ なくて 穴 の 中 に しゃがんで いました 。
ふた|みっ|ひ|あめ||||あいだ||||がい|||で られ||あな||なか|||い ました
|||||continued to fall||during|||||||||||||squatting|
During the rain for a few days, I was crouching in the hole without being able to go outside.
雨 が あがる と 、 ご ん は 、 ほっと して 穴 から はい出ました 。
あめ|||||||||あな||はい で ました
|||||||||||popped out
When the rain moved out, the goons emerged from their holes, relieved.
空 は からっと 晴れて いて 、 百舌 鳥 の 声 が き ん きん 、 ひびいて いました 。
から||から っと|はれて||もず|ちょう||こえ||||||い ました
||crisply|||shrike|||||||loudly|echoing|
The sky was clear and clear, and the voice of the shrike was audible.
ご ん は 、 村 の 小川 の 堤 まで 出て 来ました 。
|||むら||おがわ||つつみ||でて|き ました
|||||small river||embankment|||
He came out to the bank of a stream in the village.
あたり の 、 すすきの 穂 に は 、 まだ 雨 の しずく が 光って いました 。
|||ほ||||あめ||||ひかって|い ました
||芒草的穗|||||||雨滴|||
||Susukino|ear||||||drop|||
川 は 、 いつも は 水 が 少い のです が 、 三 日 も の 雨 で 、 水 が 、 どっと まして いました 。
かわ||||すい||すくない|||みっ|ひ|||あめ||すい||||い ました
||||||少ない|||||||||||suddenly||
The river was usually low in water, but it had been raining for three days, and the water was rushing.
ただ の とき は 水 に つかる こと の ない 、 川べり の すすき や 、 萩 の 株 が 、 黄いろく にごった 水 に 横だおし に なって 、 もまれて います 。
||||すい||||||かわべり||||はぎ||かぶ||きいろく||すい||よこだおし|||もま れて|い ます
||||||浸泡||||||||||||||||||||
||||||||||riverbank||sedge||bush clover||stump||yellow|cloudy|||lying sideways|||buffeted|
At that time, they are not submerged in water, and the sukiyaki of the river and the stock of Hagi are laid down in the yellow and muddy water.
ご ん は 川下 の 方 へ と 、 ぬかるみ みち を 歩いて いきました 。
|||かわしも||かた||||||あるいて|いき ました
|||downstream|||||muddy ground|muddy road|||
They walked downstream along the muddy road.
ふと 見る と 、 川 の 中 に 人 が いて 、 何 か やって います 。
|みる||かわ||なか||じん|||なん|||い ます
ご ん は 、 見つから ない ように 、 そうっと 草 の 深い ところ へ 歩き よって 、 そこ から じっと のぞいて みました 。
|||みつから|||そう っと|くさ||ふかい|||あるき||||||み ました
「 兵 十 だ な 」 と 、 ご ん は 思いました 。
つわもの|じゅう|||||||おもい ました
It's Hyouju," Gon thought to himself.
兵 十 は ぼろぼろ の 黒い きもの を まく し 上げて 、 腰 の ところ まで 水 に ひたり ながら 、 魚 を とる 、 はりきり と いう 、 網 を ゆすぶって いました 。
つわもの|じゅう||||くろい|||||あげて|こし||||すい||||ぎょ||||||あみ|||い ました
|||tattered|||kimono||roll up|||||||||soaking|||||with enthusiasm|||||shaking|
He titled his tattered black kimono and dipped his head into the water up to his waist, while he was taking in fish and shaking his net, called a fish hook.
はちまき を した 顔 の 横っちょう に 、 まるい 萩 の 葉 が 一 まい 、 大きな 黒 子 みたいに へばりついて いました 。
|||かお||よこ っ ちょう|||はぎ||は||ひと||おおきな|くろ|こ|||い ました
headband|||||side||round||||||||||||
A small patch of round bush clinging to the side of his beaked face looked like a large black child.
