三 姉妹 探偵 団 01 chapter 08 (1)
みっ|しまい|たんてい|だん|
Three Sisters Detective Agency 01 chapter 08 (1)
8 「 王様 」 と の ご 対面
おうさま||||たいめん
8 Meeting with the “King”
「 妙だ ねえ 」
みょうだ|
"It's strange,"
ガードマン は 首 を ひねった 。
がーどまん||くび||
The guardman twisted his neck.
夕 里子 は 、 警備 員 の 詰所 に なって いる 小 部屋 で 、 椅子 に 座って いた 。
ゆう|さとご||けいび|いん||つめしょ||||しょう|へや||いす||すわって|
Yuuriko was sitting in a chair in a small room that is a guard room.
「 何 が 、 です か ?
なん|||
"What is that?
「 いや 、 あの 連中 は 、 めったに 、 そんな 事件 は 起こさ ない んだ よ 」
||れんちゅう||||じけん||おこさ|||
"No, those guys rarely do such a thing."
と ガードマン は 言った 。
|がーどまん||いった
「 まあ 、 ああいう 風 だ から 、 みんな 気味 悪 が って 、 よけて 通る けど ね 、 中 に は 凄い インテリ も いる し 、 哲学 者 タイプ も いる 。
||かぜ||||きみ|あく||||とおる|||なか|||すごい|いんてり||||てつがく|もの|たいぷ||
"Well, that's the way it is, so everyone is weird, but it goes away, but there's an ugly intelligence inside, and there's also a philosopher type.
もちろん 、 柄 の いい 連中 じゃ ない が 、 いわゆる 暴力 的な こと は 、 まず やら ない んだ 。
|え|||れんちゅう|||||ぼうりょく|てきな||||||
Of course, it's not a good group of people, but it's hard to do what is called violent.
バッグ を かっぱ ら ったり 、 女性 に 乱暴 したり する なんて ねえ 」
ばっぐ|||||じょせい||らんぼう||||
Don't hold on to the bag or smash the woman. "
「 じゃ 、 私 が 噓 を ついて る と でも 言う んです か ?
|わたくし||||||||いう||
"Well then, do you say that I will wear a spit?
と 夕 里子 が 叫んだ 。
|ゆう|さとご||さけんだ
「 いや 、 そう じゃ ない よ 」
ガードマン は あわてて 言った 。
がーどまん|||いった
「 現場 は ちゃんと 僕 が 目撃 して る から ね 。
げんば|||ぼく||もくげき||||
"Because I have witnessed the scene properly.
確かに 君 の 言う 通り だった 。
たしかに|きみ||いう|とおり|
Certainly it was as you said.
ただ 、 何 か 理由 が ある はずだ 、 と いう 気 が する の さ 」
|なん||りゆう||||||き||||
However, I feel that there should be some reason, "
「 すみません ……」
夕 里子 は 息 を 吐き出して 、 顔 を 伏せた 。
ゆう|さとご||いき||はきだして|かお||ふせた
Yuriko exhaled and put her face down.
「 つい ……。
まだ 怖い の が 抜け なくて 」
|こわい|||ぬけ|
I still can not get scared
「 いや 、 当然だ よ ね 。
|とうぜんだ||
それにしても 、 刑事 さん は 遅い ね 」
|けいじ|||おそい|
夕 里子 は 、 ここ から ガードマン に 頼んで 、 国友 刑事 へ 電話 して もらった のだった 。
ゆう|さとご||||がーどまん||たのんで|くにとも|けいじ||でんわ|||
Yuriko asked a guard man from here and had him call the detective of a friend.
自分 で 電話 する だけ の 力 は なかった 。
じぶん||でんわ||||ちから||
I did not have the power to call myself.
襲わ れて いる とき は 無我夢中 だった のだ が 、 今に なって 、 恐怖 が 足 の 先 から 這い上って 来る 。
おそわ|||||むがむちゅう||||いまに||きょうふ||あし||さき||はいあがって|くる
When I was attacked, I was involuntarily, but now, fear is crawling up from the end of my feet.
そして 、 ブラウス の 下 や 、 スカート の 中 を 探ら れた 感触 の 記憶 が 、 夕 里子 を 身震い さ せる のだった 。
|ぶらうす||した||すかーと||なか||さぐら||かんしょく||きおく||ゆう|さとご||みぶるい|||
And the memory of the feel under the blouse and in the inside of the skirt made Yuriko shivering.
