Midnight Diner S 3:E 8 Episode 28
♪~
( マスター )1 日 が 終わり 人々 が 家路 へ と 急ぐ ころ ―
俺 の 1 日 は 始まる
営業 時間 は 夜 12 時 から 朝 7 時 ごろ まで
人 は “ 深夜 食堂 ” って 言って る よ
客 が 来る かって ?
それ が 結構 来る んだ よ
( ゲン ) メニュー 書き換えた ほう が いい んじゃ ねえ か
豚 が 気持ち 入った 味噌汁 って よ
偽装 豚汁 で も いい ぞ
何 だ よ
( サヤ ) ゲン さん て チンピラ だ から ―
やっぱり きん ぴら が 好きな んです か ?
( 忠 ( ちゅう ) さん ) 耐えて やって よ
昔 あんた が それ で からかわ れた こと ―
この 子 何も 知ら ねえ んだ から な っ
すいません 失礼な こと 言っちゃ って
お前 ( め え ) 女 で 命拾い した な
男 だったら 今頃 ―
スカイツリー から バンジージャンプ だ ぞ
マスター ゲン さん に 何 か お 酒 を ( ゲン ) いら ねえ よ
いやで も ちゃんと けじめ は つけ ない と
( マスター ) ゲン ちゃん 下 戸 な んだ よ こんな お っか ない 顔 して る けど
うる せ え
で … でも ビール …
( 小道 ( こみち )) あっ 減って ない
そういう の 何て 言う んでした っけ ?
こわ も て で たくさん 飲め そうな のに …
( 小道 ) 見かけ倒し でしょ ( ゲン ) て め え 上等だ よ !
( 小道 ) あっ …
( ゲン ) 食い 終わる まで 戒名 考え とけ ! ハゲ !
( 小道 ) ぼ … 僕 クリスチャン な んです
あの 悔い改め ます から
( ゲン ) 何 言って る か 分か ん ねえ よ
( 小道 ) 悔い … ( ゲン ) 改ま ん ねえ よ !
( 千鶴 ) きん ぴら ごぼう ある かしら ?
( マスター ) ある よ
よかった じゃあ き ん ぴら ごぼう と 冷や を 大至急
( マスター ) あい よ
( マスター ) お まち
やっぱり きん ぴら は こう で なくっちゃ ね
( マスター ) 何 が だい ?
ささ が き に した んじゃ この 歯応え が 出 ない もの
( ゲン ) やっぱり きん ぴら は 千切り です よ ね
( 千鶴 ) お にいさん も 好きな んだ きん ぴら
ご無沙汰 して ます 市川 ( いち かわ ) 先生 !
川北 ( かわき た ) 高 で 英語 教え られて ました よ ね
( 千鶴 ) そうだ けど
林 ( はやし ) ゲン です 先生 が 顧問 さ れて た ハンド 部 の
( 千鶴 ) ケンカ ばっかり して た あの ゲン 君 ?
昔 と 違って 眉毛 は あり ます けど
見違えた わ よ いい 男 に なった わ ねぇ
ねえ 何 年 ぶり ?
あっ … 分か ん ないで す バカな んで
( 千鶴 ) アハハハハッ や だ ぁ
通訳 って いって も 接待 に つき あわさ れたり ―
ガイド さん みたいな 仕事 の ほう が 多い んだ けど ね
は あ … いや レベル が 違い ます って
こんな 新宿 ( しん じゅく ) の 場末 で くすぶって る 俺 たち と は
分かる ? ハゲ ? ニューヨーク よ
アメリカ の 首都 よ
アメリカ の 首都 は ワシントン DC じゃ …
あん ?
ニューヨーク です
10 年 ぶり に 帰って きて ―
まさか 君 と 最初に 再会 する なんて ね
何 か 縁 が ある の かしら
向こう で 一緒に 暮らして る 人 って ―
旦那 さん です か ?
同じ 職場 の 女 友達 よ
この 年 で 独り 身 なんて 惨めだ と 思った ?
いや そんな
先生 は …
あの ころ と 全然 変わって ない っす
あら あら 口 まで うまく なっちゃ って
いや あ …
でも うれしい わ
ゲン 君 もう 1 軒 行こう よ
はい !
( 千鶴 ) 大変だった の よ あの あと
いい 店 知って る から って ―
ゲン 君 に 連れて って もらった んだ けど
愛して る ぜ ー !
( 千鶴 ) ゲン 君 危ない から 座って ( ゲン ) はい
ハハッ 言っちゃ った ( 小 寿々 ( こす ず )) もう っ
小 寿々 ちゃん おかわり
( 千鶴 ) だめ よ もう
なんで そんな こと 言う ん すか
俺 先生 の こと こんなに 愛して ん のに ー !