しばらく する と 、 兵 十 は 、 はりきり 網 の 一ばん うしろ の 、 袋 の ように なった ところ を 、 水 の 中 から もちあげました 。
|||つわもの|じゅう|||あみ||ひとばん|||ふくろ||||||すい||なか||もちあげ ました
|||||||||best|||||||||||||lifted up
After a while, Hyouju lifted a bag-like piece of netting behind him out of the water.
その 中 に は 、 芝 の 根 や 、 草 の 葉 や 、 くさった 木ぎれ など が 、 ご ちゃ ご ちゃ は いって いました が 、 でも ところどころ 、 白い もの が きらきら 光って います 。
|なか|||しば||ね||くさ||は|||きぎれ|||||||||い ました||||しろい||||ひかって|い ます
||||||||||||rotted|wooden piece||||||||||||||||sparkling||
それ は 、 ふとい うなぎ の 腹 や 、 大きな きす の 腹 でした 。
|||||はら||おおきな|||はら|
||||||||大鳞鲻鱼|||
||fat|||||||||
兵 十 は 、 び く の 中 へ 、 その うなぎ や きす を 、 ごみ と 一しょに ぶち こみました 。
つわもの|じゅう|||||なか|||||||||いっしょに||こみ ました
|||||||||||||||together with||stuffed
そして 、 また 、 袋 の 口 を しばって 、 水 の 中 へ 入れました 。
||ふくろ||くち|||すい||なか||いれ ました
||||||tied|||||
兵 十 は それ から 、 び く を もって 川 から 上り び く を 土手 に おい といて 、 何 を さがし に か 、 川上 の 方 へ かけて いきました 。
つわもの|じゅう||||||||かわ||のぼり||||どて||||なん|||||かわかみ||かた|||いき ました
|||||||||||||||embankment||||||looking for|||upstream|||||
兵 十 が い なく なる と 、 ご ん は 、 ぴょ いと 草 の 中 から とび出して 、 び く の そば へ かけつけました 。
つわもの|じゅう|||||||||||くさ||なか||とびだして||||||かけつけ ました
||||||||||跳出||||||||||||
||||||||||||||||jumped out||||||rushed over
ちょいと 、 いたずら が し たく なった のです 。
ご ん は び く の 中 の 魚 を つかみ 出して は 、 はりきり 網 の かかって いる ところ より 下手 の 川 の 中 を 目がけて 、 ぽんぽん なげこみました 。
||||||なか||ぎょ|||だして|||あみ||||||へた||かわ||なか||めがけて||なげこみ ました
||||||||||||||||||||||||||aiming at||threw in
どの 魚 も 、「 と ぼん 」 と 音 を 立て ながら 、 にごった 水 の 中 へ もぐりこみました 。
|ぎょ|||||おと||たて|||すい||なか||もぐりこみ ました
||||with a splash|||||||||||sank down
一ばん しまい に 、 太い うなぎ を つかみ に かかりました が 、 何しろ ぬるぬる と すべり ぬける ので 、 手 で は つかめません 。
ひとばん|||ふとい|||||かかり ました||なにしろ||||||て|||つかめ ませ ん
|||||||||||||slipped|slips away||hand|||cannot be caught
ご ん は じれったく なって 、 頭 を び く の 中 に つ ッ こんで 、 うなぎ の 頭 を 口 に くわえました 。
|||||あたま|||||なか|||||||あたま||くち||くわえ ました
|||frustratingly||||||||||suddenly||||||||bitten by
うなぎ は 、 キュッ と 言って ご ん の 首 へ まきつきました 。
||||いって||||くび||まきつき ました
||sizzle||||||||wrapped around
その とたん に 兵 十 が 、 向 う から 、
|||つわもの|じゅう||むかい||
「 うわ ア ぬす と 狐 め 」 と 、 どなりたてました 。
||||きつね|||どなりたて ました
||thief||fox|||shouted loudly
ご ん は 、 びっくり して とびあがりました 。
|||||とびあがり ました
|||||jumped up
I tried to sprinkle the eel and try to get rid of it, but the eel cannot stay around the neck of the eel.
