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Fairy Tales, 雷さまの病気

雷 さま の 病気

雷 さま の 病気

むかし むかし 、 下野 の 国 ( しも つけ の くに → 栃木 県 ) の 粕尾 ( かす お ) と 言う 所 に 、 名 の 知れた 医者 と して も 有名な 和尚 ( おしょう ) さん が 住んで い ました 。

夏 の 昼 さがり の 事 、 和尚 さん は 弟子 の 小 坊主 を 連れて 病人 の 家 から 帰る 途中 でした 。 「 和尚 さま 、 今日 も お 暑い 事 で 」 「 まったく じゃ 。 しかも 蒸し暑くて 、 汗 が 乾か ん 」 二 人 は 汗 を ふき ながら 歩いて い ました が 、 突然 、 ポツリポツリ と 雨 が 降り 始めて 、 みるみる うち に 水 おけ を ひっくり返した 様 な 夕立 に なって しまい ました 。 「 急げ ! 」 「 はい 」 大雨 と 一緒に 、 いなびかり が 走り ました 。 ゴロゴロゴロー ! 「 き ゃ ー 、 かみなり ! 和尚 さま 、 助けて ー ! 」 「 これ っ 、 大事な 薬 箱 を 放り 出す 奴 が ある か ! 」 「 すみません 。 でも わたくし は 、 かみなり が 大嫌いな もの で 」 ゴロゴロゴローッ ! ドカーン ! すぐ 近く の 木 に 、 かみなり が 落ちた ようです 。 「 わーっ ! 和尚 さま ! 」 「 だ から 、 薬 箱 を 放り 出す な ! 」 和尚 さん は 怖 がる 小 坊主 を 引きずって 、 やっと の 事 で 寺 へ 帰って き ました 。

「 和尚 さま 。 早く 雨戸 を 閉めて ください 」 小 坊主 が 言い ます が 、 和尚 さん は いなずま が 光る 空 を じっと 見上げて い ます 。 「 ほ ほう 。 この かみなり さん は 、 病気 に かかって おる わい 」 「 へっ ? 和尚 さま は 、 かみなり の 病気 まで わかる のです か ? 」 「 うむ 、 ゴロゴロ と いう 音 で な 」 さすが は 、 天下 の 名医 です 。

