Violet Evergarden Episode 6
( カイル ) おい リオン 見て みろ よ
大陸 中 から 来た 女 たち が こっち に 向かって くる ぜ
( リオン ) ただ の 代筆 屋 だ ろ ?
( カイル ) ああ 自動 手記 人形 な
客 の ため だけ に 美しい 言葉 を 書き出して くれる
美しい 女 たち だ
( リオン ) フンッ 美しく 飾る の は
金持ち と の 結婚 を 夢見る 女 が なる 職業 だ から だ と 聞いた が な
( リオン ) 請わ れれば 世界 の どこ へ でも 出向き ―
代筆 と いう 技 を 売り 歩く 女 たち
その ドール と いう 職業 を ―
俺 は 最初 訳 も 分から ず 嫌悪 し ―
そして いらだつ 自分 に 戸惑って いた
♪~
~♪
( ブルー ベル ) ヴァイオレット
( イベリス ) 久しぶり ね 元気 して た ?
( ヴァイオレット ) ブルーベル さん イベリス さん
ルクリア
( ルクリア ) ヴァイオレット
ドロッセル 王国 の 王女 様 の 代筆 ステキ だった わ
( イベリス ) ホント
私 も 記事 読んだ わ よ
あなた が 知り合い なんて 鼻 が 高い わ
どうした の ?
( ヴァイオレット ) いえ ありがとう ございます
大丈夫 ? ちょっと 元気 が ない みたいだ けど
ヴァイオレット
( ルベリエ ) えー 皆様
私 は この ユースティティア 天文 台
シェヘル 天文 本部 の 課長 ルベリエ と 申し ます
( ドール たち ) お初 に お目にかかり ます 旦那 様
( 職員 たち の どよめき )
( せきばらい )
( ルベリエ ) この シェヘル 天文 本部 は ―
ご覧 の ように 古今東西 の 天文 に 関する 書物 を 集めた ―
図書 館 を 併設 して おり ます
我が 写本 課 の 職員 は
本 1 冊 1 冊 の 状態 を 日々 保ち
もし 朽ちる もの が あれば
そこ に 記さ れた 記録 を 写し取って 保存 する と いう
とても 重要な 仕事 を 担って おり ます
まあ それ だけ であれば ―
写本 課 の 人員 だけ で 事 足りた のです が
先月 当方 に 大変 貴重な
けれど 非常に 保存 状態 の 悪い 書物 が
大量に 運び込ま れ ました
中 に は 一 度 ページ を めくれば 崩れて しまう ような もの まで ―
含ま れて おり ました
自動 手記 人形 の 皆様 80 名
我が 写本 課 の 職員 80 名
双方 1 名 ずつ が ペア と なり 解読 と 代筆 を 担当 いたし ます
期間 は 2 週間
失う こと の 許さ れ ない 貴重な 記録 を 後 の 世代 に 残す ため ―
皆様 どうか よろしく お 願い いたし ます
( ルベリエ ) えー 次
カイル ・ ゼーニヒ
フジミ 郵便 局 イベリス ・ コノウエ 様
よろしく お 願い し ます 旦那 様
あっ ああ … よろしく
( ルベリエ ) 次 リオン ・ ステファノティス
CH 郵便 社 ―
ヴァイオレット ・ エヴァーガーデン 様
( ヴァイオレット ) お初 に お目にかかり ます
お 客 様 が お 望み なら どこ でも 駆けつけ ます
自動 手記 人形 サービス
ヴァイオレット ・ エヴァーガーデン です
あっ ああ …
旦那 様 ?
どうした かね ? リオン 君
あっ ああ …
いえ 別に
次 …
( ドア が 開く 音 )
いい ! 座って ろ
( ヴァイオレット ) 失礼 いたし ました
( リオン ) いい
では 手始め に
共通 古典 語 で 書か れた この 本 から だ
400 年 前 に 観測 さ れた アリー 彗星 ( すいせい ) に ついて の 記述 から 入る
アリー 彗星 ?
( リオン ) そうだ
この アリー 彗星 は
ちょうど 200 年 周期 で 巡って くる 彗星 な んだ
まもなく ここ シャヘル 天文 台 でも 観測 さ れる 予定 だ
了解 し ました
( リオン ) で は 始める ( ヴァイオレット ) はい
言って おく が 俺 は 解読 が 速い
記述 が 追いつか ない よう なら お前 は 無用の 長 物 と …
ハッ !
