薬 の ききめ くすり||

お 金持ち の アール 氏 の ところ へ 、 ひと り の 男 が たずねて きた 。 |かねもち||あーる|うじ|||||||おとこ||| |rich person|||||||||||||

「 どなた です 。 そして 、 ご 用件 は な ん です か 」 ||ようけん|||||

アール 氏 が 聞く と 、 男 は 答えた 。 あーる|うじ||きく||おとこ||こたえた

「 わたし は 発明 家 です 。 ||はつめい|いえ| じつは 研究 を 重ねた あげく 、 すばらしい 薬 を 、 やっと 完成 しました 。 |けんきゅう||かさねた|||くすり|||かんせい| |research|||after||||finally|| あなた に 応援 して いただいて 、 どんどん 作って 売れば 、 おたがいに 大もうけ が できる と 思います 。 ||おうえん||||つくって|うれば||おおもうけ||||おもいます ||||||||each other||||| いかがな もの でしょう 」

「 ああ 、 有利な 事業 なら 、 資金 を 出して も いい 。 |ゆうりな|じぎょう||しきん||だして|| しかし 、 いったい 、 どんな 薬 な のだ 」 |||くすり||

男 は 錠剤 の 入った ビン を 取り出し 、 そば の 机 の 上 に 置き ながら 言った 。 おとこ||じょうざい||はいった|||とりだし|||つくえ||うえ||おき||いった ||tablet||||||||||||||

「 忘れて しまった こと を 、 思い出す 薬 です 」 わすれて||||おもいだす|くすり|

「 なるほど 、 おもしろい 作用 だ な 。 ||さよう|| それ で 、 使い 方 は どう な のだ 」 ||つかい|かた||||

「 簡単 です 。 かんたん| 飲めば いい の です 。 のめば||| この 一 錠 を 飲めば 、 きのう の こと を 、 すっかり 思い出します 。 |ひと|じょう||のめば||||||おもいだします |one||||||||| また 、 二 錠 なら おととい の こと 、 三 錠 なら 三 日 前 の こと 、 と いった ぐあい です 」 |ふた|じょう|||||みっ|じょう||みっ|ひ|ぜん||||||

アール 氏 は ビン を ながめ 、 質問 した 。 あーる|うじ|||||しつもん|

「 いろいろな 大き さ の 錠剤 が ある ようだ が 、 それ は なぜ だ 」 |おおき|||じょうざい||||||||

「 成分 は 同じ です が 、 量 が 多く なって います 。 せいぶん||おなじ|||りょう||おおく|| component||||||||| 中型の は 一 錠 で ひと 月 前 の こと を 、 大型の は 、 一 錠 を 飲めば 一 年 前 の こと を 思い出す の です 。 ちゅうがたの||ひと|じょう|||つき|ぜん||||おおがたの||ひと|じょう||のめば|ひと|とし|ぜん||||おもいだす|| だから 、 うまく 組 合わせて 飲めば 、 過ぎさった どの 日 の こと でも 、 思い出せる わけ です 」 ||くみ|あわせて|のめば|すぎさった||ひ||||おもいだせる||

「 しかし 、 どんな 役 に 立つ のだろう 」 ||やく||たつ|

「 あらゆる 方面 で 、 役 に 立ちます 。 |ほうめん||やく||たちます 忘れっぽく なった 老人 でも 、 これ が あれば 若い人 に 負け ず に 働けます 。 わすれっぽく||ろうじん|||||わかい じん||まけ|||はたらけます また 、 メモ や 日記 を つける ひま もない ほど いそがしい人 も 、 安心 して 仕事 に 熱中 できる こと でしょう 」 |めも||にっき||||も ない||いそがしい じん||あんしん||しごと||ねっちゅう|||

「 世の中 の ため に も なり そうだ な 。 よのなか||||||そう だ| だけど 、 これ に 害 は ない だろう な 」 |||がい|||| |||harm||||

「 もちろん 、 その 点 は 大丈夫 です 。 ||てん||だいじょうぶ| わたし も 使って みました し 、 動物 を 使って の 実験 も 、 何度 も やって たしかめました 」 男 は 書類 を 出して くわしく 説明 しよう と した が 、 アール 氏 は 手 を 振った 。 ||つかって|||どうぶつ||つかって||じっけん||なんど||||おとこ||しょるい||だして||せつめい|||||あーる|うじ||て||ふった |||||||||||several times||||||||||||||||||||

「 たしかに 無害 なら 、 それ で いい 。 |むがい|||| と なる と 、 問題 は 、 はたして 効果 が ある か どう か だ 。 |||もんだい|||こうか|||||| いま 、 自分 で 飲んで 、 ためして みる こと に する 。 |じぶん||のんで||||| それ で 確実 と わかれば 、 資金 を 出す こと に しよう 」 ||かくじつ|||しきん||だす|||

「 何 錠 ぐらい 、 お 飲み に なります か 」 なん|じょう|||のみ|||

「 たくさん くれ 。十 歳 ぐらい だった ころ の こと を 、 思い出して みたい のだ 。 ||じゅう|さい|||||||おもいだして|| そんな 昔 の こと でも 、 効果 は ある のだろう な 」 |むかし||||こうか||||

「 まだ 、 わたし は やって みません が 、 ある はず です 。 それ より も 以前 の 、 うまれ たて の ころ と か 、 うまれる 前 と なる と むり です が 」 |||いぜん|||||||||ぜん|||||| |than|||||||||||||||||

「 では 、 やって みる こと に しよう 」

アール 氏 は 錠剤 の 数 を かぞえ 、 コップ の 水 で 、 つぎつぎ に 飲みこんだ 。 あーる|うじ||じょうざい||すう|||こっぷ||すい||||のみこんだ |||||number||||||||| そして 、 目 を とじて イス に かけて いた が 、 やがて 目 を 開いた 。 |め|||いす||||||め||あいた 待ちかまえて いた 男 は 、 身 を 乗り出して 聞いた 。 まちかまえて||おとこ||み||のりだして|きいた

「 いかがでした か 」

「 うむ 。 um すばらしい ききめ だ 。 子供 の ころ の こと を 、 ありあり と 思い出せた 。 こども||||||||おもいだせた とても なつかしい 気分 を 、 味わえた 」 ||きぶん||あじわえた

「 それ は 、 けっこうでした 。 では 、 資金 を 出して いただける わけ です ね 」 |しきん||だして||||

「 いや 。 その つもり だった が 、 気 が 変った 」 ||||き||かわった

アール 氏 は 首 を 振り 、 男 は ふしぎ そうに 文句 を 言った 。 あーる|うじ||くび||ふり|おとこ|||そう に|もんく||いった

「 それでは 、 お 約束 と ちがう では ありません か 。 ||やくそく||||| ||||different||| なぜ です 」

「 知り たければ 、 いま と 同じ 量 の 薬 を 飲んで みたら いい 。 しり||||おなじ|りょう||くすり||のんで|| |if you want|||||||||| すっかり 忘れて いた が 、 子供 の ころ 、 近所 に いじわるな 子 が 住んで いて 、 わたし は よく いじめられた 。 |わすれて|||こども|||きんじょ|||こ||すんで||||| こんな やつ と は 、 二度と つきあう まい と 決心 した もの だった 。 ||||にどと||||けっしん||| そい つと は ……」

こう 言い ながら 、 アール 氏 は 前 に いる 男 の 顔 を 指さした のだ 。 |いい||あーる|うじ||ぜん|||おとこ||かお||ゆびさした|