うなぎ を ふりすてて にげよう と しました が 、 うなぎ は 、 ご ん の 首 に まきついた まま は なれません 。
|||||し ました|||||||くび|||||なれ ませ ん
||shaking off|let's escape|||||||||||wrapped around|||will not detach
ご ん は そのまま 横っと び に とび出して 一しょう けんめい に 、 にげて いきました 。
||||よこ っと|||とびだして|いっしょう||||いき ました
||||sideways||||with all one's might|with all one's might||ran away|
The dog then emerged from the water and ran away.
ほら 穴 の 近く の 、 はん の 木 の 下 で ふりかえって 見ました が 、 兵 十 は 追っかけて は 来ません でした 。
|あな||ちかく||||き||した|||み ました||つわもの|じゅう||おっかけて||き ませ ん|
look|hole||||half||||||looked back||||||chased after|||
I looked back under the Han tree near the pit, but Hyouju was not chasing me.
ご ん は 、 ほっと して 、 うなぎ の 頭 を かみくだき 、 やっと はずして 穴 の そと の 、 草 の 葉 の 上 に のせて おきました 。
|||||||あたま|||||あな||||くさ||は||うえ|||おき ました
|||||||||biting off||removed|hole|||||||||||
--
二 .
ふた
十 日 ほど たって 、 ご ん が 、 弥 助 と いう お 百姓 の 家 の 裏 を 通りかかります と 、 そこ の 、 いちじく の 木 の かげ で 、 弥 助 の 家内 が 、 お はぐ ろ を つけて いました 。
じゅう|ひ||||||わたる|じょ||||ひゃくしょう||いえ||うら||とおりかかり ます||||||き||||わたる|じょ||かない|||||||い ました
||||||||helper||||||||||passed by||||fig||||shade|||||wife|||sandal||||
鍛冶屋 の 新 兵衛 の 家 の うら を 通る と 、 新 兵衛 の 家内 が 髪 を すいて いました 。
かじや||しん|ひょうえ||いえ||||とおる||しん|ひょうえ||かない||かみ|||い ました
blacksmith|||new soldier||||back||||||||||||
ご ん は 、
「 ふ ふん 、 村 に 何 か ある んだ な 」 と 、 思いました 。
||むら||なん||||||おもい ました
|hmm||||||there is|||
I thought, "Hmmm, there must be something in the village.
「 何 だろう 、 秋 祭 か な 。
なん||あき|さい||
祭 なら 、 太鼓 や 笛 の 音 が し そうな もの だ 。
さい||たいこ||ふえ||おと|||そう な||
それ に 第 一 、 お 宮 に のぼり が 立つ はずだ が 」
||だい|ひと||みや||||たつ||
|||||||will rise||||
Besides, there should be a rise in the palace.
こんな こと を 考え ながら やって 来ます と 、 いつの間にか 、 表 に 赤い 井戸 の ある 、 兵 十 の 家 の 前 へ 来ました 。
|||かんがえ|||き ます||いつのまにか|ひょう||あかい|いど|||つわもの|じゅう||いえ||ぜん||き ました
その 小さ な 、 こわれ かけた 家 の 中 に は 、 大勢 の 人 が あつまって いました 。
|ちいさ||||いえ||なか|||おおぜい||じん|||い ました
|||broken|||||||||||gathered together|
よそいき の 着物 を 着て 、 腰 に 手拭 を さげたり した 女 たち が 、 表 の かまど で 火 をたいて います 。
||きもの||きて|こし||てぬぐい||||おんな|||ひょう||||ひ|を たいて|い ます
best clothes|||||||hand towel||hanging down||||||||||making a fire|
大きな 鍋 の 中 で は 、 何 か ぐずぐず 煮えて いました 。
おおきな|なべ||なか|||なん|||にえて|い ました
|||||||||simmering|
「 ああ 、 葬式 だ 」 と 、 ご ん は 思いました 。
|そうしき||||||おもい ました
「 兵 十 の 家 の だれ が 死んだ んだろう 」
つわもの|じゅう||いえ||||しんだ|
"I wonder who in Hyouju's family is dead."