その 夜 、 ねむって いる 和尚 さん の 枕元 に 、 こっそり と 忍び寄った 者 が い ます 。 それ は モジャモジャ 頭 から 二 本 の ツノ を 生やし 、 トラ 皮 の パンツ を はいた かみなり さま でした 。 でも 、 何だか 元気 が あり ませ ん 。 和尚 さん の そば に 座って 、 「・・・ ふ ー っ 」 と 、 ため息 を ついて いる のです 。 それ に 気づいた 和尚 さん は 薄 目 を 開けて 様子 を 見て い ました が 、 やがて 先 に 声 を かけ ました 。 「 どうかした の か ? 何 か 、 お 困り の 様 じゃ が 」 和尚 さん が 声 を かける と 、 かみなり さま は 和尚 さん の 前 に ガバッ と ひれふし ました 。 「 わ 、 わし は 、 かみなり で ござる 」 「 見れば わかる 。 それ で 、 何 か 用 か ? 」 かみなり さま は 、 涙 を 流し ながら 言い ました 。 「 この 二 、 三 日 、 具合 が おかしい のです 。 どうか 、 わし の 病 を 治して くださ れ 。 お 願い し ます 」 「 やっぱり のう 」 「 それ で その ・・・、 天下 の 名医 と も なれば 、 お 代 は お 高い でしょう が 。 こんな 物 で 、 いかがでしょう か ? 」 かみなり さま は そう 言って 、 小判 を 三 枚 差し出し ました 。 しかし 和尚 さん は 、 知らん顔 です 。 「 えっ ! これ で は 、 たり ませ ぬ か 」 かみなり さま は 、 小判 を 五 枚 差し出し ました 。 すると 和尚 さん は その 小判 を ちらり と 見て 、『 ふん ! 』 と 鼻 で 笑い ました 。 「 わし の 治療 代 は 、 うーん と 高い のじゃ 」 「 そうで ございましょう 。 何しろ 、 天下 の 名医 で ございます し 。 それでは さらに 、 小判 を 追加 して 」 「 いやいや 。 金 の 話 は 後 に して 、 まずは そこ へ 横 に なり なさい 」 「 えっ 、 診て くださる んです か ! 」 かみなり さま は 、 大喜びです 。 和尚 さん は 腕 まくり を する と 、 かみなり さま の 体 を 力一杯 押したり 、 もんだり して 調べ ます 。 「 ひ ゃ ー ! ひ ぇ ー ! う ひ ょ ー ! 痛い 痛い ! 助けて くれ ~! 」 かみなり さま は 、 あまり の 痛 さ に 大声 を あげ ました 。 その 大声 に 驚いて 、 小 坊主 は 部屋 の すみ で 震えて い ます 。 「 これ 、 小 坊主 ! そんな ところ で 、 何 を して おる 。 今度 は お 灸 ( きゅう ) を する から 、 早く 道具 を 持って まいれ ! 」 急に 声 を かけ られて 、 小 坊主 は ビックリ です 。 「 和尚 さま 。 何で 、 かみなり なんぞ の 病気 を 診る のです か ! かみなり は 怖い から 、 嫌です ! 」 「 何 を 言う とる ! さあ 、 お前 も お 灸 の 手伝い を しろ ! 」 「 和尚 さま 。 あんな 人 迷惑 なかみ なり なぞ 、 いっそ 死んで いただいた 方 が よい ので は 」 「 ばっ かも ~ ん ! どんな 者 の 病気 でも 診る の が 、 医者 の つとめ じゃ ! 」 「 う ぅ ー 、 わかり ました 」 和尚 さん は 小 坊主 から お 灸 を 受け取る と 、 かみなり さま に お 灸 を すえ ました 。 「 う お ~ っ 、 あ ちち ち 、 助けて ~! 」 あまり の 熱 さ に 、 かみなり さま は 大 暴れ です 。 ところが お 灸 が 終わった とたん 、 かみなり さま は ニッコリ 笑い ました 。 「 おおっ ! 痛み が なくなった 。 体 が 軽く なった 。 お 灸 を すえたら 、 もう 治った ぞ ! 」 さすが は 、 天下 の 名医 。 「 ありがとう ございました ! ・・・ で 、 お 代 の 方 は 、 さぞ お 高い んでしょう な ぁ 」 「 治療 代 か ? 治療 代 は 、 確かに 高い ぞ 。 ・・・ じゃ が 、 金 はいらん 」 「 じゃあ 、 ただ な んです か ! 」 「 いい や 、 金 の 代わり に 、 お前 に は して もらい たい 事 が 二 つ ある 。 一 つ は 、 この 粕尾 ( かす お ) で は 、 かみなり が よく 落ちて 、 人 が 死んだり 家 が 焼けたり して 困って おる 。 これ から は 、 決して かみなり を 落とさ ない 事 」 「 へい 、 へい 、 それ は 、 おや すい事 で 」 「 二 つ 目 は 、 この 辺り を 流れる 粕尾 川 の 事 じゃ 。 粕尾 川 は 、 大雨 が 降る たび に 水 が あふれて 困って おる 。 川 が 、 村 の 中 を 流れて おる ため じゃ 。 この 川 の 流れ を 、 村 は ずれ に 変えて ほしい 。 これ が 、 治療 代 の 代わり じゃ 。 どう だ ? 出来る か ? 」 「 へい 。 そんな 事 でしたら 、 この かみなり に お 任せ くだせ え 」 どんな 無 茶 を 言わ れる か と 心配 して いた かみなり さま は 、 ホッ と して 言い ました 。 「 それでは まず 、 粕尾 の 人 たち に 、 お 札 を 配って ください 。 お 札 を 家 の 門口 に 、 は って もらう のです 。 それ から 粕尾 川 です が 、 流れ を 変えて ほしい 場所 に 、 さいか ち (→ マメ 科 の 落葉 高木 ) の 木 を 植えて ください 。 そう すれば 、 七 日 の うち に は きっと 。 ・・・ で は 、 ありがとう ございます 」 かみなり さま は そう 言う と 、 天 に 登って しまい ました 。

和尚 さん は 、 さっそく 村人 たち を お 寺 に 集めて お 札 を 配り ました 。 そして 山 の ふもと の 目立つ 位置 に 、 さいか ち の 木 を 植え ました 。

