Midnight Diner S 1:E 9 Episode 9
♪~
( マスター )1 日 が 終わり 人々 が 家路 へ と 急ぐ ころ ―
俺 の 1 日 は 始まる
メニュー は これ だけ
あと は 勝手に 注文 して くれりゃ あ ―
できる もん なら 作る よって の が 俺 の 営業 方針 さ
営業 時間 は 夜 12 時 から 朝 7 時 ごろ まで
人 は “ 深夜 食堂 ” って 言って る よ
客 が 来る かって ?
それ が 結構 来る んだ よ
( マスター ) ここ 二 日 続けて 朝 の 6 時 を 回った ころ ―
粋な バア さん が 朝飯 を 食べ に 来る
( 八千代 ( やちよ )) うーん
ごちそうさま
タバコ いい ?
食後 の 一服 は 外せ ない もん なあ
東京 って どこ も かしこ も 禁煙 だらけ で ―
住み にくく なった わ ね
最近 は 特に ね
吸って て 九十 まで 生きる 人だって いる のに
寿命 なんて 分から ない わ よ
こちら へ は 旅行 か 何 か で ?
仕事 も 子供 に 譲った し ―
田舎 に いて も ババ くさく なる だけ だ から
どちら です か ?
肥後 ( ひご ) の 熊本
なまって ない ね
あたし 元 は 江戸っ子 だ もん 熊本 は 死んだ 亭主 の 里
その先 の ウィークリーマンション 借りて ん の
しばらく のんびり する つもり
東京 に して は おいしかった わ ここ の アジ
でしょ ? 沼津 ( ぬま づ ) の 知り合い から 先週 …
( マリリン ) お は よ
おう どう し たい ?
( マリリン ) 巡業 の 帰り
深夜 バス って 肩 凝る わ
ビール
( マスター ) 家 ( うち ) で 寝た ほう が いい んじゃ ない の かい ?
し らふ が ヤ な の よ
結局 女 の 価値 なんて さ 体 しか ない の よ ね
ハハッ 随分 弱気だ ね
どうも
巡業 って お 芝居 か 何 か ?
( マリリン ) う うん 踊り
ダンサー の マリリン 松嶋 ( まつ しま ) って いい ます
よろしく
何 な の よ この 台
( パチンコ の 電子 音 )
( マリリン ) で … 玉 恵んで もらって ね
八千代 さん の 言う とおり の 台 選んで 打ったら ―
バンバン 出ちゃ って さ ぁ
ああ すっきり した
八千代 さん じゃ んじゃ ん 飲んで あたし 今日 みんな おごる から さ
うち は 食堂 だ よ 酒 は 3 本 まで
( マリリン ) そんな こと 言わ ないで さ
せっかく ヤ な こと 全部 忘れちゃ えた 夜 な んだ から
ねえ 教えて よ なんで あんなに 出る 台 分か ん の ?
欲 を 持つ と ダメ さ
あんまり が っ つく と 心 が 濁る から ね
変な 台 に 引っか っちゃ うんだ
( マスター ) 男 運 と 一緒だ ね
フフフッ
何 よ
( 忠 ( ちゅう ) さん ) おお っ マリリン 帰って きた の か
ただいま
今度 いつ から ? 花 贈る よ
あり が と もう 2~3 日 休んで から
ああ
マリリン ちゃん の 踊り あたし も 見て みた いわ
あんた が ?
どんな 踊り ?
どんな って … そりゃ …
どこ で 見 れる ?
いい よ 見せて あげる
行こう 八千代 さん
マスター ごちそうさま お釣り いい から
ごちそうさま
あっ お まち
あの バア さん ど っか で 見た 顔 な んだ よ なぁ
八千代 さん 八千代 さん
踊ろう 大丈夫 ( 八千 代 ) 無理 よ
( マリリン ) ほら ほら ほら …
すごい 八千代 さん
( マリリン ) 八千代 さん すごい じゃ ん
ただ 者 じゃ ない って
昔 取った 杵 柄 ( きね づか ) か ねえ
何 か やって た の ?
( 八千 代 ) うん ? フフフッ
なに ? えっ なに なに ?
あたし ぐらい 長く 生きて る と いろいろ と ね
フフフフッ …
八千代 さん こっち
なに ? どうした の ? ( マリリン ) こっち
( マリリン ) 八千代 さん あたし ね ―
ホント は … ダンサー なんて 言った けど ―
ストリッパー な の
別に 隠す つもり って わけじゃ …
いや …
隠して たか
ハハッ
( マリリン ) こない だ 初めて 行く 小屋 が あって さ
地方 の 温泉 街
気合い 入れて 踊った つもりだった んだ けど ―
誰 も 踊り なんか 見ちゃ い ない の
裸 が 見 れりゃ 何 だって いい の よね ストリップ なんて
それ でも 踊り子 の つもり で いつも は 見え 張って んだ けど ね
あんた 人気 あん でしょ
ある わ よ
あたし が 出る と お 店 の 前 なんか 花 で いっぱいに なる んだ から
大した もん じゃ ない か
どう ? うち で もう 一 杯 寄って くかい ?
いい の ? ( 八千 代 ) うん
やった フフッ
( 忠 さん ) よう マリ リン ( 小 寿々 ( こす ず )) こんばん は
( マスター ) お 二 人 さん 仲 いいね
マスター とりあえず ビール と …
マリ ?
( 風間 ( かざま )) こんな とこ で 会う なんて な
( 小道 ( こみち )) 風間 さん マリ リン 知って ん の ?
昔 養成 所 の 同期 で … な っ ?
