JIN -仁 - 完结 编 #02
( 茜 ) 今 評判 の 安 道 名 津 です よ
脚気 に も 効く 体 に いい お 菓子 だ よ
( 良 順 ) 大 人気 です な 脚気 に 効く 菓子 は
( 仁 ) はい 医学 所 の ほう でも
効用 を 説いて もらう と 助かり ます
実は ある お方 が
脚気 の 疑い が ございまして
あん ドーナツ を 献上 して いただき たい のです
どなた に です か ?
は あ 和 宮 って 人 です か
左 様 で ございます
松本 先生 の 患者 さ …
それ って こ ッ 皇女 ・ 和 宮 !
口 に する の も 畏れ多い お方 で ございます ぞ →
和 宮様 は 亡き 帝 の 内 親王 様 →
上 様 の 御 台所 で あら せ られる 最も 高貴な お方 で ございます
実は 大 の 甘い 物好きで いらっしゃい まして な
近々 お忍び で 田 之助 の 芝居 を 楽しま れる
よい 折 が ございます ので ぜひ その 席 で
田 之助 さん の ?
私 は これ を 皮切り に 先生 を 奥 医師 に と も
ちょっと 待って ください うん ?
( 福田 ) 仁 友 堂 の もの を
本道 の もの と して 和 宮様 に ご 献上 さ れる の は
( 多紀 ) 無論
本道 なり の 工夫 を 施す つもりじゃ
お 主 は これ に 何 が 入って おる の か 述べれば それ で よい
しかし ≪( 多紀 ) 仁 友 堂 は
お 主 の 本道 で 食 うて おる そうで は ない か
教えて もろう て も 罰 は 当たら ぬ と 思う が のう
あの 何 か …
( 佐分利 ) 和 宮様 に
あん ドーナツ を 献上 する こと が 決まった んです
( 山田 ) あ ~ ッ あ ~ ッ あ ~ ッ
皆さん し ~ ッ
くれぐれも 秘密で って 言わ れて ます んで
それ に まだ やる と 決まった わけじゃ あり ませ ん から
え ッ …
いや …
あん ドーナツ の 作り 方 を 松本 先生 に 渡して しまえば
それ で 済む わけです し
おっしゃる とおり で ございます
大奥 は しきたり や 人 と の 交わり が 難しく
些細 な そそう が 命取り に なる 場所 かかわり に なら ぬ の が 一 番
何 言う か !
≪( 山田 ) 和 宮様 で っせ
( 咲 ) 何 か ご 心配な こと が ?
いい んです かね
私 みたいな 人間 が 大奥 に 出入り したり
奥 医師 に なったり と か
当代 一 の 名医 で いらっしゃい ます のに
身元 も 明か せ ない わけだ し
ある 日 突然 い なく なる こと も ある かも しれ ない し
あ ッ …
左 様 で ございます よ ね
先生 は いつか 必ず
いらっしゃら なく なって しまう ので ございます もの ね
すぐに どうこう って こと は ない と 思う んです けど
もう 二 年 も このまま な んだ し
私 と した こと が つい 忘れて おり ました
宮様 の 献上 の 件 は
先生 の よろしき ように なさる の が 一 番 か と 存じ ます
あ ッ …
( 勝 ) この 操 練 所 も 取り 潰し って こと に なり そうだ よ
( 龍 馬 ) 悪い が は 幕府 の 石 頭 ぜ よ →
亀 弥 太 や 北 添 が 池田 屋 で 捕まった が は
やむ に やま れ ぬ あいつ ら の 憤り ゆえ じゃ
それ を 十 把 一 から げ に
攘夷 派 の 巣 くつ じゃ ち
ここ で 皆 で 生きて いけりゃ いい と 思って た んだ けど な
故郷 に 帰れ ねえ 奴 も 多かった から よ
《 もし かして 先生 は ワシ ら の 運命 知 っち ょる が かえ ?》
ワシ ら の 故郷 に は
陸 も 海 も 続 いちゅう
帰れ ん ちゅう が は
まっ と 違う が じゃ
五百 両 !?
