( モ ・ マーダー ) まさか 戦 お う と いう の か ?
( モ ・ マーダー ) やはり あの 荷物 は 武器 か
相手 は 恐らく 人間 じゃ ない ん だ ぞ
( キョウ ) あなた の 中 に 1 匹 の 虫 が い る
( 凪 ( なぎ ) ) あんた の 中 の 虫 が ちょっと 騒 い で いる よう な もの だ
( スタンド から 自転車 を 下ろす 音 )
( モ ・ マーダー ) く そ っ !
( 誠一 ( せい いち ) ) 人間 は 統一 さ れ た 意志 など 持って い ない
心 の 中 に デタラメ に 動き回る 無数 の 虫 が い る だけ だ
うまい 具合 に 虫 が 同じ 餌 に 向かって いる とき は いい が ―
それ ら が バラバラ に なった とき に ―
人 は 支離滅裂 と しか 言い よう の ない 行動 に 出る
♪ ~
~ ♪
( 警備 員 ) ん ? おや
凪 ちゃん どう し たんだい ?
今日 の 面会 は 終わって る ん だ が
( 凪 ) あっ いや ちょっと 来 生 ( き すぎ ) 先生 に 会い に 来 た ん だ
悪い けど 呼び出し て くれ ない か な
( 警備 員 ) ああ いい よ
あっ 来 生 先生 です か ?
今 凪 ちゃん が 来 て い て 来 生 先生 に 用事 が ある と か で …
ああ はい 分かり まし た
はい どう も
( 受話器 を 置く 音 ) ( 警備 員 ) 凪 ちゃん
入って くれ って さ
ん どう も
来 生 先生 と やら か
精神 科 に 一体 何 の 用 が …
( 足音 )
( 銃声 )
麻酔 銃 ? くっ …
( 刺す 音 )
( ピジョン ) う っ う う …
( モ ・ マーダー ) お前 が 犯人 だった の か ?
( ピジョン ) やっぱり あんた は 殺人 鬼 ね
あんた は ホント は 優しい 人間 だ
( モ ・ マーダー ) 何と でも 言え
スケアクロウ の かたき だ !
( モ ・ マーダー ) あっ … が っ
あっ う わ っ ああ …
あっ あ …
( 真希子 ( まきこ ) ) はじめ まして モ ・ マーダー さん
そして さよう なら
( 凪 ) なあ 来 生 先生 今 帰った って 言わ れ た ん だ けど さ
( いびき )
( 窓 ガラス の 割れる 音 ) ( 凪 ) あっ
さ … 佐々木 ( さ さき ) さん !
は ~ い お 待た せ 凪 ちゃん
フフフ … 逃げる つもり ?
でも そんな 顔 じゃ なかった わ ね
( ピジョン の 荒い 息 )
( 黒田 ( くろ だ ) ) 案山子 ( かかし ) と 鳩 ( は と ) が か ? 相性 は 悪い ぞ
( ピジョン ) 案山子 の 相手 は カラス よ スケアクロウ
鳩 じゃ ない
( 真希子 ) あなた の 気持ち は とても よく 分かる わ
( ピジョン ) ハッ !
合成 人間 ピジョン さん
え ?
( 真希子 ) あなた たち 統 和 ( と うわ ) 機構 と いう ん でしょ ?
調べ は つい てる
私 を 追って いる こと を 聞い た わ
私 の かわいい しも べ たち から ね
あなた に チャンス を あげよ う と 思う の
復讐 ( ふく しゅう ) し 殉 死 を 遂げる と いう の は ―
とても 甘く て 美しい こと じゃ ない ?
あなた 人間 に なり たい と 思わ ない ?
誰 か が 言って た わ
“ 人間 は 恋 と 革命 の ため に 生まれ て くる の だ ” って
( 物音 )
スケアクロウ …
迎え に 来 て くれ た の ね
私 天国 に 行 ける の か な
( ブギー ポップ ) 無理 だ
( ブギー ポップ ) 君 は 地獄 行き だ ろ う ね
そう よ ね あなた と 同じ ように ね
( 真希子 ) 凪 ちゃ ~ ん ?
