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人間失格, 人間失格 2/15

人間 失格 2/15

自分 の 父 は 、 東京 に 用事 の 多い ひと でした ので 、 上野 の 桜木 町 に 別荘 を 持って いて 、 月 の 大半 は 東京 の その 別荘 で 暮して いました 。 そうして 帰る 時 に は 家族 の 者 たち 、 また 親戚 ( しんせき ) の 者 たち に まで 、 実に おびただしく お土産 を 買って 来る の が 、 まあ 、 父 の 趣味 みたいな もの でした 。 いつか の 父 の 上京 の 前夜 、 父 は 子供 たち を 客間 に 集め 、 こんど 帰る 時 に は 、 どんな お土産 が いい か 、 一 人 々々 に 笑い ながら 尋ね 、 それ に 対する 子供 たち の 答 を いちいち 手帖 ( てちょう ) に 書きとめる のでした 。 父 が 、 こんなに 子供 たち と 親しく する の は 、 めずらしい 事 でした 。 「 葉 蔵 は ? 」 と 聞かれて 、 自分 は 、 口ごもって しまいました 。 何 が 欲しい と 聞か れる と 、 とたん に 、 何も 欲しく なく なる のでした 。 どうでも いい 、 どうせ 自分 を 楽しく さ せて くれる もの なんか 無い んだ と いう 思い が 、 ちら と 動く のです 。 と 、 同時に 、 人 から 与えられる もの を 、 どんなに 自分 の 好み に 合わ なくて も 、 それ を 拒む 事 も 出来ません でした 。 イヤな 事 を 、 イヤ と 言え ず 、 また 、 好きな 事 も 、 おずおず と 盗む ように 、 極めて にがく 味 ( あじわ ) い 、 そうして 言い 知れ ぬ 恐怖 感 に もだえる のでした 。 つまり 、 自分 に は 、 二 者 選一 の 力 さえ 無かった のです 。 これ が 、 後年 に 到 り 、 いよいよ 自分 の 所 謂 「 恥 の 多い 生涯 」 の 、 重大な 原因 と も なる 性癖 の 一 つ だった ように 思わ れます 。 自分 が 黙って 、 もじもじ して いる ので 、 父 は ちょっと 不機嫌な 顔 に なり 、「 やはり 、 本 か 。 浅草 の 仲 店 に お 正月 の 獅子舞 い の お 獅子 、 子供 が かぶって 遊ぶ の に は 手頃な 大き さ の が 売って いた けど 、 欲しく ない か 」 欲しく ない か 、 と 言わ れる と 、 もう ダメな んです 。 お 道化 た 返事 も 何も 出来 や し ない んです 。 お 道化 役者 は 、 完全に 落第 でした 。 「 本 が 、 いい でしょう 」 長兄 は 、 まじめな 顔 を して 言いました 。 「 そう か 」 父 は 、 興 覚め 顔 に 手帖 に 書きとめ も せ ず 、 パチ と 手帖 を 閉じました 。 何という 失敗 、 自分 は 父 を 怒ら せた 、 父 の 復讐 ( ふくしゅう ) は 、 きっと 、 おそるべき もの に 違いない 、 いま の うち に 何とか して 取りかえし の つか ぬ もの か 、 と その 夜 、 蒲 団 の 中 で がたがた 震え ながら 考え 、 そっと 起きて 客間 に 行き 、 父 が 先刻 、 手帖 を しまい 込んだ 筈 の 机 の 引き出し を あけて 、 手帖 を 取り上げ 、 パラパラ めくって 、 お土産 の 注文 記入 の 個所 を 見つけ 、 手帖 の 鉛筆 を なめて 、 シシマイ 、 と 書いて 寝ました 。 自分 は その 獅子舞 い の お 獅子 を 、 ちっとも 欲しく は 無かった のです 。 かえって 、 本 の ほう が いい くらい でした 。 けれども 、 自分 は 、 父 が その お 獅子 を 自分 に 買って 与えたい のだ と いう 事 に 気 が つき 、 父 の その 意向 に 迎合 して 、 父 の 機嫌 を 直したい ばかりに 、 深夜 、 客間 に 忍び込む と いう 冒険 を 、 敢えて おかした のでした 。 そうして 、 この 自分 の 非 常の 手段 は 、 果して 思いどおりの 大 成功 を 以 て 報いられました 。 やがて 、 父 は 東京 から 帰って 来て 、 母 に 大声 で 言って いる の を 、 自分 は 子供 部屋 で 聞いて いました 。 「 仲 店 の おもちゃ 屋 で 、 この 手帖 を 開いて みたら 、 これ 、 ここ に 、 シシマイ 、 と 書いて ある 。 これ は 、 私 の 字 で は ない 。 はて な ? と 首 を かしげて 、 思い当りました 。 これ は 、 葉 蔵 の いたずらです よ 。 あいつ は 、 私 が 聞いた 時 に は 、 に や にやして 黙って いた が 、 あと で 、 どうしても お 獅子 が 欲しくて たまらなく なった んだ ね 。 何せ 、 どうも 、 あれ は 、 変った 坊主 です から ね 。 知らん振り して 、 ちゃんと 書いて いる 。 そんなに 欲しかった の なら 、 そう 言えば よい のに 。 私 は 、 おもちゃ 屋 の 店先 で 笑いました よ 。 葉 蔵 を 早く ここ へ 呼び なさい 」 また 一方 、 自分 は 、 下 男 や 下 女 たち を 洋室 に 集めて 、 下 男 の ひと り に 滅 茶 苦 茶 ( めちゃくちゃ ) に ピアノ の キイ を たたか せ 、( 田舎 で は ありました が 、 その 家 に は 、たいてい の もの が 、 そろって いました ) 自分 は その 出 鱈 目 ( でたらめ ) の 曲 に 合せて 、 インデヤン の 踊り を 踊って 見せて 、 皆 を 大笑い さ せました 。 次兄 は 、 フラッシュ を 焚 ( た ) いて 、 自分 の インデヤン 踊り を 撮影 して 、 その 写真 が 出来た の を 見る と 、 自分 の 腰 布 ( それ は 更紗 ( さらさ ) の 風呂敷 でした ) の 合せ 目 から 、 小さい お チンポ が 見えて いた ので 、 これ が また 家中 の 大笑い でした 。 自分 に とって 、 これ また 意外の 成功 と いう べき もの だった かも 知れません 。 自分 は 毎月 、 新刊 の 少年 雑誌 を 十 冊 以上 も 、 とって いて 、 また その他 ( ほか ) に も 、 さまざまの 本 を 東京 から 取り寄せて 黙って 読んで いました ので 、 メチャラクチャラ 博士 だの 、 また 、 ナンジャモンジャ 博士 など と は 、たいへんな 馴染 ( なじみ ) で 、 また 、 怪談 、 講談 、 落語 、 江戸 小咄 ( こばなし ) など の 類 に も 、 かなり 通じて いました から 、 剽軽 ( ひょうきん ) な 事 を まじめな 顔 を して 言って 、 家 の 者 たち を 笑わ せる の に は 事 を 欠きません でした 。 しかし 、 嗚呼 ( ああ )、 学校 ! 自分 は 、 そこ で は 、 尊敬 さ れ かけて いた のです 。 尊敬 さ れる と いう 観念 も また 、 甚 ( はな は ) だ 自分 を 、 おびえ させました 。 ほとんど 完全に 近く 人 を だまして 、 そうして 、 或る ひと り の 全知全能 の 者 に 見破ら れ 、 木っ葉 みじん に やられて 、 死 ぬる 以上 の 赤 恥 を かかせられる 、 それ が 、「 尊敬 さ れる 」 と いう 状態 の 自分 の 定義 で ありました 。 人間 を だまして 、「 尊敬 さ れ 」 て も 、 誰 か ひと り が 知っている 、 そうして 、 人間 たち も 、 やがて 、 その ひと り から 教えられて 、 だまさ れた 事 に 気づいた 時 、 その 時 の 人間 たち の 怒り 、 復讐 は 、 いったい 、 まあ 、 どんなでしょう か 。 想像 して さえ 、 身 の 毛 が よだつ 心地 が する のです 。 自分 は 、 金持ち の 家 に 生れた と いう 事 より も 、 俗に いう 「 できる 」 事 に 依って 、 学校 中 の 尊敬 を 得 そうに なりました 。 自分 は 、 子供 の 頃 から 病弱で 、 よく 一 つき 二 つき 、 また 一 学年 ちかく も 寝込んで 学校 を 休んだ 事 さえ あった のです が 、 それ でも 、 病み 上り の から だ で 人力車 に 乗って 学校 へ 行き 、 学年 末 の 試験 を 受けて みる と 、 クラス の 誰 より も 所 謂 「 できて 」 いる ようでした 。 からだ 具合 い の よい 時 でも 、 自分 は 、 さっぱり 勉強 せ ず 、 学校 へ 行って も 授業 時間 に 漫画 など を 書き 、 休憩 時間 に は それ を クラス の 者 たち に 説明 して 聞か せて 、 笑わ せて やりました 。 また 、 綴り 方 に は 、 滑稽 噺 ( こっけい ば なし ) ばかり 書き 、 先生 から 注意 されて も 、 しかし 、 自分 は 、 やめません でした 。 先生 は 、 実は こっそり 自分 の その 滑稽 噺 を 楽しみに して いる 事 を 自分 は 、 知っていた から でした 。 或る 日 、 自分 は 、 れい に 依って 、 自分 が 母 に 連れられて 上京 の 途中 の 汽車 で 、 おしっこ を 客車 の 通路 に ある 痰 壺 ( たん つぼ ) に して しまった 失敗 談 ( しかし 、 その 上京 の 時 に 、 自分 は 痰 壺 と 知ら ず に した の では ありません でした 。 