鉢 か づき 姫
はち|||ひめ
bowl|||
spike winter hazel (Corylopsis spicata)
鉢かづき 姫
はち か づき|ひめ
bowl-wearing|
Hachikazuki Hime
むかし むかし 、 河内 の 国 ( かわ ち の くに → 大阪 ) に 、 ひと り の 大 金持ち が 住んで い ました 。
||かわうち||くに|||||おおさか|||||だい|かねもち||すんで||
Once upon a time, in the country of Kawachi (Kawachi → Osaka), there lived a very rich man.
なに 不自由 ない 暮らし を して い ました が 、 子ども だけ は どうしても さずかり ませ ん 。
|ふじゆう||くらし||||||こども||||||
|||||||||||||could not be granted||
He lived a life without any hardships, but he could not have children no matter what.
それ で 毎晩 、 長谷 寺 ( はせ で ら ) の 観音 さま ( かんのん さま ) に 手 を 合わせて お 願い を して 、 ついに 念願 の 子ども が 生まれた のです 。
||まいばん|はせ|てら|||||かんのん|||||て||あわせて||ねがい||||ねんがん||こども||うまれた|
||||||||||||||||||||||long-cherished wish||child|||
Every night, I prayed with my hands together to the Kannon at Hasedera, and finally, the long-awaited child was born.
その 子ども は お 母さん に よく 似た 、 美しい 姫 です 。
|こども|||かあさん|||にた|うつくしい|ひめ|
The child is a beautiful princess who resembles her mother very much.
ところが 姫 が 十三 才 に なった 年 、 お 母さん は 重い 病気 に かかり ました 。
|ひめ||じゅうさん|さい|||とし||かあさん||おもい|びょうき|||
However, in the year the princess turned thirteen, her mother fell seriously ill.
お 母さん は 、 姫 を 枕元 に 呼ぶ と 、 「 わたし は まもなく 遠い 所 へ 行き ます 。
|かあさん||ひめ||まくらもと||よぶ|||||とおい|しょ||いき|
|||princess|||||||||||||
Mother called the princess to her bedside and said, "I will soon be going to a distant place.
わたし が い なく なる の は 運命 です から 、 悲しむ 必要 は あり ませ ん 。
|||||||うんめい|||かなしむ|ひつよう||||
||||||||||to be sad|||||
It's my destiny to be gone, so there's no need to be sad.
さあ 母 の 形見 に 、 これ を 頭 に のせて い なさい 。
|はは||かたみ||||あたま||||
|||keepsake||||||||
Now, wear this on your head as a keepsake from me."
きっと 、 役 に 立ち ます から ね 」 そう 言って 重い 箱 を 姫 の 頭 の 上 に のせた ばかり か 、 大きな 木 の 鉢 ( はち ) まで かぶせ ました 。
|やく||たち|||||いって|おもい|はこ||ひめ||あたま||うえ|||||おおきな|き||はち||||
|||||||||||||||||||||||||||covered|
Surely, it will be useful. Saying that, not only did they place a heavy box on the princess's head, but they also covered it with a large wooden pot.
そして 、 お 母さん は なく なり ました 。
||かあさん||||
And then, the mother passed away.
お 父さん は 姫 の 頭 の 上 の 鉢 を 取ろう と し ます が 、 どうしても はずせ ませ ん 。
|とうさん||ひめ||あたま||うえ||はち||とろう||||||||
|||||||||bowl||||||||cannot remove||
The father tries to remove the pot from the princess's head, but no matter what, he cannot take it off.
その ため に 姫 は 『 鉢かづき 』 と いって 、 バカに さ れたり 、 いじめ られた りし ました 。
|||ひめ||はち か づき|||ばかに||||||
For that reason, the princess was called 'Hachikazuki,' and she was mocked and bullied.
やがて お 父さん に 、 二 度 目 の 奥さん が やってき ました 。
||とうさん||ふた|たび|め||おくさん|||
Eventually, a second wife came to her father.
この 新しい お 母さん が 悪い 人 で 、 鉢かづき 姫 に いじわる を したり 、 かげ口 を たたいたり 、 最後に は お 父さん を うまく だまして 、 鉢かづき 姫 を 追い出して しまった のです 。
|あたらしい||かあさん||わるい|じん||はち か づき|ひめ|||||かげぐち|||さいごに|||とうさん||||はち か づき|ひめ||おいだして||
||||||||||||||gossip||gossiped|||||||||||||
This new mother was a bad person, and she was mean to Hachikazuki, talked behind her back, and finally deceived her father so well that she managed to drive Hachikazuki away.