どこ 行く の ?
ムダ よ 警察 なんか に 行って も
こんな 話 誰 が 信じ て くれる と 思う ?
やっぱり … 病院 を 離れ た の は ―
誰 か を 巻き添え に し たく なかった だけ な の ね
いい わ よ 凪 ちゃん
( 凪 ) やはり 俺 の こと を もてあそ ん で いる な
どう する ?
覚悟 を 決める しか ない か …
( 真希子 ) アハハ … やる わ ね 凪 ちゃん
人類 の 未来 を 1 人 で 背負 お う って いう の ね
でも …
( 凪 ) う っ …
あっ …
ん っ
フフ フフ … いい わ よ 凪 ちゃん
もっと もっと ぶざま に は い ず り回り なさい
( 凪 の 荒い 息 )
( 真希子 ) フフ … 不屈 の 闘志 と いった ところ ね
それにしても 逃げ切 れる と 思って る の かしら
う っ こいつ !
ふざける の は ここ まで よ !
う っ …
( 凪 ) う っ … ( 真希子 ) 怖がり な さ いよ
( 凪 ) う っ … ( 真希子 ) くっ …
怖 がれ って 言って る の よ !
悲鳴 を 上げ なさい ! 惨め に 命乞い なさい !
うろたえ なさい !
やっぱり な そんな ところ だ ろ う と 思った
( 真希子 ) ん ?
( 凪 ) 俺 は 犯行 現場 に 一貫 性 が ない こと が ―
ずっと 気 に なって い た
偏 執 的 な 犯罪 を 繰り返す わり に 犯人 は 慎重 さ に 欠け て い た
私 だったら 死体 を 隠し て から やり ます
やはり 人目 は 怖い です から
そう 人目 を 気 に し なかった の は 犯人 じゃ ない
( 里香 ( りか ) ) 人 け の ない 夜道 と か も まったく 気 に し ない タイプ な ん です
( 凪 ) 人 け の ない 所 を 怖 がら ず に 行った の は 被害 者 の ほう で ―
犯人 は そう いう 人間 を 探し て い た
私 は 子供 の ころ から とても 怖がり で ね
“ なんで そんな ふう に 思う の か な ? ”
“ なんで 恐怖 なんて もの が ある ん だ ろ う ? ” って …
犯人 が 求め て い た の は 恐怖 を 感じ ない “ 強 さ ” だった ん だ
それ が あんた の 動機 だ ろ ? 来 生 先生
( 真希子 ) フフ …
そこ へ やって き た の が 佐々木 さん と 俺 だ
あんた の 事件 に 喜々と して 首 を 突っ込 ん で くる よう な 人間 は
あんた に とって 最高 の 標的 だった わけ だ
( 真希子 ) さすが ね 凪 ちゃん
でも 惜しい わ
そう いえ ば まだ 言って なかった わ ね
あの 佐々木 政則 ( まさの り ) と か いう 人 の こと を
あれ は 人間 じゃ ない の よ
私 の 同類 と いう か まあ 似 た よう な もの ね
本当 の 名前 は モ ・ マーダー
と ある システム に 所属 し て いる の
システム ?
そして 彼 が その システム に 命じ られ た 任務 は ―
この 私 を 調査 し て 場合 に よって は 殺す こと だった の よ
分かる ?
どう いう こと だ ?
まっ 簡単 に 言う と あの 人 実は 暗殺 者 だった って わけ
もう 何 十 人 も 殺し てる って 話 よ
アハッ まさしく 人 は 見かけ に よら ない わ よ ねえ
まあ 人 じゃ ない ん だ けど
ウソ だ と 思う ?