さて 、 その 日 は とても 良い 天気 でした が 、 にわかに 黒 雲 が わき起こった か と 思う と いなずま が 光り 、 ザーザー と 激しい 雨 が 降り 出し ました 。 まるで 、 天 の 井戸 ( いど ) が ひっくり返った 様 な 大 夕立 です 。 村人 たち は 和尚 さん から 頂いた お 札 を はって 雨戸 を 閉めて 、 雨 が 止む の を ジッと 待って い ました 。 こうして ちょうど 七 日 目 、 あれほど 激しかった 大雨 が ピタリ と 止んだ のです 。 雨戸 を 開ける と 黒 雲 は なく なり 、 太陽 が 顔 を 出して い ます 。 不思議な 事 に 、 あれ だけ の 大雨 に も かかわら ず 、 かみなり は 一 つ も 落ち ませ ん でした 。 「 あっ 、 あれ を 見ろ ! 」 村人 が 指さす を 方 を 見る と 、 昨日 まで 流れて いた 粕尾 川 が きれいに 干上がり 、 流れ を 変えて 、 さいか ち の 木 の そば を ゆうゆうと 流れて いる で は あり ませ ん か 。 これ で もう 、 村 に 洪水 ( こうずい ) が 起こる 心配 は なく なり ました 。 かみなり さま は 、 和尚 さん と の 約束 を 果たした のです 。

それ から と いう もの 、 粕尾 の 里 で は 落雷 の 被害 は 全く なくなった と いう 事 です 。

おしまい


雷 さま の 病気 かみなり|||びょうき Die Lord Thunder-Krankheit Thunder's Disease Doença de Lord Thunder Болезнь лорда Грома 雷公病

雷 さま の 病気 かみなり|||びょうき Thunder's Disease

むかし むかし 、 下野 の 国 ( しも つけ の くに → 栃木 県 ) の 粕尾 ( かす お ) と 言う 所 に 、 名 の 知れた 医者 と して も 有名な 和尚 ( おしょう ) さん が 住んで い ました 。 ||げや||くに|||||とちぎ|けん||かすお||||いう|しょ||な||しれた|いしゃ||||ゆうめいな|おしょう||||すんで|| Once upon a time, in a place called Kasuo in Shimono-no-kuni (Shimotsuke-no-kuni → Tochigi Prefecture), there lived a famous doctor named Osho (monk).

夏 の 昼 さがり の 事 、 和尚 さん は 弟子 の 小 坊主 を 連れて 病人 の 家 から 帰る 途中 でした 。 なつ||ひる|||こと|おしょう|||でし||しょう|ぼうず||つれて|びょうにん||いえ||かえる|とちゅう| It was early afternoon in the summer, and the monk was on his way home from a sick person's house with his disciple, a little monk. 「 和尚 さま 、 今日 も お 暑い 事 で 」 「 まったく じゃ 。 おしょう||きょう|||あつい|こと||| "Dear monk, it's so hot again today." "Not at all, then. しかも 蒸し暑くて 、 汗 が 乾か ん 」   二 人 は 汗 を ふき ながら 歩いて い ました が 、 突然 、 ポツリポツリ と 雨 が 降り 始めて 、 みるみる うち に 水 おけ を ひっくり返した 様 な 夕立 に なって しまい ました 。 |むしあつくて|あせ||かわか||ふた|じん||あせ||||あるいて||||とつぜん|ぽつりぽつり||あめ||ふり|はじめて||||すい|||ひっくりかえした|さま||ゆうだち|||| It was hot and humid, and my sweat wouldn't dry up." They were wiping off their sweat as they walked along, when suddenly it began to rain in drops, and quickly turned into an evening shower that looked like an overturned bucket of water. 「 急げ ! いそげ 」 「 はい 」   大雨 と 一緒に 、 いなびかり が 走り ました 。 |おおあめ||いっしょに|||はしり| The fluttering ran along with the heavy rain. ゴロゴロゴロー ! Gorogorogoro ! 「 き ゃ ー 、 かみなり ! ||-| "Kya, kaminari! 和尚 さま 、 助けて ー ! おしょう||たすけて|- Monk, help me! 」 「 これ っ 、 大事な 薬 箱 を 放り 出す 奴 が ある か ! ||だいじな|くすり|はこ||はな り|だす|やつ||| "Who would throw away an important medicine box? 」 「 すみません 。 Sorry, I'm sorry. でも わたくし は 、 かみなり が 大嫌いな もの で 」   ゴロゴロゴローッ ! |||||だいきらいな||| But I hate the thunder! ドカーン ! Boom ! すぐ 近く の 木 に 、 かみなり が 落ちた ようです 。 |ちかく||き||||おちた| It seems that a cicada fell on a nearby tree. 「 わーっ ! わ - っ Wow! 和尚 さま ! おしょう| Dear Monk ! 」 「 だ から 、 薬 箱 を 放り 出す な ! ||くすり|はこ||はな り|だす| So don't throw away the medicine chest! 」   和尚 さん は 怖 がる 小 坊主 を 引きずって 、 やっと の 事 で 寺 へ 帰って き ました 。 おしょう|||こわ||しょう|ぼうず||ひきずって|||こと||てら||かえって|| The monk finally returned to the temple, dragging the frightened little monk with him.

