悪人 下 （10） あくにん|した The Bad Guy Below (10) Le méchant, ci-dessous (10). 反派第二部 (10)

遠い 空 は 晴れ間 が 広がって いる のに 、 フロント ガラス を 雨 粒 が 叩いて いる 。 とおい|から||はれま||ひろがって|||ふろんと|がらす||あめ|つぶ||たたいて| |||break in the clouds|||||||||drop||| 雨 粒 は い くつ か 混じり合って 、 すっと 音 も なく 流れ 落ちる 。 あめ|つぶ|||||まじりあって|す っと|おと|||ながれ|おちる ||||||mixed together|smoothly||||| A few raindrops mingle together, and then they fall without a sound. そして また 、 流れた あと を 雨 粒 が 叩 車 は 海 沿い の 車道 の 路肩 に 停められて いる 。 ||ながれた|||あめ|つぶ||たた|くるま||うみ|ぞい||しゃどう||ろかた||とめ られて| ||||||||tapped|||sea|||||shoulder||| And again, raindrops hit the stream, and the car is parked on the shoulder of the roadway along the coast. アスファルト の 路面 が 、 雨 に 濡れ 、 その 色 を 変えられて いく 。 ||ろめん||あめ||ぬれ||いろ||かえ られて| ||||||wet||||changed| The asphalt surface is wetted by the rain and its color is being changed. 濡れた アスファルト は 、 周囲 の 景色 を 暗く する 。 ぬれた|||しゅうい||けしき||くらく| wet|||||||dark| |asphalt||||||| その せい で 、 光 代 と 祐一 の いる 車 内 まで 、 まるで 夕暮れ 時 の ように 暗く なって いく 。 |||ひかり|だい||ゆういち|||くるま|うち|||ゆうぐれ|じ|||くらく|| |||light|代わり|||||||||evening||||dark|| この 道 の 先 に は 、 警察 署 が ある 。 |どう||さき|||けいさつ|しょ|| あと 数 十 メートル 進めば 、 車 は 警察 署 の 敷地 へ 入る 。 |すう|じゅう|めーとる|すすめば|くるま||けいさつ|しょ||しきち||はいる ||||if you advance||||||property|| もう どれ くらい ここ に じっと して いる の か 。 たった今 、 車 が 停 まったような 気 も する し 、 もう 一晩 も 、 ここ に いる ような 気 も する 。 たったいま|くるま||てい|まった ような|き|||||ひとばん||||||き|| ||||seems to have stopped|||||||||||||| 光代 は 手 を 伸ばして 、 フロント ガラス の 雨 に 触れた 。 てるよ||て||のばして|ふろんと|がらす||あめ||ふれた もちろん 内側 から 雨 に 触れる こと は でき ない のだ が 、 指先 が 少し 濡れた よ う な 感触 が ある 。 |うちがわ||あめ||ふれる|||||||ゆびさき||すこし|ぬれた||||かんしょく|| |inside||||touching|||||||||||||||| Of course, you can't touch the rain from the inside, but your fingertips feel a little wet. いつの間にか 、 雨脚 は 強く なり 、 もう フロント ガラス の 向こう も 見え ない 。 いつのまにか|あまあし||つよく|||ふろんと|がらす||むこう||みえ| |rainfall||||||||||| Before I knew it, the rain had become so heavy that I could no longer see over the windshield. さっき から 祐一 の 荒い 鼻息 が はっきり と 聞き 取れる 。 ||ゆういち||あらい|はないき||||きき|とれる ||||rough|snorting||||| |||||breathing||||| I can clearly hear Yuichi's heavy breathing. 横 を 向けば 、 そこ に いる のに 、 光代 は 祐一 の ほう を 見る こと が でき ない 。 よこ||むけば|||||てるよ||ゆういち||||みる|||| ||if (one) faces||||||||||||||| 見れば 何もかも が 終わる のだ と 思う 気持ち が 、 どうしても 自分 の からだ を 自由に 動かして くれ ない 。 みれば|なにもかも||おわる|||おもう|きもち|||じぶん||||じゆうに|うごかして|| 呼子 の 岸壁 で 、 光代 は 、「 警察 まで 一緒に 行く 」 と 祐一 に 言った 。 よびこ||がんぺき||てるよ||けいさつ||いっしょに|いく||ゆういち||いった Yobuko||pier||||||||||| 祐一 は 、「 迷惑 が か かる 」 と 拒んだ が 、 半ば 強引に 助手 席 に 乗り込んだ 。 ゆういち||めいわく|||||こばんだ||なかば|ごういんに|じょしゅ|せき||のりこんだ ||trouble|||||refused|||by force|||| |||||||拒否した||||||| Yuichi refused to get into the passenger seat, saying it would cause him trouble, but I half forced him to get into the passenger seat. 自分 が 殺人 犯 と 一緒に いる と いう 恐怖 感 は まったく なかった 。 じぶん||さつじん|はん||いっしょに||||きょうふ|かん||| ||殺人犯||||||||||| I had no fear that I was in the company of a murderer. 自分 が 殺人 犯 と 出会った と いう より も 、 自分 が 知り合った 人 が 、 殺人 を 犯した と いう 感じ に 近かった 。 