盾 の 勇者 の 成り 上がり 02 Chapter 05 (2)
ビッチ は 馬車 から 騎竜 を 外し 、 その 背中 に 元康 が 乗る 。
「 勝負 は 村 の 外周 を 三 周 ! 村人 が 地面 に 線 を 引いて 即席 の コース を 作る 。
「 ナオフミ 様 、 頑張って ください ね 。 フィーロ も ナオフミ 様 を 頼みました よ ? 「 ああ 」
「 グア ! 「 絶対 に 勝って やる ! 領主 が 俺 達 の 前 に 立って 手 を 高く 上げる 。 あれ を 降ろしたら 始まり の 合図 だ 。
「 それでは …… 始め ! バッ と 降ろさ れた 手 に 合わせて 俺 達 は 飛び出した !
よし ! スタート ダッシュ で は 殆ど 同時 だ 。
ドッドッドッド と 、 フィーロ は 軽快に 走って いく 。
ん ? 基本 速度 じゃ 元康 の 騎竜 より も 遥かに 速い んじゃ ない か ?
こりゃ あ 余裕 だ な 。 振り向いて いられる 余裕 が ある ぞ 。 「 何 して んだ ! ほら ! もっと 速く 走れ ! 元康 が 必死に 騎竜 に 命じて いる 。 騎竜 も フィーロ に 負け じ と 体 を 前 に 出す が 、 それ でも 敵 わ ない 。
スペック 的に は 完全に 有利だ 。
あえて 言う の なら オートバイ 相手 に 原 付 バイク で 争って いる ような 状態 だ 。 もちろん 俺 が オートバイ で 元康 が 原 付 だ 。 それ くらい 速度 に 差 が ある 。
「 グアアアアアアアア ! フィーロ も 余裕 を 見せて 鳴き ながら 走って いく 。 文字通り バイク の ように 風 を 切り 、 辺り の 景色 が 高速で 流れて いる 。 そうして 一 周 目 は 五 馬 身 くらい 引き離して 終了 した 。
「 くっ! ビッチ が 悔し そうに 声 を 上げて いる の が 見える 。
はは は 、 爽快だ な 。 余裕 に も 程 が ある 。
と 、 村 の 外周 で 観衆 の 視界 に 入り 掛かった 頃 。
『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 理 を 今一 度 読み 解き 、 我が 前 に 穴 を 作れ 』
「 アースホール ! 城 の 騎士 が コース アウト し ない か 見張って いる 所 で 、 道 に 穴 を 開け や がった !
「 卑怯 だ ぞ ! プイッ と 騎士 は 顔 を 逸ら して 素知らぬ 顔 を する 。
ズルッ と フィーロ が 転んで 落馬 し かける 。
「 グア !?」
「 チャンス ! 「 何 が チャンス だ 。 ふざけ ん な ! 元康 の 野郎 、 知った こと で は ない と いう ように 走り去って い きや がる 。
しかも だ 。
『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 理 を 今一 度 読み 解き 、 彼 の 者 の 速度 を 上げよ 』
「 ファスト ・ スピード ! 速度 アップ の 援護 魔法 を かけて もらって や がる 。 しかも フィーロ が こけた 穴 は 、 証拠 隠滅 と ばかり に 魔法 で 隠し や がった 。 どこ まで 姑息な んだ よ 、 この 国 の 連中 は !