ゲン ちゃん ちょっと ボリューム 下げて
他の お 客 さん の 迷惑に なる でしょう
そんな ん じゃ 先生 に 嫌わ れちゃ うわ よ
だって 好きな んだ も ー ん !
痛 ( いて ) っ …
男 なら しゃんと なさい !
もっと やって ください
俺 を たたき直して ください !
お 願い し ます !
お 願い し ます !
( マスター ) ハァ … それ から どうし たんだい ?
しかたない から 無理やり 店 から 連れ出して ―
私 の 泊まって る ホテル で 寝かせ たの
明け方 から ゲーゲー 吐いて た けど ( マスター ) ハァ …
いらっしゃい
私 の 連れ な の ( 篠崎 ) こんばんは
高校 時代 の 担任 で ―
今 は こんな おじさん に なっちゃ った けど 憧れ の 先生
( マスター ) 昨日 と は あべこべだ
あっ そう ね
マスター 奥 行って いい ? それ と グラス もう 1 つ
( マスター ) あい よ
( 篠崎 ) 遅れて ごめん ( 千鶴 ) うん
( 篠崎 ) おかげ で 予約 取れた よ
( 千鶴 ) よかった
( 篠崎 ) すいません
( マスター ) この 時 ばかり は ―
ゲン ちゃん が い なくて 心から ほっと した よ
( 千鶴 ) たくさん あり 過ぎて 迷っちゃ うな
( ゲン ) やっぱり 向こう の 人 は 派手な 柄 の ほう が 喜ぶ ん す かね
( 千鶴 ) 仕事 本当に 大丈夫な の ?
あっ 全然 問題 ない っす 気 に し ないで ください
これ なんか どう っす かね
線香 花火 か …
あっ … や っぱ 地味 っす よ ね
お っ … こっち の 打ち上げ 花火 の ほう が ―
こう バーン て 感じ で いい かも
そう だ 猫 好き の 人 が いる から 猫 の 柄 は 買 っと か ない と
あっ 動物 なら あっ ち に あり ました よ
( 忠 さん ) いい ねぇ
ひっそり 日陰 に 咲く 花 みて え で はかなく って よ フフッ
どれ どれ 私 に も 見せて よ
( ゲン ) おい 汚す んじゃ ねえ ぞ
( 小 寿々 ) あら かわいい じゃ ない
ゲン ちゃん に 似合って る か どう か は 別 と して
私 に は いい でしょう
先生 ゲン ちゃん の 仕事 知って ん の ?
( ゲン ) 自由 業 だ と は 伝えて ある よ
( 忠 さん ) そりゃ ヤクザ も 自由 業 だ から ―
うそ じゃ ねえ けど なあ
( 小 寿々 ) 女 が 一 番 嫌いな の は 隠し事 する 男 よ
分かって る よ 今 その 頃合い 見計らって んだ よ
ほ い ( 小 寿々 ) あり が と
( マスター ) 先生 いつ 帰る ん だい ?
( ゲン )2 週間 こっち いる って 言って た から ―
あと 4~5 日 は いる と 思う
( 小 寿々 ) 今 から 呼べば ?
忙しい んだ よ ―
毎晩 昔 の 仲間 や 世話 ん なった 人 と 飲み 明かして っ から
( 忠 さん ) なんだか お 別れ 言い に 来た みて えだ な
どういう 意味 だ よ
( 小 寿々 ) どっちみち ―
自分 の 番 が 来る まで 待つ しか ない って わけ ね
( マスター ) その 3 日 後 ―
ついに ゲン ちゃん の 出番 が やって 来た
おいしい ね
うん
今日 は 飲ま さ ない から ね
( ゲン ) すいません
あんな みっともない とこ 先生 に 見せちゃ って
( 携帯 電話 の バイブ 音 )
( 男性 ) はい もしもし
ああ 今 めし
うん あと でかけ 直す わ
( ゲン ) 俺 なら いい っす よ さ くっ と 食って 帰り ます から
違う の 明日 から 熱海 ( あ たみ ) に 行く 予定 だった んだ けど ―
全然 連絡 な くって や ん なっちゃ う
彼 氏 … さんす か
昔 の 男 どうせ 女房 が 怖い んでしょ
ああ … どう しよう か な
あの …
俺 じゃ だめ かな
熱海
えっ …
ゲン 君 と ?
いい の ? こんな おばあ ちゃん で
( ゲン ) いい っす いい っす
おばあ ちゃん なんて とんでもない っす !
