Section 019 - Kokoro - Soseki Project
Section 019 - Kokoro - Soseki Project
Sekcja 019 - Projekt Kokoro - Soseki
十
二 人 が 帰る とき 歩き ながら の 沈黙 が 一 丁 も 二 丁 も つづいた 。
じゅう|ふた|じん||かえる||あるき|||ちんもく||ひと|ちょう||ふた|ちょう||
その後 で 突然 先生 が 口 を 利き 出した 。
そのご||とつぜん|せんせい||くち||きき|だした
「 悪い 事 を した 。
わるい|こと||
怒って 出た から 妻 は さぞ 心配 を して いる だろう 。
いかって|でた||つま|||しんぱい||||
My wife would be worried because she got angry.
考える と 女 は 可哀そうな もの です ね 。
かんがえる||おんな||かわいそうな|||
When you think about it, a woman is poor.
私 の 妻 など は 私 より 外 に まるで 頼り に する もの が ない んだ から 」
わたくし||つま|||わたくし||がい|||たより|||||||
先生 の 言葉 は ちょっと そこ で 途切れた が 、 別に 私 の 返事 を 期待 する 様子 も なく 、 すぐ その 続き へ 移って 行った 。
せんせい||ことば|||||とぎれた||べつに|わたくし||へんじ||きたい||ようす|||||つづき||うつって|おこなった
「 そういう と 、 夫 の 方 は いかにも 心 丈夫 の ようで 少し 滑稽だ が 。
||おっと||かた|||こころ|じょうぶ|||すこし|こっけいだ|
"By the way, my husband seems to be very strong and a little humorous.
君 、 私 は 君 の 眼 に どう 映ります か ね 。
きみ|わたくし||きみ||がん|||うつります||
強い 人 に 見えます か 、 弱い 人 に 見えます か 」
つよい|じん||みえます||よわい|じん||みえます|
「 中位 に 見えます 」 と 私 は 答えた 。
ちゅうい||みえます||わたくし||こたえた
この 答え は 先生 に とって 少し 案外 らしかった 。
|こたえ||せんせい|||すこし|あんがい|
先生 は また 口 を 閉じて 、 無言 で 歩き 出した 。
せんせい|||くち||とじて|むごん||あるき|だした
先生 の 宅 へ 帰る に は 私 の 下宿 の つい 傍 を 通る の が 順路 であった 。
せんせい||たく||かえる|||わたくし||げしゅく|||そば||とおる|||じゅんろ|
The route to get back to the teacher's house was to pass by my boarding house.
私 は そこ まで 来て 、 曲り角 で 分 れる の が 先生 に 済まない ような 気 が した 。
わたくし||||きて|まがりかど||ぶん||||せんせい||すまない||き||
「 ついでに お宅 の 前 まで お 伴 しましょう か 」 と いった 。
|おたく||ぜん|||ばん||||
先生 は 忽ち 手 で 私 を 遮った 。
せんせい||たちまち|て||わたくし||さえぎった
The teacher blocked me with his hand.
「 もう 遅い から 早く 帰り たまえ 。
|おそい||はやく|かえり|
私 も 早く 帰って やる んだ から 、 妻君 の ため に 」
わたくし||はやく|かえって||||さいくん|||
I'll be back soon, so for my wife. "
先生 が 最後に 付け加えた 「 妻君 の ため に 」 と いう 言葉 は 妙に その 時 の 私 の 心 を 暖かに した 。
せんせい||さいごに|つけくわえた|さいくん||||||ことば||みょうに||じ||わたくし||こころ||あたたかに|
私 は その 言葉 の ため に 、 帰って から 安心 して 寝る 事 が できた 。
わたくし|||ことば||||かえって||あんしん||ねる|こと||
私 は その後 も 長い 間 この 「 妻君 の ため に 」 と いう 言葉 を 忘れ なかった 。
わたくし||そのご||ながい|あいだ||さいくん||||||ことば||わすれ|
先生 と 奥さん の 間 に 起った 波 瀾 が 、 大した もの で ない 事 は これ でも 解った 。
せんせい||おくさん||あいだ||おこった|なみ|らん||たいした||||こと||||わかった
I still understand that the wave that occurred between the teacher and his wife was not a big deal.
それ が また 滅多に 起る 現象 で なかった 事 も 、 その後 絶えず 出入り を して 来た 私 に は ほぼ 推察 が できた 。
|||めったに|おこる|げんしょう|||こと||そのご|たえず|でいり|||きた|わたくし||||すいさつ||
It was also a rare phenomenon, and I could almost guess that it was a phenomenon that happened to me, who had been constantly coming and going since then.
それどころか 先生 は ある 時 こんな 感想 すら 私 に 洩らした 。
|せんせい|||じ||かんそう||わたくし||もらした
On the contrary, the teacher once gave me such an impression.