43. 王さまと靴屋 - 新美南吉
おうさま と くつ や|にいみ みなみ きち
the king and the shoemaker|Minakami Nankyoku
43. Der König und der Schuhmacher - Nankichi Niimi
43. the King and the Shoemaker - NANKICHI NIIMI
43. el rey y el zapatero - Nankichi Niimi
43. Le roi et le cordonnier - Nankichi Niimi
43. король и сапожник - Нанкити Ниими
43. 国王与鞋匠 - 新见南吉
43. 國王與鞋匠 - 新見南吉
王さま と 靴 屋 - 新美 南 吉
おうさま||くつ|や|にいみ|みなみ|きち
king||shoes||||
The King and the Shoemaker - Niimi Minamikichi
ある 日 、 王さま は こじき の ような ようす を して 、 ひと り で 町 へ やって ゆきました 。
|ひ|おうさま|||||||||||まち|||ゆき ました
||||jester|||appearance|||person|||town|||went
One day the King, acting like a beggar, went to town alone.
町 に は 小さな 靴 屋 が いっけん あって 、 お じいさん が せっせと 靴 を つくって おりました 。
まち|||ちいさな|くつ|や||||||||くつ|||おり ました
town|||||||one house|||||diligently|||making shoes|was working
王さま は 靴 屋 の 店 に は いって 、
おうさま||くつ|や||てん|||
「 これ これ 、 じい や 、 その ほう は なんという 名 まえ か 。」
||||||||な||
||grandfather|||||what|name||
と たずねました 。
|たずね ました
|asked
靴 屋 の じいさん は 、 その かた が 王さま である と は 知りません でした ので 、
くつ|や|||||||おうさま||||しり ませ ん||
|||grandfather|||person||||||||
「 ひと にもの を きく なら 、 もっと ていねいに いう もの だ よ 。」
person|someone|||||politely||||
"If you ask someone about something, you should say it more politely."
と 、 つっけんどんに いって 、 とんとん と 仕事 を して いました 。
|||||しごと|||い ました
|bluntly||lightly|||||
He said this bluntly and continued to work steadily.
「 これ 、 名 まえ は なんと 申す ぞ 。」
|な||||もうす|
||name|||say|emphatic particle
"What is this called?"
と また 王さま は たずねました 。
||おうさま||たずね ました
||||asked
And then the king asked.
「 ひと に くち を きく に は 、 もっと ていねいに いう もの だ と いう のに 。」
||||||||politely||||||
It should be more polite to speak to people.
と じいさん は また 、 ぶっきらぼうに いって 、 仕事 を し つづけました 。
||||||しごと|||つづけ ました
||||gruffly|||||continued working
Then the old man, again bluntly, continued to work.
王さま は 、 なるほど じぶん が まちがって いた 、 と 思って 、 こんど は やさしく 、
おうさま||||||||おもって|||
|||||mistakenly||||||gently
The king thought, 'I see, I was wrong,' and this time kindly asked,
「 おまえ の 名 まえ を 教えて おくれ 。」
||な|||おしえて|
‘Please tell me your name.’
と たのみました 。
|たのみ ました
|asked
he requested.
「 わし の 名 まえ は 、 マギステル だ 。」
||な||||
|||||Magister|
My name is Magister.
と じいさん は 、 やっと 名 まえ を 教えました 。
||||な|||おしえ ました
The old man finally told me his name.
そこ で 王さま は 、
||おうさま|
Then the king said,
「 マギステル の じいさん 、 ないしょ の はなし だ が 、 おまえ は この 国 の 王さま は ばか やろう だ と おもわ ない か 。」
|||||||||||くに||おうさま||||||||
Magister|||secret||||||||||||fool||||think||
The old man Magister asked, "It's a secret, but don't you think the king of this country is an idiot?"
と たずねました 。
|たずね ました
He asked.
「 おもわ ない よ 。」
to think||
"I don't think so."
と マギステル じいさん は こたえました 。
||||こたえ ました
「 それでは 、 こゆび の さきほど ばかだ と は おもわ ない か 。」
well then|little finger||a little while ago|silly|||||
"Well then, don't you think that the tip of the little finger is foolish?"