ドア が ノック も なし で 開いた 。
どあ||||||あいた
The door opened without knocking.
「 国友 さん ……」
くにとも|
「 大丈夫 か ?
だいじょうぶ|
国友 は 息 を 弾ま せて いた 。
くにとも||いき||はずま||
「 車 が ラッシュ に 巻き込ま れて ね 。
くるま||らっしゅ||まきこま||
"The car got caught in a rush.
途中 で 降りて 走って 来た んだ 。
とちゅう||おりて|はしって|きた|
I got off on the way and ran.
悪かった ね 。
わるかった|
── もう 安心だ よ 。
|あんしんだ|
元気 を 出して ──」
げんき||だして
夕 里子 は 急に 堪え 切れ なく なって 、 国友 の 胸 に 身 を 投げ出す ように ぶつかって 行った 。
ゆう|さとご||きゅうに|こらえ|きれ|||くにとも||むね||み||なげだす|||おこなった
Yuuriko suddenly became unbearable and rushed to throw out herself to the chest of Kotoumi.
そして 、 しばらく 、 国友 の 腕 に 抱か れて 、 じっと 動か なかった 。
||くにとも||うで||いだか|||うごか|
And for a while, I was held in the arms of my national friend and kept still.
涙 は 出て 来 ない 。
なみだ||でて|らい|
The tears don't come out.
夕 里子 自身 、 これ に は 寂しい 思い を した 。
ゆう|さとご|じしん||||さびしい|おもい||
Riko Yuri himself, I felt lonely.
少し は 泣きじゃくれば 、 国友 も もっと 同情 して 、 抱きしめて くれる かも しれ ない のに ……。
すこし||なきじゃくれば|くにとも|||どうじょう||だきしめて|||||
If I cried a little, my friend might be more sympathetic and might hug me ...
好きな とき に 涙 を 流す と いう 特技 は 、 夕 里子 に は なかった 。
すきな|||なみだ||ながす|||とくぎ||ゆう|さとご|||
Yuuriko had no special ability to shed tears when she liked it.
「 やった 連中 は どう し ました ?
|れんちゅう||||
"What did you do?
国友 が 、 ガードマン に 訊 いた 。
くにとも||がーどまん||じん|
A national friend came to the guardman.
「 今 、 調べ させて い ます 。
いま|しらべ|さ せて||
"I'm looking into it now.
三 人 でした が 、 いつも この 辺 に いる 顔 でした から 、 たぶん 分 る と 思い ます 」
みっ|じん|||||ほとり|||かお||||ぶん|||おもい|
It was three people, but because I was always a face in this area, I think that maybe I will understand.
「 ひどい 奴 ら だ 、 こんな 女の子 を !
|やつ||||おんなのこ|
国友 は そっと 夕 里子 の 髪 を 撫でた 。
くにとも|||ゆう|さとご||かみ||なでた
夕 里子 は 国友 から 離れて 微笑んだ 。
ゆう|さとご||くにとも||はなれて|ほおえんだ
Yuko Yuko smiled away from his friend.
「 笑った ね 。
わらった|
"I laughed.
もう 大丈夫 か ?
|だいじょうぶ|
「 ええ 。
私 、 めげ ない の 」
わたくし|||
I can not do it
「 よし 。
それ で こそ 君 だ な 」
|||きみ||
That's it for you. "
「 国友 さん 、 すみません けど 、 お 金 、 貸して もらえ ない ?
くにとも|||||きむ|かして||
"I'm sorry, but you can't lend me some money?
全部 バッグ ごと 取ら れちゃ った から ……」
ぜんぶ|ばっぐ||とら|||
「 いい よ 。
今 、 いる の ?
いま||
「 買って 来 たい 物 が ある の 」
かって|らい||ぶつ|||
"I have something I want to buy and come with me"
「 じゃ 、 言って ごらん 。
|いって|
"Well then, say.
僕 が 買って 来て あげよう 」
ぼく||かって|きて|
「 だめな の 、 それ が ……」
夕 里子 は 、 ちょっと 頰 を 染めて 、「 下着 を …… かえ たい の 。
ゆう|さとご|||||そめて|したぎ||||
気持 悪くて 」
きもち|わるくて
「 そう か 。
よし 分 った 。
|ぶん|
── これ で いい ?