お 午 が すぎる と 、 ご ん は 、 村 の 墓地 へ 行って 、 六 地蔵 さん の かげ に かくれて いました 。
|うま|||||||むら||ぼち||おこなって|むっ|じぞう||||||い ました
|noon|||||||||graveyard||||Jizo|||||hidden|
いい お 天気 で 、 遠く 向 うに は 、 お 城 の 屋根 瓦 が 光って います 。
||てんき||とおく|むかい||||しろ||やね|かわら||ひかって|い ます
||||far||over there|||||roof|roof tiles|||
It was a beautiful day, and the roof tiles of the castle shone in the distance.
墓地 に は 、 ひがん 花 が 、 赤い 布 の ように さき つづいて いました 。
ぼち||||か||あかい|ぬの|||||い ました
|||higan flower|||||||blooming|continuously bloomed|
と 、 村 の 方 から 、 カーン 、 カーン 、 と 、 鐘 が 鳴って 来ました 。
|むら||かた|||||かね||なって|き ました
|village||||sound of a bell|||bell|||
葬式 の 出る 合図 です 。
そうしき||でる|あいず|
やがて 、 白い 着物 を 着た 葬 列 の もの たち が やって 来る の が ちらちら 見え はじめました 。
|しろい|きもの||きた|ほうむ|れつ||||||くる||||みえ|はじめ ました
|||||funeral||||||||||||
話 声 も 近く なりました 。
はなし|こえ||ちかく|なり ました
We are now closer to each other.
葬 列 は 墓地 へ は いって 来ました 。
ほうむ|れつ||ぼち||||き ました
人々 が 通った あと に は 、 ひがん 花 が 、 ふみ おられて いました 。
ひとびと||かよった|||||か|||おら れて|い ました
|||||||||stepped on|stepped on|
ご ん は のびあがって 見ました 。
||||み ました
||topic marker|stretched up|
兵 十 が 、 白い かみしも を つけて 、 位牌 を ささげて います 。
つわもの|じゅう||しろい||||いはい|||い ます
||||white clothing|||memorial tablet||offering|
いつも は 、 赤い さつま芋 みたいな 元気 の いい 顔 が 、 きょう は 何だか しおれて いました 。
||あかい|さつまいも||げんき|||かお||||なんだか||い ました
|||sweet potato||||||||||wilted|
「 は はん 、 死んだ の は 兵 十 の おっ母 だ 」 ご ん は そう 思い ながら 、 頭 を ひっこめました 。
||しんだ|||つわもの|じゅう||お っ はは||||||おもい||あたま||ひっこめ ました
||||||||mother||||||||||pulled back
Gon thought to himself, "Haha, it was Hyouju's mother who died.
その 晩 、 ご ん は 、 穴 の 中 で 考えました 。
|ばん||||あな||なか||かんがえ ました
「 兵 十 の おっ母 は 、 床 に ついて いて 、 うなぎ が 食べたい と 言った に ちがいない 。
つわもの|じゅう||お っ はは||とこ||||||たべ たい||いった||
それ で 兵 十 が はりきり 網 を もち出した んだ 。
||つわもの|じゅう|||あみ||もちだした|
||||||||brought out|
ところが 、 わし が いたずら を して 、 うなぎ を とって 来て しまった 。
|||||||||きて|
だ から 兵 十 は 、 おっ母 に うなぎ を 食べ させる こと が でき なかった 。
||つわもの|じゅう||お っ はは||||たべ|さ せる||||
そのまま おっ母 は 、 死んじゃった に ちがいない 。
|お っ はは||しんじゃ った||
|||must have died||
ああ 、 うなぎ が 食べたい 、 うなぎ が 食べたい と おもい ながら 、 死んだ んだろう 。
|||たべ たい|||たべ たい||||しんだ|
ちょ ッ 、 あんな いたずら を し なけりゃ よかった 。」
--
三 .
