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Fairy Tales, 手袋 を 買い に

手袋 を 買い に

手袋 を 買い に

寒い 冬 が 北方 から 、 狐 《 きつね 》 の 親子 の 棲 《 す 》 んで いる 森 へ も やって 来 ました 。 或朝 《 ある あさ 》 洞穴 《 ほら あな 》 から 子供 の 狐 が 出よう と し ました が 、 「 あっ 」 と 叫んで 眼 《 め 》 を 抑 《 おさ 》 え ながら 母さん 狐 の ところ へ ころげて 来 ました 。 「 母ちゃん 、 眼 に 何 か 刺さった 、 ぬいて 頂戴 《 ちょうだい 》 早く 早く 」 と 言い ました 。 母さん 狐 が びっくり して 、 あわてふためき ながら 、 眼 を 抑えて いる 子供 の 手 を 恐る恐る とりのけて 見 ました が 、 何も 刺さって は い ませ ん でした 。 母さん 狐 は 洞穴 の 入口 から 外 へ 出て 始めて わけ が 解 《 わか 》 り ました 。 昨夜 の うち に 、 真 白 な 雪 が どっさり 降った のです 。 その 雪 の 上 から お 陽 《 ひ 》 さま が キラキラ と 照 《 てら 》 して いた ので 、 雪 は 眩しい ほど 反射 して いた のです 。 雪 を 知ら なかった 子供 の 狐 は 、 あまり 強い 反射 を うけた ので 、 眼 に 何 か 刺さった と 思った のでした 。 子供 の 狐 は 遊び に 行き ました 。 真綿 《 まわた 》 の ように 柔 《 やわ ら 》 かい 雪 の 上 を 駈 《 か 》 け 廻 《 ま わ 》 る と 、 雪 の 粉 《 こ 》 が 、 しぶき の ように 飛び散って 小さい 虹 《 にじ 》 が す っと 映る のでした 。 する と 突然 、 うしろで 、 「 ど たど た 、 ざ ー っ 」 と 、 物 凄 《 ものすご 》 い 音 が して 、 パン粉 の ような 粉 雪 《 こなゆき 》 が 、 ふわ ー っと 子 狐 に おっかぶさって 来 ました 。 子 狐 は びっくり して 、 雪 の 中 に ころがる ように して 十 | 米 《 メートル 》 も 向こう へ 逃げ ました 。 何 だろう と 思って ふり返って 見 ました が 何も い ませ ん でした 。 それ は 樅 《 もみ 》 の 枝 から 雪 が なだれ 落ちた のでした 。 まだ 枝 と 枝 の 間 から 白い 絹糸 の ように 雪 が こぼれて い ました 。 間もなく 洞穴 へ 帰って 来た 子 狐 は 、 「 お 母ちゃん 、 お手 々 が 冷たい 、 お手 々 がち ん ちん する 」 と 、 言って 、 濡 《 ぬ 》 れて 牡丹 色 《 ぼ たんい ろ 》 に なった 両手 を 母さん 狐 の 前 に さしだし ました 。 母さん 狐 は 、 その 手 に 、 は ―― っと 息 を ふっかけて 、 ぬくとい 母さん の 手 で やんわり 包んで やり ながら 、 「 もう すぐ 暖 《 あたたか 》 く なる よ 、 雪 を さわる と 、 すぐ 暖 く なる もん だ よ 」 と 、 いい ました が 、 か あい い 坊や の 手 に 霜焼 《 しもやけ 》 が できて は かわいそうだ から 、 夜 に なったら 、 町 まで 行って 、 坊 《 ぼう 》 や の お手 々 にあう ような 毛糸 の 手袋 を 買って やろう と 思い ました 。

暗い 暗い 夜 が 風呂敷 《 ふろしき 》 の ような 影 を ひろげて 野原 や 森 を 包み に やって 来 ました が 、 雪 は あまり 白い ので 、 包んで も 包んで も 白く 浮び あがって い ました 。 親子 の 銀 狐 は 洞穴 から 出 ました 。 子供 の 方 は お 母さん の お腹 《 なか 》 の 下 へ はいり こんで 、 そこ から まんまるな 眼 を ぱち ぱち さ せ ながら 、 あっち や こっち を 見 ながら 歩いて 行き ました 。 やがて 、 行 手 《 ゆくて 》 に ぽっつり あかり が 一 つ 見え 始め ました 。 それ を 子供 の 狐 が 見つけて 、 「 母ちゃん 、 お 星 さま は 、 あんな 低い ところ に も 落ちて る の ねえ 」 と 、 きき ました 。 「 あれ は お 星 さま じゃ ない の よ 」 と 、 言って 、 その 時 母さん 狐 の 足 は すくんで しまい ました 。 「 あれ は 町 の 灯 《 ひ 》 な んだ よ 」 その 町 の 灯 を 見た 時 、 母さん 狐 は 、 ある 時 町 へ お 友達 と 出かけて 行って 、 と ん だめに あった こと を 思 出 《 おもい だ 》 し ました 。 お よし なさい って いう の も きか ないで 、 お 友達 の 狐 が 、 或 《 あ 》 る 家 の 家鴨 《 あひる 》 を 盗もう と した ので 、 お 百姓 《 ひゃくしょう 》 に 見つかって 、 さんざ 追い まくら れて 、 命からがら 逃げた こと でした 。 「 母ちゃん 何 して ん の 、 早く 行こう よ 」 と 、 子供 の 狐 が お腹 の 下 から 言う のでした が 、 母さん 狐 は どうしても 足 が すすま ない のでした 。 そこ で 、 しかたがない ので 、 坊 《 ぼう 》 や だけ を 一 人 で 町 まで 行か せる こと に なり ました 。 「 坊や お手 々 を 片方 お 出し 」 と 、 お 母さん 狐 が いい ました 。 その 手 を 、 母さん 狐 は しばらく 握って いる 間 に 、 可愛 いい 人間 の 子供 の 手 に して しまい ました 。 坊や の 狐 は その 手 を ひろげたり 握ったり 、 抓 《 つね 》 って 見たり 、 嗅 《 か 》 いで 見たり し ました 。 「 何だか 変だ な 母ちゃん 、 これ なあ に ? 」 と 、 言って 、 雪 あかり に 、 また その 、 人 間の手 に 変え られて しまった 自分 の 手 を しげしげ と 見つめ ました 。 「 それ は 人 間の手 よ 。 いい かい 坊や 、 町 へ 行ったら ね 、 たくさん 人間 の 家 が ある から ね 、 まず 表 に 円 《 まる 》 い シャッポ の 看板 の かかって いる 家 を 探 《 さ が 》 すんだ よ 。 それ が 見つかったら ね 、 トントン と 戸 を 叩 《 たた 》 いて 、 今晩 は って 言う んだ よ 。 