南方 様 の ご 注文 は 全て 特別な もの ばかり で ございます し
もう 少し 何とか お 支払い し ましょう
そんな 薩摩 藩 から もらった 治療 代 全部 なくなっちゃ い ます よ
大丈夫です 私 が やりくり いたし ます
でも どう やって
先生 は どうぞ お 先 に 患者 が まいって る や も しれ ませ ぬ
はい
〈 仁 友 堂 に は 金 が ない 〉
〈 たまの 大きな 治療 費 は 医療 道具 に 消え 〉
〈 ペニシリン の 製造 は いまだ 〉
〈 濱口 様 の 援助 に 頼りきり 〉
〈 先生 達 に は 一 度 も 給料 を 払えて い ない 〉
〈 もちろん 咲 さん に も 〉
〈 あん ドーナツ が 御用達 に なれば 仁 友 堂 は 潤う 〉
〈 献上 は ありがたい と いう しか ない 話 だ 〉
〈 だけど ここ の ところ の 俺 は 〉
〈 あまりに も 歴史 上 の 人物 に かかわり すぎて いる 〉
〈 この上 和 宮様 に 会ったり でも したら …〉
〈 こう なって くる と 何だか もう 〉
〈 ここ に 骨 を うずめろ と 言わ れて いる 気 が して くる 〉
〈 江戸 は いい ところ だ けど 〉
〈 ここ で 死んで も いい と 思える か と 聞か れれば 〉
〈「 いい 」 と は 言い切る こと は でき ない 〉
〈 俺 に も 残して きた 親 も いれば 〉
〈 友達 も いる 〉
〈 それ に ここ に いる かぎり 〉
〈 未来 が どう なった か を 知る こと は でき ない 〉
〈 それ でも 〉
〈「 いい 」 と 言い切れる 日 など 来る のだろう か 〉
野 風 さん
先生 が ずっと …
〈 そんな 日 は たぶん …〉
〈 永遠に 来 ない ような 気 が した 〉
長屋 を 追い出さ れた んです か !?
( 野 風 ) 色 目 を 使って いる と 言わ れ ん して なあ
昔 の 旦那衆 に でも 職 を 口利き して もらえ ぬ か と
あの …
お 妾 さん に なる なんて 考えて ないで す よ ね
ちゃんと 堅気に なり ん す
先生 に いただいた 命
大事に 使い ん すよ
あの よかったら 仁 友 堂 で 働き ませ ん か ?
そんな こと 言って も お 給料 と か 出せ ない んです けど
その … 食べる くらい は 困ら ない し
ありがたい お 話 であり ん すけ ん ど
先生 は あ ちき に
何 ゆえ そこ まで ご 親切に
それ は …
野 風 さん に 幸せに なって ほしい から です
せっかく 助ける こと できた んです から
へえ
先生 すっかり 遅く なって しまい …
咲 さ ん
野 風 さん 何 ゆえ ここ に ?
あの … 咲 さ ん 実は
まさか また 岩 が !?
相変わらず で お ざん す なあ 咲 様 は
落ち着き 先 が 決まり ん したら すぐに 出て いき ん す ゆえ
変な 遠慮 は なさら ないで ください
困った とき は お互いさまで ございます
できる だけ の こと は いたし ん す ので
あ ッ おはよう ございます
おはよう ございます
よろしゅう お 願い いた しん す
( 八木 ) こちら こそ
野 風 さん 頑張って くれて ます ね
先生 少し 出て も よろしい です か ?
はい
先生 献上 の 件 は どう なさる お つもりで ?
ちょっと まだ
ちょっと ふんぎり が
お 心 が 決まり ましたら 早 めに お 知らせ ください ませ
また 今日 は 多い です ねえ 人 が 増え ました ゆえ
ああ なるほど
あの あれ は お いくら でしょう か
まけて 一 両 くらい で
一 両 …
( 橘 ) 咲 で は ない か
こんな ところ で 何 を ?
