100. 片田舎にあった話 - 小川未明
かたいなか に あった はなし|おがわ みめい
a story that happened in a rural area|
100. a story from a rural area - Mimei Ogawa
100. una historia de una zona rural - Mimei Ogawa
100. История из сельской местности - Мимэй Огава
片田舎 に あった 話 - 小川 未明
かたいなか|||はなし|おがわ|みめい
Eine Geschichte auf dem Land - Mimei Ogawa
A story in a countryside-Mimei Ogawa
さびしい 片田舎 に 、 お じいさん と おばあ さん が 住んで いました 。
|かたいなか||||||||すんで|い ました
An old man and an old woman lived in a lonely countryside.
・・
ある 日 、 都 に いる せがれ の ところ から 、 小包 が とどいた のです 。
|ひ|と|||||||こづつみ|||
|||||son||||||arrived|
Eines Tages kam ein Paket von einem Ort in der Stadt an.
One day, a parcel arrived from a place in the city.
・・
「 まあ 、 まあ 、 なに を 送って くれた か 。」
||||おくって||
"Well, well, what did you send?"
と いって 、 二 人 は 、 開けて みました 。
||ふた|じん||あけて|み ました
However, they tried to open it.
・・
中 から 、 肉 の かん詰め と 果物 と 、 もう 一 つ なに か の かん詰め が はいって いました 。
なか||にく||かんづめ||くだもの|||ひと|||||かんづめ|||い ました
||||canned food||||||||||canned food|||
From inside, there was a meat brine, a fruit brine, and another brine of some kind.
・・
「 これ は 、 おいし そうな もの ばかり だ 。」
|||そう な|||
"Das ist alles was lecker aussieht."
と いって 、 二 人 は 喜びました 。
||ふた|じん||よろこび ました
・・
夕飯 の とき に 、 お じいさん は 、・・
ゆうはん||||||
「 どれ 、 せがれ が 送って よこした 、 かん詰め を 開け ようじゃ ない か 。」
|||おくって||かんづめ||あけ|||
||||sent||||||
"Welches hast du mir geschickt, lass uns den Kanister öffnen?"
"Let's open the brine that he sent you, shall we?"
と 、 おばあ さん に いいました 。
||||いい ました
・・
おばあ さん は 、 三 つ の かん詰め を 膳 の ところ へ 持ってきて 、・・
|||みっ|||かんづめ||ぜん||||もってきて
「 どれ に しましょう か 。」
||し ましょう|
と 、 お じいさん に たずねました 。
||||たずね ました
・・
「 そちら の 小形の 赤 いかん は 、 なんだろう な 。」
||こがたの|あか||||
||small|||||
"What's that little red one over there, I wonder?"
と 、 お じいさん は 、 いいました 。
||||いい ました
・・
おばあ さん に も 、 よく 、 それ が わかりません でした 。
|||||||わかり ませ ん|
・・
「 なに か 、 外国 の 文字 が 書いて あります が ……。」
||がいこく||もじ||かいて|あり ます|
"I see some foreign characters on ........"
と いって 、 お じいさん に 手渡しました 。
|||||てわたし ました
・・
お じいさん も 、 手 に 取って みた が 、 やはり わかりません でした 。
|||て||とって||||わかり ませ ん|
・・
「 どんな もの か 、 これ を ひと つ 開けて みよう ……」 と いいました 。
|||||||あけて|||いい ました
・・
たとえ 、 年 を 取って も 、 やはり 、 珍しい もの に は いちばん 興味 を 覚える もの です 。
|とし||とって|||めずらしい|||||きょうみ||おぼえる||
Even as we age, we are still most interested in things that are rare.
・・
お じいさん は 、 その かん の ふた を 開けました 。
||||||||あけ ました
Der Großvater öffnete den Deckel der Dose.
The grandfather opened the lid of the can.
すると 香ばしい かおり が した のです 。
|こうばしい||||
・・
「 粉 じゃ 、 なんの 粉 だろう ……。」
こな|||こな|
What powder? What powder? .......
と 、 頭 を かしげました 。
|あたま||かしげ ました
|||to tilt
I was puzzled.
・・
こんど は 、 お ばあさん が 、 その 赤 いかん を 取って 、 香 い を 嗅いだ のであります 。
||||||あか|||とって|かおり|||かいだ|のであり ます
This time, grandmother took a piece of the red wine and smelled it.
・・
「 お じいさん 、 これ は 、 やはり 麦 を 挽 いた 粉 です よ 。
|||||むぎ||ばん||こな||
|||||||to grind||||
Grandpa, this is still ground barley.