子供 の 無邪気 を てらって 、 わざと 、 そうした の でした ) を 、 ことさら に 悲し そうな 筆 致 で 書いて 提出 し 、 先生 は 、 きっと 笑う と いう 自信 が ありました ので 、 職員 室 に 引き揚げて 行く 先生 の あと を 、 そっと つけて 行きましたら 、 先生 は 、 教室 を 出る と すぐ 、 自分 の その 綴り 方 を 、 他の クラス の 者 たち の 綴り 方 の 中 から 選び 出し 、 廊下 を 歩き ながら 読み はじめて 、 クスクス 笑い 、 やがて 職員 室 に は いって 読み 終えた の か 、 顔 を 真 赤 に して 大声 を 挙げて 笑い 、 他の 先生 に 、 さっそく それ を 読ま せて いる の を 見とどけ 、 自分 は 、たいへん 満足でした 。 お 茶目 。 自分 は 、 所 謂 お 茶目に 見られる 事 に 成功 しました 。 尊敬 さ れる 事 から 、 のがれる 事 に 成功 しました 。 通信 簿 は 全 学科 と も 十 点 でした が 、 操 行 と いう もの だけ は 、 七 点 だったり 、 六 点 だったり して 、 それ も また 家中 の 大笑い の 種 でした 。 けれども 自分 の 本性 は 、 そんな お茶 目 さん など と は 、 凡 ( およ ) そ 対 蹠 (たいせき ) 的な もの でした 。 その頃 、 既に 自分 は 、 女 中 や 下 男 から 、 哀 ( かな ) しい 事 を 教えられ 、 犯されて いました 。 幼少 の 者 に 対して 、 そのような 事 を 行う の は 、 人間 の 行い 得る 犯罪 の 中 で 最も 醜悪で 下等で 、 残酷な 犯罪 だ と 、 自分 は いまでは 思って います 。 しかし 、 自分 は 、 忍びました 。 これ で また 一 つ 、 人間 の 特質 を 見た と いう ような 気持 さえ して 、 そうして 、 力無く 笑って いました 。 もし 自分 に 、 本当の 事 を 言う 習慣 が ついて いた なら 、 悪びれ ず 、 彼等 の 犯罪 を 父 や 母 に 訴える 事 が 出来た の かも 知れません が 、 しかし 、 自分 は 、 その 父 や 母 を も 全部 は 理解 する 事 が 出来 なかった のです 。 人間 に 訴える 、 自分 は 、 その 手段 に は 少しも 期待 できません でした 。 父 に 訴えて も 、 母 に 訴えて も 、 お 巡 ( まわ ) り に 訴えて も 、 政府 に 訴えて も 、 結局 は 世渡り に 強い 人 の 、 世間 に 通り の いい 言い ぶん に 言いまくら れる だけ の 事 で は 無い かしら 。 必ず 片手 落 の ある の が 、 わかり切って いる 、 所詮 ( しょせん )、 人間 に 訴える の は 無駄である 、 自分 は やはり 、 本当の 事 は 何も 言わ ず 、 忍んで 、 そうして お 道化 を つづけて いる より 他 、 無い 気持 な のでした 。 なんだ 、 人間 へ の 不信 を 言って いる の か ? へえ ? お前 は いつ クリスチャン に なった ん だい 、 と 嘲笑 ( ちょうしょう ) する 人 も 或いは ある かも 知れません が 、 しかし 、 人間 へ の 不信 は 、 必ずしも すぐに 宗教 の 道 に 通じて いる と は 限ら ない と 、 自分 に は 思わ れる のです けど 。 現に その 嘲笑 する 人 を も 含めて 、 人間 は 、 お互い の 不信 の 中 で 、 エホバ も 何も 念頭 に 置か ず 、 平気で 生きて いる では ありません か 。 やはり 、 自分 の 幼少 の 頃 の 事 で ありました が 、 父 の 属して いた 或る 政党 の 有名 人 が 、 この 町 に 演説 に 来て 、 自分 は 下 男 たち に 連れられて 劇場 に 聞き に 行きました 。 満員 で 、 そうして 、 この 町 の 特に 父 と 親しく して いる 人 たち の 顔 は 皆 、 見えて 、 大いに 拍手 など して いました 。 演説 が すんで 、 聴衆 は 雪 の 夜道 を 三々五々 かたまって 家路 に 就き 、 クソ ミソ に 今夜 の 演説 会 の 悪 口 を 言って いる のでした 。 中 に は 、 父 と 特に 親しい 人 の 声 も まじって いました 。 父 の 開会 の 辞 も 下手 、 れいの 有名 人 の 演説 も 何 が 何やら 、 わけ が わから ぬ 、 と その 所 謂父 の 「 同志 たち 」 が 怒声 に 似た 口調 で 言って いる のです 。 そうして その ひと たち は 、 自分 の 家 に 立ち寄って 客間 に 上り 込み 、 今夜 の 演説 会 は 大 成功 だった と 、 しん から 嬉し そうな 顔 を して 父 に 言って いました 。 下 男 たち まで 、 今夜 の 演説 会 は どう だった と 母 に 聞か れ 、 とても 面白かった 、 と 言って けろりと して いる のです 。 演説 会 ほど 面白く ない もの は ない 、 と 帰る 途 々 ( みちみち )、 下 男 たち が 嘆き 合って いた のです 。 しかし 、 こんな の は 、 ほんの ささやかな 一例 に 過ぎません 。 互いに あざむき 合って 、 しかも いずれ も 不思議に 何の 傷 も つか ず 、 あざむき 合って いる 事 に さえ 気 が ついて いない みたいな 、 実に あざやかな 、 それ こそ 清く 明るく ほがらかな 不信 の 例 が 、 人間 の 生活 に 充満 して いる ように 思わ れます 。 けれども 、 自分 に は 、 あざむき 合って いる と いう 事 に は 、 さして 特別の 興味 も ありません 。 自分 だって 、 お 道化 に 依って 、 朝 から 晩 まで 人間 を あざむいて いる のです 。 自分 は 、 修身 教科 書 的な 正義 と か 何とか いう 道徳 に は 、 あまり 関心 を 持て ない のです 。 自分 に は 、 あざむき 合って い ながら 、 清く 明るく 朗らかに 生きて いる 、 或いは 生き 得る 自信 を 持って いる みたいな 人間 が 難解な のです 。 人間 は 、 ついに 自分 に その 妙 諦 ( みょう てい ) を 教えて は くれません でした 。 それ さえ わかったら 、 自分 は 、 人間 を こんなに 恐怖 し 、 また 、 必死の サーヴィス など し なくて 、 すんだ のでしょう 。 人間 の 生活 と 対立 して しまって 、 夜 々 の 地獄 の これ ほど の 苦し み を 嘗 ( な ) め ず に すんだ のでしょう 。 つまり 、 自分 が 下 男 下 女 たち の 憎む べき あの 犯罪 を さえ 、 誰 に も 訴え なかった の は 、 人間 へ の 不信 から で は なく 、 また 勿論 クリスト 主義 の ため でも なく 、 人間 が 、 葉 蔵 と いう 自分 に 対して 信用 の 殻 を 固く 閉じて いた から だった と 思います 。 父母 で さえ 、 自分 に とって 難解な もの を 、 時折 、 見せる 事 が あった のです から 。 そうして 、 その 、 誰 に も 訴え ない 、 自分 の 孤独 の 匂い が 、 多く の 女性 に 、 本能 に 依って 嗅 ( か ) ぎ 当てられ 、 後年 さまざま 、 自分 が つけ込ま れる 誘因 の 一 つ に なった ような 気 も する のです 。 つまり 、 自分 は 、 女性 に とって 、 恋 の 秘密 を 守れる 男 であった と いう わけな のでした 。

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人間 失格 2/15 にんげん|しっかく Menschliche Disqualifikation 2/15. Human Disqualification 2/15 Descalificación humana 2/15. Squalifica umana 2/15. 인간실격 2/15 Desqualificação humana 2/15. Дисквалификация человека 2/15. İnsan Diskalifiye 2/15. 不再是人类 2/15

自分 の 父 は 、 東京 に 用事 の 多い ひと でした ので 、 上野 の 桜木 町 に 別荘 を 持って いて 、 月 の 大半 は 東京 の その 別荘 で 暮して いました 。 じぶん||ちち||とうきょう||ようじ||おおい||||うえの||さくらぎ|まち||べっそう||もって||つき||たいはん||とうきょう|||べっそう||くらして|い ました |||||||||||||||||vacation home|||||||||||||| My father had a lot of business in Tokyo, so he had a villa in Sakuragicho, Ueno, and lived most of the month in that villa in Tokyo. そうして 帰る 時 に は 家族 の 者 たち 、 また 親戚 ( しんせき ) の 者 たち に まで 、 実に おびただしく お土産 を 買って 来る の が 、 まあ 、 父 の 趣味 みたいな もの でした 。 |かえる|じ|||かぞく||もの|||しんせき|||もの||||じつに||おみやげ||かって|くる||||ちち||しゅみ||| ||||||||||||||||||abundantly|souvenir|||||||||||| Then, when I returned, it was like my father's hobby to buy souvenirs in abundance, even to my family members and relatives. いつか の 父 の 上京 の 前夜 、 父 は 子供 たち を 客間 に 集め 、 こんど 帰る 時 に は 、 どんな お土産 が いい か 、 一 人 々々 に 笑い ながら 尋ね 、 それ に 対する 子供 たち の 答 を いちいち 手帖 ( てちょう ) に 書きとめる のでした 。 ||ちち||じょうきょう||ぜんや|ちち||こども|||きゃくま||あつめ||かえる|じ||||おみやげ||||ひと|じん|||わらい||たずね|||たいする|こども|||こたえ|||てちょう|||かきとめる| ||||going to the capital||||||||guest room||||||||||||||||||||||||||||||||| On the eve of some father's trip to Tokyo, the father gathered the children in the guest room, and when he was coming home, he asked each one laughing, what kind of souvenir he should have, and asked each of the children their answers. I wrote it down. 父 が 、 こんなに 子供 たち と 親しく する の は 、 めずらしい 事 でした 。 ちち|||こども|||したしく|||||こと| It was rare for my father to be so close to my children. 「 葉 蔵 は ? は|くら| "What about Hazo? 」 と 聞かれて 、 自分 は 、 口ごもって しまいました 。 |きか れて|じぶん||くちごもって|しまい ました ||||mumbled| I was confused. 何 が 欲しい と 聞か れる と 、 とたん に 、 何も 欲しく なく なる のでした 。 なん||ほしい||きか|||||なにも|ほしく||| As soon as I was asked what I wanted, I soon stopped wanting anything. どうでも いい 、 どうせ 自分 を 楽しく さ せて くれる もの なんか 無い んだ と いう 思い が 、 ちら と 動く のです 。 |||じぶん||たのしく||||||ない||||おもい||||うごく| |||||||||||||||||fleeting||| It doesn't matter, I feel that there isn't anything that makes me happy, but it works. と 、 同時に 、 人 から 与えられる もの を 、 どんなに 自分 の 好み に 合わ なくて も 、 それ を 拒む 事 も 出来ません でした 。 |どうじに|じん||あたえ られる||||じぶん||よしみ||あわ|||||こばむ|こと||でき ませ ん| ||||||||||preference|||||||reject|||| At the same time, I could not refuse what people gave me, no matter how I wanted it to be. イヤな 事 を 、 イヤ と 言え ず 、 また 、 好きな 事 も 、 おずおず と 盗む ように 、 極めて にがく 味 ( あじわ ) い 、 そうして 言い 知れ ぬ 恐怖 感 に もだえる のでした 。 いやな|こと||いや||いえ|||すきな|こと||||ぬすむ||きわめて||あじ||||いい|しれ||きょうふ|かん||| |||||||||||timidly|||||bitter|||||||||||struggling| I couldn't say that I didn't like it, and I couldn't say that I liked it, and that I could steal my favorite things, and I could feel an indescribable fear. つまり 、 自分 に は 、 二 者 選一 の 力 さえ 無かった のです 。 |じぶん|||ふた|もの|せんいつ||ちから||なかった| In other words, I didn't even have the power to choose between the two. これ が 、 後年 に 到 り 、 いよいよ 自分 の 所 謂 「 恥 の 多い 生涯 」 の 、 重大な 原因 と も なる 性癖 の 一 つ だった ように 思わ れます 。 ||こうねん||とう|||じぶん||しょ|い|はじ||おおい|しょうがい||じゅうだいな|げんいん||||せいへき||ひと||||おもわ|れ ます ||in later years|||||||||||||||||||sexual proclivity||||||| This seems to have been one of the propensity for my so-called “shameful life” to become a serious cause in my later years. 自分 が 黙って 、 もじもじ して いる ので 、 父 は ちょっと 不機嫌な 顔 に なり 、「 やはり 、 本 か 。 じぶん||だまって|||||ちち|||ふきげんな|かお||||ほん| |||nervously|||||||grumpy|||||| Since I was silent and muddy, my father had a slightly displeased face and asked, "Are they books? 浅草 の 仲 店 に お 正月 の 獅子舞 い の お 獅子 、 子供 が かぶって 遊ぶ の に は 手頃な 大き さ の が 売って いた けど 、 欲しく ない か 」 欲しく ない か 、 と 言わ れる と 、 もう ダメな んです 。 あさくさ||なか|てん|||しょうがつ||ししまい||||しし|こども|||あそぶ||||てごろな|おおき||||うって|||ほしく|||ほしく||||いわ||||だめな| Asakusa||||||||||||||||||||affordable|||||||||||||||||||| I found a reasonably sized lion for the New Year's lion dance at a middle store in Asakusa, but I was asked if I wanted one. お 道化 た 返事 も 何も 出来 や し ない んです 。 |どうけ||へんじ||なにも|でき|||| I can't even give you a clownish reply. お 道化 役者 は 、 完全に 落第 でした 。 |どうけ|やくしゃ||かんぜんに|らくだい| |||||failure| The clown actor completely failed. 「 本 が 、 いい でしょう 」 長兄 は 、 まじめな 顔 を して 言いました 。 ほん||||ちょうけい|||かお|||いい ました ||||eldest brother|||||| "The book is good, isn't it?" said the eldest brother with a serious face. 「 そう か 」 父 は 、 興 覚め 顔 に 手帖 に 書きとめ も せ ず 、 パチ と 手帖 を 閉じました 。 ||ちち||きょう|さめ|かお||てちょう||かきとめ||||||てちょう||とじ ました ||||interest||||||||||pat|||| "I see," said the father, closing his notebook with a bored expression without writing anything down, and slapped it shut. 何という 失敗 、 自分 は 父 を 怒ら せた 、 父 の 復讐 ( ふくしゅう ) は 、 きっと 、 おそるべき もの に 違いない 、 いま の うち に 何とか して 取りかえし の つか ぬ もの か 、 と その 夜 、 蒲 団 の 中 で がたがた 震え ながら 考え 、 そっと 起きて 客間 に 行き 、 父 が 先刻 、 手帖 を しまい 込んだ 筈 の 机 の 引き出し を あけて 、 手帖 を 取り上げ 、 パラパラ めくって 、 お土産 の 注文 記入 の 個所 を 見つけ 、 手帖 の 鉛筆 を なめて 、 シシマイ 、 と 書いて 寝ました 。 なんという|しっぱい|じぶん||ちち||いから||ちち||ふくしゅう|||||||ちがいない|||||なんとか||とりかえし||||||||よ|がま|だん||なか|||ふるえ||かんがえ||おきて|きゃくま||いき|ちち||せんこく|てちょう|||こんだ|はず||つくえ||ひきだし|||てちょう||とりあげ|ぱらぱら||おみやげ||ちゅうもん|きにゅう||かしょ||みつけ|てちょう||えんぴつ|||しし まい||かいて|ね ました ||||||||||revenge|||||||||||||||||||||||futon|futon||||||||||guest room|||||some time ago|||||supposed to||||||||||flipping|flipping||||||section|||||pencil||licked|mistake||| I thought to myself, "What a mistake, I have offended my father, his revenge must be terrible, and I must do something to make up for it while I still can. I picked up the notebook, flipped through it, found the place to fill in the souvenir order, licked the pencil on the notebook, wrote "Shishimai," and went to bed. 