南方 先生 は その …
ご存じ な の か ? お前 が このような こと を して いる の は
つまら ぬ こと で お 心 を 煩わ せ たく は ない のです
よい 話 も 来て おり ます
もう しばし の こと か と 思い ます ので
( 田 之助 ) 松本 先生 が まだ 返事 ない って こぼして たよ
何 迷って ん だい ? 先生 は
作り 方 を 教えて しまえば 誰 でも 作れる もの です し
欲 が ない ねえ
あん が とよ 先生
あん ドーナツ の 作り 方 なんて どう する んです か ?
芝居 ん 中 に こいつ を 作る 場面 を 入れよう と 思って さ
ウケ が よ さ そうじゃ ねえ か
張り切って る んです ね 田 之助 さん
あの 方 は 日本 で 一 番 寂しい お姫様 だ から ね
寂しい ?
相 思 相愛 の 許婚 が いた の に 公 武 合体 だ なん だって
生まれ育った 京 から
言葉 も しきたり も 違う 大奥 に 連れて こ られて さ
もう 一生 故郷 に は 戻れ ねえ んだ よ
一生 ?
つかの間 でも 笑わ して やりて え じゃ ねえ か
そう いえば 野 風 さん お 故郷 は どこ な んです か ?
あ ちき に は 故郷 など あり ん せ ん よ
≪( 佐分利 ) またまた もう 花魁 や ない んです から
吉原 に 行く 前 に 親 は 死に ん したし
故郷 と 呼べる ような ところ は …
( 野 風 ) あん れ …
先生 ?
《( 未来 ) いい よ 仁 先生 》
故郷 が ない んです ね 野 風 さん も
( 佐分利 ) 先生 !
松本 先生 ! 松本 先生 おら れ ます か ?
あん ドーナツ の 献上 やる こと に し はった んで っか
はい 松本 先生 に 先ほど 申し上げて き ました
そう で っか よかった
当日 の 同行 は 女性 を と の こと です ので
咲 さ ん お 願い でき ます か ? は ッ はい
もっと よい 小麦 や 玄米 を 用意 いたし ましょう
では 卵 や 砂糖 を 使って もっと 色々 試して み ましょう か
≪( 山田 ) より やわらかく でき ま する か ?
玄米 の 潰し 方 を 変えて は いかがでしょう
≪( 佐分利 ) 揚げ 具合 も 変えて み ましょう
色々 試して み ましょう か
宮様 に 脚気 に 効く 菓子 を と 進言 した ところ
仁 友 堂 から あん ドーナツ を 献上 する こと が
既に 決まって おる と 告げ られた が
それ は … まったく
献上 を 失敗 に 終わら せよ
それ は …
いよいよ 明日 で ございます な
はい
先生 着物 ちゃんと した の 持って はり ました っけ ?
え ッ … これ じゃ 駄目な んです か ?
相手 は 宮様 で っせ
こんな いい 着物 どうした ん です か ?
兄 に 借り ました
あ ッ ちょうど
ありがとう ございます
あの … 何 ゆえ 急に 献上 を お 決め に ?
初め は あまり 気乗り も せ ぬ ご 様子 でした のに
和 宮様 は 故郷 に 戻れ ない 方 だって 聞いた んです
ある 日 突然
全然 違う 世界 に ほうり込ま れた ん だって
それ を 聞いたら 自分 で 持っていき たく なった と いう か
おじさん が 何 青臭い こと 言って ん だって 感じ です よ ね
いえ 分かり ます
それ に もっと しっかり し なくて は いけない と 思った んです
野 風 さん の こと も ある し
野 風 さん ?
野 風 さん も 実家 が ない らしくて
他 で 働く の も 難し そうだ し
だったら ここ に 居て いただく の が 一 番 だ と 思う んです
そう なる と 自然 と お 金 も かかる わけで
野 風 さん は 未来 さん の ご 先祖 や も しれ ぬ 方 です もの ね
あの 手術 が あって 未来 は もう
生まれ なく なった の かも しれ ない し
もう どう する こと も でき ない かも しれ ない けど
せめて 野 風 さん に は 幸せに なって ほしい と いう か
それ が 未来 に できる 唯一 の 罪滅ぼし と いう か
野 風 さん の 人生 に よって は
新しい 未来 が 生まれる 可能 性 が ある かも しれ ない し
咲 さ ん ?