「 フィーロ 、 あんな 奴 に 負けて たまる か ! いく ぞ ! 「 グアアアアアアアアアアア ! 俺 の 言葉 に フィーロ は ぐ ぐ ぐっと 立ち上がった 。 やがて まだ 行ける と 口 に する が 如く 闘志 を 燃やし 、 先ほど より も 遥かに 速い 速度 で 走り出した 。
あっという間 に 元康 の 横 を 通り過ぎる 。
「 何 !?」
卑怯 な 事 を さ れたって 、 負けて たまる か ! 俺 の 想い に 応える ように フィーロ は 力強く 走り 、 援護 魔法 を 受けた 騎竜 の 速度 を ものともせず 二 周 目 に 入り 、 どうにか 遅れ を 取り戻す 。
丁度 、 村人 共 が 見える 部分 で 抗議 の 意思 を 示し ながら 俺 は 騎士 を 指差す 。
異変 を 察知 した 村人 が 回り込み を 始めた 。
『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 理 を 今一 度 読み 解き 、 彼 の 者 の 速度 を 落とせ ! 「 ファスト ・ スピード ダウン ! 「 グア !?」
目に見えて フィーロ の 速度 が 下がる 。
「 いい加減に しろ よ 、 お前 ! 騎士 を 含めて 関係 者 が そっぽ を 向く 。
元康 が 遅れた 俺 達 に 追いついて 通り過ぎて いく 。
幾ら なんでも 気付いて んだ ろ ? あの 馬鹿 。 どこ まで 卑怯 な んだ よ !
くそ …… このまま やられっぱなし と いう の は 非常に 腹 が 立つ 。 どうにか する 手段 は ない か ?
「 グアアアア ! さすが に フィーロ も 腹 が 立った の か 怒り を 露 わに して 深く 頭 を 下げ 、 前傾 姿勢 で 翼 を 広げる 。
お ! 速度 が 上がった 。 その代わり に 曲がる の が 難しく なった 。 カーブ で 端 の 方 へ 寄って しまう 。
だが 、 俺 の ゲーム 経験 を 侮って もらって は 困る な ! バイク 系 の ゲーム の 体重 を 掛けて 曲がる と いう の を 再現 して いる んだ よ !
俺 は フィーロ の コーナリング を アシスト する ため 、 コーナー の 内側 に 向けて 全体 重 を 掛ける 。 フィーロ の 横っ腹 に ぶら下がって いる ように 見える だろう な 。 だが 、 俺 の お陰 で フィーロ は 速度 を 維持 した まま 曲がる こと に 成功 した 。
よし ! 三 周 目 に 入る と 同時に 元康 の 後ろ に 追いついた 。
後 は 最 高速で 追い抜く だけ 。
騎士 の 奴 、 村人 に 見張られて 妨害 が でき そうに ない し 、 これ で 勝つ こと が でき そう ── と いう ところ で 騎士 が 村人 に 剣 を 抜いて 、 逆 切れ して 追い散らした 。 もはや 支離滅裂だ な 。 また 騎士 が 妨害 を しよう と 魔法 を 唱え 始めて いる 。
そっち が その 気 なら こっち に も 考え が ある 。
「 エアストシールド ! 騎士 が 先ほど より も 大きな 穴 を 作りだした ので 、 その 場所 に 俺 は 盾 を 召喚 した 。
「 行け ! フィーロ 、 そして その 速 さ を 見せつける んだ ! 「 グアアアアアアアアアアアアアア ! よし 、 余裕 だ な 。 その ついで に ──。
「 フィーロ ! 「 グア ! 若干 コース アウト して 妨害 した 騎士 の 前 に 着地 し 、 俺 は 騎士 を 睨みつける 。
「 う 、 あ ……」
フィーロ も 妨害 に 怒り を 露 わに して 騎士 を 睨む 。 騎士 の 目 に は 、 さながら 俺 が 世紀 末 覇者 に 見えた かも しれ ん な 。
ズル を した 騎士 を フィーロ の 後ろ足 で ゲシっと 蹴り 飛ばして 昏倒 さ せる 。 「 ゴー ! フィーロ が 高らかに 鳴き 、 俺 達 は 圧勝 と いう 形 で ゴール した 。
「 ま 、 負けた ……」「 卑怯 よ ! 不正 よ ! やり 直し を 要求 する わ ! 「 卑怯 ? どっち が だ よ 。 お前 の 指示 じゃ ない の か ? 俺 は 昏倒 さ せた 騎士 を 指差して 告げる 。
「 何の 事 よ ? 「 そこ に いる 奴 が レース 中 に 妨害 工作 を して いやがった んだ よ 」
「 そう だった の か !?」
元康 が 知ら なかった か の よう に 今更 に なって 言い放つ 。
チャンス ! って 言った の は 忘れて ない ぞ !