自分 は その 獅子舞 い の お 獅子 を 、 ちっとも 欲しく は 無かった のです 。 じぶん|||ししまい||||しし|||ほしく||なかった| I didn't really want the lion dance lion at all. かえって 、 本 の ほう が いい くらい でした 。 |ほん|||||| On the contrary, I preferred books. けれども 、 自分 は 、 父 が その お 獅子 を 自分 に 買って 与えたい のだ と いう 事 に 気 が つき 、 父 の その 意向 に 迎合 して 、 父 の 機嫌 を 直したい ばかりに 、 深夜 、 客間 に 忍び込む と いう 冒険 を 、 敢えて おかした のでした 。 |じぶん||ちち||||しし||じぶん||かって|あたえ たい||||こと||き|||ちち|||いこう||げいごう||ちち||きげん||なおし たい||しんや|きゃくま||しのびこむ|||ぼうけん||あえて|| ||||||||||||||||||||||||intention||to cater to||||||||late at night|||sneak into|||||daringly|| However, I realized that my father wanted to buy and give me the lion, so I deliberately took the risk of sneaking into the guest room late at night just to please my father and improve his mood. そうして 、 この 自分 の 非 常の 手段 は 、 果して 思いどおりの 大 成功 を 以 て 報いられました 。 ||じぶん||ひ|とわの|しゅだん||はたして|おもいどおりの|だい|せいこう||い||むくい られ ました |||||||||||||with||rewarded And so, this extraordinary means of my own was rewarded with a truly successful outcome as I had hoped. やがて 、 父 は 東京 から 帰って 来て 、 母 に 大声 で 言って いる の を 、 自分 は 子供 部屋 で 聞いて いました 。 |ちち||とうきょう||かえって|きて|はは||おおごえ||いって||||じぶん||こども|へや||きいて|い ました Eventually, my father came back from Tokyo and, from my child's room, I could hear him yelling at my mother. 「 仲 店 の おもちゃ 屋 で 、 この 手帖 を 開いて みたら 、 これ 、 ここ に 、 シシマイ 、 と 書いて ある 。 なか|てん|||や|||てちょう||あいて|||||しし まい||かいて| "When I opened this notebook at the toy store Nakamise, it said here, 'Shishimai.' これ は 、 私 の 字 で は ない 。 ||わたくし||あざ||| ||||handwriting||| This is not my handwriting. はて な ? I wonder? と 首 を かしげて 、 思い当りました 。 |くび|||おもいあたり ました |||tilted| I tilted my head and remembered. これ は 、 葉 蔵 の いたずらです よ 。 ||は|くら||| |||Kura||| This is just Hozou's prank. あいつ は 、 私 が 聞いた 時 に は 、 に や にやして 黙って いた が 、 あと で 、 どうしても お 獅子 が 欲しくて たまらなく なった んだ ね 。 ||わたくし||きいた|じ||||||だまって|||||||しし||ほしくて|||| ||||||||||smirking|||||||||||||| When I asked him, he just smiled silently, but later on, he couldn't resist wanting a lion so badly. 何せ 、 どうも 、 あれ は 、 変った 坊主 です から ね 。 なにせ||||かわった|ぼうず||| |||||monk||| After all, that guy is a strange monk. 知らん振り して 、 ちゃんと 書いて いる 。 しらんふり|||かいて| そんなに 欲しかった の なら 、 そう 言えば よい のに 。 |ほしかった||||いえば|| If you wanted it that much, you should have just said so. 私 は 、 おもちゃ 屋 の 店先 で 笑いました よ 。 わたくし|||や||みせさき||わらい ました| I laughed at the toy store. 葉 蔵 を 早く ここ へ 呼び なさい 」 また 一方 、 自分 は 、 下 男 や 下 女 たち を 洋室 に 集めて 、 下 男 の ひと り に 滅 茶 苦 茶 ( めちゃくちゃ ) に ピアノ の キイ を たたか せ 、( 田舎 で は ありました が 、 その 家 に は 、たいてい の もの が 、 そろって いました ) 自分 は その 出 鱈 目 ( でたらめ ) の 曲 に 合せて 、 インデヤン の 踊り を 踊って 見せて 、 皆 を 大笑い さ せました 。 は|くら||はやく|||よび|||いっぽう|じぶん||した|おとこ||した|おんな|||ようしつ||あつめて|した|おとこ|||||めつ|ちゃ|く|ちゃ|||ぴあの||きい||たた か||いなか|||あり ました|||いえ||||||||い ました|じぶん|||だ|たら|め|||きょく||あわせて|||おどり||おどって|みせて|みな||おおわらい||せま した |||||||||||||||||||Western-style room|||||||||destroy||||||||key|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| Call Hazo here quickly." On the other hand, he gathered the manservants and maids in the Western-style room, made one of the manservants play the piano keys wildly (although it was in the countryside, that house had almost everything), danced an Indian dance to the nonsensical music, and made everyone laugh. 次兄 は 、 フラッシュ を 焚 ( た ) いて 、 自分 の インデヤン 踊り を 撮影 して 、 その 写真 が 出来た の を 見る と 、 自分 の 腰 布 ( それ は 更紗 ( さらさ ) の 風呂敷 でした ) の 合せ 目 から 、 小さい お チンポ が 見えて いた ので 、 これ が また 家中 の 大笑い でした 。 じけい||ふらっしゅ||ふん|||じぶん|||おどり||さつえい|||しゃしん||できた|||みる||じぶん||こし|ぬの|||さらさ|||ふろしき|||あわせ|め||ちいさい||||みえて||||||うちじゅう||おおわらい| older brother||||||||||||||||||||||||||||sarasa|||wrapping cloth||||||||penis||||||||||| His older brother started a fire and filmed his own Indian dance with a flash. When he saw the resulting photo, he noticed that his little penis was visible from the seam of his waistcloth (which was made of checked fabric), which caused everyone in the house to burst into laughter. 自分 に とって 、 これ また 意外の 成功 と いう べき もの だった かも 知れません 。 じぶん|||||いがいの|せいこう|||||||しれ ませ ん For him, it may have been another unexpected success. 自分 は 毎月 、 新刊 の 少年 雑誌 を 十 冊 以上 も 、 とって いて 、 また その他 ( ほか ) に も 、 さまざまの 本 を 東京 から 取り寄せて 黙って 読んで いました ので 、 メチャラクチャラ 博士 だの 、 また 、 ナンジャモンジャ 博士 など と は 、たいへんな 馴染 ( なじみ ) で 、 また 、 怪談 、 講談 、 落語 、 江戸 小咄 ( こばなし ) など の 類 に も 、 かなり 通じて いました から 、 剽軽 ( ひょうきん ) な 事 を まじめな 顔 を して 言って 、 家 の 者 たち を 笑わ せる の に は 事 を 欠きません でした 。 