でも 残念 … 全部 ホント の こと な の よ
あなた は システム に 利用 さ れ て い た って だけ の こと
ついでに それ を さらに 逆手 に 取って い た この 私 に も ね
あなた が しゃし ゃり 出 て き て くれ た おかげ で ―
強敵 を 難なく しとめる こと が でき た わ
どうも ありがとう
佐々木 政則 さん に は ―
私 の 代わり に 事件 の 犯人 に なって もらう わ
( 凪 ) だ から 殺し た って の か
( 真希子 ) やはり この 子 の 弱点 は 大切 な もの に 先 に 死な れる こと …
そう いう こと
彼 の 家 に は 証拠 も そろえ させ て おい た
あなた たち が 私 を 捜し て 留守 に し て い た 間 に ね
でも まあ いまさら 殺人 の 1 つ や 2 つ ―
加わった ところ で どう って こと ない わ よ ねえ ?
ん ん っ
ぐ っ
ねえ あなた
ねえ あなた
( 蹴る 音 )
( 蹴る 音 )
( 蹴る 音 )
自分 が 正義 の 味方 か なんか だ と 思って る ん でしょ う けど ―
実際 は あの 男 に 利用 さ れ て い た だけ だった の よ
実際 は あの 男 に 利用 さ れ て い た だけ だった の よ
( 蹴る 音 )
分かる ?
( 凪 ) う っ …
う っ …
いい ? あなた が 守 ろ う と し て いる もの なんか ―
ただ の 幻想 に すぎ ない の
( 真希子 ) ん っ ! ( 凪 ) あっ
う う っ
( 真希子 ) いい わ いい わ よ 凪 ちゃん
( 蹴る 音 ) ( 真希子 ) フフッ ウフフ …
いい の よ ! それ で いい の !
怖がり なさい !
恐怖 の ない 人間 なんて い ない ん だ から !
この世 に 絶対 的 な もの は 1 つ だけ 恐怖 だけ よ !
( 凪 ) 怖く ない わけ じゃ ない
( 真希子 ) え ? 何で すって ?
ただ 俺 は 不安 だった だけ だ
不安 ? 何 が よ ?
せっかく たどり着 い た のに ―
最後 の 最後 で 失敗 する ん じゃ ない か って
何 に 失敗 する って いう の ?
( 凪 ) ふん っ ( 真希子 ) あ あっ
くっ …
あっ
反撃 に だ よ
( 真希子 の 悲鳴 )
( 真希子 の うめき声 )
絶縁 体 の スーツ だ
正義 の 味方 気取る に は 付き もん だ ろ
( 真希子 ) う わ っ あっ
う っ … あ あっ
う う っ う う …
う う …
あ あっ ! あ あっ
待て ! う っ …
( ブギー ポップ ) いや 驚 い た ね
まさか 自分 で 危機 を 脱する と 思わ なかった
追いつく の が 遅れ た が 今度 は 大丈夫 だった な
だ 誰 だ ! ?
( ブギー ポップ ) ここ から は 僕 に 任せ て くれ
( 真希子 の 荒い 息 )
あっ ああ ? あ あっ …
( おびえる 声 )
( 真希子 ) 怖い …
( ブギー ポップ ) 急激 な 進化 を 遂げ た 肉体 が ―
電気 衝撃 に よって その バランス を 失い ―
悲鳴 を 上げ て いる
( 口笛 : 「 ニュルンベルク の マイスター ジンガー 」 )
( 真希子 ) 真剣 勝負 の 決闘 って ところ かしら
( 真希子 ) あいつ が いる
アハッ … アハ ハハ …
( 真希子 ) あいつ だ あいつ と 戦わ なけ れ ば なら ない ん だ
( 真希子 ) アハハ … いつ で も いい わ よ
どこ から でも かかって らっしゃい !
( ブギー ポップ ) そうかい ( 真希子 ) う わ っ
う っ が っ …
フィア ・ グール
恐怖 喰 ( ぐ ) らい …
それ が 私 の 名前 な の ね
( キョウ ) だ から 言った だ ろ う
( 凪 ) 佐々木 さん おい しっかり しろ
佐々木 さん !
( モ ・ マーダー ) よかった 生き て て …
( 凪 ) 何 か 言い残す こと は ない か ?
