試作 品 しさく|しな

エム 博士 の 研究 所 は 、 静かな 林 の なか に あった 。 |はかせ||けんきゅう|しょ||しずかな|りん|||| 博士 は そこ に ひとり で 住んで いる 。 はかせ||||||すんで| 町 から 遠く は なれて いる ので 、 だれ も めったに たずねて こない 。 まち||とおく|||||||||

しかし 、 ある 日 、 あまり人相 の よくない 男 が やってきた 。 ||ひ|あまり にんそう||よく ない|おとこ|| ||||||||came

「 どなた でしょう か 」

と 博士 が 聞く と 、 男 は ポケット から 拳銃 を 出し 、 それ を つきつけ ながら 言った 。 |はかせ||きく||おとこ||ぽけっと||けんじゅう||だし|||||いった

「 強盗 だ 。 ごうとう| おとなしく 金 を 出せ 」 |きむ||だせ

「 とんでもない 。 わたし は 貧乏な 、 ただ の 学者 だ 。 ||びんぼうな|||がくしゃ| もっとも 、 長い あいだ の 研究 が やっと 完成 した から 、 まもなく 景気 が よく なる だろう 。 |ながい|||けんきゅう|||かんせい||||けいき|||| most||||||||||||||| しかし 、 いま の ところ は 、 金 などない 」 |||||きむ|など ない

こう エム 博士 は 答えた が 、 そんな こと で 、 強盗 は 引きさがり は しない 。 ||はかせ||こたえた|||||ごうとう||ひきさがり||し ない |||||||||||retreat||will not

「 では 、 その 研究 の 試作 品 を よこせ 。 ||けんきゅう||しさく|しな|| ||||prototype||| どこ か の 会社 に 持ちこんだら 、 高い 金 で 買いとって くれる だろう 」 |||かいしゃ||もちこんだら|たかい|きむ||かいとって||

「 だめだ 。 渡さない 。 わたさ ない ひと の 研究 を 横取り しよう と いう の は 、 よくない 精神 だ ぞ 」 ||けんきゅう||よこどり||||||よく ない|せいしん||

「 それ なら 、 ひとり で 探し出して み せる 」 ||||さがしだして|| that||||||

強盗 は 、 逃げ出さない よう に と 、 博士 の 手 を 引っぱって 、 研究 所 の なか を 調べ まわった 。 ごうとう||にげださ ない||||はかせ||て||ひっぱって|けんきゅう|しょ||||しらべ| robber||||||||||||||||| しかし 、 試作 品 らしい もの は 、 どこ に も 見あたらない 。 |しさく|しな|||||||みあたら ない

最後に 小さな 地下 室 を のぞいた 。 さいごに|ちいさな|ちか|しつ|| なか は がらんと して いて 、 机 と イス が 置いて ある だけ だった 。 |||||つくえ||いす||おいて||| 強盗 は 博士 に 言った 。 ごうとう||はかせ||いった

「 どうしても 渡さない 気 なら 、 ただ で は すまない ぞ 」 |わたさ ない|き||||||

「 拳銃 の 引金 を ひく つもりな の か 」 けんじゅう||ひきがね|||||

「 いや 、 殺して しまって は 、 品物 が 手 に 入らない 。 |ころして|||しなもの||て||はいら ない いやで も 渡す 気 に なる 方法 を 、 考えついた のだ 。 ||わたす|き|||ほうほう||かんがえついた| さあ 、 この 地下 室 に 入れ 」 ||ちか|しつ||いれ

「 いったい 、 わたし を どう しよう と いう のだ 」

「 あなた を 、 この なか に とじこめる 。 おれ は 、 入口 で がんばる こと に する 。 ||いりぐち||||| その うち 、 空腹 の ため 悲鳴 を あげる だろう 。 ||くうふく|||ひめい||| 品物 を 渡す 気 に なったら 、 すぐに 出して やる 」 しなもの||わたす|き||||だして|

「 ひどい こと を 思いついた な 。 |||おもいついた| だが 、 そんな 目 に あわされて も 、 決して 渡さない ぞ 」 ||め||||けっして|わたさ ない| ||||||never||

博士 は あくまで ことわり 、 ついに 地下 室 に 押しこまれて しまった 。 はかせ|||||ちか|しつ||おしこまれて|

かくして 、 一 日 が たった 。 |ひと|ひ|| 強盗 は 入口 の 戸 の そと から 、 声 を かけた 。 ごうとう||いりぐち||と||||こえ|| ||entrance||||||||

「 さぞ 、 おなか が すいた こと だろう 。 |stomach|||| いいかげん で 、 あきらめたら どう だ 。 こっち は 食料 が ある から 、 当分 は 大丈夫だ 」 ||しょくりょう||||とうぶん||だいじょうぶだ

「 いや 、 わたし は 絶対 に 負けない ぞ 」 |||ぜったい||まけ ない|

「 やせがまん を する な よ 」

しかし 、 その 次の 日 も 、 その また 次の 日 も 同じ こと だった 。 ||つぎの|ひ||||つぎの|ひ||おなじ|| 声 を かける と 、 なか で 博士 が 元気に 答える 。 こえ||||||はかせ||げんきに|こたえる 時に は 、 のんきに 歌う 声 も 聞こえて くる 。 ときに|||うたう|こえ||きこえて|

一 週間 たち 、 十 日 が 過ぎた 。 ひと|しゅうかん||じゅう|ひ||すぎた

まだ 博士 は 降参 しない 。 |はかせ||こうさん|し ない そのころ に なる と 、 強盗 の ほう が 弱って きた 。 ||||ごうとう||||よわって| 手持ち の 食料 も なくなり かけて きた し 、 戸 の そと で がんばって いる の に も 、 あきた 。 てもち||しょくりょう||||||と||||||||| それ に 、 なにも 食べ ないで いる はずな のに 、 あいかわらず 元気な 博士 が 、 うすきみ悪く 思えて きた のだ 。 |||たべ||||||げんきな|はかせ||うすきみわるく|おもえて||

「 もう あきらめた 。 |gave up いつまで いて も 、 きり が な さ そうだ 。 |||||||そう だ 引きあげる こと に する よ 」 ひきあげる||||

強盗 は 、 すごすご と 帰って いった 。 ごうとう||||かえって| エム 博士 は 地下 室 から 出て きて 、 ほっと ため息 を ついた 。 |はかせ||ちか|しつ||でて|||ためいき|| それ から 、 こう つぶやいた 。

「 やれやれ 、 やっと 助かった 。 ||たすかった 試作 品 が 地下 室 に あった と は 、 強盗 も 気 が つか なかった ようだ 。 しさく|しな||ちか|しつ|||||ごうとう||き|||| わたし の 完成 した 研究 と は 、 食べる こと の できる 机 や イス を 作る こと だった のだ 。 ||かんせい||けんきゅう|||たべる||||つくえ||いす||つくる||| おかげ で 、 その 作用 を 自分 で たしかめる こと に なって しまった 。 |||さよう||じぶん|||||| 栄養 の 点 は いい が 、 もう 少し 味 を よく する 必要 も ある な 。 えいよう||てん|||||すこし|あじ||||ひつよう||| きっと 将来 は 、 宇宙 船 内 や 惑星 基地 で の 机 や イス に は 、 すべて これ が 使わ れる よう に なる だろう 。 |しょうらい||うちゅう|せん|うち||わくせい|きち|||つくえ||いす||||||つかわ||||| ||||||||||||||||everything|||||||| そして 、 万一 の 場合 に は 、 大いに 役 に 立つ に ちがいない 」 |まんいち||ばあい|||おおいに|やく||たつ|| |||||||||||certainly