7. ねずみ の 嫁入り - 楠山 正雄 ||よめいり|くすやま|まさお

ねずみ の 嫁入り - 楠山 正雄 ||よめいり|くすやま|まさお

むかし 、 むかし 、 ある 家 の お 倉 の 中 に 、 お 米 を 持って 、 麦 を 持って 、 粟 を 持って 、 豆 を 持って 、たいそう ゆたかに 暮らして いる お 金持ち の ねずみ が 住んで おりました 。 |||いえ|||くら||なか|||べい||もって|むぎ||もって|あわ||もって|まめ||もって|||くらして|||かねもち||||すんで| ・・

子供 が ない ので 神さま に お 願い します と 、 やっと 女の子 が 生まれました 。 こども||||かみさま|||ねがい||||おんなのこ||うまれました その 子 はず ん ず ん 大きく なって 、 かがやく ほど 美しく なって 、 それ は ねずみ の お国 で だれ一人 くらべる もの の ない 日本 一 の いい 娘 に なりました 。 |こ|||||おおきく||||うつくしく||||||おくに||だれひとり|||||にっぽん|ひと|||むすめ|| ・・

こう なる と 、 もう ねずみ の 仲間 に は 見わたした ところ 、 とても 娘 の お 婿 さん に する ような 者 は ありません でした 。 ||||||なかま|||みわたした|||むすめ|||むこ|||||もの||| ねずみ の お とうさん と お かあさん は 、・・

「 うち の 娘 は 日本 一 の 娘 な のだ から 、 何でも 日本 一 の お 婿 さん を もらわ なければ なら ない 。」 ||むすめ||にっぽん|ひと||むすめ||||なんでも|にっぽん|ひと|||むこ|||||| ・・

と 言いました 。 |いいました ・・

そこ で この 世の中 で だれ が いちばん えらい か と いう と 、 それ は 高い 高い 空 の 上 から 世界中 を あかるく 照らして おいでになる お 日 さま の 外 に は ありません でした 。 |||よのなか||||||||||||たかい|たかい|から||うえ||せかいじゅう|||てらして|||ひ|||がい|||| そこ で お とうさん は お かあさん と 娘 を 連れて 、 天 へ 上って いきました 。 ||||||||むすめ||つれて|てん||のぼって| そして お 日 さま に 、・・ ||ひ||

「 お 日 さま 、 お 日 さま 、 あなた は 世の中 で いちばん えらい お方 です 。 |ひ|||ひ||||よのなか||||おかた| どうぞ わたくし の 娘 を お 嫁 に もらって 下さい まし 。」 |||むすめ|||よめ|||ください| ・・

と いって 、 ていねいに おじぎ を しました 。 ・・

する と お 日 さま は にこにこ なさり ながら 、・・ |||ひ|||||

「 それ は ありがたい が 、 世の中 に は わたし より もっと えらい もの が ある よ 。」 ||||よのなか|||||||||| ・・

と おっしゃいました 。 ・・

お とうさん は びっくり しました 。 ・・

「 まあ 、 あなた より も えらい 方 が ある のです か 。 |||||かた|||の です| それ は どなた で ございます か 。」 ・・

「 それ は 雲 さ 。 ||くも| わたし が いくら 空 で かんかん 照って いよう と 思って も 、 雲 が 出て くる と もう だめに なる のだ から ね 。」 |||から|||てって|||おもって||くも||でて|||||||| ・・

「 なるほど 。」 ・・

お とうさん は そこ で 、 こんど は 雲 の 所 へ 出かけました 。 |||||||くも||しょ||でかけました ・・

「 雲 さん 、 雲 さん 、 あなた は 世の中 で いちばん えらい お方 です 。 くも||くも||||よのなか||||おかた| どうぞ わたくし の 娘 を お 嫁 に もらって 下さい まし 。」 |||むすめ|||よめ|||ください| ・・

