火 の 用心 ひ||ようじん

学者 の エヌ 博士 は 、 助手 の 青年 を 呼んで 、 こう 話しかけた 。 がくしゃ|||はかせ||じょしゅ||せいねん||よんで||はなしかけた

「 きみ も そろそろ 、 なに か 珍しい 物 を 発明 して いい ころ だ と 思う が ね 」 |||||めずらしい|ぶつ||はつめい||||||おもう||

「 はい 。 じつは 、 いま 、 ご 報告 しよう と 思って いた ところ です 」 |||ほうこく|||おもって|||

「 なに か 作った と いう わけだ ね 」 ||つくった||||

「 ええ 、 これ です 。 ロボット の 鳥 です よ 」 ろぼっと||ちょう||

と 青年 は 手 に して いた 鳥 を 見せた 。 |せいねん||て||||ちょう||みせた カラス ぐらい の 大き さ だった 。 からす|||おおき|| 博士 は 、 それ を ながめ ながら 聞いた 。 はかせ||||||きいた

「 うまく 飛ぶ の か ね 」 |とぶ|||

「 もちろん です 。 しかも 、 ただ 飛ぶ だけ では ありません 。 ||とぶ||| よく ごらん に なって 下さい 」 ||||ください

青年 は 鳥 の 頭 に ついて いる ボタン を 押した 。 せいねん||ちょう||あたま||||ぼたん||おした ロボット の 鳥 は 羽ばたき を し 、 へや の なか を 飛びまわり はじめた 。 ろぼっと||ちょう||はばたき|||||||とびまわり| そして 「 火 の 用心 、 火 の 用心 」 と さえずる 。 |ひ||ようじん|ひ||ようじん|| また 、 口 を ぱく ぱく やる と 、 カチカチ と いう ヒョウシ 木 の 音 を たてた 。 |くち||||||かちかち||||き||おと|| それ を 見て 、 博士 は 腕 ぐみ を した 。 ||みて|はかせ||うで|||

「 妙な もの を 作った な 。 みょうな|||つくった| しかし 、 まあ 少し は 役 に 立つ かも しれない な 」 ||すこし||やく||たつ||しれ ない|

「 いえ 、 少し では ありません 。 |すこし|| とても 大きな 働き を します 。 |おおきな|はたらき|| この 鳥 は 火事 を 発見 する と 、 大声 で 叫びます 。 |ちょう||かじ||はっけん|||おおごえ||さけびます また 、 その 場所 を 、 電波 で 知らせて くれます 」 ||ばしょ||でんぱ||しらせて|

「 そう か 。 そう なる と 大 発明 だ 。 |||だい|はつめい| たくさん 作って 飛ばせば 、 火事 に よる 災害 を 、 ぐんと へらす こと が できる わけだ 。 |つくって|とばせば|かじ|||さいがい||||||| よく やった 」

博士 は 青年 を ほめ 、 感心 し ながら タバコ に 火 を つけた 。 はかせ||せいねん|||かんしん|||たばこ||ひ|| その とたん 、 ロボット 鳥 は そば へ 飛んで きて 「 火事 だ 、 火事 だ 」 と 叫んだ 。 ||ろぼっと|ちょう||||とんで||かじ||かじ|||さけんだ

同時に 、 青年 の 持って いた 装置 は 、 ガーガー と 音 を たて はじめた 。 どうじに|せいねん||もって||そうち||||おと||| 博士 は あわてて タバコ を 投げ捨てた 。 はかせ|||たばこ||なげすてた

「 性能 の たしかな こと は 、 よく わかった 。 せいのう|||||| だが 、 これ で は 困る 。 ||||こまる もっと 改良 し なさい 」 |かいりょう||

「 そう いたします 」

青年 は ひきさがった 。 せいねん||

何 日 かたって 、 青年 は また 持ってきた 。 なん|ひ||せいねん|||もってきた

「 こんど は 大丈夫 です 。 ||だいじょうぶ| 小さな 火 に は 反応 しない よう に 、 改良 しました から 」 ちいさな|ひ|||はんのう|し ない|||かいりょう||

「 では 、 みせて もらおう 」

「 はい 」

青年 は へや の 窓 を 開け 、 鳥 の ボタン を 押した 。 せいねん||||まど||あけ|ちょう||ぼたん||おした しかし 、 鳥 は 窓 から 出て ゆこう と せず 、 へや の すみ へ 飛んで いって 「 火事 だ 」 と 叫んだ 。 |ちょう||まど||でて|||せ ず|||||とんで||かじ|||さけんだ

そこ に は 、 きょう から つけ はじめた 煖房 装置 が あった 。 |||||||だんぼう|そうち|| 博士 は 笑って 言った 。 はかせ||わらって|いった

「 まだ 、 実用 に は むりな ようだ な 」 |じつよう|||||

さらに 何 日 かたった 。 |なん|ひ| ある 夜 、 博士 は 眠って いる ところ を 起された 。 |よ|はかせ||ねむって||||おこされた 目 を こすって 相手 を 見る と 助手 であり 、 時計 を のぞく と 午前 四 時 だった 。 め|||あいて||みる||じょしゅ||とけい||||ごぜん|よっ|じ|

「 どうした ん だ 、 こんな 時間 に 」 ||||じかん|

「 一刻 も 早く お 知らせ しよう と 思った から です 。 いっこく||はやく||しらせ|||おもった|| こんど こそ 、 本当に 完成 しました 。 ||ほんとうに|かんせい| よく 教えこんだ の です 。 |おしえこんだ|| 火事 と は 、 しだいに 熱 さ を まして ゆく もの だ と 。 かじ||||ねつ||||||| これ なら 、 煖房 が あって も さわぎません 」 ||だんぼう||||

こんど は 鳥 も 、 開けた 窓 から 飛び出して いった 。 ||ちょう||あけた|まど||とびだして| 「 火 の 用心 、 カチカチ 」 と いう 音 が 遠ざかって いった 。 ひ||ようじん|かちかち|||おと||とおざかって|

しばらく する と 、 青年 の 手 に ある 受信 装置 が ガーガー と 鳴り はじめた 。 |||せいねん||て|||じゅしん|そうち||||なり|

「 ほら 、 どこ か で 火事 を みつけました 」 ||||かじ||

しかし 、 装置 を 調べる と 、 鳥 は どんどん 飛び つづけて いる こと が わかった 。 |そうち||しらべる||ちょう|||とび||||| 遠く に 火事 を 発見 して 、 それ に むかって いる の かも しれない 。 とおく||かじ||はっけん||||||||しれ ない

その 方角 に 当る 消防 署 に 電話 を かけ 、 聞いて みた 。 |ほうがく||あたる|しょうぼう|しょ||でんわ|||きいて| しかし 、 どこ に も 火事 は ない と いう 返事 だった 。 ||||かじ|||||へんじ| 青年 は ふしぎがった 。 せいねん||

「 どういう こと な のだろう 。 こんど こそ 成功 だ と 思った のに 」 ||せいこう|||おもった|

その うち 、 博士 は ひざ を たたいて 言った 。 ||はかせ|||||いった

「 わかった ぞ 。 この 飛び 方 を 見る と 、 のぼって きた 太陽 を めざして いる らしい 。 |とび|かた||みる||||たいよう|||| のぼる に つれて 、 あたたかく なる から な 。 この 調子 だ と 、 戻って こない かも しれない ぞ 」 |ちょうし|||もどって|||しれ ない|