アラジン と 不思議な ランプ :1
昔 、 しな の 都 に 、 ムスタフ と いう 貧乏な 仕立 屋 が 住んで いました 。 この ムスタフ に は 、 おかみ さん と 、 アラジン と 呼ぶ たった 一 人 の 息子 と が ありました 。 この 仕立 屋 は 大へん 心がけ の よい 人 で 、 一生けんめいに 働きました 。 けれども 、 悲しい こと に は 、 息子 が 大 の なまけ者 で 、 年 が 年 じゅう 、 町 へ 行って 、 なまけ者 の 子供 たち と 遊び くらして いました 。 何 か 仕事 を おぼえ なければ なら ない 年頃 に なって も 、 そんな こと は まっぴら だ と 言って はねつけます ので 、 ほんとうに この 子 の こと を どう したら いい の か 、 両親 も とほう に くれて いる ありさま でした 。 それ でも 、 お 父さん の ムスタフ は 、 せめて 仕立 屋 に でも しよう と 思いました 。 それ である 日 、 アラジン を 仕事場 へ つれて 入って 、 仕立物 を 教えよう と しました が 、 アラジン は 、 ばかに して 笑って いる ばかりでした 。 そして 、 お 父さん の ゆだん を 見 すまして 、 いち早く にげ出して しまいました 。 お 父さん と お母さん は 、 すぐに 追っかけて 出た のです けれど 、 アラジン の 走り 方 が あんまり 早い ので 、 もう どこ へ 行った の か 、 かいもく 、 姿 は 見えません でした 。 「 ああ 、 わし に は 、 この なまけ者 を どう する こと も でき ない の か 。」
ムスタフ は 、 なげきました 。 そして 、 まもなく 、 子供 の こと を 心配 の あまり 、 病気 に なって 、 死んで しまいました 。 こう なる と 、 アラジン の お母さん は 、 少し ばかり あった 仕立物 に 使う 道具 を 売りはらって 、 それ から 後 は 、 糸 を つむいで くらし を 立てて いました 。 さて 、 ある 日 、 アラジン が 、 いつも の ように 、 町 の なまけ者 と 一しょに 、 めんこ を して 遊んで いました 。 ところが そこ へ 、 いつのまにか 背 の 高い 、 色 の 黒い お じいさん が やって 来て 、 じっと アラジン を 見つめて いました 。 やがて 、 めんこ が 一しょう ぶ 終った 時 、 その お じいさん が アラジン に 「 おいで 、 おいで 」 を しました 。 そして 、「 お前 の 名 は 何と 言う の か ね 。
」 と 、 たずねました 。 この 人 は 大へん しんせつ そうな ふう を して いました が 、 ほんとう は 、 アフリカ の まほう 使 でした 。 「 私 の 名 は アラジン です 。
アラジン は 、 いったい 、 この お じいさん は だれ だろう と 思い ながら 、 こう 答えました 。 「 それ から 、 お前 の お 父さん の 名 は 。
また 、 まほう 使 が 聞きました 。 「 お 父さん の 名 は ムスタフ と 言って 、 仕立 屋 でした 。
でも 、 とっく の 昔 に 死にました よ 。」 と 、 アラジン は 答えました 。 すると 、 この 悪者 の まほう 使 は 、
「 ああ 、 それ は 私 の 弟 だ 。
お前 は 、 まあ 、 私 の 甥 だった んだ ね 。 私 は 、 しばらく 外国 へ 行って いた 、 お前 の 伯父さん な んだ よ 。」 と 言って 、 いきなり アラジン を だきしめました 。 そして 、
「 早く 家 へ 帰って 、 お母さん に 、 私 が 会い に 行きます から 、 と 言って おくれ 。 それ から 、 ほんの 少し です が 、 と 言って 、 これ を あげて おくれ 。」 と 言って 、 アラジン の 手 に 、 金貨 を 五 枚 にぎら せました 。 アラジン は 、 大いそぎで 家 へ 帰って 、 お母さん に 、 この 伯父さん だ と いう 人 の 話 を しました 。 すると お母さん は 、 「 そりゃ あ 、 きっと 、 何 か の まちがい だろう 。 お前 に 伯父さん なんか 、 ありゃ あし ない よ 。」 と 、 言いました 。
しかし 、 お母さん は 、 その 人 が くれた と いう 金貨 を 見て 、 ひょっとしたら 、 その お じいさん は しんるい の 人 かも しれ ない 、 と 思いました 。 それ で 、 できる かぎり の ごちそう を して 、 その 人 が 来る の を 待って いました 。 まもなく アフリカ の まほう 使 は 、 いろいろ めずらしい 果物 や 、 おいしい お 菓子 を どっさり おみやげ に 持って 、 やって 来ました 。 「 なくなった 、 かわいそうな 弟 の 話 を して ください 。
いつも 弟 が どこ に 腰かけて いた か 、 教えて ください 。」 と 、 まほう 使 は 、 お母さん と アラジン に 聞きました 。 お母さん は 、 いつも ムスタフ が 腰かけて いた 、 長 いす を 教えて やりました 。 すると 、 まほう 使 は 、 その 前 に ひざまずいて 、 泣き ながら その 長 いす に キッス しました 。 それ で 、 お母さん は 、 この 男 は なく なった 主人 の 兄さん に ちがいない 、 と 思う ように なりました 。 ことに 、 この まほう 使 が 、 アラジン を なめる ように かわいがる の を 見て 、 なおさら 、 そう と きめて しまった のでした 。
「 何 か 、 仕事 を して いる か ね 。
」 まほう 使 が アラジン に たずねました 。 「 まあ 、 ほんとうに 、 お はずかしゅう ございます わ 。
この 子 は 、 しょっちゅう 町 へ 行って 、 遊んで ばかり い まして 、 まだ 何にも して いない ので ございます よ 。」 お母さん が 手 を もみ ながら 、 そう 答えました 。 アラジン は 、 伯父さん だ と いう 人 が 、 じっと 自分 を 見つめて いる ので 、 はずかし そうに 、 うつむいて いました 。 「 何 か 仕事 を し なきゃ あ いけません な 。 まほう 使 は 、 こう お母さん に 言って おいて 、 さて 、 こんど は アラジン に 、 「 お前 は いったい 、 どんな 商売 が して みたい の か ね 。 私 は お前 に 呉服 店 を 出さ せて あげよう と 思って いる のだ が 。」 と 、 言いました 。