じぶん||まいつき|しんかん||しょうねん|ざっし||じゅう|さつ|いじょう|||||そのほか|||||ほん||とうきょう||とりよせて|だまって|よんで|い ました|||はかせ||||はかせ|||||なじみ||||かいだん|こうだん|らくご|えど|こばなし||||るい||||つうじて|い ました||ひょうきん|||こと|||かお|||いって|いえ||もの|||わらわ|||||こと||かき ませ ん| |||new releases||||||||||||||||||||||||||very knowledgeable||||nonsense||||||||||ghost stories|kaidan|rakugo||short humorous story|||||||||||flippant||||||||||||||||||||||lacking| He would subscribe to more than ten new boys' magazines every month, and he would silently read various other books that he ordered from Tokyo. Therefore, he was very familiar with Dr. Mechalachara, Dr. Nanjamonja, as well as ghost stories, storytelling, rakugo, and Edo anecdotes. He had a knack for saying funny things with a serious face and never failed to make the people in the house laugh. しかし 、 嗚呼 ( ああ )、 学校 ! |ああ||がっこう |ah|| However, ah, school! 自分 は 、 そこ で は 、 尊敬 さ れ かけて いた のです 。 じぶん|||||そんけい||||| I was starting to be respected there. 尊敬 さ れる と いう 観念 も また 、 甚 ( はな は ) だ 自分 を 、 おびえ させました 。 そんけい|||||かんねん|||じん||||じぶん|||さ せ ました |||||concept|||very||||||| The concept of being respected also greatly intimidated me. ほとんど 完全に 近く 人 を だまして 、 そうして 、 或る ひと り の 全知全能 の 者 に 見破ら れ 、 木っ葉 みじん に やられて 、 死 ぬる 以上 の 赤 恥 を かかせられる 、 それ が 、「 尊敬 さ れる 」 と いう 状態 の 自分 の 定義 で ありました 。 |かんぜんに|ちかく|じん||||ある||||ぜんちぜんのう||もの||みやぶら||き っ は||||し||いじょう||あか|はじ||かかせ られる|||そんけい|||||じょうたい||じぶん||ていぎ||あり ました |||||||||||||||see through||||||||||||||||||||||||||| To deceive someone in the neighborhood almost completely, to be discovered by some omniscient being, to be reduced to dust, and to be humiliated beyond death, was my definition of being "respected. 人間 を だまして 、「 尊敬 さ れ 」 て も 、 誰 か ひと り が 知っている 、 そうして 、 人間 たち も 、 やがて 、 その ひと り から 教えられて 、 だまさ れた 事 に 気づいた 時 、 その 時 の 人間 たち の 怒り 、 復讐 は 、 いったい 、 まあ 、 どんなでしょう か 。 にんげん|||そんけい|||||だれ|||||しっている||にんげん||||||||おしえ られて|||こと||きづいた|じ||じ||にんげん|||いかり|ふくしゅう||||| Even if deceiving a person and being respected by them, when someone eventually finds out and the humans realize they have been deceived, what kind of anger and revenge will be felt by the people at that time? 想像 して さえ 、 身 の 毛 が よだつ 心地 が する のです 。 そうぞう|||み||け|||ここち||| |||||||stand on end|||| Just imagining it gives you a chilling feeling. 自分 は 、 金持ち の 家 に 生れた と いう 事 より も 、 俗に いう 「 できる 」 事 に 依って 、 学校 中 の 尊敬 を 得 そうに なりました 。 じぶん||かねもち||いえ||うまれた|||こと|||ぞくに|||こと||よって|がっこう|なか||そんけい||とく|そう に|なり ました ||||||||||||commonly||||||||||||| I gained respect throughout the school not because I was born into a wealthy family, but due to what is commonly referred to as being able to do something. 自分 は 、 子供 の 頃 から 病弱で 、 よく 一 つき 二 つき 、 また 一 学年 ちかく も 寝込んで 学校 を 休んだ 事 さえ あった のです が 、 それ でも 、 病み 上り の から だ で 人力車 に 乗って 学校 へ 行き 、 学年 末 の 試験 を 受けて みる と 、 クラス の 誰 より も 所 謂 「 できて 」 いる ようでした 。 じぶん||こども||ころ||びょうじゃくで||ひと||ふた|||ひと|がくねん|||ねこんで|がっこう||やすんだ|こと|||||||やみ|のぼり|||||じんりきしゃ||のって|がっこう||いき|がくねん|すえ||しけん||うけて|||くらす||だれ|||しょ|い||| ||||||||||||||||||||||||||||||||||rickshaw|||||||||||||||||||||capable|| I have been frail since I was a child, often bedridden for a month or two, or even almost a whole academic year, missing school. Nevertheless, even with a body recovering from illness, I would ride in a rickshaw to school and take exams at the end of the school year, and it seemed like I was doing better than anyone in the class. からだ 具合 い の よい 時 でも 、 自分 は 、 さっぱり 勉強 せ ず 、 学校 へ 行って も 授業 時間 に 漫画 など を 書き 、 休憩 時間 に は それ を クラス の 者 たち に 説明 して 聞か せて 、 笑わ せて やりました 。 |ぐあい||||じ||じぶん|||べんきょう|||がっこう||おこなって||じゅぎょう|じかん||まんが|||かき|きゅうけい|じかん|||||くらす||もの|||せつめい||きか||わらわ||やり ました Even when I was feeling well, I would go to school without studying at all, draw manga during class, and during breaks, I would explain it to my classmates and make them laugh. また 、 綴り 方 に は 、 滑稽 噺 ( こっけい ば なし ) ばかり 書き 、 先生 から 注意 されて も 、 しかし 、 自分 は 、 やめません でした 。 |つづり|かた|||こっけい|はなし|||||かき|せんせい||ちゅうい|さ れて|||じぶん||やめ ませ ん| |spelling||||humorous|||||||||||||||| In addition, I would only write ridiculous stories in my spelling, and even when scolded by the teacher, I would not stop. 先生 は 、 実は こっそり 自分 の その 滑稽 噺 を 楽しみに して いる 事 を 自分 は 、 知っていた から でした 。 せんせい||じつは||じぶん|||こっけい|はなし||たのしみに|||こと||じぶん||しっていた|| I knew that the teacher actually secretly enjoyed my ridiculous story because I knew. 