「 すみません 。
トイレ で 着替えて 来 ます 」
といれ||きがえて|らい|
「 ああ 、 それ なら ──」
と 、 ガードマン が 言った 。
|がーどまん||いった
「 この 奥 が 宿直 室 で 、 中 に シャワー の 設備 が ある 。
|おく||しゅくちょく|しつ||なか||しゃわー||せつび||
そこ で さっぱり したら どうか な ?
How about having a rest there?
「 嬉しい !
うれしい
そう し ます 」
夕 里子 は お 金 を 手 に 、 詰所 を 飛び出して 行った 。
ゆう|さとご|||きむ||て||つめしょ||とびだして|おこなった
Yuuriko rushed out of the corner with her money.
下着 と ブラウス を 買って 戻り 、 詰所 の 奥 の 六 畳 ほど の 畳 の 部屋 へ 通して もらって 、 シャワー 室 で 熱い シャワー を 浴び 、 着替える と 、 夕 里子 は 、 すっかり ショック から 立ち直って いた 。
したぎ||ぶらうす||かって|もどり|つめしょ||おく||むっ|たたみ|||たたみ||へや||とおして||しゃわー|しつ||あつい|しゃわー||あび|きがえる||ゆう|さとご|||しょっく||たちなおって|
I bought underwear and a blouse back, got it through a room of about 6 mats in the back of the room, took a hot shower in the shower room and changed my clothes.
冷静に なって 考えて みる と 、 ガードマン の 言葉 に は 夕 里子 も 同感 だった 。
れいせいに||かんがえて|||がーどまん||ことば|||ゆう|さとご||どうかん|
When I calmly thought, Yuuriko agrees with the guardman's words.
なぜ あの 三 人 が 急に 夕 里子 を 襲って 来た のだろう か ?
||みっ|じん||きゅうに|ゆう|さとご||おそって|きた||
Why did those three people suddenly attack Yuuriko?
もちろん 偶然 と も 考え られ ない こと は ない わけだ が 。
|ぐうぜん|||かんがえ|||||||
Of course there is nothing accidentally thought possible.
もし 偶然で ない と する と ……?
|ぐうぜんで||||
If it were not coincidence ... ....?
少し 濡れた 髪 を 手 で 直して 、 詰所 へ 戻る と 、 夕 里子 は 、 ちょっと 驚いて 足 を 止めた 。
すこし|ぬれた|かみ||て||なおして|つめしょ||もどる||ゆう|さとご|||おどろいて|あし||とどめた
After fixing a little wet hair with her hand and returning to the post office, Yuuriko was a little surprised and stopped her leg.
椅子 に 、 異様な 男 が 座って いた 。
いす||いような|おとこ||すわって|
年齢 は いく つ ぐらい だろう ?
ねんれい|||||
How old are you?
六十 歳 と も 、 四十 代 と も 見える 。
ろくじゅう|さい|||しじゅう|だい|||みえる
Sixty years old and even forty years old.
のび 切った 髪 は 半ば 白く なって 肩 に かかり 、 顔 の 下 半分 を 覆った ひげ は 、 胸元 に まで 垂れて いる 。
|きった|かみ||なかば|しろく||かた|||かお||した|はんぶん||おおった|||むなもと|||しだれて|
The broken hair is half white and covers the shoulders, and the whiskers covering the lower half of the face hang down to the chest.
まとって いる の は 、 背広 ── いや 、 かつて 背広 だった 、 と いう べき 古着 で 、 毛 が すれて 、 テカテカ と 光って いる 。
||||せびろ|||せびろ|||||ふるぎ||け|||てかてか||ひかって|
They are wearing clothes that should not have been dressed in suit--that they used to be dressed in. They are worn, shriveled and shiny.
その 上 に 、 毛布 を 一 枚 、 肩 から マント の ように 下げて いた 。
|うえ||もうふ||ひと|まい|かた||まんと|||さげて|
On top of that, I lowered a blanket from my shoulder like a cloak.
靴 も 、 もと が 何 色 だった の か 、 判然と し ない 古 靴 で 、 よく 見る と 、 右 と 左 が 別の 靴 だ と 分 る 。
くつ||||なん|いろ||||はんぜんと|||ふる|くつ|||みる||みぎ||ひだり||べつの|くつ|||ぶん|
The shoes are also old color shoes with unclear colors, and if you look closely, you will find that the right and left are different shoes.
つまり 、 どう 見て も 浮 浪 者 な のだ が 、 それでいて 、 目 を そむけ たく なる ような 不潔 感 は ない 。
||みて||うか|ろう|もの|||||め||||||ふけつ|かん||
In other words, it is a vagrant by any means, but there is no filthy feeling that makes you look away.