あの 少し …
その … 少し
情けなく なって しまい まして
情けない ?
私 ども で 変え られ なかった お 気持ち を
野 風 さん いえ …
未来 さん は たやすく 変えて おしまい に なら れる のだ と 思う と
あ ッ …
少し 少し です よ
〈 そこ に あった の は 俺 と 咲 さん の 生活 の 足跡 だった 〉
〈 咲 さん は 着物 や 持ち物 を 売って いた 〉
〈 日々 の 生活 に 消えて いく 些細 な 〉
〈 だけど 欠かせ ない もの の ため に 〉
《 兄 に 借り ました 》
《 あ ッ ちょうど 》
《 少し 情けなく なって しまい まして 》
〈 いつ 消えて しまう かも しれ ない 男 の 〉
〈 たった 一 日 の ため に 〉
〈 でも だからといって 〉
〈 俺 は どう すれば いい んだろう 〉
〈 こんな 中途半端な 身の上 で 〉
〈 中途半端な 気持ち で 〉
〈 何 を 言えば いい んだろう 〉
咲 さ ん
あの …
浅はかな こと を 申し上げ ました
野 風 さん の 手術 を 願った の は 私 で ございます
責め は 私 に も ございます のに
すみません でした
咲 さ ん
さあ 作り ましょう
≪( 山田 ) どう か なさ い ました か ?
ずっと 不思議に 思って いた ので ござ りん す
なぜ 先生 も 咲 様 も
かよう に ご 親切に して くだ さん す の か
早速 お 毒 味 役 に まわして 和 宮様 に 食べて いただき ましょう
はい
宮様 で ございます
( 和 宮 ) 良 順 そこ に ある 箱 を もう 少し 近う へ
中 を
( 御 年寄 ) 宮様 ! それ は まだ 毒 味 も 済んで おり ませ ぬ
これ は お 菓子 で は ない お 薬 であろう
良 順 その者 達 は ?
あん ドーナツ を 考案 いたし ました 南方 と いう 医師 と →
その 弟子 で ございます
面 を 上げよ
先生 一 度 目 は 面 を 上げて は なり ませ ぬ
え ッ !?
え ッ ?
おいしい お 薬 で あり ました
あ … はい !
宮様
お 気 に 召して いただけた ようです ね
はい
( 拍子木 が 鳴る )
宮様 !?→
いかがな さ い ました 宮様 !→
宮様 ッ !
御簾 を 下ろせ !
胸 が 胸 が …
治療 し やすい 別室 へ 移し 急ぎ 油 を お 飲ま せ せよ
宮様 宮様 …
≪( 御 年寄 ) 宮様 !
松本 先生 一体 何 が ?
宮様 は 毒 を 盛ら れた ようで ございます
症状 から して 恐らくは ヒ素
あの どのような 治療 を ? 油 を 飲ま せ その後 ミョウバン の 粉 を
胃 の 腑 を 洗って は どう でしょう い … 胃 の 腑 を 洗う !?
胃 の 中 に 入って る 毒 を 洗いだす の が
最も はやく 確実な 治療 だ と 思い ませ ん か ?
しかし そのような 治療 は 誰 も でき ませ ぬ し
奥 医師 で は ない 先生 が 宮様 を … 方法 は お 教え し ます
奥 医師 で も ない 者 に お 任せ する こと は でき ませ ぬ
この 者 は 指示 を する のみ 治療 を する の は 私 で ございます
今 は 何より 宮様 の 命 を 救う こと が 大事
お 含み ください ませ !