或る 日 、 自分 は 、 れい に 依って 、 自分 が 母 に 連れられて 上京 の 途中 の 汽車 で 、 おしっこ を 客車 の 通路 に ある 痰 壺 ( たん つぼ ) に して しまった 失敗 談 ( しかし 、 その 上京 の 時 に 、 自分 は 痰 壺 と 知ら ず に した の では ありません でした 。 ある|ひ|じぶん||||よって|じぶん||はは||つれ られて|じょうきょう||とちゅう||きしゃ||おし っこ||きゃくしゃ||つうろ|||たん|つぼ||||||しっぱい|だん|||じょうきょう||じ||じぶん||たん|つぼ||しら||||||あり ませ ん| certain||||||||||||traveling to the capital|||||||||||||phlegm|spittoon|||||||||||||||||||||||||| One day, following Rei, I was on a train with my mother on our way to Tokyo, and I ended up peeing in a phlegm container in the passenger car (however, at the time of going to Tokyo, I didn't do it unknowingly as a phlegm container. 子供 の 無邪気 を てらって 、 わざと 、 そうした の でした ) を 、 ことさら に 悲し そうな 筆 致 で 書いて 提出 し 、 先生 は 、 きっと 笑う と いう 自信 が ありました ので 、 職員 室 に 引き揚げて 行く 先生 の あと を 、 そっと つけて 行きましたら 、 先生 は 、 教室 を 出る と すぐ 、 自分 の その 綴り 方 を 、 他の クラス の 者 たち の 綴り 方 の 中 から 選び 出し 、 廊下 を 歩き ながら 読み はじめて 、 クスクス 笑い 、 やがて 職員 室 に は いって 読み 終えた の か 、 顔 を 真 赤 に して 大声 を 挙げて 笑い 、 他の 先生 に 、 さっそく それ を 読ま せて いる の を 見とどけ 、 自分 は 、たいへん 満足でした 。 こども||むじゃき||てら って||||||||かなし|そう な|ふで|いた||かいて|ていしゅつ||せんせい|||わらう|||じしん||あり ました||しょくいん|しつ||ひきあげて|いく|せんせい||||||いき ましたら|せんせい||きょうしつ||でる|||じぶん|||つづり|かた||たの|くらす||もの|||つづり|かた||なか||えらび|だし|ろうか||あるき||よみ||くすくす|わらい||しょくいん|しつ||||よみ|おえた|||かお||まこと|あか|||おおごえ||あげて|わらい|たの|せんせい|||||よま|||||みとどけ|じぶん|||まんぞくでした ||||||||||particularly||||brush|effort|||||||||||confidence||||staff||||||||||||||||||||||spelling||||||||||||||||corridor||||||chuckling||||||||||||||||||||||||||||||||||||| To show off the innocence of a child, I purposely wrote the story (knowingly spurring up this incident) with a particularly sad style and submitted it. I was confident that the teacher would surely laugh, so I followed the teacher quietly as he headed back to the staff room. As soon as the teacher left the classroom, he picked out my way of spelling from among the spellings of other classes, started reading while walking down the hallway, chuckled, and finally entered the staff room reading the rest of it aloud with a beet-red face, laughing loudly. I noticed that he was immediately letting other teachers read it, and I was very satisfied. お 茶目 。 |ちゃめ |teasing 自分 は 、 所 謂 お 茶目に 見られる 事 に 成功 しました 。 じぶん||しょ|い||ちゃめに|み られる|こと||せいこう|し ました I succeeded in being seen as mischievous. 尊敬 さ れる 事 から 、 のがれる 事 に 成功 しました 。 そんけい|||こと|||こと||せいこう|し ました I succeeded in escaping from being respected. 通信 簿 は 全 学科 と も 十 点 でした が 、 操 行 と いう もの だけ は 、 七 点 だったり 、 六 点 だったり して 、 それ も また 家中 の 大笑い の 種 でした 。 つうしん|ぼ||ぜん|がっか|||じゅう|てん|||みさお|ぎょう||||||なな|てん||むっ|てん||||||うちじゅう||おおわらい||しゅ| |record||||||||||conduct|||||||||||||||||||||source| Even though my grades in all subjects were perfect, my conduct grades were sometimes seven or six points, which made my family burst into laughter. けれども 自分 の 本性 は 、 そんな お茶 目 さん など と は 、 凡 ( およ ) そ 対 蹠 (たいせき ) 的な もの でした 。 |じぶん||ほんしょう|||おちゃ|め|||||ぼん|||たい|せき||てきな|| |||||||||||||||||opposite|typical|| However, my true nature was far from being just a playful person like that. その頃 、 既に 自分 は 、 女 中 や 下 男 から 、 哀 ( かな ) しい 事 を 教えられ 、 犯されて いました 。 そのころ|すでに|じぶん||おんな|なか||した|おとこ||あい|||こと||おしえ られ|おかさ れて|い ました ||||||||||sad||||||violated| By that time, I had already been taught sad things and violated by maids and lower-ranking men. 幼少 の 者 に 対して 、 そのような 事 を 行う の は 、 人間 の 行い 得る 犯罪 の 中 で 最も 醜悪で 下等で 、 残酷な 犯罪 だ と 、 自分 は いまでは 思って います 。 ようしょう||もの||たいして||こと||おこなう|||にんげん||おこない|える|はんざい||なか||もっとも|しゅうあくで|かとうで|ざんこくな|はんざい|||じぶん|||おもって|い ます early childhood||||||||||||||||||||disgusting|||||||||| I now believe that committing such acts against children is the most despicable, lowly, and cruel crime that a human can commit. しかし 、 自分 は 、 忍びました 。 |じぶん||しのび ました However, I endured it. これ で また 一 つ 、 人間 の 特質 を 見た と いう ような 気持 さえ して 、 そうして 、 力無く 笑って いました 。 |||ひと||にんげん||とくしつ||みた||||きもち||||ちからなく|わらって|い ました |||||||characteristic|||||||||||| I felt as if I had seen another aspect of human nature, and so I smiled weakly without any power. もし 自分 に 、 本当の 事 を 言う 習慣 が ついて いた なら 、 悪びれ ず 、 彼等 の 犯罪 を 父 や 母 に 訴える 事 が 出来た の かも 知れません が 、 しかし 、 自分 は 、 その 父 や 母 を も 全部 は 理解 する 事 が 出来 なかった のです 。 |じぶん||ほんとうの|こと||いう|しゅうかん|||||わるびれ||かれら||はんざい||ちち||はは||うったえる|こと||できた|||しれ ませ ん|||じぶん|||ちち||はは|||ぜんぶ||りかい||こと||でき|| ||||||||||||without hesitation||||||||||||||||||||||||||||||||||| Perhaps if I had the habit of telling the truth, I could have reported their crimes to my father or mother without hesitation, but I could not fully understand even my own parents. 