「 そんな 事 知ら ない わ 。 彼等 が 勝手に やった こと だ もの 。 そんな 事 より も 不正 を 罰し なきゃ ! 自分 達 が 負けたら ズルって か ? ふざけ ん な 。
「…… とても そう は 思えません でした 」 領主 の 言葉 に 、 村人 達 が 揃って 頷く 。 「 盾 の 勇者 様 の 証言 通り 、 コース 上 に 魔法 の 形跡 が ある ぜ ? しかも 俺 達 を 騎士 が 追い払おう と した から 証言 も バッチリ だ 」
そう 、 騎士 を 蹴り 飛ばした の は 証拠 隠滅 を 妨害 する ため だ 。 派手に 吹き飛ばした から 、 すぐに 村人 が 駆けつけて きた 。 コース 上 に ある 大きな 穴 が あれば 誰 だって 犯人 が わかる はずだ 。
「 た 、 盾 の 勇者 が 証拠 を でっちあげた の よ ! 「 それ は ない わ ね 」
ん ? 魔法 屋 が 人ごみ から 現れて 注意 する 。 そうい や この 村 に 孫 が いる んだった か 。
「 盾 の 勇者 様 の 魔法 適性 は 回復 と 援護 よ ? 一緒に いる 子 だって 光 と 闇 の 魔法 系 だ し 、 土 を 弄る 魔法 は でき ない わ ね 」
「 たかが 魔法 屋 が 何 を 偉 そうに ! と 、 ビッチ が 言った ところ で 、 忍者 集団 が 取り囲む 。
「…… どうやら 槍 の 勇者 の 支持 者 が 不正 を 行った の は 明白 。 ご 同行 を 願いましょう 」 元康 が ビッチ を 宥 め ながら 言い放つ 。 「 今回 は 俺 達 の 負け だ 。 約束 通り この 村 を 領地 に する の は 無し だ な 」
「 ああ 。 さっさと 出て いけ 」
「 次 は 負け ない 」
「 負けっぱなし が 言う な 。 卑怯 者 ! 「 俺 は 卑怯 者 じゃ ない ! 「 槍 の 勇者 殿 、 喧嘩 は お やめ ください 。 盾 の 勇者 殿 も 」
忍者 集団 に 諭さ れ 、 元康 達 は 去って いく 。
いや 、 騎竜 が 置いて いかれて いる 。 「 盾 に 負けた 奴 なんて いら ない 。 捨てて いき なさい 」
キュウ …… と 、 悲しげな 声 を 上げて 騎竜 は その 場 に 放置 さ れた 。
なんか 、 可哀想だ な 。 別に コイツ が 悪い わけじゃ ない だろう に 。
すると そこ に 村 の 連中 が 騎竜 を 宥めて 手綱 を 持つ 。
「 一応 、 村 で 預かる と しましょう 」 「 そう です ね 」 負けた 騎竜 は トボトボ と 村 の 連中 に 連れて いか れた 。 「 さて 、 勝った 報酬 を 寄越せ 」
「 ナオフミ 様 、 いきなり です か ? 「 盾 の 勇者 様 は この 村 の 恩人 です 。 あんな 重税 を 掛けられれば この 村 は 破滅 して しまう ところ でした 。 しかし 、 数 日 待って くださいません か ? その他 に 金銭 を お 渡し します ので 」 「 復興 に 金 を 使って いる んじゃ ない の か ? 「…… 痛い ところ を 突きます ね 」 「 復興 費 を 削って 渡さ れたら 意味 が ない だろう 。 そっち は 気持ち だけ 受け取る 」