ボロ は 着て いる が 、 そう 汚 なく は な さ そうだった 。
||きて||||きたな|||||そう だった
Boro is wearing it, but it seems not to be so dirty.
そして 何より も 、 その 目 が 、 他の 浮 浪 者 たち と は 違って いた 。
|なにより|||め||たの|うか|ろう|もの||||ちがって|
And above all, his eyes were different from the other vagrants.
生気 の ない 、 トロン と した 目 で は なく 、 決して ギラ ついて は い ない が 、 物静かな 、 知性 すら 感じ させる 光 を 、 中 に 持って いる のである 。
せいき||||||め||||けっして|||||||ものしずかな|ちせい||かんじ|さ せる|ひかり||なか||もって||
It is not a lifeless, tron-less eye, it has no light, but has a quiet, even intellective light inside.
その 目 が 優しく 夕 里子 を 見た 。
|め||やさしく|ゆう|さとご||みた
His eyes were kind and I saw Yuuriko.
「 や あ 、 さっぱり した かい ?
"Hey, did you refresh?
と 、 ガードマン が 訊 いた 。
|がーどまん||じん|
「 ええ 、 ありがとう ございました 」
「 顔色 も 戻った ね 。
かおいろ||もどった|
良かった 」
よかった
と 、 傍 に 立って いる 国友 が 言った 。
|そば||たって||くにとも||いった
Said a friend of his side standing by.
「 あ 、 この 人 を 紹介 しよう 」
||じん||しょうかい|
ガードマン が 、 椅子 に 座った 男 を 手 で 示して 言った 。
がーどまん||いす||すわった|おとこ||て||しめして|いった
The guardman said by hand the man sitting in the chair.
「 これ が 〈 王様 〉 だ よ 」
||おうさま||
夕 里子 は 、 ごく 自然に 会釈 した 。
ゆう|さとご|||しぜんに|えしゃく|
Yuriko met very naturally.
「 佐々 本 夕 里子 です 」
ささ|ほん|ゆう|さとご|
「 この 人 は 、 この 地下 街 の 浮 浪 者 たち の 中 で 、〈 王様 〉 と 呼ば れて る んだ 。
|じん|||ちか|がい||うか|ろう|もの|||なか||おうさま||よば|||
"This man is called" the king "among the vagrants in this underground town.
どの 連中 も この 人 の 言う こと は よく きく し 、 何 か 面倒 が 起る と この 人 の ところ へ 持ち込む 。
|れんちゅう|||じん||いう||||||なん||めんどう||おこる|||じん||||もちこむ
Every one of them makes sense of what this person says, and brings something to this person when something goes wrong.
今 、 この 地下 街 に 何 人 の 浮 浪 者 が いる か 、 それ を 全部 この 人 は 知っている 。
いま||ちか|がい||なん|じん||うか|ろう|もの||||||ぜんぶ||じん||しっている
Now, this person knows how many people are in this underground town.
他 所 から 新しい 浮 浪 者 が 来れば 、 入れて いい か どう かも この 人 が 決める 。
た|しょ||あたらしい|うか|ろう|もの||くれば|いれて||||||じん||きめる
If new vagrants from other places come in, this person also decides whether it is OK to insert them.
──〈 王様 〉 と いう 名 で 、 いつの間にか 呼ば れる ように なった んだ 。
おうさま|||な||いつのまにか|よば||||
── In the name of “King”, it has been called for a while.
もう 地下 街 が できて 以来 だ から ね 。
|ちか|がい|||いらい|||
It's been since the underground mall was already built.
十 年 近く ここ に 生活 して る んだ よ 」
じゅう|とし|ちかく|||せいかつ||||
I'm living here for nearly a decade now. "
夕 里子 は 、 好奇心 を 刺激 さ れて 、 まじまじ と 、 その 〈 王様 〉 を 見た 。
ゆう|さとご||こうきしん||しげき||||||おうさま||みた
確かに 、 体 も 大きく ない し 、 別に 凄み も ない のだ が 、 どことなく 、 逆らい がたい 、 指導 者 らしい 「 大き さ 」 を 感じ させる 人物 である 。
たしかに|からだ||おおきく|||べつに|すごみ||||||さからい||しどう|もの||おおき|||かんじ|さ せる|じんぶつ|
It is true that the body is not big, nor is it a grudge, but it is a person who feels "size" like a leader, who can not stand up against it somehow.