みっ
兵 十 が 、 赤い 井戸 の ところ で 、 麦 を といで いました 。
つわもの|じゅう||あかい|いど||||むぎ|||い ました
||||||||wheat|object marker|winnowing|
兵 十 は 今 まで 、 おっ母 と 二 人きり で 、 貧しい くらし を して いた もの で 、 おっ母 が 死んで しまって は 、 もう 一 人 ぼっち でした 。
つわもの|じゅう||いま||お っ はは||ふた|ひときり||まずしい|||||||お っ はは||しんで||||ひと|じん|ぼ っち|
|||||||||||life|||||||||||||||
「 おれ と 同じ 一 人 ぼっち の 兵 十 か 」 こちら の 物置 の 後 から 見て い たごん は 、 そう 思いました 。
||おなじ|ひと|じん|ぼ っち||つわもの|じゅう||||ものおき||あと||みて|||||おもい ました
||||||||||||||||||probably|||
ご ん は 物置 の そば を はなれて 、 向 う へ いき かけます と 、 どこ か で 、 いわし を 売る 声 が します 。
|||ものおき|||||むかい||||かけ ます|||||||うる|こえ||し ます
|||||||離れて|||||||||||||||
「 いわし の やすうり だ ア い 。
||discounted price|||
いき の いい いわし だ ア い 」
ご ん は 、 その 、 いせい の いい 声 の する 方 へ 走って いきました 。
|||||||こえ|||かた||はしって|いき ました
||||strange behavior|||||||||
と 、 弥 助 の おかみ さん が 、 裏 戸口 から 、
|わたる|じょ|||||うら|とぐち|
||||landlady|||||
「 いわし を おくれ 。」
と 言いました 。
|いい ました
いわし 売 は 、 いわし の かご を つんだ 車 を 、 道ばた に おいて 、 ぴかぴか 光る いわし を 両手 で つかんで 、 弥 助 の 家 の 中 へ もって はいりました 。
|う|||||||くるま||みちばた||||ひかる|||りょうて|||わたる|じょ||いえ||なか|||はいり ました
|sold||||||stacked|||roadside|||sparkling|||||||||||||||entered
ご ん は その すきま に 、 かご の 中 から 、 五 、 六 ぴき の いわし を つかみ 出して 、 もと 来 た方 へ かけだしました 。
||||||||なか||いつ|むっ||||||だして||らい|たほう||かけだし ました
||||||||||||||||||||||started running
そして 、 兵 十 の 家 の 裏口 から 、 家 の 中 へ いわし を 投げこんで 、 穴 へ 向って かけ もどりました 。
|つわもの|じゅう||いえ||うらぐち||いえ||なか||||なげこんで|あな||むかい って||もどり ました
|||||possessive particle|||||||||threw in|||toward||returned
途中 の 坂 の 上 で ふりかえって 見ます と 、 兵 十 が まだ 、 井戸 の ところ で 麦 を といで いる の が 小さく 見えました 。
とちゅう||さか||うえ|||み ます||つわもの|じゅう|||いど||||むぎ||||||ちいさく|みえ ました
ご ん は 、 うなぎ の つぐない に 、 まず 一 つ 、 いい こと を した と 思いました 。
||||||||ひと|||||||おもい ました
|||||atonement||||||||||
つぎの 日 に は 、 ご ん は 山 で 栗 を どっさり ひろって 、 それ を かかえて 、 兵 十 の 家 へ いきました 。
|ひ||||||やま||くり|||||||つわもの|じゅう||いえ||いき ました
next|||||||||||a lot|picked up|||||||||
