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涼み 袋
涼み 袋
むかし むかし 、 一 人 の 侍 が お供 を 連れて 、 山道 を 歩いて い ました 。
とても 暑い 日 だった ので 、 侍 も お供 も 全身 汗だくです 。
「 暑い な 」 「 はい 、 まったく です 」 しばらく 行く と 、 峠 に 一 軒 の 店 が あり ました 。
その 店 の 看板 に は 、 《 涼み 袋 あり 》 と 、 書いて い ます 。
「 ほ ほう 。
涼み 袋 と は 、 いかなる 物 であろう か ?
」 「 さあ ?
とりあえず 、 寄って み ましょう か 」 二 人 が 店 に 入って 行く と 、 小 ざ っ ぱり した 身なり の お じいさん が ニコニコ し ながら 出迎え ました 。
「 いらっしゃい ませ 。
お 暑い 中 、 大変でした でしょう 」 お 茶 を 差し出す お じいさん に 、 侍 が 尋ね ました 。
「 これ 、 表 の 看板 に 《 涼み 袋 あり 》 と ある が 、 その 涼み 袋 と は 、 いかなる 物 だ ?
」 「 はい 、 涼み 袋 と は 冬場 に 山 の 冷たい 風 を 詰め 込んだ 、 不思議な 袋 で ございます 」 「 ほ ほう 。
よく わから ぬ が 、 二 袋 ばかり もらおう 」 「 はい 、 ありがとう ございます 」 侍 は お じいさん から 紙袋 を 受け取る と 、 それ を お供 に 持た せて ふもと の 宿 に 行き ました 。
その 日 は 、 夜 に なって も 暑い 日 でした 。
寝苦し さ に 目 を 覚ました 侍 は 、 お供 を 呼んで 言い ました 。
「 峠 の 店 で 買った 《 涼み 袋 》 と いう やつ 、 国 の 土産 に 持って 帰ろう と 思って いた が 、 こう も 暑くて は がまん 出来 ぬ 。
すま ん が 、 一 袋 持って 来て くれ ん か 」 「 はい 。
ただいま 」 お供 が 涼み 袋 を 一 袋 持って 来た ので 、 侍 は その 袋 の 口 を 開けて み ました 。
すると 袋 の 中 から 、 とても ひんやり と した 涼しい 風 が 吹き出して 来て 、 あっという間 に 部屋 中 を 涼しく して くれた のです 。
「 おおっ 、 これ は 良い 物 を 買った 」 涼み 袋 の おかげ で 、 侍 は ぐっすり 眠る 事 が 出来 ました 。
さて 、 こちら は お供 の 部屋 です が 、 この 部屋 は 風通し が 悪くて 侍 の 部屋 以上 に 寝苦しい 部屋 でした 。
お供 は だらだら と 汗 を かき ながら 、 一睡 も 出来 ませ ん 。
「 うーん 、 こう も 暑くて は 、 寝る どころ で は ない ぞ 。
明日 も 朝 早くから 、 長く 歩か なくて は なら ん のに 。
・・・ よし 、 おら も 一 つ 、 涼み 袋 を 使って みよう か 。
少し だけ なら 、 ばれ ない だろう 」 こうして お供 は 、 残った 涼み 袋 を 少し だけ 開けて み ました 。
すると たちまち 涼しい 風 が 吹き出して 、 お供 の 汗 が すーっと 引いて いき ます 。
「 これ は 気持ち が いい 。
よし 、 もう 少し だけ 」 こうして お供 は 何度 も 何度 も 涼み 袋 を 開けて 、 とうとう 涼み 袋 の 風 を 全部 使って しまった のです 。
「 さあ 、 困った ぞ 。
旦那 さま が お 目覚め に なったら 、 きっと もう 一 袋 持って来い と 言う に 違いない 。
どう しよう 、 どう しよう 」 しばらく 考えて いた お供 は 名案 を 思い ついた の か 、 空 に なった 涼み 袋 に お 尻 を 当てる と 、 ♪ ブーーーーーッ と 、 袋 の 中 に おなら を 入れて 、 素早く 袋 の 口 を 閉じ ました 。
これ で 見た目 に は 、 まだ 使って い ない の と 同じです 。
さて 、 涼み 袋 の 効果 が なくなって 来た の か 、 侍 は 蒸し暑 さ で 目 を 覚まし ました 。
「 うむ 。
どうやら 、 涼み 袋 の 効き目 が なくなった ようだ な 。
よし 、 もう 一 つ 使う と する か 」 侍 は 、 お供 に 新しい 涼み 袋 を 持って 来さ せる と 、 涼しい 風 を 楽しみに 紙袋 の 口 を 開け ました 。
する と 涼み 袋 から は 涼しい 風 で は なく 、 ぷ ー ん と 臭い 風 が 吹いて きた のです 。
「 げ ほっ 、 げ ほっ 。
・・・ な 、 なんだ 、 この 風 は !