そう する と ね 、 中 から 人間 が 、 す こうし戸 を あける から ね 、 その 戸 の 隙間 《 すきま 》 から 、 こっち の 手 、 ほら この 人 間の手 を さし入れて ね 、 この 手 に ちょうど いい 手袋 頂戴 って 言う んだ よ 、 わかった ね 、 決して 、 こっち の お手 々 を 出しちゃ 駄目 《 だめ 》 よ 」 と 、 母さん 狐 は 言いきかせ ました 。 「 どうして ? 」 と 、 坊や の 狐 は きき かえし ました 。 「 人間 は ね 、 相手 が 狐 だ と 解る と 、 手袋 を 売って くれ ない んだ よ 、 それどころか 、 掴 《 つ か 》 ま えて 檻 《 おり 》 の 中 へ 入れちゃ う んだ よ 、 人間 って ほんとに 恐 《 こわ 》 いもの な んだ よ 」 「 ふーん 」 「 決して 、 こっち の 手 を 出しちゃ いけない よ 、 こっち の 方 、 ほら 人 間の手 の 方 を さしだす んだ よ 」 と 、 言って 、 母さん の 狐 は 、 持って 来た 二 つ の 白 銅貨 《 はくどう か 》 を 、 人 間の手 の 方 へ 握ら せて やり ました 。 子供 の 狐 は 、 町 の 灯 《 ひ 》 を 目 あて に 、 雪 あかり の 野原 を よち よち やって 行き ました 。 始め の うち は 一 つ きり だった 灯 が 二 つ に なり 三 つ に なり 、 はては 十 に も ふえ ました 。 狐 の 子供 は それ を 見て 、 灯 に は 、 星 と 同じ ように 、 赤い のや 黄 いの や 青い の が ある んだ な と 思い ました 。 やがて 町 に はいり ました が 通り の 家々 は もう みんな 戸 を 閉 《 し 》 め て しまって 、 高い 窓 から 暖か そうな 光 が 、 道 の 雪 の 上 に 落ちて いる ばかりでした 。 けれど 表 の 看板 の 上 に は 大てい 小さな 電燈 が ともって い ました ので 、 狐 の 子 は 、 それ を 見 ながら 、 帽子 屋 を 探して 行き ました 。 自転車 の 看板 や 、 眼鏡 《 めがね 》 の 看板 や その他 いろんな 看板 が 、 ある もの は 、 新しい ペンキ で 画 《 か 》 かれ 、 或 《 あ 》 る もの は 、 古い 壁 の ように はげて い ました が 、 町 に 始めて 出て 来た 子 狐 に は それ ら の もの が いったい 何 である か 分ら ない のでした 。 とうとう 帽子 屋 が みつかり ました 。 お 母さん が 道 々 よく 教えて くれた 、 黒い 大きな シルクハット の 帽子 の 看板 が 、 青い 電燈 に 照 《 てら 》 さ れて かかって い ました 。 子 狐 は 教え られた 通り 、 トントン と 戸 を 叩き ました 。 「 今晩 は 」 する と 、 中 で は 何 かこ とこ と 音 が して い ました が やがて 、 戸 が 一 寸 ほど ゴロリ と あいて 、 光 の 帯 が 道 の 白い 雪 の 上 に 長く 伸び ました 。 子 狐 は その 光 が まばゆかった ので 、 めんくらって 、 まちがった 方 の 手 を 、―― お 母 さま が 出しちゃ いけない と 言って よく 聞か せた 方 の 手 を すきま から さ しこんで しまい ました 。 「 この お手 々 に ちょうど いい 手袋 下さい 」 すると 帽子 屋 さん は 、 お やおや と 思い ました 。 狐 の 手 です 。 狐 の 手 が 手袋 を くれ と 言う のです 。 これ は きっと 木 《 こ 》 の 葉 《 は 》 で 買い に 来た んだ な と 思い ました 。 そこ で 、 「 先 に お 金 を 下さ い 」 と 、 言い ました 。 子 狐 は すなおに 、 握って 来た 白 銅貨 を 二 つ 帽子 屋 さん に 渡し ました 。 帽子 屋 さん は それ を 人差指 《 ひとさしゆび 》 の さき に のっけて 、 カチ 合せて 見る と 、 チンチン と よい 音 が し ました ので 、 これ は 木 の 葉 じゃ ない 、 ほんとの お 金 だ と 思い ました ので 、 棚 《 たな 》 から 子供 用 の 毛糸 の 手袋 を とり出して 来て 子 狐 の 手 に 持た せて やり ました 。 子 狐 は 、 お 礼 を 言って また 、 もと 来た 道 を 帰り 始め ました 。 「 お 母さん は 、 人間 は 恐ろしい もの だって 仰有 《 おっしゃ 》 った が ちっとも 恐ろしく ない や 。 だって 僕 の 手 を 見て も どうも し なかった もの 」 と 、 思い ました 。 けれど 子 狐 は いったい 人間 なんて どんな もの か 見 たい と 思い ました 。 ある 窓 の 下 を 通り かかる と 、 人間 の 声 が して い ました 。 何という やさしい 、 何という 美しい 、 何と言う おっとり した 声 な んでしょう 。

「 ねむれ ねむれ 母 の 胸 に 、 ねむれ ねむれ 母 の 手 に ――」

子 狐 は その 唄 声 《 うたごえ 》 は 、 きっと 人間 の お 母さん の 声 に ちがいない と 思い ました 。 だって 、 子 狐 が 眠る 時 に も 、 やっぱり 母さん 狐 は 、 あんな やさしい 声 で ゆすぶって くれる から です 。 すると こんど は 、 子供 の 声 が し ました 。 「 母ちゃん 、 こんな 寒い 夜 は 、 森 の 子 狐 は 寒い 寒い って 啼 《 な 》 いて る でしょう ね 」 すると 母さん の 声 が 、 「 森 の 子 狐 も お 母さん 狐 の お 唄 を きいて 、 洞穴 《 ほら あな 》 の 中 で 眠ろう と して いる でしょう ね 。 さあ 坊や も 早く ねん ねしな さい 。 森 の 子 狐 と 坊や と どっち が 早く ねん ね する か 、 きっと 坊や の 方 が 早く ねん ね し ます よ 」 それ を きく と 子 狐 は 急に お 母さん が 恋しく なって 、 お 母さん 狐 の 待って いる 方 へ 跳 《 と 》 んで 行き ました 。 お 母さん 狐 は 、 心配 し ながら 、 坊や の 狐 の 帰って 来る の を 、 今 か 今 か と ふるえ ながら 待って い ました ので 、 坊や が 来る と 、 暖 《 あたたか 》 い 胸 に 抱きしめて 泣き たい ほど よろこび ました 。 二 匹 の 狐 は 森 の 方 へ 帰って 行き ました 。 月 が 出た ので 、 狐 の 毛なみ が 銀色 に 光り 、 その 足あと に は 、 コバルト の 影 が たまり ました 。 「 母ちゃん 、 人間 って ちっとも 恐 《 こわ 》 か ない や 」 「 どうして ? 」 「 坊 、 間違えて ほんとうの お手 々 出しちゃ った の 。 でも 帽子 屋 さん 、 掴 《 つ か 》 まえ や し なかった もの 。 ちゃんと こんな いい 暖 い 手袋 くれた もの 」 と 、 言って 手袋 の はまった 両手 を パンパンや って 見せ ました 。 お 母さん 狐 は 、 「 まあ ! 」 と 、 あきれ ました が 、 「 ほんとうに 人間 は いい もの かしら 。 ほんとうに 人間 は いい もの かしら 」 と 、 つぶやき ました 。

