3. 浦島 太郎
毎日 おもしろい 、 めずらしい こと が 、 それ から それ と つづいて 、 あまり りゅう 宮 が たのしい ので 、 なんという こと も おもわず に 、 うかうか あそんで くらす うち 、 三 年 の 月日 が たちました 。 ・・
三 年 め の 春 に なった とき 、 浦島 は ときどき 、 ひさしく わすれて いた ふるさと の 夢 を 見る ように なりました 。 春 の 日 の ぽかぽか あたって いる 水 の 江 の 浜 べ で 、 りょうし たち が げんき よく 舟 うた を うたい ながら 、 網 を ひいたり 舟 を こいだり して いる ところ を 、 まざまざ と 夢 に 見る ように なりました 。 浦島 は いまさら の ように 、・・
「 お とうさん や 、 お かあさん は 、 いまごろ どうして おいでになる だろう 」・・
と 、 こう おもい出す と 、 もう 、 いて も 立って も いられ なく なる ような 気 が しました 。 なんでも 早く うち へ 帰りたい と ばかり おもう ように なりました 。 ですから 、 もう このごろ で は 、 歌 を きいて も 、 踊り を 見て も 、 おもしろく ない 顔 を して 、 ふさぎこんで ばかり いました 。 ・・
その 様子 を 見る と 、 乙姫 さま は 心配 して 、・・
「 浦島 さん 、 ご 気分 でも お わるい のです か 」・・
とおき き に なりました 。 浦島 は もじもじ し ながら 、・・
「 いいえ 、 そう では ありません 。 じつは うち へ 帰り たく なった もの です から 」・・
と いいます と 、 乙姫 さま は きゅうに 、たいそう がっかり した 様子 を なさ いました 。 ・・
「 まあ 、 それ は ざんねんで ございます こと 。 でも あなた の お 顔 を はいけん いたします と 、 この上 お ひきとめ 申して も 、 むだ の ように おもわ れます 。 では いたし方 ございませ ん 、 行って いらっしゃい まし 」・・
こう かなし そうに いって 、 乙姫 さま は 、 奥 から きれいな 宝石 で かざった 箱 を 持って おいでになって 、・・
「 これ は 玉手 箱 と いって 、 なか に は 、 人間 の いちばん だいじな たから が こめて ございます 。 これ を お わかれ の しるし に さし上げます から 、 お 持ちかえり ください まし 。 ですが 、 あなた が もう いち ど りゅう 宮 へ 帰って きたい と お ぼし めす なら 、 どんな こと が あって も 、 けっして この 箱 を あけて ごらん に なって は いけません 」・・
と 、 くれぐれも ねん を おして 、 玉手 箱 を お わたし に なりました 。 浦島 は 、・・
「 ええ 、 ええ 、 けっして あけません 」・・
と いって 、 玉手 箱 を こわき に かかえた まま 、 りゅう 宮 の 門 を 出ます と 、 乙姫 さま は 、 また おおぜい の 腰元 を つれて 、 門 の そと まで お 見送り に なりました 。 ・・
もう そこ に は 、 れいの かめ が きて 待って いました 。 ・・
浦島 は うれしい の と かなしい の と で 、 胸 が いっぱいに なって いました 。 そして かめ の 背中 に のります と 、 かめ は すぐ 波 を 切って 上がって 行って 、 まもなく もと の 浜 べに つきました 。 ・・
「 では 浦島 さん 、 ごきげん よろしゅう 」・・
と 、 かめ は いって 、 また 水 の なか に もぐって 行きました 。 浦島 は しばらく 、 かめ の 行く え を 見送って いました 。