裏口 から のぞいて 見ます と 、 兵 十 は 、 午 飯 を たべ かけて 、 茶椀 を もった まま 、 ぼんやり と 考えこんで いました 。
うらぐち|||み ます||つわもの|じゅう||うま|めし||||ちゃわん||||||かんがえこんで|い ました
|||||||||||eating||tea bowl||||||deep in thought|
へんな こと に は 兵 十 の 頬 ぺた に 、 かすり傷 が ついて います 。
||||つわもの|じゅう||ほお|||かすりきず|||い ます
||||||||slightly|||||
どうした ん だろう と 、 ご ん が 思って います と 、 兵 十 が ひとりごと を いいました 。
|||||||おもって|い ます||つわもの|じゅう||||いい ました
「 一たい だれ が 、 いわし なんか を おれ の 家 へ ほうりこんで いった んだろう 。
いったい||||||||いえ||||
one||||||||||threw in||
おかげ で おれ は 、 盗人 と 思われて 、 いわし 屋 の やつ に 、 ひどい 目 に あわさ れた 」 と 、 ぶつぶつ 言って います 。
||||ぬすびと||おもわ れて||や|||||め||あわ さ||||いって|い ます
|||||||||||||||was made|||||
ご ん は 、 これ は しまった と 思いました 。
|||||||おもい ました
かわいそうに 兵 十 は 、 いわし 屋 に ぶん なぐられて 、 あんな 傷 まで つけられた の か 。
|つわもの|じゅう|||や|||なぐら れて||きず||つけ られた||
poor thing||||||||hit by||||was given||
ご ん は こう おもい ながら 、 そっと 物置 の 方 へ まわって その 入口 に 、 栗 を おいて かえりました 。
|||||||ものおき||かた||||いりぐち||くり|||かえり ました
||||||||||||||||||returned
つぎの 日 も 、 その つぎ の 日 も ご ん は 、 栗 を ひろって は 、 兵 十 の 家 へ もって 来て やりました 。
|ひ|||||ひ|||||くり||||つわもの|じゅう||いえ|||きて|やり ました
その つぎ の 日 に は 、 栗 ばかり で なく 、 まつたけ も 二 、 三 ぼん もっていきました 。
|||ひ|||くり||||||ふた|みっ||もっていき ました
|||||||||||||||brought
--
四 .
よっ
月 の いい 晩 でした 。
つき|||ばん|
|||evening|
ご ん は 、 ぶらぶら あそび に 出かけました 。
||||||でかけ ました
||||playing||
中山 さま の お 城 の 下 を 通って すこし いく と 、 細い 道 の 向 う から 、 だれ か 来る ようです 。
なかやま||||しろ||した||かよって||||ほそい|どう||むかい|||||くる|
話 声 が 聞えます 。
はなし|こえ||きこえ ます
|||can be heard
チンチロリン 、 チンチロリン と 松虫 が 鳴いて います 。
|||まつむし||ないて|い ます
chirping|||grasshopper|||
ご ん は 、 道 の 片がわ に かくれて 、 じっと して いました 。
|||どう||かたがわ|||||い ました
|||||one side|||||
話 声 は だんだん 近く なりました 。
はなし|こえ|||ちかく|なり ました
それ は 、 兵 十 と 加助 と いう お 百姓 でした 。
||つわもの|じゅう||かじょ||||ひゃくしょう|
|||||Kasukawa|||||
「 そうそう 、 なあ 加助 」 と 、 兵 十 が いいました 。
そう そう||かじょ||つわもの|じゅう||いい ました
「 ああ ん ?
」
「 おれ あ 、 このごろ 、 とても ふしぎな こと が ある んだ 」
||||mysterious||||
「 何 が ?