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寒い 冬 が 北方 から 、 狐 《 きつね 》 の 親子 の 棲 《 す 》 んで いる 森 へ も やって 来 ました 。 さむい|ふゆ||ほっぽう||きつね|||おやこ||せい||||しげる||||らい| cold|winter||north||fox|||parent and child||dwelling|||||||came|| The cold winter came from the north to the forest where a family of foxes lived. 或朝 《 ある あさ 》 洞穴 《 ほら あな 》 から 子供 の 狐 が 出よう と し ました が 、 「 あっ 」 と 叫んで 眼 《 め 》 を 抑 《 おさ 》 え ながら 母さん 狐 の ところ へ ころげて 来 ました 。 あるあさ|||ほらあな||||こども||きつね||でよう|||||||さけんで|がん|||よく||||かあさん|きつね|||||らい| |||caverne|||||||||||||||crier||||||||||||||| one morning||one morning|cave||cave|||||||||||||||||pressed|pressed||||||||rolled|| One morning, a young fox tried to come out of the cave, but it cried out 'Ah!' and rolling over, it went to its mother fox while covering its eyes. 「 母ちゃん 、 眼 に 何 か 刺さった 、 ぬいて 頂戴 《 ちょうだい 》 早く 早く 」 と 言い ました 。 かあちゃん|がん||なん||ささった||いただ たい||はやく|はやく||いい| mom|||||stuck in|pull out|please remove|please||||| 'Mom, something is stuck in my eye, please pull it out quickly, quickly!' it said. 母さん 狐 が びっくり して 、 あわてふためき ながら 、 眼 を 抑えて いる 子供 の 手 を 恐る恐る とりのけて 見 ました が 、 何も 刺さって は い ませ ん でした 。 かあさん|きつね||||||がん||おさえて||こども||て||おそるおそる||み|||なにも|ささって||||| |||||in a panic||||holding down||||||with hesitation|carefully removed|||||||||| The mother fox carefully removed the child's hand, which was covering their eyes in surprise and panic, but there was nothing stuck in it. 母さん 狐 は 洞穴 の 入口 から 外 へ 出て 始めて わけ が 解 《 わか 》 り ました 。 かあさん|きつね||ほらあな||いりぐち||がい||でて|はじめて|||かい||| |||||entrance||||||||understood||| The mother fox understood what was happening only after she came out of the entrance of the burrow. 昨夜 の うち に 、 真 白 な 雪 が どっさり 降った のです 。 さくや||||まこと|しろ||ゆき|||ふった| |||||||snow|||fell| A heavy snowfall of pure white snow fell last night. その 雪 の 上 から お 陽 《 ひ 》 さま が キラキラ と 照 《 てら 》 して いた ので 、 雪 は 眩しい ほど 反射 して いた のです 。 |ゆき||うえ|||よう||||きらきら||あきら|||||ゆき||くら しい||はんしゃ||| ||||||||||||shining|shining||||||dazzling||reflection||| The sun was shining brightly on the snow, so the snow was dazzlingly reflective. 雪 を 知ら なかった 子供 の 狐 は 、 あまり 強い 反射 を うけた ので 、 眼 に 何 か 刺さった と 思った のでした 。 ゆき||しら||こども||きつね|||つよい|はんしゃ||||がん||なん||ささった||おもった| ||||||||||||received||||||||| The little fox, who did not know snow, thought something had pierced its eyes due to the strong reflection it received. 子供 の 狐 は 遊び に 行き ました 。 こども||きつね||あそび||いき| The little fox went out to play. 真綿 《 まわた 》 の ように 柔 《 やわ ら 》 かい 雪 の 上 を 駈 《 か 》 け 廻 《 ま わ 》 る と 、 雪 の 粉 《 こ 》 が 、 しぶき の ように 飛び散って 小さい 虹 《 にじ 》 が す っと 映る のでした 。 