変な 因縁 を つけられたら 困る 。 タダ で さえ 悪 名 が 轟 とどろいて いる んだ 。 この 村 から 金 を 巻き上げた と か 言わ れたら たまった もの じゃ ない 。
「 では 、 確実に 便利な 物 を お 渡し する ので …… 勇者 様 は 行商 に 興味 は ありません かな ? 「 行商 ? 「 ええ 、 村 から 村 、 町 から 町 へ 商品 を 売り 歩く 商売 です 。 勇者 様 は 薬 や 素材 を 売って 金銭 を 稼いで おら れる ご 様子 。 興味 が お あり なら その 類 で お 手伝い できる か と 思います 」 「 ふむ 」 行商 か 。 つまり 薬 を 買い取って もらう ので は なく 、 売れる と いう 利点 が ある の か 。
これ は 考え なければ いけない な 。
今 まで は 生産 者 側 であった が 、 販売 者 側 に も 回れる ように なる 。 これ は 大きな 利点 だろう 。
「 幸いに も 盾 の 勇者 様 に は 俊足 で 健脚 の フィロリアル が おります 。 馬車 と 、 行商 を する 上 で 役 に 立つ 商業 通行 手形 を 進呈 致します 」 「 商業 通行 手形 ? 「 はい 。 この 国 で は 行商 を する 時 、 各 々 の 村 、 町 に 着いたら 一定 の 金銭 を その 地域 の 領主 に 支払わ ねば なりません 。 そこ で 私 の 判 を 押した 商業 通行 手形 の 出番 です 。 これ さえ あれば 基本 的に は 金銭 を 払う 必要 は なくなります 。 どうか お 役 に 立てて ください 」
考えて みれば 、 ここ は メルロマルク 国 の 近く に ある 農村 だ 。 交通 の 便 も 良い ので 、 ここ の 領主 を して いる と いう の は それ だけ 権力 や 威厳 も 必要 と なる 。 俺 が 波 で 被害 を 最小 限 に 抑えた の は リユート 村 の 連中 の 耳 に 入って いる 。 悪 名 が 響き 、 王様 に 睨まれて も 村人 の ため に 苦渋 の 決断 を 背負わ さ れた 。 横暴な 国 から の 暴挙 を 俺 が 撥ね除けた わけだ から 協力 的に も なって くれる と いう こと か 。
「…… アナタ の 悪 名 が 商売 の 障害 に なら ない ように と の 配慮 です 。 これ で 金銭 を 稼ぎ やすく なる か と 」
善意 的に 受け取って くれて いる 。 だから 俺 は 素直に 感謝 する 。
「 感謝 する 。 使わ せて もらう 」
確かに これ は 相当 便利な 報酬 だ 。 しかも 近々 フィーロ に 馬車 を 作って くれる らしい 。
良かった な 。 荷車 じゃ なくて 。
「 ま 、 とりあえず は 復興 作業 に 戻る か 」
「 はい 」
村 の 連中 は ラフタリア と 一緒に 頷き 、 復興 作業 に 戻って いった 。
「 グア ♪」
自分 用 の 荷車 を 用意 されて フィーロ は 機嫌 が 良い 。 「 よし ! 今日 は 森 へ 出発 だ ! 「 はい ! 「 グア ! 俺 が 行く 方向 を 指差す と 、 フィーロ は 元気 良く 荷車 を 引き出した 。
ゴトンゴトン !
と 、 の ん 気 な ……。
ゴトンゴトンゴトン ! ガラガラガラガラガラ !