宮様 を 寝 台 に 左側 を 下 に して 寝か せて ください
もう 少し 上 に
止めて ください
その あたり が 胃 の 中 10 センチ
あ ッ … 3 寸 程度 の 位置 に くる はずです
口 の ところ に 印 を つけて ください は い
その 先端 に 油 を 塗り つけ ゴム 管 を 挿入 して ください
( 良 順 ) お 開け ください
印 の ところ まで 入り ました ぞ
スポイト を 管 に つないで 胃 の 中 の もの を 吸引 して ください
よし
もう 何も 出 ませ ぬ で は 洗浄 に 移り ます
スポイト を 抜き 漏斗 を つないで ください
止めて ください その 位置 から 湯 を 流し 入れ ます
一 回 の 量 は 一 合 から 一 合 半 で
急激に 入れる と おう吐 を 誘発 し ます ので
ゆっくり お 願い し ます
終わり ました
では 管 を 下 へ はい
何と いい んです それ を
液 が 透明に なる まで 繰り返して ください
南方 先生
透明に なり ました ぞ
続いて これ を … 炭 を 溶かした 湯 に 下剤 を 混ぜた もの です
残って る 毒 を 炭 に 吸着 さ せ 体 外 に 排出 さ せ ます
もう 大丈夫です あと は 自然に 排せつ さ れる の を 待ち ましょう
ありがとう ございました いえ 間に合って よかった です
≪( 女 中 ) 橘 咲 吟味 の ため そ なた を 捕 縛 す !
咲 さ ん 南方 仁 →
吟味 の ため そ なた を 捕 縛 す !
お 待ち くだされ これ は 一体 何の まね だ !
宮様 は その者 の 菓子 を 召し上がら れ ました
菓子 は 毒 味 した で は ない か
毒 味 前 の もの も 召し上がら れて おいで です
あの とき の もの が 原因 なら 症状 が 出る まで に 時 が たち すぎて おる
その者 は 奥 医師 である 松本 殿 で すら
知ら ぬ 治療 を 示して みせ ました →
自ら 毒 を 盛り 力 を 示し
出世 を たくらんだ の や も しれ ませ ぬ
それ は あまり の お 言葉
先生 は ここ に 来る こと すら 畏れ多い と 悩ま れて おり ました
先生 は … この 者 ども を お 目付 へ
私 達 は 何も して ませ ん
その 人 だけ でも 離して ください
咲 さ ん 咲 さ ん !
咲 さ ん !
いずれ に せよ あの 者 ら は 吟味 さ れる べきです
そう でしょう な
毒 味 役 そのほか 大奥 の 皆様 方 も 等しく
牢 入り
おい ッ
大 牢 二 人 の うち 入れ墨 一 人 ~
早く 入れ
≪( 囚人 達 ) 入れ墨 さあ 来い ! まけて やる ぞ →
新 入り さあ 来い …
( 不気味な 声 が 続く )
( 牢 名主 ) よく 来た なあ 新 入り
( 戸 を 叩く 音 )
≪( 橘 ) 誰 か !
誰 か ある !
≪( 牢 名主 ) お前 ら !
命 の ツル は 持ってきた か ?
≪( 新 囚人 ) へ い 二 両 二 分 で →
着物 に 縫い 込んで あり ます
しけて や がん な
≪( 牢 名主 ) お前 は ?
あの ツル って ?
俺 達 に 渡す 金 だ !
そ ッ そんな 金 は …
牢 を 甘く 見 んじゃ ねえ ! や ~ ッ
代わり に やる よ
兄貴
( 小便 を する 音 )
( 穴 の 隠居 ) 宿 に 行って なあ ツル を 持ってこ させれば
出 られる ぞ え
あの … 女 の 人 も こんな 目 に あう んです か ?
( 穴 の 隠居 が 笑う )
( 楽し そうに 手 を 洗う )
一体 何 が 起こった ん や
当 家 に 伝え に きた 役人 も
詳しい こと は 知ら さ れて おら ぬ ようであった
お 調べ は 行わ れる んです やろ ? ほしたら 先生 の 無実 は 必ず
しかし 大 牢送 り である から な
大 牢 の 中 で は お 裁き に よら ず 無法に 殺さ れる 者 も 多い と 聞く
え ッ !?
≪( 山田 ) ツル が あれば 免れる や も しれ ぬ が
≪( 佐分利 ) ツル と は ?