と 王さま は また たずねました 。
|おうさま|||たずね ました
The king asked again.
「 おもわ ない よ 。」
not think||
"I don't think so."
と マギステル じいさん は こたえて 、 靴 の かかと を うちつけました 。
|||||くつ||||うちつけ ました
||||answered|||heel||kicked
Old Magister replied and tapped his shoe heel.
「 もし おまえ が 、 王さま は こゆび の さきほど ばかだ と いったら 、 わし は これ を やる よ 。
|||おうさま|||||||||||||
|||||little finger||just now|||||||||
If you say that the king is as foolish as a pinky finger, I'll give you this.
だれ も ほか に きいて や し ない から 、 だいじょうぶだ よ 。」
|||||||||it's okay|
No one else is listening, so it's okay.
と 王さま は 、 金 の 時計 を ポケット から 出して 、 じいさん の ひざ に のせました 。
|おうさま||きむ||とけい||ぽけっと||だして|||||のせ ました
||||||||||||knee||placed
「 この 国 の 王さま が ばかだ と いえば これ を くれる の かい 。」
|くに||おうさま|||||||||
|||||fool|||||||
If the king of this country says he is a fool, will you give me this?
と じいさん は 、 金づち を もった 手 を わき に たれて 、 ひざ の 上 の 時計 を みました 。
|||かなづち|||て|||||||うえ||とけい||み ました
|||hammer|||||side||dropped|knee||||||
The old man, with his hand holding a hammer resting on his side, looked at the watch on his lap.
「 うん 、 小さい 声 で 、 ほんの ひとくち いえば あげる よ 。」
|ちいさい|こえ||||||
|||||a little bit|||
Yes, if you say it in a small voice, just a little bit, I'll give it to you.
と 王さま は 手 を もみあわ せ ながら いいました 。
|おうさま||て|||||いい ました
|||||massaged|||
The king said while rubbing his hands together.
する と じいさん は 、 やにわに その 時計 を ひっつか んで 床 の うえ に たたきつけました 。
||||||とけい||||とこ||||たたきつけ ました
||||suddenly||||grabbed||||||slammed
Then the old man abruptly grabbed the clock and slammed it onto the floor.
「 さっさと 出て う せろ 。
|でて||
quickly|||
"Hurry up and get out of here.
ぐずぐず して る と ぶち ころして しまう ぞ 。
slowly||||suddenly|will kill||
If you keep dawdling, I'll end up killing you."
不 忠 者 め が 。
ふ|ただし|もの||
|loyal|||
この 国 の 王さま ほど ご りっぱな おかた が 、 世界中 に またと ある か ッ 。」
|くに||おうさま||||||せかいじゅう|||||
|||||||person||||again|||
Is there anyone in the world as magnificent as the king of this country?
そして 、 もって いた 金づち を ふりあげました 。
|||かなづち||ふりあげ ました
|||hammer||raised
And then, he raised the hammer he was holding.
王さま は 靴 屋 の 店 から とびだしました 。
おうさま||くつ|や||てん||とびだし ました
|||||||rushed out
The king jumped out of the shoemaker's shop.
とびだす とき 、 ひ おい の 棒 に ご つんと 頭 を ぶつけて 、 大きな こぶ を つくりました 。
|||||ぼう||||あたま|||おおきな|||つくり ました
jumped|||||stick|||with a bump|||||bump||
When I jumped out, I bumped my head hard against the stick and made a big bump.
けれど 王さま は 、 こころ を 花 の ように あかるく して 、
|おうさま||||か||||
|||heart||flower|||brightly|
But the king brightened his heart like a flower,
「 わし の 人民 は よい 人民 だ 。
||じんみん|||じんみん|
||people||||
"My people are good people."
わし の 人民 は よい 人民 だ 。」
||じんみん|||じんみん|
||people||||
と くりかえし ながら 、 宮殿 の ほう へ かえって ゆきました 。
|||きゅうでん|||||ゆき ました
|repeatedly||palace|||||went
As I repeated, I went back toward the palace.