「 あなた が ここ の 連中 に 襲わ れた 娘 さん です か 」
||||れんちゅう||おそわ||むすめ|||
"Are you the girl attacked by the guys here?"
と 、〈 王様 〉 が 言った 。
|おうさま||いった
その 柔らかで 、 しかし 、 はっきり と した 言葉づかい に 、 夕 里子 は びっくり した 。
|やわらかで|||||ことばづかい||ゆう|さとご|||
Yuuriko was surprised at the soft but clear language.
「 は 、 はい 、 そう です 」
と 、 肯 く 。
|こう|
「 大変 申し訳ない こと を し ました 」
たいへん|もうしわけない||||
"I am sorry very much"
ゆっくり と 、 かんで 含める ような 言い 方 だ が 、 言葉 に は 感情 が こもって いた 。
|||ふくめる||いい|かた|||ことば|||かんじょう|||
Although it is said that it includes slowly and slowly, words have feelings.
「 私 の 監督 が 行き届か なかった 。
わたくし||かんとく||ゆきとどか|
"My director was out of reach.
全く 、 お 詫び のし よう も あり ませ ん 」
まったく||わび||||||
There is no apology at all. "
「 い 、 いえ …… どうも 」
夕 里子 は 困って しまった 。
ゆう|さとご||こまって|
Yuriko was in trouble.
「 総 て は 私 の 責任 です 。
そう|||わたくし||せきにん|
"All is my responsibility.
私 を 逮捕 さ れて も 、 獄 に 投じ られて も 、 構い ませ ん が 、 しかし どうせ 私 ども は 監獄 へ 入れば 、 ねぐら が 出来た と 喜ぶ 人種 。
わたくし||たいほ||||ごく||とうじ|||かまい||||||わたくし|||かんごく||はいれば|||できた||よろこぶ|じんしゅ
It doesn't matter if I'm arrested or thrown into prison, but if we go into jail, we'll rejoice that we've made a roost.
それでは そちら の 気 が 済み ます まい 」
|||き||すみ||
Then I won't feel like that "
「 いい んです 、 もう 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
|ゆう|さとご||いった
「 済んだ こと です し 、 バッグ を 返して いただけば 、 それ で いい んです 。
すんだ||||ばっぐ||かえして|||||
"It's done, and it's good if you return the bag.
ただ ── 私 を 襲った の が 、 急の 思い付き な の か 、 それとも 誰 か に 頼ま れて の こと な の か 。
|わたくし||おそった|||きゅうの|おもいつき|||||だれ|||たのま||||||
Only ── Do you think of a sudden idea or someone that has hit me?
それ を 聞き たい んです 」
||きき||
I want to hear that. "
「 頼ま れて ?
たのま|
と 、 国友 が 言った 。
|くにとも||いった
「 じゃ 、 君 は ……」
|きみ|
「 国友 さん に 電話 した の は その 用 だった の 」
くにとも|||でんわ|||||よう||
"I used to call Kunitomo for that purpose"
夕 里子 は 、 植松 に 伝票 を 書か せて 、 それ を 鑑定 して もらう つもりで いた こと を 話した 。
ゆう|さとご||うえまつ||でんぴょう||かか||||かんてい|||||||はなした
Yuuriko had Uematsu write a slip and told her that she was going to have it appraised.
「 だから もしかしたら 、 と 思って ……」
|||おもって
"So maybe I think ..."
「 なるほど 。
その 伝票 も 、 バッグ ごと 持って行か れた わけだ ね ?
|でんぴょう||ばっぐ||もっていか|||
「 何 か 複雑な 事情 が お あり の ようです ね 」
なん||ふくざつな|じじょう||||||
"There seems to be something complicated about it,"
と 、〈 王様 〉 は 言った 。
|おうさま||いった
「 ともかく 、 その 三 人 を 捜し出して 、 問い 糺して やり ましょう 」
||みっ|じん||さがしだして|とい|ただして||
"Anyway, let's find out the three and ask questions."
「 見付かる か ね 、 王様 」
みつかる|||おうさま
"Can you find it, King?"
と 、 ガードマン が 訊 いた 。
|がーどまん||じん|
「 例の 三 人 、 いつも あの 休憩 所 に いた けど 、 寝る の も あそこ かい ?
れいの|みっ|じん|||きゅうけい|しょ||||ねる||||
"Three people in the example were always in that rest area, but are you going to sleep there too?