家 を 追い出さ れた 鉢かづき 姫 は 、 シクシク 泣き ながら 大きな 川 の ほとり に やってき ました 。
いえ||おいださ||はち か づき|ひめ||しくしく|なき||おおきな|かわ|||||
|||||||||||||riverbank|||
The princess Hachikazuki, who was kicked out of her house, came to the shore of a large river while crying quietly.
「 どこ へ 行って も いじめ られる の なら 、 ひと思いに 、 お 母 さま の そば へ 行こう 」 ドボーン !
||おこなって||||||ひとおもいに||はは|||||いこう|
||||||||with determination||||||||
"If I'm going to be bullied wherever I go, I might as well go to my mother!" Splash!
思いきって 川 の 流れ に 飛び 込み ました が 、 木 の 鉢 の おかげ で 浮き あがって しまい ました 。
おもいきって|かわ||ながれ||とび|こみ|||き||はち||||うき|||
with determination||||||||||||||||||
She jumped boldly into the river's current, but thanks to the wooden pot, she ended up floating.
鉢かづき 姫 は 、 死ぬ 事 さえ 出来 ない のです 。
はち か づき|ひめ||しぬ|こと||でき||
Princess Hatakazuki cannot even die.
村 の 子ども たち が 、 鉢かづき 姫 に 石 を 投げ ました 。
むら||こども|||はち か づき|ひめ||いし||なげ|
The children of the village threw stones at Princess Hatakazuki.
「 わー い 。
わ -|
"Yay."
頭 が おわ ん 。
あたま|||
My head is gone.
からだ が 人間 。
||にんげん
My body is human.
お化け だ ぁ ー 」 ちょうど その 時 、 この 国 の 殿さま で 山陰 ( さんいん ) の 中将 ( ちゅうじょう ) と いう 人 が 、 家来 を 連れて そこ を 通り かかり ました 。
おばけ|||-|||じ||くに||とのさま||さんいん|||ちゅうじょう||||じん||けらい||つれて|||とおり||
At that moment, a person in this country, known as the lord of San'in, the Chujo, passed by with his retainers.
中将 は 親切な 人 だった ので 、 鉢かづき を 家 に 連れて 帰って ふろ たき 女 に する こと に し ました 。
ちゅうじょう||しんせつな|じん|||はち か づき||いえ||つれて|かえって|||おんな||||||
The lieutenant general was a kind person, so he decided to bring Hatchikuzuki home and make her a bath attendant.
この 中将 に は 、 四 人 の 男の子 が い ます 。
|ちゅうじょう|||よっ|じん||おとこのこ|||
This lieutenant general has four boys.
上 の 三 人 は 結婚 して い ました が 、 一 番 下 の 若 君 に は 、 まだ お 嫁 さん が いま せ ん でした 。
うえ||みっ|じん||けっこん|||||ひと|ばん|した||わか|きみ|||||よめ||||||
The top three were married, but the youngest had not yet found a bride.
心 の やさしい 若 君 は 、 鉢かづき 姫 が 傷 だらけ の 手 で 水 を 運んだり 、 お ふろ を たいたり する の を 見て なぐさめ ました 。
こころ|||わか|きみ||はち か づき|ひめ||きず|||て||すい||はこんだり||||||||みて||
|||||||||||||||||||||||||comforted|
The kind-hearted young lord comforted Princess Hakkuzuki as she carried water and heated the bath with her injured hands.
「 しんぼう し なさい 。
patience||
Be patient. There will surely be good things to come.
きっと 、 良い 事 が ある から ね 」 「 はい 」 鉢かづき 姫 は 、 どんなに うれしかった 事 でしょう 。
|よい|こと||||||はち か づき|ひめ||||こと|
||||||||bowl-wearing||||very happy||
Yes, how happy Princess Hakkuzuki must have been.
こんなに やさしい 言葉 を かけ られた の は 、 お 母さん が 死んで から 初めて です 。
||ことば|||||||かあさん||しんで||はじめて|
This is the first time I've been spoken to with such kind words since my mother passed away.
それ から 、 何 日 か 過ぎ ました 。
||なん|ひ||すぎ|
A few days have passed since then.
若 君 は 、 お 父さん の 前 へ 出る と 、 「 父上 。
わか|きみ|||とうさん||ぜん||でる||ちちうえ
||||||||||father
When the young master stepped in front of his father, he said, 'Father.'
わたし は 、 あの 娘 と 結婚 しよう と 思い ます 。
|||むすめ||けっこん|||おもい|
I am thinking of marrying that girl.
しんぼう強く 、 心 の やさしい ところ が 気にいり ました 」 と 、 言った のです 。
しんぼうづよく|こころ|||||き に いり|||いった|
I liked her patience and the gentle side of her heart, that's what I said.