まわた||||じゅう||||ゆき||うえ||く|||まわ|||||ゆき||こな||||||とびちって|ちいさい|にじ|||||うつる| raw silk|around|||soft|soft||||||||||circling||||||||||spray|||scattered||rainbow|rainbow||||| As it ran around on the soft snow, like cotton, the snow powder splashed like a spray, creating small rainbows that shimmered. する と 突然 、 うしろで 、 「 ど たど た 、 ざ ー っ 」 と 、 物 凄 《 ものすご 》 い 音 が して 、 パン粉 の ような 粉 雪 《 こなゆき 》 が 、 ふわ ー っと 子 狐 に おっかぶさって 来 ました 。 ||とつぜん||||||-|||ぶつ|すご|||おと|||ぱんこ|||こな|ゆき||||-||こ|きつね|||らい| ||suddenly|behind||suddenly||suddenly|||||tremendous|tremendous|||||bread crumbs|||||powdered snow||gently||||||fell on|| And suddenly, with a heavy thud, a thud, a thud, a thud! Then there was a tremendous noise, and snowflakes like breadcrumbs came swirling down on the fox cubs. 子 狐 は びっくり して 、 雪 の 中 に ころがる ように して 十 | 米 《 メートル 》 も 向こう へ 逃げ ました 。 こ|きつね||||ゆき||なか|||||じゅう|べい|めーとる||むこう||にげ| |||||||||rolled over|||||||||| The young fox was surprised and rolled about in the snow, fleeing ten meters away. 何 だろう と 思って ふり返って 見 ました が 何も い ませ ん でした 。 なん|||おもって|ふりかえって|み|||なにも|||| ||||looked back|||||||| I turned around, wondering what it was, but there was nothing there. それ は 樅 《 もみ 》 の 枝 から 雪 が なだれ 落ちた のでした 。 ||しょう|||えだ||ゆき|||おちた| ||fir tree|fir||||||avalanching|| It was the snow that had tumbled off a fir branch. まだ 枝 と 枝 の 間 から 白い 絹糸 の ように 雪 が こぼれて い ました 。 |えだ||えだ||あいだ||しろい|きぬいと|||ゆき|||| ||||||||silk thread||||||| The snow was still spilling from branch to branch like white silken threads. 間もなく 洞穴 へ 帰って 来た 子 狐 は 、 「 お 母ちゃん 、 お手 々 が 冷たい 、 お手 々 がち ん ちん する 」 と 、 言って 、 濡 《 ぬ 》 れて 牡丹 色 《 ぼ たんい ろ 》 に なった 両手 を 母さん 狐 の 前 に さしだし ました 。 まもなく|ほらあな||かえって|きた|こ|きつね|||かあちゃん|おて|||つめたい|おて|||||||いって|ぬら|||ぼたん|いろ||||||りょうて||かあさん|きつね||ぜん||| soon||||||||||hands||||||very||||||wet|||peony||peony|peony|||||||||||extended| Soon the little fox who returned to the cave said, "Mommy, my hands are cold, my hands are freezing," and he presented his wet, rose-colored hands in front of his mother fox. 母さん 狐 は 、 その 手 に 、 は ―― っと 息 を ふっかけて 、 ぬくとい 母さん の 手 で やんわり 包んで やり ながら 、 「 もう すぐ 暖 《 あたたか 》 く なる よ 、 雪 を さわる と 、 すぐ 暖 く なる もん だ よ 」 と 、 いい ました が 、 か あい い 坊や の 手 に 霜焼 《 しもやけ 》 が できて は かわいそうだ から 、 夜 に なったら 、 町 まで 行って 、 坊 《 ぼう 》 や の お手 々 にあう ような 毛糸 の 手袋 を 買って やろう と 思い ました 。 かあさん|きつね|||て||||いき|||ぬく と い|かあさん||て|||つつんで|||||だん|||||ゆき|||||だん|||||||||||||ぼうや||て||しも や|||||||よ|||まち||おこなって|ぼう||||おて||||けいと||てぶくろ||かって|||おもい| ||||||||||blew on|warm|||||gently|wrapped gently|give|while||soon|warm|warm||||||touch|||warm|||||||||||beloved||little boy||||chilblains|frostbite||||poor thing|||||||||boy|||||suitable for||woolen yarn|||||||| Mother fox puffed a breath on his hands and gently wrapped them with her warm hands while saying, "It will get warm soon. When you touch the snow, it becomes warm right away." However, she felt sorry for her cute boy's hands getting frostbite, so she thought about going to town at night to buy him some woolen gloves that would fit his hands.