心得て おり ます
あっ …
な … なら お 手並み 拝見 だ
“ 暗き 天 より 出 ( い ) で し その 光 の 矢 ”
“ 長き 尾 を 引き て 聖 バルバロッサ の 首 を 刈り き ―”
“ 故 アリアドナ 占星術 師 いわ く ―”
“ 光 の 矢 不吉 の 前触れ なり ”
“ その 輝く 光 の 過ぎ し あと 疫病 蔓延 ( まんえん ) し ―”
“ 王 の 崩御 が 国 を 揺るがす ”
“ 聖 バルバロッサ も また 同じく 光 の 矢 に 射 ぬか れて ―”
“ その 魂 と 躯 ( むくろ ) を 引き 剥がさ れ しか …”
“ 光 の 矢 の 出現 は ―”
“ アリアドナ の 言葉 に よら ば 過去 に も あり ”
“ 光 の 矢 の ゆえん は 妖精 国 の 王 ―”
“ ラインハルト の 嫁 取り と も いい ”
“ この 光 に 際して 死 せる 高貴なる 者 ”
“ 女 は ラインハルト の 側 妃 ( そく ひ ) に ”
“ 男 は 祝福 の 宴 ( うた げ ) の 貢ぎ物 と さ れる なり ”
ん っ …
あっ …
“ されば その 別離 は 悲劇 に あら ず ”
“ 永遠の 刻 ( とき ) 流れる 妖精 の 国 にて 新たな 器 を 授かり て ―”
“ その 魂 は 未来 永 劫 ( えい ごう ) 守ら れる が 故 に …”
旦那 様 どうぞ お 続け ください
う … うむ どうやら ついてこ られる ようだ な
“ されど 高貴なる 者 の 死 は 民 を 騒が しむ ”
“ 光 の 矢 走る 姿 を 見る 者 は 奇 行 多し …”
( ベル の 音 )
今日 は ここ まで だ
( ヴァイオレット )144 枚
旦那 様
予定 の およそ 3 日 分 の 仕事 量 です
すばらしい お 仕事 ぶり です
あっ そう
( ルベリエ ) 本日 の 進行 は 皆さん 非常に 順調です
最大 で 3 日 分 進んだ ペア も おり ます
この 調子 で ぜひ 明日 から の 作業 も 頑張って ください
( リオン ) なあ ―
何で あれ だけ の 代筆 を こなして ―
そんなに 元気な んだ ?
( ヴァイオレット ) 代筆 は ―
移動 に 比べれば さほど 疲労 する こと は あり ませ ん
私 たち ドール は いつでも どこ でも
お 客 様 の お 望み であれば 駆けつける の が 仕事 です
1 年 の ほとんど は 旅行 かばん を 手 に
あらゆる 交通 手段 で 移動 し ます
何で そんな 大変な 仕事 を して る んだ よ
私 に 与え られた 役目 だ から です
最初 は 任務 だ と 思って おり ました
ですが いろいろな お 客 様 の もと で その 思い を 紡ぐ
そして ―
時に このような 古い 書物 を 書いた 方 の 考え を 受け取って ―
それ を 書き記す と いう の は
とても 特別で …
すばらしい こと だ と 思える ように なり ました
そう だ な
( ヴァイオレット ) 果たして ―
私 は そのような すばらしい 仕事 に ふさわしい のでしょう か ?
あっ …
( ヴァイオレット ) 何 が おっしゃり たい のでしょう か ?
( 職員 ) リオン が パートナー で かわいそう だって こと だ よ
あいつ 鼻持ち なら ない 性格 だ ろ ?
( 職員 ) シャヘル の 寄付 が なけりゃ ―
ここ で 働く こと も でき ない 孤児 だった んだ
( 職員 ) 君 みたいに ステキな 女性 あいつ に は もったいない
だから 仕事 が 終わったら 僕たち の 所 へ
( ヴァイオレット ) 私 も 孤児 です それ に ―
( ヴァイオレット ) 私 も 孤児 です それ に ―
( リオン ) あっ …
( リオン ) あっ …
私 は 皆様 が おっしゃる ような ろくな 生き 方 も して おり ませ ん
文字 を 覚えた の も ここ 数 年 です
もし 生まれ や 育ち で ―
会話 を する 相手 が 限ら れる のでしたら ―
私 に は 関わら ない ほう が よい か と 思い ます
( 職員 ) いや 君 は 違う よ なあ ?