徐々に 車輪 から 大きな 音 を 響かせ 、 景色 が 高速で 通り過ぎて いく 。
「 速い ! 速い ! スピード 落とせ ! 「 グア ……」
速度 を 落とし 、 フィーロ は トコトコ と 不満 そうに 鳴き ながら 歩く 。
「 なんか 気持ち 悪く なって きました ……」 ラフタリア が 乗り物酔い を した の か 、 ぐったり して 荷車 で 横 に なって いる 。 「 大丈夫 か ? 「 ええ …… でも 、 あんまり 揺らさ ないで ……」
「 そう か 、 ラフタリア は 乗り物酔い を する んだ な 」
「…… みたいです 。 ナオフミ 様 は 大丈夫な のです か ? 「 俺 は 酔った こと が ない んだ よ なぁ ……」
酒 も 然ること ながら 乗り物酔い と も 無縁だ 。
小学生 の 頃 、 学校 の 遠足 で バス に 乗った 時 、 リュック に 入れた 漫画 と ライトノベル を 読んで いたら 、 隣 の 座席 の 奴 が 尽く 気持ち 悪い と 俺 の 方 を 見 ながら 言って 、 席 替え を さ せられた 覚え が ある 。 その他 、 親戚 に 会い に 行く ため に 丸一 日 の 船旅 で 家族 全員 が 船酔い で ダウン する 中 、 船 内 で 携帯 ゲーム を やって いた 覚え も ある 。
「 まあ ゆっくり と して いろ 。 フィーロ と 俺 が 目的 地 まで 運んで やる から 」
「 お 言葉 に 甘えて 休ま せて もらいます ……」 「 グアアアアアアアア ! 「 あの …… もっと ゆっくり 走って ください 」
ラフタリア の 声 が 耳 に 入ら ない くらい 晴れやかな 様子 で フィーロ は 走って いく のだった 。
その後 、 ラフタリア は 道中 で リバース し 、 森 へ 辿 たどり着いた 頃 に は 限界 を 迎えて いた 。
「 う …… う う ……」
青い 顔 を して 唸る ラフタリア に やり すぎた と 反省 する 。
「 すま ん 」
「 グア ……」
それ は フィーロ も 同じ ようで 、 申し訳な さ そうに 意気消沈 して いる 。
「 だ 、 大丈夫です …… よ 」
「 とても そう は 見え ない 。 どこ か で 休める と 良い んだ が 」
「 あ 、 盾 の 勇者 様 です ね 」
森 の 近く に は 小屋 が あり 、 そこ から 木 こり らしき 村人 が 出て くる 。
「 ああ 、 村 の 連中 に 頼まれて な 。 木材 を 貰い に きた のだ が 」
「 あの …… お 連れ の 方 は 大丈夫です か ? 「 たぶん 、 大丈夫じゃ ない と 思う 。 休ま せて おきたい のだ が 良い 場所 は ない か ? 「 では こちら に 寝床 が ある ので 、 寝かせましょう 」 木 こり が 案内 する 小屋 の 方 へ 向かって 、 俺 は ラフタリア に 肩 を 貸して 歩き 、 ベッド に 寝か せた 。 「 フィーロ が 戦える 範囲 の 敵 を 軽く 相手 に する 程度 に して 、 今日 は 荷物 運び に 従事 する と しよう 」
ラフタリア は 乗り物 に 弱い みたいだ し 、 しばらく 慣れる まで は 荷車 で 爆走 する の は やめよう 。
「 と いう わけだ 。 申し訳ない が 荷車 に 材木 を 載せて おいて くれ 。 しばらく したら もう 一 度 来る 」
「 あ 、 はい 」
フィーロ は 荷車 を 外されて 、 小屋 の 外 から こちら の 様子 を 眺めて いた 。 「 じゃあ 行く ぞ 」
「 グア ! 元康 を アレ だけ 蹴り 飛ばした んだ 。 攻撃 力 は 相当 期待 できる 。
軽く 森 の 中 を 回って こよう 。
森 の 中 に 入る と 意外に も 魔物 と は 遭遇 し なかった 。 静かな 森 の 中 を フィーロ と 一緒に 歩いて 回る 。 森林 浴 と は 言う けれど 、 なんとなく 空気 が 澄んで いる ような 気 が した 。
そう いえば この 世界 に 来て 、 こんな ゆっくり と 景色 を 見て 回る ような 真似 を した 覚え が ない 。
原因 は 何 だろう 。 あの 元康 が 苦痛 に 歪む 顔 を 見たら 全て が 吹き飛んで しまった 。
…… 違う 。
ラフタリア が 信じて くれた から だ と 思う 。
その ラフタリア が 乗り物酔い で ここ に いない 。 なんとなく 寂しい 。
考えて みれば まだ 半月 、 三 週間 くらい しか 一緒に いない のに 、 もう 一緒に いる の が 当たり前の ような 関係 に なって いる 。 小さかった 頃 の ラフタリア が もう 随分 前 の ように さえ 感じる 。
ラフタリア の 親 代わり に なる と 決めた は 良い が 、 何 を すれば 良い だろう 。 もちろん 波 の 事 も ある 。 まだ 一 ヶ月 以上 先 だ が …… どうした もの か 。
「 乗り物酔い に 効く 薬 と か あれば 良い んだ けど な 」