Another Episode 12

ダメ だ 逃げろ だめ||にげろ

イヤ あ いや|

イヤ だ いや|

死に たく ねえ しに||

尋常 で は ない ね じんじょう||||

何で なんで

まさか 皆 疑心 暗鬼 に |みな|ぎしん|あんき|

先生 せんせい

誰 も 逃げ て 来 て ない の か だれ||にげ||らい||||

イッテ

出血 は 止まって いる 大した こと は ない しゅっけつ||とまって||たいした|||

君 たち は ここ から 動か ない よう に きみ|||||うごか|||

いい ね

松井 さん まつい|

た す っ

榊原 くん さかきばら|

この 子 の こと 覚え てる |こ|||おぼえ|

覚え てる よ おぼえ||

やっぱり 違った か |ちがった|

やっぱり って 何 言って ん だ よ ||なん|いって|||

杉浦 さん は 見 崎 さん だって 言って た けど すぎうら|||み|さき|||いって||

僕 は ね ぼく||

君 が 「 死者 」 だ と 思う ん だ きみ||ししゃ|||おもう||

今年 は 五 月 から 始まった わけ だ ろ ことし||いつ|つき||はじまった|||

なら 五 月 に 増え た やつ が 「 死者 」 に 決まって る じゃ ない か |いつ|つき||ふえ||||ししゃ||きまって||||

違う ちがう

今年 は 四 月 から 始まって る ん だ ことし||よっ|つき||はじまって|||

そんな 出任せ 誰 が 信じる か |でまかせ|だれ||しんじる|

風見 くん どうして かざみ||

勅使河原 に 殺さ れ かけ て 分かった ん だ てしがわら||ころさ||||わかった||

「 死者 」 を 死に 帰さ ない と ししゃ||しに|かえさ||

自分 は 死ぬ じぶん||しぬ

だから って

煩い わずらい

お前 さえ 転校 し て 来 なきゃ おまえ||てんこう|||らい|

ゆかり は 死な なかった ||しな|

桜木 さん さくらぎ|

お前 は 「 い ない もの 」 に 近づか なきゃ おまえ||||||ちかづか|

「 死者 」 を 死に 返 っ ししゃ||しに|かえ|

バカ ね ばか|

恒一 くん は 「 死者 」 じゃ ない のに つねいち|||ししゃ|||

風見 くん あなた 二 人 も 殺し ちゃ った し ね かざみ|||ふた|じん||ころし||||

生き て て も しょうがない よ ね いき||||しょうが ない||

介 錯 し て あげる かい|さく|||

ゆかり の ところ に 行き なさい ||||いき|

旧友 同士 で 殺し 合う など と バカ な 真似 を する もの で は ない きゅうゆう|どうし||ころし|あう|||ばか||まね||||||

綺麗事 ね きれいごと|

死ぬ の が 怖く て 傍観 者 に 逃げ込 ん だ あなた に は しぬ|||こわく||ぼうかん|もの||にげこ|||||

何も 言う 資格 は ない なにも|いう|しかく||

確かに 私 は 逃げ た たしかに|わたくし||にげ|

だが 目の前 で 理不尽 に 死 ん で いく 生徒 を 救う こと ぐらい は できる |めのまえ||りふじん||し||||せいと||すくう||||

傍観 者 の あなた に は 何も でき ない ぼうかん|もの|||||なにも||

何も な せ ない なにも|||

状況 を 動かせ る の は 死 地 に 留まる 当事 者 だけ よ じょうきょう||うごかせ||||し|ち||とどまる|とうじ|もの||

榊原 くん も 外 へ さかきばら|||がい|

風見 かざみ

おい 風見 |かざみ

おい

おい

ふざけ ん な よ おい

畜生 ちくしょう

畜生 畜生 ちくしょう|ちくしょう

見 崎 は まだ 中 に いる み|さき|||なか||

見 崎 み|さき

い たら 返事 し て くれ ||へんじ|||

止めろ とどめろ

お 願い だ 止め て くれ |ねがい||とどめ||

この 子 を 殺さ ない と 皆 死 ん じゃ う |こ||ころさ|||みな|し|||

恒一 くん だって 死ぬ かも しれ ない つねいち|||しぬ|||

違う ん よ ちがう||

見 崎 は 「 死者 」 じゃ ない み|さき||ししゃ||

この 子 を 殺し て 災厄 が 止まら なけ れ ば |こ||ころし||さいやく||とまら|||

認め て あげる みとめ||

これ で 止まる ||とまる