じぶん||さつじん|はん||であった|||||じぶん||しりあった|じん||さつじん||おかした|||かんじ||ちかかった |||||||||||||||||committed||||| It was less like I had met a murderer and more like someone I had known had committed a murder. 出会う 前 の 出来事 な のに 、 何 か して やれた ような 気 が して 悔しかった 。 であう|ぜん||できごと|||なん|||||き|||くやしかった |||||||||could have done|||||regrettable 呼子 の 駐車 場 を 出て 、 車 は 唐津 市 内 へ と 向かった 。 よびこ||ちゅうしゃ|じょう||でて|くるま||からつ|し|うち|||むかった Yobuko||||||||Karatsu||||| 車 内 で は 結局 一言 も 言葉 を 交わさ なかった 。 くるま|うち|||けっきょく|いちげん||ことば||かわさ| 道 は 空いて いて 、 すぐに 市街 地 へ 近づいた 。 どう||あいて|||しがい|ち||ちかづいた |||||downtown||| もう すぐ 市街 地 と いう 所 で 、 予 期せ ず 唐津 警察 署 の 看板 が 現れた 。 ||しがい|ち|||しょ||あらかじめ|きせ||からつ|けいさつ|しょ||かんばん||あらわれた ||||||||I|unexpectedly||Karatsu|||||| Just as we were about to reach the city center, a sign for the Karatsu Police Station appeared unexpectedly. 祐一 も まさか こんなに 早く 行き当たる と は 思って い なかった のだろう 、 一瞬 、 大きく ハンドル を ぶら し 、 スピード を 落とした 。 ゆういち||||はやく|ゆきあたる|||おもって||||いっしゅん|おおきく|はんどる||||すぴーど||おとした |||||run into|||||||||||sway|||| |||||出会う||||||||||||||| Yuichi probably didn't expect to reach the destination so quickly, and for a moment, the steering wheel swerved and he slowed down. 数 十 メートル 先 に クリーム 色 の 建物 が 広い 敷地 に ぽつんと 建って いた 。 すう|じゅう|めーとる|さき||くりーむ|いろ||たてもの||ひろい|しきち|||たって| |||||cream||||||site||lonely standing|| A few dozen meters away, a cream-colored building stood sparsely on a large plot of land. 壁 に は 交通 安 全 の 標語 を 記した 垂れ幕 が あり 、 海 から の 寒風 を 大きく 孕んで 揺れて いる 。 かべ|||こうつう|やす|ぜん||ひょうご||しるした|たれまく|||うみ|||かんぷう||おおきく|はらんで|ゆれて| |||||||slogan||written|banners|||sea||||||pregnant with|swaying| |||||||||||||||||||膨らんで|| On the wall, there is a banner with a traffic safety slogan, swaying in the cold wind from the sea. 通り を 行き交う 車 は ない 。 とおり||ゆきかう|くるま|| street||coming and going||| No cars passing on the street. すぐ そこ に ある 海 から 強い 風 が 吹きつけて いる 。 ||||うみ||つよい|かぜ||ふきつけて| |||||||||blowing against| |||||||||吹きつけている| There is a strong wind blowing from the ocean right there. 「 光代 は …… ここ で 降りた ほう が よか 」 ハンドル を 握った まま 、 祐一 は 光代 の 顔 も 見 ず に そう 言った 。 てるよ||||おりた||||はんどる||にぎった||ゆういち||てるよ||かお||み||||いった 雨 が 降り出した の は その とき だった 。 あめ||ふりだした||||| 空 が 暗く なった か と 思ったら 、 フロント ガラス を 幾 粒 か の 雨 が 叩いた 。 から||くらく||||おもったら|ふろんと|がらす||いく|つぶ|||あめ||たたいた ||dark||||||||several|||||| Just as the sky darkened, a few raindrops hit the windshield. ベビーカー を 押して 歩道 を 歩いて いた 若い 母親 が 、 慌てて ベビ ほろ － カー の 幌 を 下ろして いた 。 ||おして|ほどう||あるいて||わかい|ははおや||あわてて|||かー||ほろ||おろして| |||||||||||baby|canopy|||canopy||| A young mother pushing a baby stroller on the sidewalk was in a hurry to put the top down on her baby baby baby carrier. 「 光代 は 、 ここ で 降りた ほう が よか 」 そう 言った きり 、 祐一 は 口 を 開か ない 。 てるよ||||おりた|||||いった||ゆういち||くち||あか| The first time I saw him, I thought, "I'd better get off here," but Yuichi didn't open his mouth. 「．：… それ だけ ？ 」 と 光代 は 眩 いた 。 |てるよ||くら| |||dazzled| Mitsuyo was dazzled. 祐一 は 顔 を 上げ ず 、 自分 の 足元 を 見つめて いる 。 