暗い 暗い 夜 が 風呂敷 《 ふろしき 》 の ような 影 を ひろげて 野原 や 森 を 包み に やって 来 ました が 、 雪 は あまり 白い ので 、 包んで も 包んで も 白く 浮び あがって い ました 。 くらい|くらい|よ||ふろしき||||かげ|||のはら||しげる||つつみ|||らい|||ゆき|||しろい||つつんで||つつんで||しろく|うかび||| ||||wrapping cloth|wrapping cloth|||||spread|field||||wrap||||||||||||||||浮かび上がって|浮びあがって|| The dark, dark night spread a shadow like a wrapping cloth and came to envelop the fields and forests, but the snow was so white that it stood out even more no matter how much it wrapped around. 親子 の 銀 狐 は 洞穴 から 出 ました 。 おやこ||ぎん|きつね||ほらあな||だ| The parent and child silver fox came out of the cave. 子供 の 方 は お 母さん の お腹 《 なか 》 の 下 へ はいり こんで 、 そこ から まんまるな 眼 を ぱち ぱち さ せ ながら 、 あっち や こっち を 見 ながら 歩いて 行き ました 。 こども||かた|||かあさん||おなか|||した|||||||がん|||||||あっ ち||||み||あるいて|いき| ||||||||||||crawled in|crawled in|||perfectly round|||flutter||||||||||||| The child crawled under the mother's belly and went along, blinking its round eyes while looking here and there. やがて 、 行 手 《 ゆくて 》 に ぽっつり あかり が 一 つ 見え 始め ました 。 |ぎょう|て|||ぽっつ り|||ひと||みえ|はじめ| |||way||suddenly||||||| Soon, a single light began to appear in their path. それ を 子供 の 狐 が 見つけて 、 「 母ちゃん 、 お 星 さま は 、 あんな 低い ところ に も 落ちて る の ねえ 」 と 、 きき ました 。 ||こども||きつね||みつけて|かあちゃん||ほし||||ひくい||||おちて|||||| ||||||found||||||||||||||||| The little fox found it and said, "Mom, stars fall that low, don't they? I was told that the 「 あれ は お 星 さま じゃ ない の よ 」 と 、 言って 、 その 時 母さん 狐 の 足 は すくんで しまい ました 。 |||ほし|||||||いって||じ|かあさん|きつね||あし|||| ||||||||||||||||||shrunk back|| "That's not a star," she said, and at that moment, Mother Fox's legs became paralyzed. 「 あれ は 町 の 灯 《 ひ 》 な んだ よ 」   その 町 の 灯 を 見た 時 、 母さん 狐 は 、 ある 時 町 へ お 友達 と 出かけて 行って 、 と ん だめに あった こと を 思 出 《 おもい だ 》 し ました 。 ||まち||とう||||||まち||とう||みた|じ|かあさん|きつね|||じ|まち|||ともだち||でかけて|おこなって|||||||おも|だ|||| ||||light||||||||||||||||||||||||||suddenly||||||||| "That's the town's light," when she saw the town's light, Mother Fox recalled a time when she went to town with her friends and had a terrible experience. お よし なさい って いう の も きか ないで 、 お 友達 の 狐 が 、 或 《 あ 》 る 家 の 家鴨 《 あひる 》 を 盗もう と した ので 、 お 百姓 《 ひゃくしょう 》 に 見つかって 、 さんざ 追い まくら れて 、 命からがら 逃げた こと でした 。 ||||||||||ともだち||きつね||ある|||いえ||あひる|||ぬすもう|||||ひゃくしょう|||みつかって||おい|||いのちからがら|にげた|| |||||||would not listen|||||||a|||||domestic duck|domestic duck||to steal||||||farmer||was discovered|severely||chased||barely escaped|escaped|| Ignoring the warning to stop, a friend fox tried to steal a duck from a certain house, and was caught by a farmer, chased around, and barely managed to escape with her life. 「 母ちゃん 何 して ん の 、 早く 行こう よ 」 と 、 子供 の 狐 が お腹 の 下 から 言う のでした が 、 母さん 狐 は どうしても 足 が すすま ない のでした 。 かあちゃん|なん||||はやく|いこう|||こども||きつね||おなか||した||いう|||かあさん|きつね|||あし|||| ||||||||||||||||||||||||||couldn't move|| "Mom, what are you doing? Let's go." The little fox would say from under her belly, "I'll go to the beach, but I don't want to go to the beach. そこ で 、 しかたがない ので 、 坊 《 ぼう 》 や だけ を 一 人 で 町 まで 行か せる こと に なり ました 。 ||||ぼう|||||ひと|じん||まち||いか||||| ||it can't be helped||||||||||||||||| So, they have no choice but to send the young boy alone to the town. 「 坊や お手 々 を 片方 お 出し 」 と 、 お 母さん 狐 が いい ました 。 ぼうや|おて|||かたほう||だし|||かあさん|きつね||| The mother fox said, 'Young boy, show me one of your hands.' その 手 を 、 母さん 狐 は しばらく 握って いる 間 に 、 可愛 いい 人間 の 子供 の 手 に して しまい ました 。 |て||かあさん|きつね|||にぎって||あいだ||かわい||にんげん||こども||て|||| |||||||held||||cute|||||||||| While holding that hand for a while, the mother fox turned it into the hand of a cute human child. 坊や の 狐 は その 手 を ひろげたり 握ったり 、 抓 《 つね 》 って 見たり 、 嗅 《 か 》 いで 見たり し ました 。 ぼうや||きつね|||て|||にぎったり|つね|||みたり|か||い で|みたり|| |||||||spread out|gripped|pinch|pinch|||smelled||sniffed at||| The young fox opened and closed that hand, pinched it to see, and tried smelling it. 「 何だか 変だ な 母ちゃん 、 これ なあ に ? なんだか|へんだ||かあちゃん||| |strange||||| "What's so funny, Mom? What's this? 」 と 、 言って 、 雪 あかり に 、 また その 、 人 間の手 に 変え られて しまった 自分 の 手 を しげしげ と 見つめ ました 。 |いって|ゆき|||||じん|あいのて||かえ|||じぶん||て||||みつめ| ||||||||human hand|||||||||||| " He looked at the snow and his hand, which had been transformed into a human hand, with a penetrating gaze. 「 それ は 人 間の手 よ 。 ||じん|あいのて| いい かい 坊や 、 町 へ 行ったら ね 、 たくさん 人間 の 家 が ある から ね 、 まず 表 に 円 《 まる 》 い シャッポ の 看板 の かかって いる 家 を 探 《 さ が 》 すんだ よ 。 ||ぼうや|まち||おこなったら|||にんげん||いえ||||||ひょう||えん|||||かんばん||||いえ||さが|||| |||||||||||||||||||||hat||||||||look for|||| それ が 見つかったら ね 、 トントン と 戸 を 叩 《 たた 》 いて 、 今晩 は って 言う んだ よ 。 ||みつかったら||とんとん||と||たた|||こんばん|||いう|| ||if found||||||to knock|to knock||||||| そう する と ね 、 中 から 人間 が 、 す こうし戸 を あける から ね 、 その 戸 の 隙間 《 すきま 》 から 、 こっち の 手 、 ほら この 人 間の手 を さし入れて ね 、 この 手 に ちょうど いい 手袋 頂戴 って 言う んだ よ 、 わかった ね 、 決して 、 こっち の お手 々 を 出しちゃ 駄目 《 だめ 》 よ 」 と 、 母さん 狐 は 言いきかせ ました 。 ||||なか||にんげん|||こうしど||||||と||すきま|||||て|||じん|あいのて||さしいれて|||て||||てぶくろ|いただ たい||いう|||||けっして|||おて|||だしちゃ|だめ||||かあさん|きつね||いいきかせ| |||||||||sliding door||to open||||||gap|gap||||||||||to insert|||||||||||||||||||||to stick out|not good|not good||||||to tell firmly| 「 どうして ? 」 と 、 坊や の 狐 は きき かえし ました 。 |ぼうや||きつね|||| ||||||to return| 「 人間 は ね 、 相手 が 狐 だ と 解る と 、 手袋 を 売って くれ ない んだ よ 、 それどころか 、 掴 《 つ か 》 ま えて 檻 《 おり 》 の 中 へ 入れちゃ う んだ よ 、 人間 って ほんとに 恐 《 こわ 》 いもの な んだ よ 」 「 ふーん 」 「 決して 、 こっち の 手 を 出しちゃ いけない よ 、 こっち の 方 、 ほら 人 間の手 の 方 を さしだす んだ よ 」 と 、 言って 、 母さん の 狐 は 、 持って 来た 二 つ の 白 銅貨 《 はくどう か 》 を 、 人 間の手 の 方 へ 握ら せて やり ました 。 にんげん|||あいて||きつね|||わかる||てぶくろ||うって||||||つか|||||おり|||なか||いれちゃ||||にんげん|||こわ||||||ふ - ん|けっして|||て||だしちゃ|||||かた||じん|あいのて||かた||||||いって|かあさん||きつね||もって|きた|ふた|||しろ|どうか||||じん|あいのて||かた||にぎら||| ||||||||to understand||||sold|||||not only|to grasp|||||cage|||||will put||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||copper coin|white rabbit||||||||||| 子供 の 狐 は 、 町 の 灯 《 ひ 》 を 目 あて に 、 雪 あかり の 野原 を よち よち やって 行き ました 。 