うち の せがれ は 、 子供 の 時分 から 、 不思議な 子 で 、 こうせん が 大好きだった から 、 こんな もの を 送って よこした のです よ 。」
||||こども||じぶん||ふしぎな|こ||||だいすきだった|||||おくって|||
||||||the time|||||light||||||||||
Seit ich ein Kind war, war meine Seele ein mysteriöses Kind, und ich liebte Kosen, also schickte ich ihm so etwas. ""
と 、 おばあ さん は いいました 。
||||いい ました
・・
「 飯 に でも かけて 食べる の か な 。」
めし||||たべる|||
"Maybe they eat it over rice."
・・
「 きっと 、 そう する ので ございます よ 。」
"I'm sure you will.
・・
お じいさん と 、 おばあ さん は 、 その 赤 黒い 粉 を 飯 に かけて 食べました 。
|||||||あか|くろい|こな||めし|||たべ ました
Grandpa and grandma poured the reddish-black powder over the rice and ate it.
しかし 、 その 香 い ほど 、 あまり 、 うまく は ありません 。
||かおり||||||あり ませ ん
However, it is not as good as it smells.
・・
「 砂糖 を まぜ なければ なら ぬだろう 。」
さとう|||||
"I would have to mix the sugar."
と 、 お じいさん が いいました 。
||||いい ました
・・
「 これ は 、 子供 の 食べる もの です ね 。」
||こども||たべる|||
と 、 おばあ さん は いい ながら 、 立って 、 砂糖 を 持ってきました 。
||||||たって|さとう||もってき ました
Grandmother stood up and brought the sugar, saying, "I'm sorry, I'm sorry, I'm sorry.
そして 、 二 人 は 、 飯 に かけて 食べました 。
|ふた|じん||めし|||たべ ました
And they ate it over rice.
・・
夜 に なって 、 二 人 は 、 いつも の ごとく 床 に つきました 。
よ|||ふた|じん|||||とこ||つき ました
At night, they went to bed as usual.
けれど 、 どうした こと か 、 目 が さえて 眠れません でした 。
||||め|||ねむれ ませ ん|
||||||became wide awake||
・・
「 ああ 、 こうせん を 食べた ので 、 胸 が やけた と みえて 眠れ ない 。」
|||たべた||むね|||||ねむれ|
|||||||burned||||
"Oh, I can't sleep because my chest looks like it's burning from all the war plants I've eaten."
と 、 お じいさん が いいます と 、・・
||||いい ます|
「 外国 の もの は 、 体 に 合わ ない から 、 食べる もの で ありません ね 」 と 、 おばあ さん は 、 答えました 。
がいこく||||からだ||あわ|||たべる|||あり ませ ん||||||こたえ ました
She replied, "You shouldn't eat foreign food because it is not fit for your body.
・・
二 人 は 、 やっと 眠り つきました が 、 いろいろの 夢 を 見ました 。
ふた|じん|||ねむり|つき ました|||ゆめ||み ました
・・
お じいさん は 、 まだ 元気で 、 河 へ 釣り に いった 夢 を 見たり 、 おばあ さん は 、 まだ 若くて 、 みんな と 花見 に いった こと など を 夢 に 見ました 。
||||げんきで|かわ||つり|||ゆめ||みたり|||||わかくて|||はなみ||||||ゆめ||み ました
・・
翌日 、 二 人 は 、 あの 赤 いかん の 中 の 粉 を 捨てて しまおう か と 話 を して いました 。
よくじつ|ふた|じん|||あか|||なか||こな||すてて||||はなし|||い ました
そこ へ 、 小包 より おくれて 、 せがれ から 、 手紙 が とどきました 。
||こづつみ|||||てがみ||とどき ました
||||later|||||
Then, a letter from his son arrived later than the parcel.
・・
その 手紙 に よる と 、 赤い かん に は いって いる の は 、 ココア と いう もの である こと が わかりました 。
|てがみ||||あかい||||||||ここあ|||||||わかり ました
|||||||||||||cocoa|||||||
According to the letter, the red kettle contained something called cocoa.
Según la carta, se encontró que lo que había en la lata roja era cacao.
田舎 に 住んで いる お じいさん や 、 おばあ さん に は 、 まだ そうした 飲み物 の ある こと すら 知ら なかった のです 。
いなか||すんで|||||||||||のみもの|||||しら||
The old man and the old woman who lived in the country didn't even know that they had such drinks yet.
・・
「 こんな もの を 、 なんで 私 たち が 知ろう か 。」
||||わたくし|||しろう|
"Warum wissen wir so etwas?"
と いって 、 お じいさん と 、 おばあ さん は 、 顔 を 見合わせて 笑いました 。
||||||||かお||みあわせて|わらい ました
And then the grandfather and grandmother looked at each other and laughed.
・・
―― 一九二六・一一 ――
いちきゅうにろく|いちいち
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