( 職員 ) そう さ あいつ の 母親 なんて …
( ヴァイオレット ) 私 は 親 の 顔 も 知り ませ ん
あっ …
( 職員 ) 君 リオン が パートナー だ から かばって る んだ ろ ?
いいえ 事実 を 言って いる だけ です
( 職員 たち ) あっ …
( 職員 ) 行こう 話 が 通じ ない よ
( ヴァイオレット ) 旦那 様 目当て の 本 は 見つかり ました か ?
( リオン ) あった
( ヴァイオレット ) 怒って いる のです か ?
え ? 怒って ない
こういう 顔 な んだ
( ヴァイオレット ) 私 は ―
無表情だ と よく 言わ れ ます
こういう 顔 です
少し 似て い ます ね
う っ …
( カイル ) そし たら 彼女 何て 言った と 思う ?
“ あなた 可愛い わ ね ” だって
く ー !
こりゃ 観測 に 誘う しか ないだ ろ !
おい 聞いて る か ? リオン ?
お互い 頑張ろう ぜ
あの 子 が 帰る 4 日 後 まで に
( リオン ) 昼食 の 時間 だ ぞ
どうして みんな と 一緒に 食べ ない んだ ?
( ヴァイオレット ) 習性 です
え ?
( ヴァイオレット ) 食べて いる とき と 寝て いる とき と いう の は ―
無防備です
敵 へ の 反応 が 遅れ ます
( リオン ) 敵 ?
( ヴァイオレット ) 私 は 昔 軍人 でした ので
( リオン ) 軍人 ?
おかしい でしょう か ?
お … おかしい !
だって どこ から 見て も ただ の 女 だ ろ
ただ の ?
ああ
ただ の 女 だ よ
見 たく ない か ?
200 年 周期 だ から 生きて る うち に もう 見る 機会 は ない ぞ
あっ アリー 彗星 だ
初日 の 写本 で 触れて あった 彗星 です ね
そう だ
見 たく ない か ?
と … とてつもなく 美しい んだ ぞ !
はい 見て みたいです
( リオン ) そう か !
なら 3 日 後 の 夜 2 時 に 宿舎 の 前 に 誘い に 行く
待って ろ
( カイル の くしゃみ )
( リオン ) ここ に 座れ
アリー 彗星 だ
彗星 の 尾 が 一 番 キレイ に 見える の が ―
日の出 前 の 東 の 空 だ
( ヴァイオレット ) 旦那 様 ( リオン ) いい
遠慮 する な
スープ も 飲んで ろ
( ヴァイオレット ) 旦那 様 は お 優しい のです ね
( リオン ) バカ を 言え ! 俺 は 優しく なんて ない
それ に 女 は 苦手だ 冷たく して いる
あっ ああ …
覚えて る か ? 図書 館 で いろいろ 言わ れた の
はい
あいつ ら の 言って いた こと は 本当だ
俺 の こと も 家 の こと も
俺 の 母親 は 流れ 者 の 旅 芸人 だった
いろんな 所 に 巡業 して ―
踊り や 歌 自分 の 才 を 披露 する
あの 人 は そうして この 街 の 男 に 恋 を して
子供 を 産んだ
それ が 俺 だ
今 思えば 幸せな いい 家族 だった と 思う
だが ある 日 父 が 帰って こ なく なった
シャヘル の 文献 収集 を 担当 して いた 父 は ―
大陸 中 を 回って 貴重な 書物 を 集めて いた
危険な 場所 へ 行く こと も 少なく ない 仕事 だった んだ
そして ある 仕事 の さなか ―
パッタリ と 消息 が 途絶えた
それ から 2 年 が 経ち 捜索 も 打ち切ら れる こと に なって …
( リオン ) お 母さん !
( リオン の 母 ) リオン !
待って て ね リオン
きっと 父さん と 一緒に 帰って くる から
( リオン ) イヤだ ! 行か ないで !
お 母さん ! お 母さん !
お 母さん
( リオン ) 誰 より も 父 を 愛して いた のだ から ―
当然の 選択 だった のだろう
だが 置いて いく 俺 の こと は 考えて は くれ なかった の か
その とき 俺 は 学んだ んだ
恋愛 と いう の は ―
人 を そんなふうな バカに おとしめて しまう
だから 俺 は …
( ヴァイオレット ) 旦那 様 は お 母 様 の こと が ―
とても 大切だった のです ね
そっち は どう な んだ ?