「 和尚 さま 。 おしょう| "Wajo-sama. 早く 雨戸 を 閉めて ください 」   小 坊主 が 言い ます が 、 和尚 さん は いなずま が 光る 空 を じっと 見上げて い ます 。 はやく|あまど||しめて||しょう|ぼうず||いい|||おしょう|||||ひかる|から|||みあげて|| 「 ほ ほう 。 この かみなり さん は 、 病気 に かかって おる わい 」 「 へっ ? ||||びょうき||||わ い|へ っ 和尚 さま は 、 かみなり の 病気 まで わかる のです か ? おしょう|||||びょうき|||| 」 「 うむ 、 ゴロゴロ と いう 音 で な 」   さすが は 、 天下 の 名医 です 。 |ごろごろ|||おと|||||てんか||めいい|

その 夜 、 ねむって いる 和尚 さん の 枕元 に 、 こっそり と 忍び寄った 者 が い ます 。 |よ|||おしょう|||まくらもと||||しのびよった|もの||| それ は モジャモジャ 頭 から 二 本 の ツノ を 生やし 、 トラ 皮 の パンツ を はいた かみなり さま でした 。 |||あたま||ふた|ほん||||はやし|とら|かわ||ぱんつ||||| でも 、 何だか 元気 が あり ませ ん 。 |なんだか|げんき|||| 和尚 さん の そば に 座って 、 「・・・ ふ ー っ 」 と 、 ため息 を ついて いる のです 。 おしょう|||||すわって||-|||ためいき|||| それ に 気づいた 和尚 さん は 薄 目 を 開けて 様子 を 見て い ました が 、 やがて 先 に 声 を かけ ました 。 ||きづいた|おしょう|||うす|め||あけて|ようす||みて|||||さき||こえ||| 「 どうかした の か ? 何 か 、 お 困り の 様 じゃ が 」   和尚 さん が 声 を かける と 、 かみなり さま は 和尚 さん の 前 に ガバッ と ひれふし ました 。 なん|||こまり||さま|||おしょう|||こえ|||||||おしょう|||ぜん||||| 「 わ 、 わし は 、 かみなり で ござる 」 「 見れば わかる 。 |||||ご ざる|みれば| それ で 、 何 か 用 か ? ||なん||よう| 」   かみなり さま は 、 涙 を 流し ながら 言い ました 。 |||なみだ||ながし||いい| 「 この 二 、 三 日 、 具合 が おかしい のです 。 |ふた|みっ|ひ|ぐあい||| どうか 、 わし の 病 を 治して くださ れ 。 |||びょう||なおして|| お 願い し ます 」 「 やっぱり のう 」 「 それ で その ・・・、 天下 の 名医 と も なれば 、 お 代 は お 高い でしょう が 。 |ねがい||||||||てんか||めいい|||||だい|||たかい|| こんな 物 で 、 いかがでしょう か ? |ぶつ||| 」   かみなり さま は そう 言って 、 小判 を 三 枚 差し出し ました 。 ||||いって|こばん||みっ|まい|さしだし| しかし 和尚 さん は 、 知らん顔 です 。 |おしょう|||しらんかお| 「 えっ ! これ で は 、 たり ませ ぬ か 」   かみなり さま は 、 小判 を 五 枚 差し出し ました 。 ||||||||||こばん||いつ|まい|さしだし| すると 和尚 さん は その 小判 を ちらり と 見て 、『 ふん ! |おしょう||||こばん||||みて| 』 と 鼻 で 笑い ました 。 |はな||わらい| 「 わし の 治療 代 は 、 うーん と 高い のじゃ 」 「 そうで ございましょう 。 ||ちりょう|だい||||たかい||そう で| 何しろ 、 天下 の 名医 で ございます し 。 なにしろ|てんか||めいい||| それでは さらに 、 小判 を 追加 して 」 「 いやいや 。 ||こばん||ついか|| 金 の 話 は 後 に して 、 まずは そこ へ 横 に なり なさい 」 「 えっ 、 診て くださる んです か ! きむ||はなし||あと||||||よこ|||||みて||| 」   かみなり さま は 、 大喜びです 。 |||おおよろこびです 和尚 さん は 腕 まくり を する と 、 かみなり さま の 体 を 力一杯 押したり 、 もんだり して 調べ ます 。 おしょう|||うで||||||||からだ||ちからいっぱい|おしたり|||しらべ| 「 ひ ゃ ー ! ||- ひ ぇ ー ! ||- う ひ ょ ー ! |||- 痛い 痛い ! いたい|いたい 助けて くれ ~! たすけて| 」   かみなり さま は 、 あまり の 痛 さ に 大声 を あげ ました 。 |||||つう|||おおごえ||| その 大声 に 驚いて 、 小 坊主 は 部屋 の すみ で 震えて い ます 。 |おおごえ||おどろいて|しょう|ぼうず||へや||||ふるえて|| 「 これ 、 小 坊主 ! |しょう|ぼうず そんな ところ で 、 何 を して おる 。 |||なん||| 今度 は お 灸 ( きゅう ) を する から 、 早く 道具 を 持って まいれ ! こんど|||きゅう|||||はやく|どうぐ||もって| 」   急に 声 を かけ られて 、 小 坊主 は ビックリ です 。 きゅうに|こえ||||しょう|ぼうず||びっくり| 「 和尚 さま 。 おしょう| 何で 、 かみなり なんぞ の 病気 を 診る のです か ! なんで||なん ぞ||びょうき||みる|| かみなり は 怖い から 、 嫌です ! ||こわい||いやです 」 「 何 を 言う とる ! なん||いう| さあ 、 お前 も お 灸 の 手伝い を しろ ! |おまえ|||きゅう||てつだい|| 」 「 和尚 さま 。 おしょう| あんな 人 迷惑 なかみ なり なぞ 、 いっそ 死んで いただいた 方 が よい ので は 」 「 ばっ かも ~ ん ! |じん|めいわく|||||しんで||かた||||||| どんな 者 の 病気 でも 診る の が 、 医者 の つとめ じゃ ! |もの||びょうき||みる|||いしゃ||| 」 「 う ぅ ー 、 わかり ました 」    和尚 さん は 小 坊主 から お 灸 を 受け取る と 、 かみなり さま に お 灸 を すえ ました 。 ||-|||おしょう|||しょう|ぼうず|||きゅう||うけとる||||||きゅう||| 「 う お ~ っ 、 あ ちち ち 、 助けて ~! ||||||たすけて 」   あまり の 熱 さ に 、 かみなり さま は 大 暴れ です 。 ||ねつ||||||だい|あばれ| ところが お 灸 が 終わった とたん 、 かみなり さま は ニッコリ 笑い ました 。 ||きゅう||おわった|||||にっこり|わらい| 「 おおっ ! おお っ 痛み が なくなった 。 いたみ|| 体 が 軽く なった 。 からだ||かるく| お 灸 を すえたら 、 もう 治った ぞ ! |きゅう||||なおった| 」   さすが は 、 天下 の 名医 。 ||てんか||めいい 「 ありがとう ございました ! ・・・ で 、 お 代 の 方 は 、 さぞ お 高い んでしょう な ぁ 」 「 治療 代 か ? ||だい||かた||||たかい||||ちりょう|だい| 治療 代 は 、 確かに 高い ぞ 。 ちりょう|だい||たしかに|たかい| ・・・ じゃ が 、 金 はいらん 」 「 じゃあ 、 ただ な んです か ! ||きむ|||||| 」 「 いい や 、 金 の 代わり に 、 お前 に は して もらい たい 事 が 二 つ ある 。 ||きむ||かわり||おまえ||||||こと||ふた|| 一 つ は 、 この 粕尾 ( かす お ) で は 、 かみなり が よく 落ちて 、 人 が 死んだり 家 が 焼けたり して 困って おる 。 ひと||||かすお||||||||おちて|じん||しんだり|いえ||やけたり||こまって| これ から は 、 決して かみなり を 落とさ ない 事 」 「 へい 、 へい 、 それ は 、 おや すい事 で 」 「 二 つ 目 は 、 この 辺り を 流れる 粕尾 川 の 事 じゃ 。 |||けっして|||おとさ||こと||||||すいじ||ふた||め|||あたり||ながれる|かすお|かわ||こと| 粕尾 川 は 、 大雨 が 降る たび に 水 が あふれて 困って おる 。 かすお|かわ||おおあめ||ふる|||すい|||こまって| 川 が 、 村 の 中 を 流れて おる ため じゃ 。 かわ||むら||なか||ながれて||| この 川 の 流れ を 、 村 は ずれ に 変えて ほしい 。 |かわ||ながれ||むら||||かえて| これ が 、 治療 代 の 代わり じゃ 。 ||ちりょう|だい||かわり| どう だ ? 出来る か ? できる| 」 「 へい 。 そんな 事 でしたら 、 この かみなり に お 任せ くだせ え 」   どんな 無 茶 を 言わ れる か と 心配 して いた かみなり さま は 、 ホッ と して 言い ました 。 |こと||||||まかせ||||む|ちゃ||いわ||||しんぱい||||||ほっ|||いい| 「 それでは まず 、 粕尾 の 人 たち に 、 お 札 を 配って ください 。 ||かすお||じん||||さつ||くばって| お 札 を 家 の 門口 に 、 は って もらう のです 。 |さつ||いえ||かどぐち||||| それ から 粕尾 川 です が 、 流れ を 変えて ほしい 場所 に 、 さいか ち (→ マメ 科 の 落葉 高木 ) の 木 を 植えて ください 。 ||かすお|かわ|||ながれ||かえて||ばしょ||||まめ|か||らくよう|たかぎ||き||うえて| そう すれば 、 七 日 の うち に は きっと 。 ||なな|ひ||||| ・・・ で は 、 ありがとう ございます 」   かみなり さま は そう 言う と 、 天 に 登って しまい ました 。 ||||||||いう||てん||のぼって||