違う ん だ よ ちがう|||

どうして よ

こんなに

こんなに 守 ろ う と し てる のに |しゅ||||||

どうして よ

そんなに 死に たい なら |しに||

一緒 に 殺し て あげる いっしょ||ころし||

お 兄さん の バカ |にいさん||ばか

イテッ

すみません 大丈夫 です か |だいじょうぶ||

大丈夫 だいじょうぶ

あなた 夜 見 北 の 人 じゃ な いよ ね |よ|み|きた||じん||||

うん 東京 から 来 た ん だ |とうきょう||らい|||

そう

どこ か 痛い の ||いたい|

違う の ちがう|

大事 な 人 が 死 ん じゃ った から だいじ||じん||し||||

そう な ん だ

じゃあ 僕 と 同じ だ ね |ぼく||おなじ||

一 年 半 前 ひと|とし|はん|ぜん

あなた に 空き缶 ぶつけ た の ||あきかん|||

覚え てる おぼえ|

えっ

まったく

や ん なっちゃ う

嘘 で も いい から うそ||||

覚え てるよ ぐらい 言い なさい よ おぼえ|||いい||

赤沢 さん あかさわ|

見 崎 み|さき

見 崎 み|さき

よし 生き てる |いき|

頼む 繋がって くれ たのむ|つながって|

榊原 くん さかきばら|

見 崎 無事 な ん だ ね み|さき|ぶじ||||

うん

今 どこ いま|

裏庭 うらにわ

ケガ し て ない けが|||

私 は 大丈夫 わたくし||だいじょうぶ

だけど ちょっと 動け ない の ||うごけ||

行く から すぐ 行く から いく|||いく|

そこ に

来 ない ほう が いい らい||||

どうして

来 ない ほう が いい よ 榊原 くん は らい||||||さかきばら||

だから どうして

私 が わたくし|

私 が 止め なきゃ わたくし||とどめ|

まさか 見 崎 |み|さき

まさか 誰 を |だれ|

後悔 する か も こうかい|||

だから

見 崎 み|さき

見 崎 み|さき

来 ちゃ ダメ らい||だめ

助け ない と たすけ||

助け ちゃ ダメ たすけ||だめ

色 が 「 死 」 の 色 が 見える から いろ||し||いろ||みえる|

それ は 今 分かった の ||いま|わかった|

前 から 分かって た けど 言え なかった ぜん||わかって|||いえ|

でも でも ね

もう 止め なきゃ |とどめ|

待って まって

そんな

まさか まさか

嘘 だ うそ|

この 人 が 「 もう 一 人 」 |じん|||ひと|じん

本当 に ほんとう|

本当 に この ほんとう||

三神 先生 みかみ|せんせい

怜子 さん が 「 もう 一 人 」 な の れいこ||||ひと|じん||

恒一 くん つねいち|

じゃ 夜 見 北 で の 心構え その 四 は |よ|み|きた|||こころがまえ||よっ|

公私 の 別 は はっきり つける こと こうし||べつ||||

校 内 で は 間違って も 怜子 さん 何て 呼ば ない よう に こう|うち|||まちがって||れいこ||なんて|よば|||

学校 で は あくまで も 私 は 副 担任 の 三神 先生 な ん だ から ね がっこう|||||わたくし||ふく|たんにん||みかみ|せんせい|||||

いい

この 学校 で ほか の クラス に 副 担任 の 先生 何て いる |がっこう||||くらす||ふく|たんにん||せんせい|なんて|

それ は

い ない の

副 担任 が いる の は 学校 中 で 三 年 三 組 だけ ふく|たんにん|||||がっこう|なか||みっ|とし|みっ|くみ|

今年 は 教室 の 机 の 数 は 足り て い た の ことし||きょうしつ||つくえ||すう||たり||||

なのに 災厄 は 四 月 から 始まって しまった |さいやく||よっ|つき||はじまって|

どうして だ と 思う |||おもう

机 が 一 つ 足り なかった の は ね つくえ||ひと||たり||||

職員 室 な の しょくいん|しつ||

嘘 嘘 よ うそ|うそ| 榊原 くん そこ 退 い て さかきばら|||しりぞ||

僕 が やる から ぼく|||

「 死者 」 を 死に 返す ししゃ||しに|かえす

恒一 くん つねいち|

ごめんなさい 怜子 さん |れいこ|

やめ て

やめ て よ

いい の か

これ で いい の か

本当 に これ で いい の か ほんとう||||||