牢 名主 や 役人 に 渡す 賄賂 の こと だ
( 佐分利 ) そんな 金 など
では あ ちき は これ で
ここ に とどまり お 仲間 と みなさ れて は
どのような おと が め を 受ける か 分かり ん せ ん
ちょうど よき 働き 口 も 見つかり ん して なあ
お 二 人 に は よろしく お 伝え くださ ん し
( 横 松 ) あれ が 吉原 の 流儀 な んです か ?
福田 先生 どうか なされた のです か ?
もしや 何 か ご存じ で おら れる の か
( 佐分利 ) 何 や ?
何 を 知 っと る ん や 吐け !
かわいそうだ けど よ
あの 男 殺さ れる ぜ
え ッ ?
医者 は 普通 揚がり 屋 に 送ら れ んだ 大 牢 に 送ら れる って こと は
お上 は あわよくば 牢 の 中 で 死んで くれ と 思って る って こと だ
何 ゆえ 先生 が そのような 目 に
お 待ち ください 何 ゆえ で ございます か !
〈 何も 分から なかった 〉
〈 誰 が 何の ため に 和 宮様 に ヒ素 を 盛った んだろう 〉
〈 俺 に 罪 を なすりつける ため に ?〉
〈 それとも 俺 を 陥れる ため に ?〉
《≪( 象 山 ) お前 の やった こと が 意 に 沿わ ぬ こと であったら →》
《 神 は 容赦 なく お前 の やった こと を 取り消す 》
〈 これ は 〉
〈 そういう こと な の か ?〉
死体 …
≪( 牢 名主 ) ツル を 払わ ねえ と こう なる んだ よ
どう だ え ッ ?
払え ませ ん
私 が 持って る 金 は 患者 が 払った なけなし の 金
命 の ツル です
一緒に 働いて くれる 仲間 は
それ に 手 を つけよう と も せ ず
ツメ に 火 を ともす ように 暮らして ます
あなた 方 に 払う 金 は
あり ませ ん
う ッ う ~ ッ …
〈 俺 は このまま ここ で 取り消さ れて しまう の か ?〉
〈 それ が 神 の 意志 な の か ?〉
《 咲 さ ん !》
口 で は 分かった ような こと を 言い ながら
私 は ずっと 心 の 底 で は 望んで おり ました
先生 が お 戻り に なる 日 など 来 なければ よい
できる なら
ずっと ここ に 居て ほしい … と
もしや そんな 私 を 哀れ と 思い
願い を お 聞き届け くださった のでしょう か
なれば どうか
もう 一 度 だけ 哀れ と 思う て ください ませ
どうか 先生 を お 助け ください
今 すぐに
今 すぐに 先生 を 未来 へ お 戻し ください ませ
〈 これ は 幻 か ?〉
〈 それとも このまま 死ねば 俺 は 戻れる の か ?〉
〈 でも ここ で 戻って しまったら 〉
〈 どう なる んだろう ?〉
〈 咲 さん が どう なった か を 未来 から 知る こと は 〉
〈 きっと でき ない 〉
〈 あの 不器用な 優し さ に 応える こと は でき ない 〉
〈 あの 笑顔 を 見る こと は でき ない 〉
〈 それ でも いつか 新しい 日々 の 中 で 〉
〈「 それ で よかった 」 と 言い切れる 日 が 〉
〈 来る んだろう か 〉
〈 そんな 日 など 〉
〈 そんな 日 など …〉
〈 絶対 に 来 ない と 思う なら 〉
( 囚人 ) あ ~ ッ
元 [ 外 :6 B 60 DB 49332 DF 70 F 090 FA 736992 B 8556] は うち の 医師 に
献上 を うまく いか ぬ ように しろ と 脅し を かけて た んです
本道 の 奥 医師 ならば 大奥 と 通じる こと も でき ます
これ は 医学 館 の 陰謀 で は …
そう であれば もう どうにも なら ない かも しれ ぬ
この 件 の お 調べ は 医学 館 が する こと に なった のだ
〈 俺 は ここ で 〉
〈 生きる しか ない んだ 〉
この 野郎 !
( 牢 名主 の 悲鳴 )