」 侍 が 臭い におい に むせて いる と 、 お供 が 涼しい 顔 で 言い ました 。
「 この 暑 さ です から ね 。
さすが の 風 も 、 腐って しまった のでしょう 」 「 なるほど 。
こんな 事 なら 、 早く 使って おれば よかった 」
おしまい
涼み 袋
すずみ|ふくろ
luftdichter Behälter für den Gürtel, die Schürze usw. eines Wrestlers
airtight container for a wrestler's belt, apron, etc.
contenant hermétique pour ceinture de lutteur, tablier, etc.
lufttät behållare för brottarbälte, förkläde etc.
涼み 袋
すずみ|ふくろ
むかし むかし 、 一 人 の 侍 が お供 を 連れて 、 山道 を 歩いて い ました 。
||ひと|じん||さむらい||おとも||つれて|やまみち||あるいて||
とても 暑い 日 だった ので 、 侍 も お供 も 全身 汗だくです 。
|あつい|ひ|||さむらい||おとも||ぜんしん|あせだくです
「 暑い な 」 「 はい 、 まったく です 」 しばらく 行く と 、 峠 に 一 軒 の 店 が あり ました 。
あつい||||||いく||とうげ||ひと|のき||てん|||
その 店 の 看板 に は 、 《 涼み 袋 あり 》 と 、 書いて い ます 。
|てん||かんばん|||すずみ|ふくろ|||かいて||
「 ほ ほう 。
涼み 袋 と は 、 いかなる 物 であろう か ?
すずみ|ふくろ||||ぶつ||
」 「 さあ ?
とりあえず 、 寄って み ましょう か 」 二 人 が 店 に 入って 行く と 、 小 ざ っ ぱり した 身なり の お じいさん が ニコニコ し ながら 出迎え ました 。
|よって||||ふた|じん||てん||はいって|いく||しょう|||||みなり|||||にこにこ|||でむかえ|
「 いらっしゃい ませ 。
お 暑い 中 、 大変でした でしょう 」 お 茶 を 差し出す お じいさん に 、 侍 が 尋ね ました 。
|あつい|なか|たいへんでした|||ちゃ||さしだす||||さむらい||たずね|
「 これ 、 表 の 看板 に 《 涼み 袋 あり 》 と ある が 、 その 涼み 袋 と は 、 いかなる 物 だ ?
|ひょう||かんばん||すずみ|ふくろ||||||すずみ|ふくろ||||ぶつ|
」 「 はい 、 涼み 袋 と は 冬場 に 山 の 冷たい 風 を 詰め 込んだ 、 不思議な 袋 で ございます 」 「 ほ ほう 。
|すずみ|ふくろ|||ふゆば||やま||つめたい|かぜ||つめ|こんだ|ふしぎな|ふくろ||||
よく わから ぬ が 、 二 袋 ばかり もらおう 」 「 はい 、 ありがとう ございます 」 侍 は お じいさん から 紙袋 を 受け取る と 、 それ を お供 に 持た せて ふもと の 宿 に 行き ました 。
||||ふた|ふくろ||||||さむらい|||||かみぶくろ||うけとる||||おとも||もた||||やど||いき|
その 日 は 、 夜 に なって も 暑い 日 でした 。
|ひ||よ||||あつい|ひ|
寝苦し さ に 目 を 覚ました 侍 は 、 お供 を 呼んで 言い ました 。
ねぐるし|||め||さました|さむらい||おとも||よんで|いい|
「 峠 の 店 で 買った 《 涼み 袋 》 と いう やつ 、 国 の 土産 に 持って 帰ろう と 思って いた が 、 こう も 暑くて は がまん 出来 ぬ 。
とうげ||てん||かった|すずみ|ふくろ||||くに||みやげ||もって|かえろう||おもって|||||あつくて|||でき|
すま ん が 、 一 袋 持って 来て くれ ん か 」 「 はい 。
|||ひと|ふくろ|もって|きて||||
ただいま 」 お供 が 涼み 袋 を 一 袋 持って 来た ので 、 侍 は その 袋 の 口 を 開けて み ました 。
|おとも||すずみ|ふくろ||ひと|ふくろ|もって|きた||さむらい|||ふくろ||くち||あけて||
すると 袋 の 中 から 、 とても ひんやり と した 涼しい 風 が 吹き出して 来て 、 あっという間 に 部屋 中 を 涼しく して くれた のです 。