和尚 さん は 、 さっそく 村人 たち を お 寺 に 集めて お 札 を 配り ました 。 おしょう||||むらびと||||てら||あつめて||さつ||くばり| そして 山 の ふもと の 目立つ 位置 に 、 さいか ち の 木 を 植え ました 。 |やま||||めだつ|いち|||||き||うえ|

さて 、 その 日 は とても 良い 天気 でした が 、 にわかに 黒 雲 が わき起こった か と 思う と いなずま が 光り 、 ザーザー と 激しい 雨 が 降り 出し ました 。 ||ひ|||よい|てんき||||くろ|くも||わきおこった|||おもう||||ひかり|||はげしい|あめ||ふり|だし| まるで 、 天 の 井戸 ( いど ) が ひっくり返った 様 な 大 夕立 です 。 |てん||いど|||ひっくりかえった|さま||だい|ゆうだち| 村人 たち は 和尚 さん から 頂いた お 札 を はって 雨戸 を 閉めて 、 雨 が 止む の を ジッと 待って い ました 。 むらびと|||おしょう|||いただいた||さつ|||あまど||しめて|あめ||やむ|||じっと|まって|| こうして ちょうど 七 日 目 、 あれほど 激しかった 大雨 が ピタリ と 止んだ のです 。 ||なな|ひ|め||はげしかった|おおあめ||ぴたり||やんだ| 雨戸 を 開ける と 黒 雲 は なく なり 、 太陽 が 顔 を 出して い ます 。 あまど||あける||くろ|くも||||たいよう||かお||だして|| 不思議な 事 に 、 あれ だけ の 大雨 に も かかわら ず 、 かみなり は 一 つ も 落ち ませ ん でした 。 ふしぎな|こと|||||おおあめ|||||||ひと|||おち||| 「 あっ 、 あれ を 見ろ ! |||みろ 」   村人 が 指さす を 方 を 見る と 、 昨日 まで 流れて いた 粕尾 川 が きれいに 干上がり 、 流れ を 変えて 、 さいか ち の 木 の そば を ゆうゆうと 流れて いる で は あり ませ ん か 。 むらびと||ゆびさす||かた||みる||きのう||ながれて||かすお|かわ|||ひあがり|ながれ||かえて||||き|||||ながれて||||||| これ で もう 、 村 に 洪水 ( こうずい ) が 起こる 心配 は なく なり ました 。 |||むら||こうずい|||おこる|しんぱい|||| かみなり さま は 、 和尚 さん と の 約束 を 果たした のです 。 |||おしょう||||やくそく||はたした|

それ から と いう もの 、 粕尾 の 里 で は 落雷 の 被害 は 全く なくなった と いう 事 です 。 |||||かすお||さと|||らくらい||ひがい||まったく||||こと|

おしまい