なん|
」
「 おっ母 が 死んで から は 、 だれ だ か 知ら ん が 、 おれ に 栗 や まつたけ なんか を 、 まいにち まいにち くれる んだ よ 」 「 ふうん 、 だれ が ?
お っ はは||しんで||||||しら|||||くり||||||||||||
|||||||||||||||||||every day||||hmm||
」
「 それ が わから ん のだ よ 。
おれ の 知ら ん うち に 、 おいて いく んだ 」
||しら||||||
ご ん は 、 ふた り の あと を つけて いきました 。
|||||||||いき ました
「 ほんと かい ?
」
「 ほんとだ と も 。
うそ と 思う なら 、 あした 見 に 来い よ 。
||おもう|||み||こい|
その 栗 を 見せて やる よ 」
|くり||みせて||
「 へえ 、 へんな こと も ある もん だ な ア 」
それなり 、 二 人 は だまって 歩いて いきました 。
|ふた|じん|||あるいて|いき ました
||||silently||
加助 が ひょいと 、 後 を 見ました 。
かじょ|||あと||み ました
ご ん は び くっと して 、 小さく なって たちどまりました 。
||||く っと||ちいさく||たちどまり ました
||||||||stopped moving
加助 は 、 ご ん に は 気 が つか ないで 、 そのまま さっさと あるきました 。
かじょ||||||き||||||あるき ました
||||||||||||walked
吉兵衛 と いう お 百姓 の 家 まで 来る と 、 二 人 は そこ へ は いって いきました 。
きちべえ||||ひゃくしょう||いえ||くる||ふた|じん||||||いき ました
Yoshibei|||||||||||||||||
ポンポン ポンポン と 木魚 の 音 が して います 。
ぽんぽん|ぽんぽん||もくぎょ||おと|||い ます
|||wooden fish|||||
窓 の 障子 に あかり が さして いて 、 大きな 坊主 頭 が うつって 動いて いました 。
まど||しょうじ||||||おおきな|ぼうず|あたま|||うごいて|い ました
||||light||||||||reflected||
ご ん は 、
「 お ねんぶつ が ある んだ な 」 と 思い ながら 井戸 の そば に しゃがんで いました 。
|||||||おもい||いど|||||い ました
|prayer|||||||||||||
しばらく する と 、 また 三 人 ほど 、 人 が つれだって 吉兵衛 の 家 へ は いって いきました 。
||||みっ|じん||じん|||きちべえ||いえ||||いき ました
|||||||||together with|||||||
お 経 を 読む 声 が きこえて 来ました 。
|へ||よむ|こえ|||き ました
|sutra|||||can be heard|
--
五 .
いつ
ご ん は 、 お ねんぶつ が すむ まで 、 井戸 の そば に しゃがんで いました 。
||||||||いど|||||い ました
兵 十 と 加助 は 、 また 一しょに かえって いきます 。
つわもの|じゅう||かじょ|||いっしょに||いき ます
ご ん は 、 二 人 の 話 を きこう と 思って 、 ついていきました 。
|||ふた|じん||はなし||||おもって|ついていき ました
||||||||to listen|||followed
兵 十 の 影法師 を ふみ ふみ いきました 。
つわもの|じゅう||かげぼうし||||いき ました
お 城 の 前 まで 来た とき 、 加助 が 言い出しました 。
|しろ||ぜん||きた||かじょ||いいだし ました
|||||||||started to speak
「 さっき の 話 は 、 きっと 、 そりゃ あ 、 神さま の しわざ だ ぞ 」
||はなし|||||かみさま||||
|||||||God||||
「 えっ?