( モ ・ マーダー ) 虫 も …
悪く ない … な
( 凪 ) 虫 か
どう いう 意味 だ と 思う ?
( ブギー ポップ ) さ あね
だが 悪く ない と 言って いる ん だ から ―
それ で いい ん だ ろ う
( 凪 ) けど …
( ブギー ポップ ) ほっとけ どうせ 誰 か が 処分 し て くれる さ
恐らく この 件 に は 大きな 裏 が ある
下手 に 手 を 出す より そっち に 任せ た ほう が 賢明 だ
佐々木 さん が 犯人 に なる の か
医者 が 犯人 だ と 世間 に 知れる より は いい だ ろ う
彼女 の 担当 患者 も 偏見 の 目 で 見 られ て しまい かね ない
この 佐々木 さん と やら も ―
ぬれぎぬ ぐらい 喜んで 負って くれる さ
君 の ため に ね
しかし あんた は 何 な ん だ ?
どう し て 来 生 先生 を 倒し たり し た ん だ ?
( ブギー ポップ ) 倒し た の は 君 さ
どう かね
俺 は この 事件 ひどく しくじった 気 が し て なら ない
どれ ひと つ と し て うまく いか なかった
何 が 悪かった の か な
( ブギー ポップ ) 虫 … だ ろ う ね
世界 は 1 つ の 方向 を 向 い て いる わけ じゃ ない
それ こそ 無数 の 虫 の 群れ の よう に ―
てんで バラバラ な 方向 に 進んで いる
それ が 1 つ の 大きな うねり に なる こと も あれ ば ―
今回 の よう に 全て かみ合わ ぬ まま 霧散 する こと も ある
それ だけ さ
だったら 俺 は これ から 何 を すれ ば いい ん だ ろ う か
ん ?
どう すれ ば こんな こと を なく せる ん だ ろ う
( ブギー ポップ ) 君 は これ から も 続ける つもり な の かい ?
悪い か よ
いや …
それ なら 僕ら は 何度 か 別 の 所 で ―
出くわす こと に なる かも しれ ない よ
なあ あんた 何て いう ん だ ?
それ は 名前 の こと かい ?
( 凪 ) 他 に 何 か ある の か ?
いや そう だ ねえ
ブギー ポップ … と でも 名乗って おこ う
変 な 名前 だ な
( ブギー ポップ ) お互いさま だ 霧 間 ( き り ま ) 凪
( ブギー ポップ ) と いう わけ さ
( エコーズ ) なるほど
( エコーズ ) どんな こと でも 簡単 で は ない の です ね
いろいろ な こと が 絡み合って いる
ああ そもそも 黒田 慎 平 ( し ん ぺい ) が 霧 間 凪 を 救 お う と し なけ れ ば ―
マンティコア や 君 が 世 に 放た れる こと も なかった わけ だ
皮肉 です ね
( ブギー ポップ ) この 世界 も そろそろ 限界 だ
エコーズ 君 会 え て よかった よ
( エコーズ ) 私 も です
どんな 運命 の いたずら だった の か 私 に は 分かり ませ ん が ―
霧 間 凪 が それ でも 戦い 続け て いる の は ―
恐らく 出会った 人々 の 思い を 受け継 い で いる から
それ と 同じ ように 私 も この 運命 に 感謝 し ます よ
( ブギー ポップ ) 君 は これ から どう し て ゆく ん だい ?
世界 を 遠く から 見守って いき ます よ
どんな 運命 が 待って いよ う と も
あの 人 の 代わり に
なるほど ね
( エコーズ ) あなた は ? ブギー ポップ
あなた は これ から どう する ん です ?
( ブギー ポップ ) まず は ゆ がん だ この 世界 から ―
戻る 方法 を ゆっくり 考える
( エコーズ ) どこ から 来 た ん です か ?
( ブギー ポップ ) さあ 実は 僕 自身 ―
いつ どこ から 来 た か は 分から ない ん だ
戻る まで
元 の 世界 に 戻ったら やはり 戦い 続ける の です か ?
それ は …
さて と …
♪ ~
~ ♪