うわ あ ちょっと マリリン こっち 来 な よ
すげ え マリリン
こんな 有名 人 と 同じ 養成 所 に 通って た なんて
小道 さん やめて よ
俺 昔 撮ら して もらった こと あって さ
ほら スタイル いい から モデル に さ
そう
風間 さん ブロードウェイ の 演出 家 に 認め られちゃ って さ
今度 海外 の ミュージカル に 出る んだ って
へえ あんた って すごい 人 な んだ な
いや つって も ホント チョイ 役 なんで
( 小道 ) 主人公 の 恋人 役 だ ぜ あれ の どこ が チョイ 役 な んだ よ
まあ そう な んだ けど
ちょっと いい ? うーん うーん …
フフフッ うーん すてきな 筋肉
抱きしめ られた ~ い
すいません
マリ 元気 ?
おめでとう
お前 も 続けて ん だって な
あっ ごめん お 前 の は 踊り って 言わ ねえ の か
いや あ でも ショック だった よ
昔 の 女 が アソコ 見 して 踊って る なんて さ
ストリッパー の どこ が 悪い んだ い
ミュージカル やって りゃ 偉い の かい !
行く よ
あっ … ちょっと 待って
あなた ひょっとして ローズ 美千代 ( みちよ )?
( 忠 さん ) 思い出した そうだ
あんた ど っか で 見た こと ある と 思ったら ―
ローズ 美千代 だ !
( 小 寿々 ) アンビバボー ! ( 忠 さん ) 本物 ?
( 小 寿々 ) もう 分かって る わ よ あの うなじ の ライン と 耳たぶ
( 忠 さん ) ローズ 美千代 って の は ―
40 年 ぐらい 前 一 世 を 風靡 ( ふうび ) して こつ然 と 姿 を 消した ―
伝説 の ストリッパー さ
いや あ なんて った って ―
俺 を ストリップ の とりこ に した の は ―
ローズ さん な んだ から
ローズ は やめ と くれ
だけど なんで あんた が 知って ん の ?
うん …
当時 よく ストリップ 見 に 行って て さ
色気 の 出し 方 見習って た の よ
中でも ローズ 美千代 の あの 艶 っぽ さ
一 番 の お 手本 だった の
なんで い なく な っち まっ たんだい ?
俺 ( おら ) 寂しかった んだ ぜ
男 を 追っかけた の よ
あたし も やっぱり 女 だった って わけ
あんた が ほれた ぐらい だ よっぽど いい 男 だった んだろう な
すぐ 死んじゃ った けど ね
女 の 人生 狂わせ ん の は いつ の 時代 も 男 な の よ ねえ
いろいろ あった けど 今 は もう 隠居
好き勝手に 生きて ん の フフッ
人さま に 裸 を 見せて 稼いだ 金 で ―
うち の 息子 は 育った んだ マリリン ちゃん
あたし は それ を ―
恥ずかしい だ なんて 思っちゃ い ない よ
八千代 さん …
( 泣き声 )
( カタギリ ) 世の中 は 酸い も 甘い も 長良 川 ( ながら がわ )
お 見事
( 戸 の 開く 音 )
( マスター ) うち の のれん くぐる んだったら ―
肩書き なんて 置いて き な
今日 は 帰り ます
じゃあ そのころ に は 新宿 に いたんだ
う うん そのころ は 池袋 ( ブクロ )
あっ ブクロ ! へえ
棒 は ない けど 袋 は ある の
フフフフッ … ( 忠 さん ) ハハハハッ …
マスター アジ の 開き お 願い
あ いよ
ローズ さん は アジ の 開き が 好きだ ね
( 八千 代 ) 元 ストリッパー だ もん “ 開き ” は 付き物 さ フフフッ
ご 開帳
( 忠 さん ) うまい ! うまい ね ( 小 寿々 ) お 上手
あと ローズ は やめて 八千 代 だ よ
( マスター ) あ いよ 八千代 さん
( 忠 さん ) ヘヘヘッ
ここ で いい よ
駅 まで 行く って
駅 で の 別れ って イヤな んだ よ
勝手に タクシー 拾って いく から
あり が と
じゃあ しっかり ね
八千代 さん も 元気で
もっと 誇り を 持って いい んだ よ あんた は
じゃ ね
( 店員 ) はい いらっしゃい
( 客 ) どうも 恐れ入り ます ( 店員 ) はい 5000 円 です よ
( 客 )5000 円 ? ( 店員 ) はい
( 客 ) マリリン やって る かな ?
うん 大丈夫 大丈夫 まだ 大丈夫 よ
( 客 ) はい どうぞ ( 店員 ) はい どうも
( 客 ) はい どうも
( 観客 ) 待って ました ~
( 観客 たち ) マリリーン
( 観客 ) マリリン お かえり
( 歓声 )
( 観客 たち ) マリリーン
( 忠 さん ) ご 開帳 !
マリリン 今日 も パァッ と 開いて おり ます
はい 拍手
( 観客 ) 待って たよ マリリン
( 観客 たち ) マリリン マリリン …
川 は 皮 から 海 は 身 から
なに ? それ
お 魚 を 焼く とき の 豆 知識
川 の 魚 は 皮 から 焼いて ―
海 の 魚 は 身 から 焼く と おいしく 焼け ます
( マリリン ) 川 は 皮 から 海 は 身 から
( 八千 代 ) 覚え やすい でしょ
うん ? しゃけ は ?
しゃけ ?
しゃけ は どっち から 焼く の ?
しゃけ は …
( 八千 代 ) あと 焼く とき は ―
網 を 先 に 熱して おけば お 魚 の 身 が 網 に つか ない
ごまかした ( 八千 代 ) いや …
さよなら さよなら
( マリリン ・ 八千 代 ) お やすみ なさい
♪~
~♪