ゆういち||かお||あげ||じぶん||あしもと||みつめて| Yuichi is staring at his feet without looking up. 祐一 に 何 を 言って ほしくて 、 こんな こと を 訊 いて いる の か 分から なかった 。 ゆういち||なん||いって|||||じん|||||わから| |||||wanted|||||||||| I didn't know what Yuichi wanted me to say or why he was asking me this. ただ 、「 ここ で 降りた ほう が よか 」 と いう 一言 だけ で は 、 あまりに も 寂し すぎた 。 |||おりた||||||いちげん||||||さびし| |||||||||||||||too lonely| また 沈黙 が 続いた 。 |ちんもく||つづいた |silence|| フロント ガラス を 濡らす 雨 が 自ら の 重み に 耐え 切れ ず に 流れ 落ち て いく 。 ふろんと|がらす||ぬらす|あめ||おのずから||おもみ||たえ|きれ|||ながれ|おち|| |||wetting|||||weight||endure||||||| The rain that soaked the windshield could not bear the weight of its own body, so it started to drift down. 「 俺 と 一緒に おる ところ を 見られたら 、 光代 に 迷惑 かかる ……」 ハンドル を 強く 握りしめた まま 、 祐一 は 眩 いた 。 おれ||いっしょに||||み られたら|てるよ||めいわく||はんどる||つよく|にぎりしめた||ゆういち||くら| ||||||if seen||||||||gripped tightly||||blinded| The most important thing to do is to make sure that you have a good understanding of what you're doing and how you're doing it. 「 私 が ここ で 降りれば 、 私 に は もう 迷惑 かから ん わけ ？ わたくし||||おりれば|わたくし||||めいわく||| ||||if I get off|||||||| "If I get off here, will I be inconvenienced anymore? 」 光代 の 乱暴な 物言い に 、 祐一 が すぐ 、「 ごめん 」 と 謝る 。 てるよ||らんぼうな|ものいい||ゆういち|||||あやまる |||rough words||||||| |||言い方||||||| 本当に なんで こんな こと を 言い出して いる の か 分から なかった 。 ほんとうに|||||いいだして||||わから| この 期 に 及んで 祐一 に 悪態 を つきたい わけで は ない 。 |き||およんで|ゆういち||あくたい||つき たい||| |||reached|||bad attitude||want to curse||| I don't want to swear at Yuichi at this point in time. 「…… ごめん 」 光代 は 小さく 謝った 。 |てるよ||ちいさく|あやまった Mitsuyo apologized in a small voice, "...... sorry. サイドミラー に ベビーカー を 押して いく 若い 母親 の 後ろ姿 が 映って いた 。 ||||おして||わかい|ははおや||うしろすがた||うつって| |||||||||||reflected| A young mother pushing a stroller was seen in the side mirror. 若い 母親 は 駆け出したい の を 無理に 抑えて 歩いて いた 。 わかい|ははおや||かけだし たい|||むりに|おさえて|あるいて| |||want to run||||held back|| The young mother was walking, forcing herself to restrain her desire to run. その 姿 を 見届けて 、 光代 は フー と 息 を 吐 い た 。 |すがた||みとどけて|てるよ||||いき||は|| |||confirming||||||||| Mitsuyo watched the scene and let out a breath. もう 何分 も 呼吸 を 忘れて いた ようだった 。 |なにぶん||こきゅう||わすれて|| |||breathing|||| It was as if he had forgotten how to breathe for several minutes. 「 警察 に 行ったら 、 その あと どう なる と ？ けいさつ||おこなったら||||| 」 ふと そんな 疑問 が 口 から こぼれる 。 ||ぎもん||くち|| ||question|||| The question suddenly spills out of my mouth. ハンドル を 握る 自分 の 手 を 見つめて いた 祐一 が 顔 か を 上げ 、 自分 に も 分から ない と でも 言う ように 首 を 振る 。 はんどる||にぎる|じぶん||て||みつめて||ゆういち||かお|||あげ|じぶん|||わから||||いう||くび||ふる ||||||||||||||||||||||||neck||shake Yuichi, who was staring at his hand on the steering wheel, looks up and shakes his head as if he has no idea what is going on. 筆 「 自首 したら 、 少し は 刑 も 軽く なる よね ？ ふで|じしゅ||すこし||けい||かるく|| pen|surrender||||punishment||lighter||right Brush: "If I turn myself in, won't I get off a little easier? 」 と 光代 は 言った 。 |てるよ||いった 拙 自分 に は 何も 分から ない と でも 言う ように 祐一 が また 首 を 振る 。 せつ|じぶん|||なにも|わから||||いう||ゆういち|||くび||ふる clumsy||||||||||||||||shake 戯 「 いつか また 会える よ ね ？ ぎ|||あえる|| play||||| Play "We'll see each other again someday, right? 」 彼 章 ずっと 傭 いて いた 祐一 が 、 驚いた ように 顔 を 上げ 、 その 顔 が 見る見る 泣き顔 に なって 軸 いく 。 かれ|しょう||よう|||ゆういち||おどろいた||かお||あげ||かお||みるみる|なきがお|||じく| |||employed|||||||||||||quickly|crying face|||axis| The actuality that you can be a lot more likely to get a newborn baby is a good thing. 「 私 、 待つ よ 。 わたくし|まつ| I'll wait. 何 年 でも 」 祐一 の 肩 が 震え 出し 、 激しく 首 を 振り 続ける 。 なん|とし||ゆういち||かた||ふるえ|だし|はげしく|くび||ふり|つづける |||||||shaking||intensely|||| The first thing that comes to mind is the fact that the two of them have been in the same room together for years. 思わず 光代 は 手 を 伸ばして 、 祐一 の 頬 に 触れた 。 おもわず|てるよ||て||のばして|ゆういち||ほお||ふれた Unintentionally, Mitsuyo reached out and touched Yuichi on the cheek. 祐一 の 震え が 、 指先 に はっきり と 伝わって くる 。 ゆういち||ふるえ||ゆびさき||||つたわって| ||trembling||||||| Yuichi's trembling can be clearly felt in his fingertips. 「 俺 、 怖 か ……。 おれ|こわ| 死刑 かも しれ ん 」 光代 は 祐一 の 耳 を 優しく 掴んだ 。 しけい||||てるよ||ゆういち||みみ||やさしく|つかんだ death penalty||||||||||gently|gently held Mitsuyo gently grabbed Yuichi's ear. 火傷 する ほど 熱い 耳 だった 。 やけど|||あつい|みみ| burn|||hot|| His ears were so hot they burned. 「 もしも 光代 に 会う と らん なら 、 こんなに 怖く は なかった 。 |てるよ||あう|||||こわく|| If I had seen Mitsuyo, I wouldn't have been so scared. いつか 捕まる と 思う て ビク ビク し とった けど 、 自分 で は 出て 行け ん やった けど 、 それ でも こげ ん 怖く は なかった 。 |つかまる||おもう|||||||じぶん|||でて|いけ||||||||こわく|| |||||startled||||||||||||||||||| I was scared that one day I would get caught, but I couldn't go out by myself, but that didn't scare me. ばあさん や じいさん は 泣く やろう けど 、 せっかく 育てて くれた と に 、 本当に 申し訳 なか と は 思う けど 、 こげ ん 苦しゅう は なかった 。 ||||なく||||そだてて||||ほんとうに|もうしわけ||||おもう||||くるしゅう|| |||||||||||||||||||such||suffering|| |||||||||||||||||||こんな|||| I know grandma and grandpa would cry, but they took the trouble to raise me, and I'm really sorry, but it wasn't hard at all. もしも 光代 に 会う と らん なら ：．．：」 振り絞る ように 出て くる 祐一 の 言葉 を 、 光代 は じっと 聞いて いた 。 |てるよ||あう||||ふりしぼる||でて||ゆういち||ことば||てるよ|||きいて| |||||||squeezing out|||||||||||| |||||||絞り出す|||||||||||| If you want to see Mitsuyo, you have to go to her..." Mitsuyo was listening intently to Yuichi's words as if he was trying to squeeze them out of him. 触れた 祐一 の 耳 が 、 ますます 熱く なる の が 手 に 伝わって くる 。 ふれた|ゆういち||みみ|||あつく||||て||つたわって| touched||||||||||||| 「 でも 、 行 かんぱ ……」 と 光代 は 言った 。 |ぎょう|||てるよ||いった ||will go|||| 祐一 の 震え が 伝わって 、 声 に なら ない 声 だった 。 ゆういち||ふるえ||つたわって|こえ||||こえ| ||tremble|||||||| 「 ちゃんと 自首 して 、 自分 の した こと は 償わ ん ば ……」 必死に 出した 光代 の 言葉 に 、 祐一 が 力尽きた ように 頷く 。 |じしゅ||じぶん|||||つぐなわ|||ひっしに|だした|てるよ||ことば||ゆういち||ちからつきた||うなずく |surrender|to do||||||atone for|||||||||||exhausted|| ||||||||償う|||||||||||力尽きた|| 「 俺 、 死刑 かも しれ ん ……。 おれ|しけい||| |death penalty||| もう 光代 に も 会え ん 」 祐一 の 口 から 出て くる 死刑 と いう 言葉 が 、 光代 に は すんなり 入って こ なかった 。 |てるよ|||あえ||ゆういち||くち||でて||しけい|||ことば||てるよ||||はいって|| ||||||||||||||||||||easily||| ||||||||||||||||||||すんなり||| The word "death penalty" coming out of Yuichi's mouth did not go through Mitsuyo's mind easily. もち ろん それ が どういう 意味 な の か は 分かって いる のに 、 言葉 から その 意味 が 失われて 、 た だの 「 さよなら 」 に しか 聞こえ ない 。 |||||いみ|||||わかって|||ことば|||いみ||うしなわ れて||||||きこえ| ||||||||||||||||||lost||||||| Of course I know what it means, but the word loses its meaning and just sounds like "goodbye. 光代 は 震える 祐一 の 手 を 取った 。 てるよ||ふるえる|ゆういち||て||とった Mitsuyo took Yuichi's trembling hand. 何 か 言おう と する のだ が 、 口 から 言葉 が 出て こ ない 。 なん||いおう|||||くち||ことば||でて|| 今 、 自分 たち は 、 単なる 「 さよなら 」 を して いる わけで は ない 。 いま|じぶん|||たんなる||||||| ||||just||||||| Now, we are not simply saying goodbye. 「 さよなら 」 に は 、 ま だ 未来 が ある 。 |||||みらい|| Good-bye" still has a future. 光代 は 何 か 自分 が とんでもない 間違い を して いる ような 気 が して 、 必死 に 祐一 の 手 を 握りしめた 。 てるよ||なん||じぶん|||まちがい|||||き|||ひっし||ゆういち||て||にぎりしめた ||||||大きな||||||||||||||| Mitsuyo felt like she was making a terrible mistake and desperately held Yuichi's hand. 何 か が 終わろう と して いる のだ 。 なん|||おわろう|||| |||about to end|||| 今 、 ここ で 何 か が 決定 的に 終わろう と して いる のだ 。 いま|||なん|||けってい|てきに|おわろう|||| ||||||decision||will end|||| ある 光景 が 蘇った の は その とき だった 。 |こうけい||よみがえった||||| |scene||revived||||| It was then that a scene came back to me. あまりに も 一瞬 の こと で 、 今 、 蘇った どこ か の 光景 が 、 いったい いつ の 、 どこ で 見た 光景 な の か 、 分から ない ほど だった 。 ||いっしゅん||||いま|よみがえった||||こうけい|||||||みた|こうけい||||わから||| |||||||revived||||scene||||||||||||||| It was so instantaneous that I had no idea when or where I had seen the scene that I had just recalled. 光代 は 思 わ ず 目 を 閉じて 、 一瞬 蘇った 光景 を 再現 した 。 てるよ||おも|||め||とじて|いっしゅん|よみがえった|こうけい||さいげん| |||||||closed||revived|scene||recreated| Mitsuyo involuntarily closed her eyes and replayed the scene that had come back to her for a moment. 必死に 目 を 閉じて いる と 、 また ぼんやり と 、 その 光景 が 浮かび上がって くる 。 ひっしに|め||とじて|||||||こうけい||うかびあがって| ||||||||||scene||floats up| As I desperately try to close my eyes, the scene appears again. どこ ？ Where? ここ 、 どこ ？ Where is this place? 光代 は 目 を 閉じた まま 、 心 の 中 で 舷 いた 。 てるよ||め||とじた||こころ||なか||げん| ||||||||||anchored| Mitsuyo closed her eyes and pouted in her mind. ただ 、 浮かび上がって きた 光景 は 一 枚 の 写 真 の ように 、 いくら 別の 場所 を 見よう と して も 、 それ 以上 に 広がら ない 。 |うかびあがって||こうけい||ひと|まい||うつ|まこと||||べつの|ばしょ||みよう|||||いじょう||ひろがら| ||||||||photo|||||||||||||||will not expand| However, the emergent scene is like a single photograph, and no matter how much you try to look elsewhere, it will never expand beyond that. 目の前 に 若い 女の子 が 二 人立って いる 。 めのまえ||わかい|おんなのこ||ふた|ひとだって| ||||||standing| Two young girls are standing in front of me. こちら に 背 を 向けて 、 楽し そうに 笑い 合って いる 。 ||せ||むけて|たのし|そう に|わらい|あって| ||back||||||| They turn their backs to us and seem to be enjoying each other's company. その 向こう に は 年配 の 女性 の 背中 が 見える 。 |むこう|||ねんぱい||じょせい||せなか||みえる ||||elderly|||||| ||||||||back|| Beyond that you can see the back of an elderly woman. 女性 は 壁 に 向かって 何 か 話して いる 。 じょせい||かべ||むかって|なん||はなして| The woman is talking to the wall. いや 、 違う 。 |ちがう 壁 じゃ なくて 、 どこ か の 窓口 。 かべ||||||まどぐち 透明の ボード の 向こう で 切符 を 売る 男性 の 顔 が ある 。 とうめいの|ぼーど||むこう||きっぷ||うる|だんせい||かお|| transparent|board||||||||||| The face of a man selling tickets behind a transparent board. どこ ？ Where? どこ ？ Where? 光代 は また 心 の 中 で 眩 いた 。 てるよ|||こころ||なか||くら| 必死に 目 を 閉じる と 、 窓口 の 上 に 貼ら れた 路線 図 が 見え 「 あ ！ ひっしに|め||とじる||まどぐち||うえ||はら||ろせん|ず||みえ| |||||||||||route map|||| 」 光代 は 思わず 声 を 上げ そうに なった 。 てるよ||おもわず|こえ||あげ|そう に| 見えた の は 、 バス の 路線 図 だった 。 みえた|||ばす||ろせん|ず| What I saw was a bus route map. 自分 が 立って いる 場所 は 、 佐賀 と 博多 を 結ぶ 長 距離 バス の 切符 売り場 だった のだ 。 じぶん||たって||ばしょ||さが||はかた||むすぶ|ちょう|きょり|ばす||きっぷ|うりば|| ||||||||||connect||distance|||||| I was standing at the ticket booth of a long-distance bus connecting Saga and Hakata. それ が 分かった 瞬間 、 静止 して いた 光景 が とつぜん 音 と 共に 動き出す 。 ||わかった|しゅんかん|せいし|||こうけい|||おと||ともに|うごきだす ||||stationary|||||||||starts to move ||||静止していた||||||||| The moment this is understood, the still scene suddenly begins to move with sound. 背後 で バス の 到着 を 知らせる アナウンス が 聞こえる 。 はいご||ばす||とうちゃく||しらせる|あなうんす||きこえる behind||||||||| Behind me, I can hear an announcement that the bus has arrived. 背後 に 立って いる 若い 女の子 たち の 笑い声 が す る 。 はいご||たって||わかい|おんなのこ|||わらいごえ||| Young girls standing behind me are laughing. 切符 を 買った おばさん が 、 財布 を しまい ながら 窓口 を 離れ 、 到着 した バス の ほう へ 歩いて いく 。 きっぷ||かった|||さいふ||||まどぐち||はなれ|とうちゃく||ばす||||あるいて| The woman who had bought the ticket left the ticket window with her wallet in her purse and walked toward the bus that had arrived. あの とき だ 。 あの とき に 間違い なかった 。 |||まちがい| この バス は 、 この 博多 行き の バス は 、 この あと 一 人 の 少年 に バスジャック さ れる 。 |ばす|||はかた|いき||ばす||||ひと|じん||しょうねん|||| ||||||||||||||||bus hijacking|| 光代 は 蘇った 光景 の 中 、 バス へ と 向かう おばさん に 、「 乗っちゃ 駄目 ！ てるよ||よみがえった|こうけい||なか|ばす|||むかう|||のっちゃ|だめ ||revived||||||||||don't get on| 」 と 思わず 叫 んだ 。 |おもわず|さけ| ただ 、 蘇った 光景 の 中 、 声 を 出す こと は おろか 、 顔 を そちら に 向ける こと も でき ない 。 |よみがえった|こうけい||なか|こえ||だす||||かお||||むける|||| |revived|scene||||||||||||||||| However, in the midst of the revived scenery, it is impossible to speak, let alone turn one's face toward it. すでに 窓口 で は 若い 女の子 が 二 人 、 博多 行き の 切符 を 買って いる 。 |まどぐち|||わかい|おんなのこ||ふた|じん|はかた|いき||きっぷ||かって| Already at the ticket window, two young girls are buying tickets to Hakata. 「 買っちゃ 駄目 ！ かっちゃ|だめ bought| Don't buy it! 」 心 の 中 で は 叫んで いる のに 、 その 声 が 出 ない 。 こころ||なか|||さけんで||||こえ||だ| 列 に 並んだ 自分 の 足 が 動かせ ない 。 れつ||ならんだ|じぶん||あし||うごかせ| |||||||cannot move| 光 代 は ひどく 震えて いる 自分 に 気づいた 。 ひかり|だい|||ふるえて||じぶん||きづいた このまま で は 自分 まで 切符 を 買って しまう 。 |||じぶん||きっぷ||かって| If I don't do something, I'll end up buying a ticket for myself. 携 帯 だ ！ けい|おび| carry|| It's a cell phone! と その とき 思い出した 。 |||おもいだした And that's when I remembered. ここ で 友人 から 携帯 に 連絡 が 入る のだ 。 ||ゆうじん||けいたい||れんらく||はいる| 「 子供 が 熱 を 出した から 、 申し訳ない けど 今日 は 会え ない 」 と いう 連絡 が 入る のだ 。 こども||ねつ||だした||もうしわけない||きょう||あえ||||れんらく||はいる| 光代 は バッグ を 探った 。 てるよ||ばっぐ||さぐった ||||searched through 必死に 探る のに 、 ある はずの 携帯 が 見つから ない 。 