私 に は 血 の つながった 家族 は おり ませ ん
ただ …
ずっと 庇護 ( ひご ) して くださった 方 は おり ました
今 は 離ればなれです が …
その 人 と 離れて 寂しく ない の か ?
( ヴァイオレット ) “ 寂しい ” と いう の が どんな 気持ち な の か ―
私 に は 理解 でき ない のです
どういう 気持ち な の か は 分かって も ―
それ が 自分 に 生じて いる の か が 分かり ませ ん
本気で 言って る の か ?
( ヴァイオレット ) 私 は ウソ は つけ ませ ん
じゃあ その 人 の こと を 思い出す こと は ない か ?
( ヴァイオレット ) いつも ―
思い出し ます
( リオン ) 会え ない 日 が 続く と 胸 が グッと 重く なったり し ない か ?
( ヴァイオレット ) なり ます
( リオン ) ハハッ
それ が 寂し いって こと だ よ
それ が “ 寂しい ”?
私 は あの 方 と 離れて 寂しい と 感じて いた
あっ …
なあ もし 俺 と の 契約 期間 中 に その 人 が ―
危険な 状況 に 陥って いる って 聞か さ れたら どう する ?
行って も 助け られる か どう か 分から ない
それ でも そい つ の 所 へ 行く か ?
悪い 困ら せた な
( ヴァイオレット ) いいえ そう で は あり ませ ん
その 問い に は 選択肢 が なく ―
旦那 様 に どう 謝罪 しよう か と …
私 に とって あの 方 の 存在 は まるで 世界 そのもの で
それ が なくなる くらい なら 私 が 死んだ ほう が いい のです
いや 驚いた
お前 そういう こと 言わ な そうな のに
( ヴァイオレット ) そう な のでしょう か ?
それ じゃあ まるで …
まるで …
ハッ ! そう か
( リオン ) お前 そ いつ の こと 愛して …
( リオン ) お前 そ いつ の こと 愛して …
( ヴァイオレット ) 旦那 様
あの 彗星 尾 が 長く なって いる 気 が し ます
ん ?
( リオン ) あっ !
( リオン ) ヴァイオレット ! どう だ ? 見て る か ?
( ヴァイオレット ) はい 初めて 間近に 星 を 見 ました
星 じゃ ない ! 彗星 だ
俺 たち は もう 二度と あれ に 出会う こと は でき ない
人生 で たった 一 度 きり の 出会い な んだ
はい 見て い ます
すばらしい です
( ヴァイオレット ) “ その 別離 は 悲劇 に あら ず ”
“ 永遠の 刻 流れる 妖精 の 国 にて 新たな 器 を 授かり て ―”
“ その 魂 は 未来 永 劫 守ら れる が 故 に …”
( ルベリエ ) 皆様 ありがとう ございました
( 職員 ) ありがとう ( 職員 ) 気 を つけて な
お 世話に なり ました ー !
また 来 いよ
( ヴァイオレット ) 旦那 様 短い 間 でした が お 世話に なり ました
( リオン ) ああ
ヴァイオレット
はい
俺 は …
俺 は 今 写本 課 に いる が
本当 は 父さん と 同じ 文献 収集 を やって み たかった んだ
ここ で 待って いれば いつか 母 が 父 を ―
連れて 帰って くる んじゃ ない か って 期待 して
こんな 年 に なる まで 閉じこもり 続けた
ここ は それ が 可能だった し ―
俺 は それ を 望んで た
( 鐘 の 音 )
でも 今 決めた
俺 も お前 と 同じ ように 大陸 中 を 回る
危険な 目 に 遭う かも しれ ない
命 を 落とす かも しれ ない
でも … でも 俺 は その道 を 選ぼう と 思う
はい
( リオン ) そし たら いつか きっと ―
どこ か の 星空 の 下 で 会う こと が ある かも しれ ない
同じ 旅人 同士 だ
ヴァイオレット ・ エヴァーガーデン !
はい
う っ
くっ …
う っ …
その とき は また 一緒に 星 を 見て くれる か ?
なあ ヴァイオレット ・ エヴァーガーデン !
( リオン ) 旅先 で 再び 彼女 と 会える 可能 性 は ―
どの くらい ある のだろう か ?
もう 一 度 あの 彗星 を 見上げる ほど の 確率 だろう か ?
それ でも 俺 は もう ためらう こと は ない だろう
閉じ込め られて いた 扉 の 向こう に 歩き だす 勇気 を ―
彼女 が くれた のだ から
( リオン ) いつか きっと …
♪~
~♪