災難 さいなん

その 男 は 、 何 匹 か の ネズミ を 飼って いた 。 |おとこ||なん|ひき|||ねずみ||かって| かず 多く の なか から 選んだ 、 敏感な 性質 の ネズミ ばかり だった 。 |おおく||||えらんだ|びんかんな|せいしつ||ねずみ|| number||||||sensitive|||||

男 は 毎日 、 おいしい エサ を 作って やったり 、 からだ を 洗って やったり 、 熱心に せわ を した 。 おとこ||まいにち||えさ||つくって||||あらって||ねっしんに||| ||||food||||||washed||||| ネズミ が 病気 に なる と 、 自分 の こと 以上 に 心配 する 。 ねずみ||びょうき||||じぶん|||いじょう||しんぱい| ネズミ の ほう も 、 男 に よく なついて いた 。 ねずみ||||おとこ|||| 晴れた 日 に は 庭 で なかよく 遊び 、 雨 の 日 に は 家 の なか で かくれんぼ など を する 。 はれた|ひ|||にわ|||あそび|あめ||ひ|||いえ||||||| また 、 旅行 する 時 も いっしょだった 。 |りょこう||じ||

しかし 、 男 が ネズミ と くらして いる の は 、 かわいがる だけ が 目的 で は なかった 。 |おとこ||ねずみ|||||||||もくてき||| |||||living|||||||||| 男 は いつも 、 背中 を なでて やり ながら 、 こんな こと を つぶやく 。 おとこ|||せなか||||||||

「 考えて みる と 、 おまえたち が い なかったら 、 わたし は 何 回 も 災難 に あって いた だろう な 」 かんがえて|||||||||なん|かい||さいなん|||||

ネズミ に は 、 近づいて くる 危険 を 、 あらかじめ 感じとる 力 が ある ので は ない だろう か 。 ねずみ|||ちかづいて||きけん|||かんじとる|ちから||||||| 男 は この こと に 気づき 、 その 利用 を 思いたった のだ 。 おとこ|||||きづき||りよう||おもいたった| そして 研究 は 成功 し 、 役 に 立った 。 |けんきゅう||せいこう||やく||たった

かつて 、 ある 日 、 ネズミ たち が 、 とつぜん 家 から 逃げ出した こと が あった 。 ||ひ|ねずみ||||いえ||にげだした||| わけ が わからない ながら も 、 男 は それ を 追いかけ 、 連れもどそう と した 。 ||わから ない|||おとこ||||おいかけ|つれもどそう||

その 時 、 激しい 地震 が おこった 。 |じ|はげしい|じしん|| さいわい 外 に いた から 助かった が 、 もし 家 に 残って いたら 、 倒れた 建物 の 下敷き に なって いた はずだ 。 |がい||||たすかった|||いえ||のこって||たおれた|たてもの||したじき|||| 死なない まで も 、 大けが を した に ちがいない 。 しな ない|||おおけが||||

また 、 こんな こと も あった 。 船 に 乗ろう と した 時 、 連れて きた ネズミ たち が 、 カバン の なか で さわぎ はじめた 。 せん||のろう|||じ|つれて||ねずみ|||かばん||||| 乗る の を やめる と 、 ネズミ たち は 静かに なり 、 出航 した 船 は 、 嵐 に あって 沈んで しまった 。 のる|||||ねずみ|||しずかに||しゅっこう||せん||あらし|||しずんで|

こんなふうに 、 ネズミ の おかげ で 助かった こと は 、 ほか に 何 回 も あった 。 |ねずみ||||たすかった|||||なん|かい|| それ ら を 思い出し ながら 、 |||おもいだし|

「 なにしろ 、 事故 や 災害 の 多い 世の中 だ 。 |じこ||さいがい||おおい|よのなか| これ から も 、 おたがいに 助けあって いこう 」 ||||たすけあって|

と 男 が エサ を やって いる と 、 ネズミ たち が そわそわ し はじめた 。 |おとこ||えさ|||||ねずみ||||| いま まで に 危険 が 迫った 時 、 いつも 示した 動作 だった 。 |||きけん||せまった|じ||しめした|どうさ|

「 は は あ 、 なに か が おこる のだ な 。 こんど は 、 なんだろう 。 火事 だろう か 、 大水 だろう か 。 かじ|||おおみず|| いずれ に せよ 、 さっそく 引っ越す こと に しよう 」 ||||ひっこす||| |||right away||||

急ぐ と なる と 、 その 家 を 高く 売る こと は でき なかった 。 いそぐ|||||いえ||たかく|うる|||| また 、 安い 家 を ゆっくり さがして いる ひま も なかった 。 |やすい|いえ||||||| しかし 、 それ ぐらい の 損 は しかたが ない 。 ||||そん||しかた が| ぐずぐず して いて 、 災難 に あったら こと だ 。 |||さいなん||||

新しい 家 に 移る と 、 ネズミ たち の ようす は 、 もと に もどった 。 あたらしい|いえ||うつる||ねずみ||||||| 気分 が 落ちつく と 、 男 は あわ なくて すんだ 災難 が な ん だった か を 、 知り たく なった 。 きぶん||おちつく||おとこ|||||さいなん|||||||しり|| そこ で 、 電話 を かけて 聞いて みる こと に した 。 ||でんわ|||きいて||||

「 もしもし 、 わたし は 前 に 、 その 家 に 住んで いた者 です 。 |||ぜん|||いえ||すんで|いた しゃ| ちょっと 、 お 聞き したい こと が ......」 ||きき|||

「 な ん でしょう か 。 なに か 忘れ物 です か 」 ||わすれもの||

「 そう では ありません 。 わたし が 越した あと 、 そちら で なに か 、 変った こと が あった か どう か を 知りたい の です 」 ||こした||||||かわった||||||||しりたい||

「 さあ 、 べつにない よう です ね 」 |べつに ない|||

「 そんな はず は 、 ありません よ 。 よく 考えて みて 下さい 」 |かんがえて||ください

「 そう いえば 、 あれ から まもなく 、 となり の 家 に 住んで いた人 も かわりました よ 。 |||||||いえ||すんで|いた じん||| そんな こと ぐらい です 」

「 そう です か 。 こんど の人 は 、 どんな かた です か 。 |の じん||||| きっと 、 ぶっそうな人 でしょう ね 」 |ぶっそうな じん||

と 男 は 熱心に 聞いた 。 |おとこ||ねっしんに|きいた 災難 は 、 と なり に やってきた人 に 関連 した こと だろう 。 さいなん|||||やってきた じん||かんれん||| あの まま 住んで いたら 、 いまごろ は 、 やっかいな 事件 に 巻きこまれた に ちがいない 。 ||すんで|||||じけん||まきこまれた|| だが 、 相手 の 答え は 、 意外だった 。 |あいて||こたえ||いがいだった

「 いいえ 、 おとなしい人 です よ 」 |おとなしい じん||

「 本当に そう です か 」 ほんとうに|||

「 たしか です 。 ネコ が 大好きで 、 たくさん 飼って いる ような人 です から 」 ねこ||だいすきで||かって||ような じん||

たくさんの ネコ 。 |ねこ 人間 に は べつに なんでもない 。 にんげん|||| しかし 、 ネズミ たち に とって は 、 ただごと で は なかった のだ 。 |ねずみ|||||||||