「 あの 三 人 を 入れた の は 失敗 だった 」
|みっ|じん||いれた|||しっぱい|
"It was a failure to include those three people."
と 、 王様 は 首 を 振った 。
|おうさま||くび||ふった
「 今度 問題 を 起こしたら 、 この 地下 街 を 追い出す と 言って おいた のだ が 、 それ を 承知 で こんな こと を した 以上 、 もう この 地下 街 から 逃げ出す つもりで は いる でしょう 」
こんど|もんだい||おこしたら||ちか|がい||おいだす||いって||||||しょうち||||||いじょう|||ちか|がい||にげだす||||
"I said that if I had a problem this time, I was going to kick this underground town, but I knew that I would do something like this and I'm already planning to run away from this underground town"
「 する と 、 もう ここ に は ──」
"If you do it already here」 "
「 いや 」
と 、 遮って 、「 あの がめつい 連中 の こと だ 、 おそらく 手ぶらで 出て 行く まい 。
|さえぎって|||れんちゅう|||||てぶらで|でて|いく|
"I'm talking about those guys, probably don't go out with me."
いつも あいつ ら が たかって いる 店 は 十二 時 に なら ない と 開か ない 。
||||||てん||じゅうに|じ|||||あか|
A store that always wants them will not open unless it is twelve o'clock.
一 時 まで は 店 が 忙しい 。
ひと|じ|||てん||いそがしい
The store is busy until one time.
何 か もらえる と すれば 、 その後 だ 」
なん|||||そのご|
If you get something, it 's after. "
「 する と ── 今 、 一 時 十分だ 」
||いま|ひと|じ|じゅうぶんだ
"If you do-now it is enough for a while"
「 すぐに 手配 すれば ──」
|てはい|
"If you arrange immediately す ぐ"
と 国友 が 言った 。
|くにとも||いった
「 いや 、 大丈夫です 」
|だいじょうぶです
と 、 王様 は 言った 。
|おうさま||いった
「 話 を 聞く と 同時に 、 地下 街 の 方々 へ 、 人 を やって ある 。
はなし||きく||どうじに|ちか|がい||ほうぼう||じん|||
"At the same time I listen to the story, I'm doing people to people in the underground mall.
どこ から 出よう と して も 、 すぐに ここ へ 知らせ が 来る はずです 」
||でよう|||||||しらせ||くる|
Wherever you are going to leave, you should be informed here soon. "
そこ へ 、 バタバタ と 足音 が して 、 ドア が 開く と 、 まだ 若い 感じ の 浮 浪 者 が 一 人 顔 を 出した 。
||||あしおと|||どあ||あく|||わかい|かんじ||うか|ろう|もの||ひと|じん|かお||だした
There was a slap and a footsteps, and when the door opened, one of the young, vagrants came out.
「 王様 !
おうさま
見つけ ました !
みつけ|
I found !
「 どこ だ ?
M ビル の 裏 の 出口 か ?
m|びる||うら||でぐち|
「 そうです 。
そう です
どうして それ を ?
「 あいつ ら の 頭 の 考える こと ぐらい すぐに 分 る 。
|||あたま||かんがえる||||ぶん|
"We will soon know what their heads are thinking about.
で 、 出て 行った か ?
|でて|おこなった|
So, did you go out?
「〈 ドクター 〉 が 酒 を やって 引き止めて い ます 」
どくたー||さけ|||ひきとめて||
"<Doctor> is holding alcohol and holding it down."
「 よし 。
すぐに 行き ましょう 」
|いき|
と 王様 は 立ち上る と 、 夕 里子 たち に 言った 。
|おうさま||たちのぼる||ゆう|さとご|||いった
「 急げば 捕まえ られる 」
いそげば|つかまえ|
「 よし 。
お嬢さん 、 あなた は ここ に ──」
おじょうさん||||
「 むだだ よ 」
と 国友 が 微笑んで 言った 。
|くにとも||ほおえんで|いった
「 一緒に 来る に 決 って る 」
いっしょに|くる||けっ||
地下 街 は 昼 休み 過ぎ だった が 、 まだ 人 の 姿 は かなり あった 。
ちか|がい||ひる|やすみ|すぎ||||じん||すがた|||
その 中 を 、 浮 浪 者 に 率い られて 、 ガードマン や 国友 たち が ついて 歩く のだ から 、 通りすぎる 人々 が 、 みんな 物珍し げ に 振り返った 。
|なか||うか|ろう|もの||ひきい||がーどまん||くにとも||||あるく|||とおりすぎる|ひとびと|||ものめずらし|||ふりかえった
Among them, guardmen and national friends walked around, led by vagrants, and those who passed by looked back at a rare occurrence.