こども||きつね||まち||とう|||め|||ゆき|||のはら|||||いき| 始め の うち は 一 つ きり だった 灯 が 二 つ に なり 三 つ に なり 、 はては 十 に も ふえ ました 。 はじめ||||ひと||||とう||ふた||||みっ|||||じゅう|||| ||||||||||||||||||finally||||| 狐 の 子供 は それ を 見て 、 灯 に は 、 星 と 同じ ように 、 赤い のや 黄 いの や 青い の が ある んだ な と 思い ました 。 きつね||こども||||みて|とう|||ほし||おなじ||あかい|の や|き|||あおい|||||||おもい| |||||||||||||||||yellow|||||||||| やがて 町 に はいり ました が 通り の 家々 は もう みんな 戸 を 閉 《 し 》 め て しまって 、 高い 窓 から 暖か そうな 光 が 、 道 の 雪 の 上 に 落ちて いる ばかりでした 。 |まち|||||とおり||いえいえ||||と||しま|||||たかい|まど||あたたか|そう な|ひかり||どう||ゆき||うえ||おちて|| けれど 表 の 看板 の 上 に は 大てい 小さな 電燈 が ともって い ました ので 、 狐 の 子 は 、 それ を 見 ながら 、 帽子 屋 を 探して 行き ました 。 |ひょう||かんばん||うえ|||たいてい|ちいさな|いなずま とも||||||きつね||こ||||み||ぼうし|や||さがして|いき| ||||||||mostly||light||burning||||||||||||||||| 自転車 の 看板 や 、 眼鏡 《 めがね 》 の 看板 や その他 いろんな 看板 が 、 ある もの は 、 新しい ペンキ で 画 《 か 》 かれ 、 或 《 あ 》 る もの は 、 古い 壁 の ように はげて い ました が 、 町 に 始めて 出て 来た 子 狐 に は それ ら の もの が いったい 何 である か 分ら ない のでした 。 じてんしゃ||かんばん||めがね|||かんばん||そのほか||かんばん|||||あたらしい|ぺんき||が|||ある|||||ふるい|かべ|||||||まち||はじめて|でて|きた|こ|きつね|||||||||なん|||ぶん ら|| ||sign||glasses|glasses||sign||other things||sign||||||paint||written||||||||||||faded||||||for the first time||||||||||||||||did not understand|| とうとう 帽子 屋 が みつかり ました 。 |ぼうし|や||| ||||was found| お 母さん が 道 々 よく 教えて くれた 、 黒い 大きな シルクハット の 帽子 の 看板 が 、 青い 電燈 に 照 《 てら 》 さ れて かかって い ました 。 |かあさん||どう|||おしえて||くろい|おおきな|||ぼうし||かんばん||あおい|いなずま とも||あきら|||||| ||||||||||silk hat|||possessive particle||||||||||||ました 子 狐 は 教え られた 通り 、 トントン と 戸 を 叩き ました 。 こ|きつね||おしえ||とおり|とんとん||と||たたき| 「 今晩 は 」   する と 、 中 で は 何 かこ とこ と 音 が して い ました が やがて 、 戸 が 一 寸 ほど ゴロリ と あいて 、 光 の 帯 が 道 の 白い 雪 の 上 に 長く 伸び ました 。 こんばん||||なか|||なん||||おと|||||||と||ひと|すん||ごろり|||ひかり||おび||どう||しろい|ゆき||うえ||ながく|のび| ||||||||some|||||||||||||one inch||with a thud||opened|||band||||||||||| 子 狐 は その 光 が まばゆかった ので 、 めんくらって 、 まちがった 方 の 手 を 、―― お 母 さま が 出しちゃ いけない と 言って よく 聞か せた 方 の 手 を すきま から さ しこんで しまい ました 。 こ|きつね|||ひかり||||||かた||て|||はは|||だしちゃ|||いって||きか||かた||て||||||| ||||||dazzling||dazzled|wrong|||||||||||||||||||||||inserted|| 「 この お手 々 に ちょうど いい 手袋 下さい 」   すると 帽子 屋 さん は 、 お やおや と 思い ました 。 |おて|||||てぶくろ|ください||ぼうし|や||||||おもい| ||||||||||||||oh my||| 狐 の 手 です 。 きつね||て| 狐 の 手 が 手袋 を くれ と 言う のです 。 きつね||て||てぶくろ||||いう| これ は きっと 木 《 こ 》 の 葉 《 は 》 で 買い に 来た んだ な と 思い ました 。 |||き|||は|||かい||きた||||おもい| そこ で 、 「 先 に お 金 を 下さ い 」 と 、 言い ました 。 ||さき|||きむ||くださ|||いい| |||||||please give|||| 子 狐 は すなおに 、 握って 来た 白 銅貨 を 二 つ 帽子 屋 さん に 渡し ました 。 こ|きつね|||にぎって|きた|しろ|どうか||ふた||ぼうし|や|||わたし| |||honestly||||||||||||| 帽子 屋 さん は それ を 人差指 《 ひとさしゆび 》 の さき に のっけて 、 カチ 合せて 見る と 、 チンチン と よい 音 が し ました ので 、 これ は 木 の 葉 じゃ ない 、 ほんとの お 金 だ と 思い ました ので 、 棚 《 たな 》 から 子供 用 の 毛糸 の 手袋 を とり出して 来て 子 狐 の 手 に 持た せて やり ました 。 