人間 に 訴える 、 自分 は 、 その 手段 に は 少しも 期待 できません でした 。 にんげん||うったえる|じぶん|||しゅだん|||すこしも|きたい|でき ませ ん| I realized that appealing to humans, I could not expect anything from that approach at all. 父 に 訴えて も 、 母 に 訴えて も 、 お 巡 ( まわ ) り に 訴えて も 、 政府 に 訴えて も 、 結局 は 世渡り に 強い 人 の 、 世間 に 通り の いい 言い ぶん に 言いまくら れる だけ の 事 で は 無い かしら 。 ちち||うったえて||はは||うったえて|||めぐり||||うったえて||せいふ||うったえて||けっきょく||よわたり||つよい|じん||せけん||とおり|||いい|||いいまくら||||こと|||ない| |||||||||round||||||||||||social skills|||||world|||||||||||||||| Whether appealing to my father, mother, going around asking for help, or even appealing to the government, in the end, it seems that I will just be bombarded with smooth words from people who are good at socializing. 必ず 片手 落 の ある の が 、 わかり切って いる 、 所詮 ( しょせん )、 人間 に 訴える の は 無駄である 、 自分 は やはり 、 本当の 事 は 何も 言わ ず 、 忍んで 、 そうして お 道化 を つづけて いる より 他 、 無い 気持 な のでした 。 かならず|かたて|おと|||||わかりきって||しょせん||にんげん||うったえる|||むだである|じぶん|||ほんとうの|こと||なにも|いわ||しのんで|||どうけ|||||た|ない|きもち|| |||||||||after all|||||||||||||||||endure|||||||||||| It was clear that it was pointless to appeal to humans, as there will always be a catch. After all, I decided that it was better to keep quiet, endure, and continue playing the fool rather than appealing to anyone. なんだ 、 人間 へ の 不信 を 言って いる の か ? |にんげん|||ふしん||いって||| What, are you talking about distrust towards humans? へえ ? Oh really? お前 は いつ クリスチャン に なった ん だい 、 と 嘲笑 ( ちょうしょう ) する 人 も 或いは ある かも 知れません が 、 しかし 、 人間 へ の 不信 は 、 必ずしも すぐに 宗教 の 道 に 通じて いる と は 限ら ない と 、 自分 に は 思わ れる のです けど 。 おまえ|||くりすちゃん||||||ちょうしょう|||じん||あるいは|||しれ ませ ん|||にんげん|||ふしん||かならずしも||しゅうきょう||どう||つうじて||||かぎら|||じぶん|||おもわ||| |||||||||ridicule||||||||||||||||||||||||||||||||||| There may be people who mock when you say, 'When did you become a Christian?' However, I personally don't think that distrust towards humans necessarily leads directly to the path of religion. 現に その 嘲笑 する 人 を も 含めて 、 人間 は 、 お互い の 不信 の 中 で 、 エホバ も 何も 念頭 に 置か ず 、 平気で 生きて いる では ありません か 。 げんに||ちょうしょう||じん|||ふくめて|にんげん||おたがい||ふしん||なか||||なにも|ねんとう||おか||へいきで|いきて|||あり ませ ん| ||||||||||||||||Jehovah|||mind||placing||||||| Indeed, humans, including those who mock others, are living comfortably in mutual distrust without even considering Jehovah or anything. やはり 、 自分 の 幼少 の 頃 の 事 で ありました が 、 父 の 属して いた 或る 政党 の 有名 人 が 、 この 町 に 演説 に 来て 、 自分 は 下 男 たち に 連れられて 劇場 に 聞き に 行きました 。 |じぶん||ようしょう||ころ||こと||あり ました||ちち||ぞくして||ある|せいとう||ゆうめい|じん|||まち||えんぜつ||きて|じぶん||した|おとこ|||つれ られて|げきじょう||きき||いき ました |||childhood||||||||||affiliated|||political party|||||||||||||servant||||||||| It was about my childhood, but I remember going to the theater with some lower-class men when a famous member of a political party my father belonged to came to town to give a speech. 満員 で 、 そうして 、 この 町 の 特に 父 と 親しく して いる 人 たち の 顔 は 皆 、 見えて 、 大いに 拍手 など して いました 。 まんいん||||まち||とくに|ちち||したしく|||じん|||かお||みな|みえて|おおいに|はくしゅ|||い ました |||||||||||||||||||enthusiastically|||| The theater was packed, and the faces of the people, especially those close to my father in this town, were visible, applauding greatly. 演説 が すんで 、 聴衆 は 雪 の 夜道 を 三々五々 かたまって 家路 に 就き 、 クソ ミソ に 今夜 の 演説 会 の 悪 口 を 言って いる のでした 。 えんぜつ|||ちょうしゅう||ゆき||よみち||さんさんごご||いえじ||つき|くそ|みそ||こんや||えんぜつ|かい||あく|くち||いって|| |||audience||||||in small groups||||started|nonsense|nonsense|||||||||||| After the speech, the audience gathered in groups on the snowy night road, talking bad about tonight's speech meeting. 中 に は 、 父 と 特に 親しい 人 の 声 も まじって いました 。 なか|||ちち||とくに|したしい|じん||こえ|||い ました Among them, the voice of those who are particularly close to the father could be heard. 父 の 開会 の 辞 も 下手 、 れいの 有名 人 の 演説 も 何 が 何やら 、 わけ が わから ぬ 、 と その 所 謂父 の 「 同志 たち 」 が 怒声 に 似た 口調 で 言って いる のです 。 ちち||かいかい||じ||へた||ゆうめい|じん||えんぜつ||なん||なにやら|||||||しょ|いちち||どうし|||どせい||にた|くちょう||いって|| ||opening||speech|||||||||||||||||||||comrades|||angry voice|||tone|||| Both the father's opening speech and the famous person's speech were incomprehensible, and the so-called 'comrades' of the father were speaking angrily in a tone resembling a shout. そうして その ひと たち は 、 自分 の 家 に 立ち寄って 客間 に 上り 込み 、 今夜 の 演説 会 は 大 成功 だった と 、 しん から 嬉し そうな 顔 を して 父 に 言って いました 。 |||||じぶん||いえ||たちよって|きゃくま||のぼり|こみ|こんや||えんぜつ|かい||だい|せいこう|||||うれし|そう な|かお|||ちち||いって|い ました And so, the people stopped by their own homes and went up to the guest room, telling their father with a genuinely happy face that tonight's speech meeting was a great success. 