「 おい 王様 」
|おうさま
途中 で 、 ガードマン が 言った 。
とちゅう||がーどまん||いった
「 M ビル の 裏 に 出口 なんか あった か ?
m|びる||うら||でぐち|||
"Was there an exit behind M Bill?
「 地下鉄 の 通 気孔 だ 。
ちかてつ||つう|きこう|
あそこ の 蓋 は 簡単に 外れる から ね 」
||ふた||かんたんに|はずれる||
The lid over there will come off easily "
「 そう か !
気 が 付か なかった な 」
き||つか||
夕 里子 は 、 何だか 自分 が 小説 か 漫画 の 主人公 に でも なった ような 気 が して いた 。
ゆう|さとご||なんだか|じぶん||しょうせつ||まんが||しゅじんこう|||||き|||
Yuriko felt like she somehow became a novel or manga protagonist.
浮 浪 者 の 王様 を 先頭 に 犯人 を 捕まえ に 行く なんて 。
うか|ろう|もの||おうさま||せんとう||はんにん||つかまえ||いく|
Going to catch the culprit with the king of the fugitive at the top.
── 何 か の CM じゃ ない けど 、
なん|||cm|||
CM It is not a commercial of anything but
「 ファンタスティック !
である 。
「〈 ドクター 〉 って 、 元 、 お 医者 さん だった んです か ?
どくたー||もと||いしゃ||||
"Did you say that you were a doctor before?
と 、 夕 里子 は 訊 いて みた 。
|ゆう|さとご||じん||
「 いや 、 そんな こと は どう で も いい のです よ 、 お嬢さん 」
||||||||||おじょうさん
"No, it doesn't matter how you do, grandmother."
と 王様 は 静かに 答えた 。
|おうさま||しずかに|こたえた
「 ここ へ 来て いる 人間 は 、 そんな 過去 と 訣別 したい 者 ばかり な のです 。
||きて||にんげん|||かこ||けつべつ|し たい|もの|||
"The people who are here are only those who want to break up with such a past.
だから 、 我々 は 互いに 名前 も 訊 か ないし 、 前身 も 知ろう と し ない 。
|われわれ||たがいに|なまえ||じん|||ぜんしん||しろう|||
So, we do not share names with each other, nor do we try to know their predecessors.
ただ 、 一緒に いる 内 に 、 その 印象 や 、 風貌 から 、 何となく 名前 が ついて 来る のです 」
|いっしょに||うち|||いんしょう||ふうぼう||なんとなく|なまえ|||くる|
However, while I am together, my name and impression somehow come from me.
夕 里子 は 肯 いた 。
ゆう|さとご||こう|
Yuriko asked.
「 その 奥 だ 。
|おく|
"That's the back.
── ちょっと 狭い が 」
|せまい|
トイレ の わき の 通路 を 抜けて 、 掃除 用具 など を 置いた 場所 へ 出る 。
といれ||||つうろ||ぬけて|そうじ|ようぐ|||おいた|ばしょ||でる
「 おい 、 ドクター !
|どくたー
王様 が 声 を 上げた 。
おうさま||こえ||あげた
誰 か が 、 床 に 倒れて いる 。
だれ|||とこ||たおれて|
白衣 ── と いって も 、 もちろん 今 は 〈 黒衣 〉 に 近く なって いる ── を 着込んで 、 確かに 、 一見 医者 の ような 体つき の 男 が 、 ぐったり と 床 に のびて いる のだ 。
はくい|||||いま||こくい||ちかく||||きこんで|たしかに|いっけん|いしゃ|||からだつき||おとこ||||とこ||||
Wearing a white coat-but of course now close to a black coat-indeed, a seemingly doctor-like man stretches out on the floor with a glimpse.
「 頭から 血 が 出て いる ぞ 」
あたまから|ち||でて||
"I have blood coming out of my head"
国友 が 駆け寄って か が み込んだ 。
くにとも||かけよって|||みこんだ
Kunitomo rushed in and wondered.
「── 殴ら れて いる 。
なぐら||
"I'm being scolded.
息 は ある 。
いき||
大丈夫だ 」
だいじょうぶだ
「 畜生 、 逃げた な !