「 それ は ありがたい が 、 世の中 に は わたし より もっと えらい もの が ある よ 。」 ||||よのなか|||||||||| ・・

お とうさん は びっくり しました 。 ・・

「 まあ 、 あなた より も えらい 方 が ある のです か 。 |||||かた|||の です| それ は どなた で ございます か 。」 ・・

「 それ は 風 さ 。 ||かぜ| 風 に 吹きとばされて は わたし も かなわない よ 。」 かぜ||ふきとばされて||||| ・・

「 なるほど 。」 ・・

お とうさん は そこ で 、 こんど は 風 の 所 へ 出かけて いきました 。 |||||||かぜ||しょ||でかけて| ・・

「 風 さん 、 風 さん 、 あなた は 世の中 で いちばん えらい お方 です 。 かぜ||かぜ||||よのなか||||おかた| どうぞ わたくし の 娘 を お 嫁 に もらって 下さい まし 。」 |||むすめ|||よめ|||ください| ・・

「 それ は ありがたい が 、 世の中 に は わたし より もっと えらい もの が ある よ 。」 ||||よのなか|||||||||| ・・

お とうさん は びっくり しました 。 ・・

「 まあ 、 あなた より も えらい 方 が ある のです か 。 |||||かた|||の です| それ は どなた で ございます か 。」 ・・

「 それ は 、 壁 さ 。 ||かべ| 壁 ばかり は わたし の 力 でも とても 、 吹きとばす こと は でき ない から ね 。」 かべ|||||ちから|||ふきとばす|||||| ・・

「 なるほど 。」 ・・

お とうさん は そこ で また 、 の この こ 壁 の 所 へ 出かけて いきました 。 |||||||||かべ||しょ||でかけて| ・・

「 壁 さん 、 壁 さん 、 あなた は 世の中 で いちばん えらい お方 です 。 かべ||かべ||||よのなか||||おかた| どうぞ うち の 娘 を お 嫁 に もらって 下さい まし 。」 |||むすめ|||よめ|||ください| ・・

「 それ は ありがたい が 、 世の中 に は わたし より もっと えらい もの が ある よ 。」 ||||よのなか|||||||||| ・・

お とうさん は びっくり しました 。 ・・

「 まあ 、 あなた より も えらい 方 が ある のです か 。 |||||かた|||の です| それ は どなた で ございます か 。」 ・・

「 それ は だれ で も ない 、 そういう ねずみ さん さ 。 わたし が いくら まっ四角な 顔 を して 、 固く なって 、 がんばって いて も 、 ねずみ さん は へいきで わたし の 体 を 食い 破って 、 穴 を あけて 通り抜けて いく じゃ ない か 。 |||まっしかくな|かお|||かたく|||||||||||からだ||くい|やぶって|あな|||とおりぬけて|||| だから わたし は どうしても ねずみ さん に は かなわない よ 。」 ・・

「 なるほど 。」 ・・

と ねずみ の お とうさん は 、 こんど こそ ほんとうに しん から 感心 した ように 、 ぽん と 手 を 打って 、・・ |||||||||||かんしん||よう に|||て||うって

「 これ は 今 まで 気 が つか なかった 。 ||いま||き||| じゃあ わたし ども が 世の中 で いちばん えらい のです ね 。 ||||よのなか||||の です| ありがたい 。 ありがたい 。」 ・・

と にこにこ し ながら 、 いばって 帰って いきました 。 |||||かえって| そして 帰る と さっそく 、 お 隣 の ちゅう 助 ねずみ を 娘 の お 婿 さん に しました 。 |かえる||||となり|||じょ|||むすめ|||むこ||| ・・

若い お 婿 さん と お 嫁 さん は 、 仲よく 暮らして 、 お とうさん と お かあさん を だいじに しました 。 わかい||むこ||||よめ|||なかよく|くらして|||||||| そして たくさん 子供 を 生んで 、 お 倉 の ねずみ の 一家 は ますます 栄えました 。 ||こども||うんで||くら||||いっか|||さかえました