そんな こと 言う やつ 俺 ぶ っ 殺しちゃ い ます から !
大変 ね マスター も
( マスター ) 学校 の 先生 ほど じゃ ない よ
フフフフッ
あり が と
明日 遅刻 しちゃ だめ よ
俺 もう ガキ じゃ ない っす から ( 千鶴 ) そうだ よ ね
お やすみ なさい
お やすみ なさい
( 篠崎 ) ごめん
ちょっと 職場 で ゴタゴタ あって
でも 大丈夫 明日 は 一緒に 行ける から
知り合い ?
( 千鶴 ) 昔 の 教え子
そう 部屋 まで 持って く よ
怒って ん の ?
( ゲン ) そりゃ 怒り ます って 先輩
先輩 から の 電話 ―
先生 が どれ だけ 待ちわびて た か
だから ―
もっと 大事に して あげて ください
お 願い し ます
ゲン 君
( ゲン ) 先生 も 意地 張 ん ないで さ
気持ちよく 2 人 で 行って き な よ
土産 は 干物 で いい っす から
お 先 失礼 し ます
行か ないで !
なんで …
いい の
お互い とっくに 賞味 期限 切れて ん のに バカ よ ね
あの … 俺 先生 に 隠して たんす けど 実は …
ヤクザ な んでしょ ?
どう 見た って 堅気に は 見え ない もん
ホントに 俺 なんか で いいん す か
その代わり ちゃんと 抱いて ね
えっ …
明日 まで 取 っと く つもりだった けど ―
残って る 時間 は 少ない んだ から 目いっぱい 楽し も
はい
( ゲン ) 俺 が 高校 辞めて 上京 する 時 さ
先生 ―
いい 男 に なって 戻って おいで って せん別 くれて さ
( マスター ) いい 先生 だ な
( ゲン ) そん 時 一緒に 自分 の 弁当 ―
汽車 ん 中 で 食べ なさい って 持た して くれた んだ よ
他 に も 具 は 入って た んだ けど
そん 中 でも ―
こいつ の 甘 じょ っぱ さ が 体 に しみて よ
俺 …
足 洗って 先生 幸せに し たい と 思って る
兄貴 に その こと 打ち明けたら 逆 だって 殴ら れた
女 が お前 を 幸せに して くれ ん だ よって
先生 明日 帰る んだ ろ ? 伝えて あ ん の か ?
( ゲン ) けど ―
また 思い出 に しち ま いたく ねえ から
( マスター ) いらっしゃい
ごめん ね 待た せちゃ って
内緒 だ かんな
なに なに 何の 話 ?
それ より 先生 具合 どう だった ん す か ?
( 千鶴 ) えっ ?
今日 入院 して る 友達 の 見舞い 行く って 言って た じゃ ない っす か
元気だった ん す か ?
( 千鶴 ) うん びっくり する くらい 元気だった
来月 に は 退院 できる って
お ぉ よかった じゃ ない っす か じゃ 乾杯 し ましょう よ
マスター ビール ! グラス 2 つ な
大丈夫 ?
めでたい 時 に 飲ま なきゃ 男 が 廃り ます
( 寝息 )
次 は いつ 帰って くんだ い ?
( 千鶴 ) 分か ん ない
ゲン ちゃん 寂し が んだろう な
( 千鶴 )1 本 もらって いい ?
向こう じゃ 愛 煙 家 は 肩身 が 狭い って 聞く けど
( 千鶴 ) 行って から やめて た けど もう いい の
( 千鶴 ) 私 は もう 思い出さ ない
ここ で 会った 時 も ―
ゲン 君 に 言わ れ なきゃ 思い出さ なかった しね
ずっと アメリカ に いる つもり かい ?
う うん 今度 は もっと 遠く に 行く の
だから ゲン 君 も 私 の こと 忘れて ほしい
( 柱 時計 の 2 時 の 時報 ) ( 寝息 )
こら ゲン 君 行く よ
( ゲン ) うん ?
( ゲン ) フフフッ フフッ
( 千鶴 ) バイバイ
( ドア の 開閉 音 )
あっ 今日 も のぞいたら ちゃんと 働いて ました よ
まさか ホントに 足 洗って 堅気に なる と は なあ
そろそろ ひと つき に なる んじゃ ねえ か
私 も 人生 変える ような 恋 が し たい なあ
だったら サヤ ちゃん これ 食べ ない と
うん ? フフッ
ご利益 ある と いい けど
( サヤ ・ 忠 さん ) フフフッ
( チャイム )
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