ちくしょう|にげた|
ガードマン が 、 通 気孔 を 見上げて 言った 。
がーどまん||つう|きこう||みあげて|いった
Guardman said, looking up at the vent.
「 早く 、 救急 車 を 呼んだ 方 が いい 」
はやく|きゅうきゅう|くるま||よんだ|かた||
"It is better to call an ambulance as soon as possible."
と 国友 は 言った 。
|くにとも||いった
「 分 り ました 」
ぶん||
ガードマン が 走って 行く 。
がーどまん||はしって|いく
「 とんでもない こと に なった 」
"It's going to be ridiculous"
王様 は 呟く ように 言った 。
おうさま||つぶやく||いった
「 でも 、 あなた の せい じゃ あり ませ ん わ 」
と 、 夕 里子 は 言った 。
|ゆう|さとご||いった
「 どんな 立派な 国 でも 、 泥棒 は い ます もの 」
|りっぱな|くに||どろぼう||||
"There are thieves in any good country"
王様 は 、 夕 里子 を 見て 微笑む と 、 静かに 、 頭 を 下げた 。
おうさま||ゆう|さとご||みて|ほおえむ||しずかに|あたま||さげた
The king smiled at Yuuriko, and quietly lowered her head.
つい つられて 、 夕 里子 も 頭 を 下げて いた 。
||ゆう|さとご||あたま||さげて|
Yuriko was bowing down, too.
「── お 姉ちゃん 、 遅い じゃ ない の !
|ねえちゃん|おそい|||
珠美 が 、 病院 の ベッド で むくれて いた 。
たまみ||びょういん||べっど|||
「 ごめん 。
ちょっと ね 」
「 妹 が 瀕死 の 重体 だって いう のに 、 どうせ あの 刑事 さん と デート でも して た んでしょう 」
いもうと||ひんし||じゅうたい||||||けいじ|||でーと||||
"Even though my sister was heavy on death, she would have even dated that detective."
「 そんな 元気な 重体 が ある ?
|げんきな|じゅうたい||
"Is there such a vital heavy body?
と 、 夕 里子 は 笑った 。
|ゆう|さとご||わらった
「 おかげ で 、 私 は 一 人 で 恐ろしい 検査 の 数々 に 堪え なければ なら なかった のであった 」
||わたくし||ひと|じん||おそろしい|けんさ||かずかず||こらえ||||
"Thanks to that I had to endure a number of horrible tests alone."
「 何 を 気取って ん の 。
なん||きどって||
"What are you worried about?
で 、 どう だって ?
So how are you?
「 異常 なし 」
いじょう|
と 言う と 、 珠美 は ヒョイ と 毛布 を はね上げて 、 ベッド から 降りた 。
|いう||たまみ||||もうふ||はねあげて|べっど||おりた
Speaking of which, Tamami put on a blanket with Hyoi and got off the bed.
もう ちゃんと 服 を 着て いる 。
||ふく||きて|
I'm wearing my clothes already.
「 何 だ 、 人 を からかって !
なん||じん||
「 ねえ 、 お腹 空いちゃ った の よ 。
|おなか|あいちゃ|||
お 昼 食べて ない んだ もん 」
|ひる|たべて|||
I have not eaten at lunchtime "
「 もう 出て いい の ね ?
|でて|||
じゃ 、 外 で 食べよう 」
|がい||たべよう
「 お 姉ちゃん の おごり 」
|ねえちゃん||
「 だめ よ 」
「 全快 祝い 」
ぜんかい|いわい
「 だめ 。
一 文なし 。
ひと|もんなし
お 金 貸して 」
|きむ|かして
Lending money "
「 何で ?
なんで
「 三 人 の 男 に 襲わ れて ね 、 バッグ 盗 られた の 」
みっ|じん||おとこ||おそわ|||ばっぐ|ぬす||
廊下 を 歩き ながら 、 珠美 は 目 を パチクリ さ せて から 、
ろうか||あるき||たまみ||め|||||
「 噓 だ あ !
と 声 を 上げた 。
|こえ||あげた
Said aloud.
病院 の 支払い を 、 珠美 の 持って いた お 金 で 済ませる と 、 二 人 は 、 病院 の 向 い の レストラン に 入った 。
びょういん||しはらい||たまみ||もって|||きむ||すませる||ふた|じん||びょういん||むかい|||れすとらん||はいった
When they paid for the hospital with the money that they had, they went to a restaurant for the hospital.