ひっしに|さぐる||||けいたい||みつから| |searching||||||| 窓口 で 切 符 を 買った 女の子 たち が 、 嬉し そうに バス へ 向かって 歩いて いく 。 まどぐち||せつ|ふ||かった|おんなのこ|||うれし|そう に|ばす||むかって|あるいて| |||ticket|||||||||||| 携帯 が ない 。 けいたい|| 携帯 が ない 。 けいたい|| 窓口 の おじさん が 、「 次の 方 」 と 光代 を 呼ぶ 。 まどぐち||||つぎの|かた||てるよ||よぶ 進む つもり は ない のに 、 勝手に 足 が 前 へ 出る 。 すすむ|||||かってに|あし||ぜん||でる 必死に 逃げ出そう と する のに 、 顔 が 窓口 に 近づいて 、 口 が 勝手に 動き出す 。 ひっしに|にげだそう||||かお||まどぐち||ちかづいて|くち||かってに|うごきだす 「 天神 まで 、 大人 一 枚 」 携帯 が ない 。 てんじん||おとな|ひと|まい|けいたい|| かかって くる はずの 携帯 が ない 。 |||けいたい|| 光代 は 悲鳴 を 上げ そうに なって 目 を 開けた 。 てるよ||ひめい||あげ|そう に||め||あけた ||scream||||||| 目の前 に は 雨 に 濡れた 車道 が 伸び 、 その 先 に 同じ ように 雨 に 濡れた 警察 署 が 建って いる 。 めのまえ|||あめ||ぬれた|しゃどう||のび||さき||おなじ||あめ||ぬれた|けいさつ|しょ||たって| A rain-soaked roadway stretches in front of us, and a similarly rain-soaked police station stands beyond it. 光代 は 横 に いる 祐一 に 目 を 向けた 。 てるよ||よこ|||ゆういち||め||むけた Mitsuyo looked at Yuichi beside her. そ の とき だった 。 It was time. 対向 車線 を 走って くる 一 台 の パトカー が 見えた 。 たいこう|しゃせん||はしって||ひと|だい||ぱとかー||みえた opposite|traffic lane||||||||| スピード を 落とし 、 ウ ィンカー を つけた パトカー が 、 右折 して 警察 署 の 敷地 へ と 走り込んで いく 。 すぴーど||おとし|||||ぱとかー||うせつ||けいさつ|しょ||しきち|||はしりこんで| ||||turn signal|||||right turn|||||property|||| |||||||||右折||||||||| 「 イヤ ！ いや 」 と 光代 は 叫んだ 。 |てるよ||さけんだ 「 イヤ ！ いや もう 、 あの バス に は 乗り とう ない ！ ||ばす|||のり|| 」 車 内 に 反響 する ほど の 声 だった 。 くるま|うち||はんきょう||||こえ| |||echo||||| It was so loud that it echoed through the car. とつぜん の 光代 の 声 に 、 横 で 祐一 が 息 を 呑 む 。 ||てるよ||こえ||よこ||ゆういち||いき||どん| ||||||||||||gasp| Suddenly, Mitsuyo's voice makes Yuichi gasp beside her. 「 車 出して ！ くるま|だして "Let's get out of the car! お 願い 。 |ねがい ちょっと だけ 、 ちょっと だけ で い いけ ん 。 Just a little bit, just a little bit is good. ここ から 出して ！ ||だして Get me out of here! 」 とつぜん 声 を 上げた 光代 に 、 祐一 は 目 を 見開いて いた 。 |こえ||あげた|てるよ||ゆういち||め||みひらいて| ||||||||||eyes wide open| The first time I went to the store, I saw Yuichi's eyes widen as Mitsuyo suddenly raised her voice to him. 「 お 願い －．」 光代 の 言葉 に 、 祐一 が 一 瞬時 曙 する 。 |ねがい|てるよ||ことば||ゆういち||ひと|しゅんじ|あけぼの| ||||||||one|a moment|dawn| The first time I saw her, I thought she was a little bit too young for me, but then I realized that she was a little bit too young for me. 光代 は それ でも 、「 お 願い ！ てるよ|||||ねがい Mitsuyo, however, said, "Please! 」 と 叫んだ 。 |さけんだ I shouted. 光代 の 焦り が 伝わった の か 、 祐一 が 慌てて ハンドル に 手 を かけ 、 アクセル を 踏む 。 てるよ||あせり||つたわった|||ゆういち||あわてて|はんどる||て|||あくせる||ふむ ||anxiety||||||||||||||| As if Mitsuyo's impatience was felt, Yuichi hurriedly put his hand on the steering wheel and stepped on the gas pedal. 車 は 警察 署 の 前 を 過ぎて 、 すぐに 左 へ 曲がった 。 くるま||けいさつ|しょ||ぜん||すぎて||ひだり||まがった The car passed the police station and immediately turned left. 道 は コンクリート の 堤防 に 沿って い た 。 どう||こんくりーと||ていぼう||そって|| ||||embankment|||| The road was along a concrete embankment. 道 の 先 に は 県営 の ヨット ハーバー が ある らしく 、 大きな 看板 が 雨 に 濡れて いる 。 どう||さき|||けんえい||よっと|はーばー||||おおきな|かんばん||あめ||ぬれて| |||||||yacht|yacht harbor|||||||||| |||||||ハーバー|yacht harbor|||||||||| 祐 一 は そこ で 車 を 停めた 。 