もちろん 、 お 父さん の 中将 は 反対です 。
||とうさん||ちゅうじょう||はんたいです
||||||opposed
Of course, my father, the lieutenant general, is opposed.
「 なら ん !
Then, no way!
あんな 、 ふろ たき 女 など !
|||おんな|
That kind of bathhouse woman!
」 「 いいえ !
No way!
あの 娘 は 素晴らしい 女性 です 。
|むすめ||すばらしい|じょせい|
That girl is a wonderful woman.
あれほど の 娘 は 、 他 に はい ませ ん !
||むすめ||た||||
There is no girl like her!
」「 素晴らしい ?
すばらしい
"Wonderful?"
他 に は いない だ と ?
た|||||
Is there no one else?
・・・ よーし 、 では 嫁 合わせ を しよう で は ない か 。
よ - し||よめ|あわせ||||||
all right|||||||||
...Alright, then let's have a marriage meeting.
兄 たち の 嫁 と 、 あの 鉢かづき を 比べよう で は ない か 」 三 人 の 兄 の 嫁 は 、 とても 美しい 娘 です 。
あに|||よめ|||はち か づき||くらべよう|||||みっ|じん||あに||よめ|||うつくしい|むすめ|
||||||||let's compare|||||||||||||||
Shall we compare the brothers' wives with that bowl-wearing girl? The wives of the three brothers are very beautiful daughters.
こう すれば 鉢かづき 姫 は 恥ずかしくて 、 自分 から どこ か へ 行って しまう だろう と 考えた のです 。
||はち か づき|ひめ||はずかしくて|じぶん|||||おこなって||||かんがえた|
I thought that if I did this, Princess Hachikuzuki would be so embarrassed that she would probably go somewhere on her own.
さて 、 いよいよ 嫁 合わせ の 夜 が き ました 。
||よめ|あわせ||よ|||
Now, the night of the marriage meeting has finally come.
鉢かづき 姫 は 思わず 手 を 合わせて 、 長谷 寺 の 方 を おがみ ました 。
はち か づき|ひめ||おもわず|て||あわせて|はせ|てら||かた|||
Princess Hachikuzuki instinctively put her hands together and bowed towards Hase-dera.
「 お 母 さま 。
|はは|
Mother.
観音 さま 。
かんのん|
Kannon.
今夜 、 嫁 合わせ が あり ます 。
こんや|よめ|あわせ|||
Tonight, there is a wedding.
お 兄 さま 方 の お 嫁 さん は 、 とても 美しい 姫君 たち と 聞き ます 。
|あに||かた|||よめ||||うつくしい|ひめぎみ|||きき|
|||||||||||princess||||
I hear that the brides of my brothers are very beautiful princesses.
わたし の 様 な 鉢かづき が 出て 行って 、 いと おしい 若 君 に 恥 を かかせる くらい なら 、 いっそ このまま どこ か へ ・・・」 その 時 です 。
||さま||はち か づき||でて|おこなって|||わか|きみ||はじ|||||||||||じ|
If someone like me, who wears a pot, goes out and embarrasses the dear young master, then I’d rather just disappear somewhere as it is...
今 まで どうしても はずれ なかった 頭 の 木 鉢 が 、 ポロリ と はずれた のです 。
いま|||||あたま||き|はち|||||
||||||||||suddenly||fell off|
At that moment, the pot on my head, which had never come off until now, suddenly fell off.
鉢 の 下 から は 、 かがやく ばかりの 姫 が 現れ ました 。
はち||した|||||ひめ||あらわれ|
A sparkling princess appeared from under the pot.
そして 鉢 の 中 から は 、 金 ・ 銀 ・ 宝石 が あと から あと から こぼれ 出 ました 。
|はち||なか|||きむ|ぎん|ほうせき|||||||だ|
And from within the pot, gold, silver, and jewels spilled out one after another.
そこ へ 現れた 若 君 が 言い ました 。
||あらわれた|わか|きみ||いい|
Then a young gentleman who appeared said.
「 やはり 、 あなた は 素晴らしい 娘 だ 。
|||すばらしい|むすめ|
"Indeed, you are a wonderful daughter."
さあ 、 美しい 姫 よ 、 嫁 合わせ に 行き ましょう 」 屋敷 の 中 で は 、 三 人 の 兄 たち の 美しく 着飾った 姫 たち が ならんで い ます 。
|うつくしい|ひめ||よめ|あわせ||いき||やしき||なか|||みっ|じん||あに|||うつくしく|きかざった|ひめ|||||
"Now, beautiful princess, let's go for a marriage match." Inside the mansion, three elegantly dressed princesses are lined up.