|ふくろ||なか||||||すずしい|かぜ||ふきだして|きて|あっというま||へや|なか||すずしく|||
「 おおっ 、 これ は 良い 物 を 買った 」 涼み 袋 の おかげ で 、 侍 は ぐっすり 眠る 事 が 出来 ました 。
おお っ|||よい|ぶつ||かった|すずみ|ふくろ||||さむらい|||ねむる|こと||でき|
さて 、 こちら は お供 の 部屋 です が 、 この 部屋 は 風通し が 悪くて 侍 の 部屋 以上 に 寝苦しい 部屋 でした 。
|||おとも||へや||||へや||かぜとおし||わるくて|さむらい||へや|いじょう||ねぐるしい|へや|
お供 は だらだら と 汗 を かき ながら 、 一睡 も 出来 ませ ん 。
おとも||||あせ||||いっすい||でき||
「 うーん 、 こう も 暑くて は 、 寝る どころ で は ない ぞ 。
|||あつくて||ねる|||||
明日 も 朝 早くから 、 長く 歩か なくて は なら ん のに 。
あした||あさ|はやく から|ながく|あるか|||||
・・・ よし 、 おら も 一 つ 、 涼み 袋 を 使って みよう か 。
|||ひと||すずみ|ふくろ||つかって||
少し だけ なら 、 ばれ ない だろう 」 こうして お供 は 、 残った 涼み 袋 を 少し だけ 開けて み ました 。
すこし|||||||おとも||のこった|すずみ|ふくろ||すこし||あけて||
すると たちまち 涼しい 風 が 吹き出して 、 お供 の 汗 が すーっと 引いて いき ます 。
||すずしい|かぜ||ふきだして|おとも||あせ|||ひいて||
「 これ は 気持ち が いい 。
||きもち||
よし 、 もう 少し だけ 」 こうして お供 は 何度 も 何度 も 涼み 袋 を 開けて 、 とうとう 涼み 袋 の 風 を 全部 使って しまった のです 。
||すこし|||おとも||なんど||なんど||すずみ|ふくろ||あけて||すずみ|ふくろ||かぜ||ぜんぶ|つかって||
「 さあ 、 困った ぞ 。
|こまった|
旦那 さま が お 目覚め に なったら 、 きっと もう 一 袋 持って来い と 言う に 違いない 。
だんな||||めざめ|||||ひと|ふくろ|もってこい||いう||ちがいない
どう しよう 、 どう しよう 」 しばらく 考えて いた お供 は 名案 を 思い ついた の か 、 空 に なった 涼み 袋 に お 尻 を 当てる と 、 ♪ ブーーーーーッ と 、 袋 の 中 に おなら を 入れて 、 素早く 袋 の 口 を 閉じ ました 。
|||||かんがえて||おとも||めいあん||おもい||||から|||すずみ|ふくろ|||しり||あてる||ブー----ッ||ふくろ||なか||お なら||いれて|すばやく|ふくろ||くち||とじ|
これ で 見た目 に は 、 まだ 使って い ない の と 同じです 。
||みため||||つかって|||||おなじです
さて 、 涼み 袋 の 効果 が なくなって 来た の か 、 侍 は 蒸し暑 さ で 目 を 覚まし ました 。
|すずみ|ふくろ||こうか|||きた|||さむらい||むしあつ|||め||さまし|
「 うむ 。
どうやら 、 涼み 袋 の 効き目 が なくなった ようだ な 。
|すずみ|ふくろ||ききめ||||
よし 、 もう 一 つ 使う と する か 」 侍 は 、 お供 に 新しい 涼み 袋 を 持って 来さ せる と 、 涼しい 風 を 楽しみに 紙袋 の 口 を 開け ました 。
||ひと||つかう||||さむらい||おとも||あたらしい|すずみ|ふくろ||もって|きたさ|||すずしい|かぜ||たのしみに|かみぶくろ||くち||あけ|
する と 涼み 袋 から は 涼しい 風 で は なく 、 ぷ ー ん と 臭い 風 が 吹いて きた のです 。
||すずみ|ふくろ|||すずしい|かぜ|||||-|||くさい|かぜ||ふいて||
「 げ ほっ 、 げ ほっ 。
・・・ な 、 なんだ 、 この 風 は !
|||かぜ|
」 侍 が 臭い におい に むせて いる と 、 お供 が 涼しい 顔 で 言い ました 。
さむらい||くさい||||||おとも||すずしい|かお||いい|
「 この 暑 さ です から ね 。
|あつ||||
さすが の 風 も 、 腐って しまった のでしょう 」 「 なるほど 。
||かぜ||くさって|||
こんな 事 なら 、 早く 使って おれば よかった 」
|こと||はやく|つかって||
おしまい