ぼうし|や|||||ひとさしゆび|||||||あわせて|みる|||||おと|||||||き||は|||||きむ|||おもい|||たな|||こども|よう||けいと||てぶくろ||とりだして|きて|こ|きつね||て||もた||| ||||||index finger|index finger||||placed|clicked|clicked|||good sound|||||||||||||||real||||||||shelf|shelf|||||||||took out|||||||held||| 子 狐 は 、 お 礼 を 言って また 、 もと 来た 道 を 帰り 始め ました 。 こ|きつね|||れい||いって|||きた|どう||かえり|はじめ| 「 お 母さん は 、 人間 は 恐ろしい もの だって 仰有 《 おっしゃ 》 った が ちっとも 恐ろしく ない や 。 |かあさん||にんげん||おそろしい|||あお ゆう|||||おそろしく|| |||||terrifying|||to say|said|||not at all||| だって 僕 の 手 を 見て も どうも し なかった もの 」 と 、 思い ました 。 |ぼく||て||みて|||||||おもい| けれど 子 狐 は いったい 人間 なんて どんな もの か 見 たい と 思い ました 。 |こ|きつね|||にんげん|||||み|||おもい| ある 窓 の 下 を 通り かかる と 、 人間 の 声 が して い ました 。 |まど||した||とおり|||にんげん||こえ|||| 何という やさしい 、 何という 美しい 、 何と言う おっとり した 声 な んでしょう 。 なんという||なんという|うつくしい|なんという|||こえ|| what a||||what a|gentle||||

「 ねむれ   ねむれ 母 の 胸 に 、 ねむれ   ねむれ 母 の 手 に ――」 ||はは||むね||||はは||て| sleep|||||||||||

子 狐 は その 唄 声 《 うたごえ 》 は 、 きっと 人間 の お 母さん の 声 に ちがいない と 思い ました 。 こ|きつね|||うた|こえ||||にんげん|||かあさん||こえ||||おもい| ||||song||singing voice||||||||||surely is||| だって 、 子 狐 が 眠る 時 に も 、 やっぱり 母さん 狐 は 、 あんな やさしい 声 で ゆすぶって くれる から です 。 |こ|きつね||ねむる|じ||||かあさん|きつね||||こえ||||| ||||||||||||||||shakes||| すると こんど は 、 子供 の 声 が し ました 。 |||こども||こえ||| 「 母ちゃん 、 こんな 寒い 夜 は 、 森 の 子 狐 は 寒い 寒い って 啼 《 な 》 いて る でしょう ね 」   すると 母さん の 声 が 、 「 森 の 子 狐 も お 母さん 狐 の お 唄 を きいて 、 洞穴 《 ほら あな 》 の 中 で 眠ろう と して いる でしょう ね 。 かあちゃん||さむい|よ||しげる||こ|きつね||さむい|さむい||てい|||||||かあさん||こえ||しげる||こ|きつね|||かあさん|きつね|||うた|||ほらあな||||なか||ねむろう||||| |||||||||||||crying|||||||||||||||||||||||listening to|||||||try to sleep||||| さあ 坊や も 早く ねん ねしな さい 。 |ぼうや||はやく||| |||||sleep| 森 の 子 狐 と 坊や と どっち が 早く ねん ね する か 、 きっと 坊や の 方 が 早く ねん ね し ます よ 」   それ を きく と 子 狐 は 急に お 母さん が 恋しく なって 、 お 母さん 狐 の 待って いる 方 へ 跳 《 と 》 んで 行き ました 。 しげる||こ|きつね||ぼうや||||はやく||||||ぼうや||かた||はやく||||||||||こ|きつね||きゅうに||かあさん||こいしく|||かあさん|きつね||まって||かた||と|||いき| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||missed||||||||||jumped|||| お 母さん 狐 は 、 心配 し ながら 、 坊や の 狐 の 帰って 来る の を 、 今 か 今 か と ふるえ ながら 待って い ました ので 、 坊や が 来る と 、 暖 《 あたたか 》 い 胸 に 抱きしめて 泣き たい ほど よろこび ました 。 |かあさん|きつね||しんぱい|||ぼうや||きつね||かえって|くる|||いま||いま|||||まって||||ぼうや||くる||だん|||むね||だきしめて|なき|||| ||||||||||||||||||||tremble|||||||||||||||||||joy| 二 匹 の 狐 は 森 の 方 へ 帰って 行き ました 。 ふた|ひき||きつね||しげる||かた||かえって|いき| 月 が 出た ので 、 狐 の 毛なみ が 銀色 に 光り 、 その 足あと に は 、 コバルト の 影 が たまり ました 。 つき||でた||きつね||けなみ||ぎんいろ||ひかり||あしあと|||こばると||かげ||| ||||||fur||silver||||footprint|||cobalt||||| 「 母ちゃん 、 人間 って ちっとも 恐 《 こわ 》 か ない や 」 「 どうして ? かあちゃん|にんげん|||こわ||||| 」 「 坊 、 間違えて ほんとうの お手 々 出しちゃ った の 。 ぼう|まちがえて||おて||だしちゃ|| ||real||||| でも 帽子 屋 さん 、 掴 《 つ か 》 まえ や し なかった もの 。 |ぼうし|や||つか||||||| ちゃんと こんな いい 暖 い 手袋 くれた もの 」 と 、 言って 手袋 の はまった 両手 を パンパンや って 見せ ました 。 |||だん||てぶくろ||||いって|てぶくろ|||りょうて||ぱんぱん や||みせ| ||||||||||||fitted snugly|||clapping||| お 母さん 狐 は 、 「 まあ ! |かあさん|きつね|| 」 と 、 あきれ ました が 、 「 ほんとうに 人間 は いい もの かしら 。 |||||にんげん|||| |astonished||||||||I wonder ほんとうに 人間 は いい もの かしら 」 と 、 つぶやき ました 。 |にんげん||||||| |||||||murmured|