そこ へ 鉢かづき 姫 が 、 ニコニコ と 笑い ながら 現れ ました 。
||はち か づき|ひめ||にこにこ||わらい||あらわれ|
Then, Hachikazuki-hime appeared with a cheerful smile.
「 おお ー っ 」 お 父さん の 中将 が 思わず 声 を あげた ほど の 、 まぶしい ばかりの 美し さ です 。
|-|||とうさん||ちゅうじょう||おもわず|こえ|||||||うつくし||
"Oh!" My father, the General, exclaimed involuntarily at the dazzling beauty.
中将 は 鉢かづき 姫 の 手 を とって 自分 の 横 に 座ら せる と 、 若 君 に 言い ました 。
ちゅうじょう||はち か づき|ひめ||て|||じぶん||よこ||すわら|||わか|きみ||いい|
The General took Princess Hachikazuki's hand and sat her beside him, saying to the young lord.
「 まったく 、 お前 の 言う 通り 素晴らしい 娘 だ 。
|おまえ||いう|とおり|すばらしい|むすめ|
"Indeed, she is a wonderful daughter, just as you said."
この 娘 を 妻 と し 、 幸せに 暮らす が よい 」「 はい 、 父上 !
|むすめ||つま|||しあわせに|くらす||||ちちうえ
It is good to live happily with this girl as your wife. "Yes, Father!"
」 「 ありがとう ございます 。
"Thank you very much."
お 父 さま 」 それ から 若 君 と 姫 は 仲 むつまじく 暮らして 、 二 人 の 間 に は 何 人 か の 子ども も 生まれ ました 。
|ちち||||わか|きみ||ひめ||なか||くらして|ふた|じん||あいだ|||なん|じん|||こども||うまれ|
|||||||||||affectionately|||||||||||||||
After that, the young lord and the princess lived together harmoniously, and a few children were also born between them.
ある 時 、 鉢かづき 姫 が 長谷 寺 の 観音 さま に お参り を した とき の こと です 。
|じ|はち か づき|ひめ||はせ|てら||かんのん|||おまいり||||||
Once upon a time, when Princess Hatchikuzuki visited the Kannon deity at Hase-dera Temple.
本堂 の 片すみ で 、 みすぼらしい 姿 の お 坊さん に 会い ました 。
ほんどう||かたすみ|||すがた|||ぼうさん||あい|
In one corner of the main hall, she met a shabby-looking monk.
その お 坊さん の 顔 を 見て 、 鉢かづき 姫 は びっくり 。
||ぼうさん||かお||みて|はち か づき|ひめ||
Seeing the monk's face, Princess Hatchikuzuki was surprised.
「 まあ 、 お 父 さま で は あり ませ ん か 」 「 姫 、 姫 か !
||ちち||||||||ひめ|ひめ|
Well, isn't this my father? Princess, is that you!
」 二 人 は 抱き合って 、 数 年 ぶり の 再会 を 喜び ました 。
ふた|じん||だきあって|すう|とし|||さいかい||よろこび|
|||hugging||||||||
The two embraced, rejoicing in their reunion after several years.
すっかり 落ちぶれて 新しい 奥さん に も 見捨て られた お 父さん は 、 鉢かづき 姫 を 追い出した 事 を 後悔 して 、 旅 を し ながら 鉢かづき 姫 を 探して いた のです 。
|おちぶれて|あたらしい|おくさん|||みすて|||とうさん||はち か づき|ひめ||おいだした|こと||こうかい||たび||||はち か づき|ひめ||さがして||
||||||abandoned||||||||||||||||||||||
Having completely fallen from grace and abandoned by his new wife, the father regretted having cast out Princess Hatsukuki and was searching for her while traveling.
「 すま なかった 。
"I'm sorry."
本当に すま なかった 」 泣いて あやまる お 父さん に 、 鉢かづき 姫 は にっこり ほほえみ ました 。
ほんとうに|||ないて|||とうさん||はち か づき|ひめ||||
"I'm really sorry," said her father, crying and apologizing, and Hachikazuki-hime smiled brightly in response.
「 いいえ 。
いろいろ あり ました が 、 今 は とても 幸せな のです よ 」 それ から お 父さん は 鉢かづき 姫 の ところ に ひきとら れ 、 幸せに 暮らし ました 。
||||いま|||しあわせな||||||とうさん||はち か づき|ひめ||||||しあわせに|くらし|
There were various things, but now I am very happy. After that, the father was taken in by Hachikazuki-hime and lived happily.
おしまい
The end