下 男 たち まで 、 今夜 の 演説 会 は どう だった と 母 に 聞か れ 、 とても 面白かった 、 と 言って けろりと して いる のです 。 した|おとこ|||こんや||えんぜつ|かい|||||はは||きか|||おもしろかった||いって|||| ||||||||||||||||||||nonchalantly||| Even the servants were asked by their mothers how tonight's speech meeting was, and replied nonchalantly that it was very interesting. 演説 会 ほど 面白く ない もの は ない 、 と 帰る 途 々 ( みちみち )、 下 男 たち が 嘆き 合って いた のです 。 えんぜつ|かい||おもしろく||||||かえる|と|||した|おとこ|||なげき|あって|| ||||||||||||along the way|||||lament||| There is nothing less interesting than a speech meeting, the servants were lamenting as they made their way home. しかし 、 こんな の は 、 ほんの ささやかな 一例 に 過ぎません 。 ||||||いちれい||すぎ ませ ん However, this is just a small example. 互いに あざむき 合って 、 しかも いずれ も 不思議に 何の 傷 も つか ず 、 あざむき 合って いる 事 に さえ 気 が ついて いない みたいな 、 実に あざやかな 、 それ こそ 清く 明るく ほがらかな 不信 の 例 が 、 人間 の 生活 に 充満 して いる ように 思わ れます 。 たがいに||あって||||ふしぎに|なんの|きず|||||あって||こと|||き|||||じつに||||きよく|あかるく||ふしん||れい||にんげん||せいかつ||じゅうまん||||おもわ|れ ます ||||||||||||deceiving|||||||||||truly||||pure|||||||||||filled||||| It seems that vivid examples of pure, bright, and cheerful mistrust, where people deceive each other without realizing that they are being deceived, are abundant in human life. けれども 、 自分 に は 、 あざむき 合って いる と いう 事 に は 、 さして 特別の 興味 も ありません 。 |じぶん||||あって||||こと||||とくべつの|きょうみ||あり ませ ん However, I personally don't have much interest in the fact that people deceive each other. 自分 だって 、 お 道化 に 依って 、 朝 から 晩 まで 人間 を あざむいて いる のです 。 じぶん|||どうけ||よって|あさ||ばん||にんげん|||| |||||depending|||||||deceiving|| I, too, deceive people from morning to night by being a clown. 自分 は 、 修身 教科 書 的な 正義 と か 何とか いう 道徳 に は 、 あまり 関心 を 持て ない のです 。 じぶん||しゅうしん|きょうか|しょ|てきな|せいぎ|||なんとか||どうとく||||かんしん||もて|| ||self-improvement|subject||||||||morality|||||||| I'm not very interested in moral textbooks like the ones on ethical justice or something. 自分 に は 、 あざむき 合って い ながら 、 清く 明るく 朗らかに 生きて いる 、 或いは 生き 得る 自信 を 持って いる みたいな 人間 が 難解な のです 。 じぶん||||あって|||きよく|あかるく|ほがらかに|いきて||あるいは|いき|える|じしん||もって|||にんげん||なんかいな| |||deceiving||||||cheerfully|||or||||||||||difficult to understand| I find it difficult to understand people who seem to have the confidence to live purely, brightly, and cheerfully while deceiving each other. 人間 は 、 ついに 自分 に その 妙 諦 ( みょう てい ) を 教えて は くれません でした 。 にんげん|||じぶん|||たえ|てい||||おしえて||くれ ませ ん| Humans finally did not teach me that mysterious wisdom. それ さえ わかったら 、 自分 は 、 人間 を こんなに 恐怖 し 、 また 、 必死の サーヴィス など し なくて 、 すんだ のでしょう 。 |||じぶん||にんげん|||きょうふ|||ひっしの|||||| ||||||||||||||||saved| If only I had understood that, I would not have been so terrified of humans, nor would I have needed to desperately serve them. 人間 の 生活 と 対立 して しまって 、 夜 々 の 地獄 の これ ほど の 苦し み を 嘗 ( な ) め ず に すんだ のでしょう 。 にんげん||せいかつ||たいりつ|||よ|||じごく|||||にがし|||しょう|||||| ||||||||||||||||||tasting|||||| I must have avoided such suffering in the hell of nights by simply not conflicting with human life. つまり 、 自分 が 下 男 下 女 たち の 憎む べき あの 犯罪 を さえ 、 誰 に も 訴え なかった の は 、 人間 へ の 不信 から で は なく 、 また 勿論 クリスト 主義 の ため でも なく 、 人間 が 、 葉 蔵 と いう 自分 に 対して 信用 の 殻 を 固く 閉じて いた から だった と 思います 。 |じぶん||した|おとこ|した|おんな|||にくむ|||はんざい|||だれ|||うったえ||||にんげん|||ふしん||||||もちろん||しゅぎ|||||にんげん||は|くら|||じぶん||たいして|しんよう||から||かたく|とじて|||||おもい ます |||||||||to hate||||||||||||||||||||||of course||||||||||||||||||shell||firmly|||||| In other words, I think the reason why he did not report that hateable crime to anyone was not because of distrust towards humanity or of course not because of Christianity, but because humans had firmly closed the shell of trust towards himself named Hozou. 父母 で さえ 、 自分 に とって 難解な もの を 、 時折 、 見せる 事 が あった のです から 。 ふぼ|||じぶん|||なんかいな|||ときおり|みせる|こと|||| parents|||||||||sometimes|||||| Even parents sometimes showed things that were difficult for him to understand. そうして 、 その 、 誰 に も 訴え ない 、 自分 の 孤独 の 匂い が 、 多く の 女性 に 、 本能 に 依って 嗅 ( か ) ぎ 当てられ 、 後年 さまざま 、 自分 が つけ込ま れる 誘因 の 一 つ に なった ような 気 も する のです 。 ||だれ|||うったえ||じぶん||こどく||におい||おおく||じょせい||ほんのう||よって|か|||あてられ|こうねん||じぶん||つけこま||ゆういん||ひと|||||き||| ||||||||||||||||||||sniff||||in later years||||||trigger|||||||||| And thus, the scent of his loneliness, which he did not confide in anyone, was sniffed out by many women instinctively, and it seems to have become one of the factors that later became a trigger for taking advantage of him in various ways. つまり 、 自分 は 、 女性 に とって 、 恋 の 秘密 を 守れる 男 であった と いう わけな のでした 。 |じぶん||じょせい|||こい||ひみつ||まもれる|おとこ||||| In other words, he was a man who could keep the secret of love for women.