たすく|ひと||||くるま||とめた 振り返れば 、 警察 署 が まだ 見える 場所 だった 。 ふりかえれば|けいさつ|しょ|||みえる|ばしょ| if I look back||||||| 車 が 動き出した とたん に 、 光代 は 声 を 上げて 泣き出して いた 。 くるま||うごきだした|||てるよ||こえ||あげて|なきだして| ||started moving||||||||| このまま ここ で 祐一 と 別れたら 、 自分 は あの バス に 乗って しまう 。 |||ゆういち||わかれたら|じぶん|||ばす||のって| あの バス に 乗って 、 真っ先 に 少年 に ナイフ を 向けられて しまう 。 |ばす||のって|まっさき||しょうねん||ないふ||むけ られて| ||||first||||||pointed at| I get on that bus and the first thing the boy does is point a knife at me. 車 を 停める と 、 祐一 は エンジン を かけた まま 、 ワイパー だけ を 切った 。 くるま||とめる||ゆういち||えんじん|||||||きった When Yuichi stopped the car, he turned off the windshield wipers with the engine running. あっという間 に フロント ガラス が 雨 に 濡れて 、 景色 が 参 んで いく 。 あっというま||ふろんと|がらす||あめ||ぬれて|けしき||さん|| in no time||||||||||distorted|| In no time at all, the windshield was soaked with rain and the scenery was disappearing. 「 私 、 イヤ ！ わたくし|いや 」 光代 は 雨 に 惨 む フロント ガラス を 睨んだ まま 叫んだ 。 てるよ||あめ||さん||ふろんと|がらす||にらんだ||さけんだ ||||suffered||||||| 「 私 、 イヤ ！ わたくし|いや ここ で 祐一 と 別れたら 、 私 に は もう 何にも ないたい 。 ||ゆういち||わかれたら|わたくし||||なんにも|ない たい ||||||||||want toない If I leave Yuichi here, I will have nothing left. …：。 ...: . 私 、 幸せに な れるって 魁 うた と よ ！ わたくし|しあわせに||れる って|かい||| |||can become|first||| I said to Kaiuta that I could be happy! 祐一 と 出会って 、 やっと これ で 幸せに なれるって ……。 ゆういち||であって||||しあわせに|なれる って |||||||can become happy 馬鹿に せ んで ！ ばかに|| 私 の こと 、 馬鹿に せ んで ！ わたくし|||ばかに|| 」 泣きじゃくる 光代 に 、 祐一 が オドオド と 手 を 伸ばし 、 肩 に 触れる と 、 あと は 一気に 抱 き しめて くる 。 なきじゃくる|てるよ||ゆういち||||て||のばし|かた||ふれる||||いっきに|いだ||| sobbing heavily|||||timidly||||||||||||hug||| sobbing|||||||||||||||||||| The first thing you need to do is to make sure that you have a good understanding of what you are doing and how to do it. 光代 は その 腕 を 乱暴に 振り払おう と した 。 てるよ|||うで||らんぼうに|ふりはらおう|| ||||||shook off|| Mitsuyo tried to violently shake his arm off. しかし 祐一 が もっと 強く 抱き しめて 、 祐一 の 腕 の 中 、 ただ 泣く だけ で 身動き でき なく なって しまう 。 |ゆういち|||つよく|いだき||ゆういち||うで||なか||なく|||みうごき|||| ||||||||||||||||unable to move|||| However, Yuichi held her more tightly and she became unable to move except crying in Yuichi's arms. 「 ごめん ……、 ごめん ……」 祐一 の 声 が 首筋 を 噛む ように 聞こえる 。 ||ゆういち||こえ||くびすじ||かむ||きこえる ||||||nape||bite|| 光代 は 力 の 限り 首 を 振った 。 てるよ||ちから||かぎり|くび||ふった 振る たび に 互い の 頬 が ぶつかり合う 。 ふる|||たがい||ほお||ぶつかりあう to shake|||||||collide |||||||ぶつかる Every time they swing, their cheeks collide with each other. 「 ごめん ……、 俺 に は 何も して や れん 」 泣いて いる の が 自分 な の か 、 祐一 な の か 分から ない 。 |おれ|||なにも|||れ ん|ないて||||じぶん||||ゆういち||||わから| |||||||can’t|||||||||||||| I don't know if it is me or Yuichi who is crying. 「 お 願い ！ |ねがい Please make a request! 私 だけ 置いて いか んで ！ わたくし||おいて|| お 願い ！ |ねがい もう 一 人 に せ んで ！ |ひと|じん||| 」 光代 は 祐一 の 肩 に 叫んだ 。 てるよ||ゆういち||かた||さけんだ 逃げ 切れる わけ が ない のに 、「 逃げて ！ にげ|きれる|||||にげて 一緒に 逃げ て ！ いっしょに|にげ| 」 と 叫んで いた 。 |さけんで|

幸せに なれる わけ が ない のに 、「 一緒に おって ！ しあわせに||||||いっしょに| 私 だけ 置いて かんで ！ わたくし||おいて| 」 と 叫んで いた 。 |さけんで|