」 と 、 兵 十 は びっくり して 、 加助 の 顔 を 見ました 。
|つわもの|じゅう||||かじょ||かお||み ました
||||surprised||||||
「 おれ は 、 あれ から ずっと 考えて いた が 、 どうも 、 そりゃ 、 人間 じゃ ない 、 神さま だ 、 神さま が 、 お前 が たった 一 人 に なった の を あわれに 思わっしゃって 、 いろんな もの を めぐんで 下さる んだ よ 」 「 そう か なあ 」 「 そう だ と も 。
|||||かんがえて|||||にんげん|||かみさま||かみさま||おまえ|||ひと|じん||||||おもわ っ しゃ って|||||くださる|||||||||
||||||||||||||||||||||||||with pity|thought||||bestow upon|bestows upon|||||||||
だ から 、 まいにち 神さま に お 礼 を 言う が いい よ 」
|||かみさま|||れい||いう|||
「 うん 」
ご ん は 、 へえ 、 こいつ は つまらない な と 思いました 。
|||||||||おもい ました
おれ が 、 栗 や 松たけ を 持っていって やる のに 、 その おれ に は お 礼 を いわ ないで 、 神さま に お 礼 を いう んじゃ ア 、 おれ は 、 引き合わ ない なあ 。
||くり||まつたけ||もっていって||||||||れい||||かみさま|||れい|||||||ひきあわ||
||||matsutake mushroom||||||||||||||||||||||||will not meet||
--
六 .
むっ
その あくる 日 も ご ん は 、 栗 を もって 、 兵 十 の 家 へ 出かけました 。
||ひ|||||くり|||つわもの|じゅう||いえ||でかけ ました
|next||||||||||||||
兵 十 は 物置 で 縄 を なって いました 。
つわもの|じゅう||ものおき||なわ|||い ました
|||||rope|||
それ で ご ん は 家 の 裏口 から 、 こっそり 中 へ はいりました 。
|||||いえ||うらぐち|||なか||はいり ました
その とき 兵 十 は 、 ふと 顔 を あげました 。
||つわもの|じゅう|||かお||あげ ました
と 狐 が 家 の 中 へ はいった では ありません か 。
|きつね||いえ||なか||||あり ませ ん|
|||||||entered|||
こない だ うなぎ を ぬすみ や がった あの ご ん 狐 め が 、 また いたずら を し に 来た な 。
||||||||||きつね||||||||きた|
||||stole|||||||||||||||
「 ようし 。」
well done
兵 十 は 立ちあがって 、 納屋 に かけて ある 火縄銃 を とって 、 火薬 を つめました 。
つわもの|じゅう||たちあがって|なや||||ひなわじゅう|||かやく||つめ ました
|||stood up|||||matchlock gun|||gunpowder||loaded
そして 足音 を しのばせて ちかよって 、 今 戸口 を 出よう と する ご ん を 、 ドンと 、 うちました 。
|あしおと||||いま|とぐち||でよう||||||どんと|うち ました
|||sneaking up|approached|||||||||||struck
ご ん は 、 ば たり と たおれました 。
||||||たおれ ました
||||||fell down
兵 十 は かけよって 来ました 。
つわもの|じゅう|||き ました
|ten||ran over|
家 の 中 を 見る と 、 土間 に 栗 が 、 かためて おいて ある の が 目 に つきました 。
いえ||なか||みる||どま||くり|||||||め||つき ました
||||||dirt floor||||piled up|||||||arrived
「 おや 」 と 兵 十 は 、 びっくり して ご ん に 目 を 落しました 。
||つわもの|じゅう|||||||め||おとし ました
||||||||||||dropped eyes
「 ご ん 、 お前 だった の か 。
||おまえ|||
いつも 栗 を くれた の は 」
|くり||||
ご ん は 、 ぐったり と 目 を つぶった まま 、 うなずきました 。
|||||め||||うなずき ました
|||||||closed||nodded
兵 十 は 火縄銃 を ば たり と 、 とり 落しました 。
つわもの|じゅう||ひなわじゅう||||||おとし ました
soldier|||||||||
青い 煙 が 、 まだ 筒 口 から 細く 出て いました 。
あおい|けむり|||つつ|くち||ほそく|でて|い ました
||||tube|||thinly||