間違って ない の か まちがって|||

もし 間違え て い たら |まちがえ|||

僕 は 怜子 さん を ぼく||れいこ||

見 崎 が 言った こと み|さき||いった|

目 の こと も 本当 な の か め||||ほんとう|||

信じ て いい の か しんじ||||

思い出し た の おもいだし||

私 見 た の わたくし|み||

見 て た の み|||

三神 先生 が 殺さ れる ところ を みかみ|せんせい||ころさ|||

一 年 半 前 に 見 た の ひと|とし|はん|ぜん||み||

元気 元気 出し て ね げんき|げんき|だし||

どうして どうして レー ちゃん

一 年 半 ぐらい 前 か ね ひと|とし|はん||ぜん||

ペット ショップ で ね ぺっと|しょっぷ||

どんな 感じ だ 一 年 半 ぶり の 夜 見 山 は |かんじ||ひと|とし|はん|||よ|み|やま|

一 年 半 前 ひと|とし|はん|ぜん

あなた に 空き缶 ぶつけ た の ||あきかん|||

覚え てる おぼえ|

人 は 死ぬ と 葬式 だ な じん||しぬ||そうしき||

葬式 は もう 堪忍 そうしき|||かんにん

堪忍 し て ほしい な かんにん||||

可哀想 に な かわいそう||

理 津 子 も 怜子 も な り|つ|こ||れいこ||

信じ て しんじ|

怜子 さん れいこ|

さよなら 怜子 さん |れいこ|

さよなら お 母さん ||かあさん

来 て た ん だ らい||||

胸 は もう 大丈夫 な の むね|||だいじょうぶ||

まあまあ

でも 体育 は 無理 かな |たいいく||むり|

皆 覚え て ない よ みな|おぼえ|||

三神 先生 の こと みかみ|せんせい||

僕ら だけ か ぼくら||

ちょっと 心配 だった かな |しんぱい||

榊原 くん が 九 人 目 の 犠牲 者 に なら ない か さかきばら|||ここの|じん|め||ぎせい|もの||||

八 人 も 死 ん だ ん だ やっ|じん||し||||

厳密 に 言う と 八 月 の 犠牲 者 は 十 名 だ げんみつ||いう||やっ|つき||ぎせい|もの||じゅう|な|

あと 二 人 って 誰 な ん です |ふた|じん||だれ|||

管理人 夫妻 だ よ かんりにん|ふさい||

高林 くん の 母方 の 祖父母 だ たかばやし|||ははかた||そふぼ|

高林 くん が 死 ん で から たかばやし|||し|||

精神 状態 が 芳しく なかった そう だ せいしん|じょうたい||かんばしく|||

三神 先生 は 一 年 半 前 の 秋 亡くなった ん だ よ みかみ|せんせい||ひと|とし|はん|ぜん||あき|なくなった|||

夜 見 山 川 沿い て 通り 魔 に 刺さ れ て しまって ね よ|み|やま|かわ|ぞい||とおり|ま||ささ||||

私 は 思い出せ ない ん だ が わたくし||おもいだせ||||

今年 の 「 死者 」 は 三神 先生 だった と ことし||ししゃ||みかみ|せんせい||

ならば 一昨年 の 災厄 で 死 ん だ 人間 は 七 名 と いう こと に なって い た の か |いっさくねん||さいやく||し|||にんげん||なな|な|||||||||

ええ 罰 印 は 七 個 で し た |ばち|いん||なな|こ|||

一昨年 の ファイル 赤沢 って 名前 が あり まし た よ ね いっさくねん||ふぁいる|あかさわ||なまえ||||||

あれ って

そう 赤沢 くん の いとこ だ |あかさわ||||

兄妹 同然 に 育った らしい きょうだい|どうぜん||そだった|

車 で 送って 行 こ う か くるま||おくって|ぎょう|||

いいえ 大丈夫 です |だいじょうぶ|

そう か 帰り道 に は 気 を つけ たまえ よ ||かえりみち|||き||||

いや もう 災厄 は 終わった ん だった な ||さいやく||おわった|||

怜子 さん 三神 先生 が 「 もう 一 人 」 だって こと れいこ||みかみ|せんせい|||ひと|じん||

いつ から それ を

いつ かな

忘れ た わすれ|

何で 言って くれ なかった の なんで|いって|||

言って も どう しよ も ない から いって||||||

それ に 榊原 くん に は 言え ない ||さかきばら||||いえ|

特別 な 人 だった ん でしょ う 三神 先生 とくべつ||じん|||||みかみ|せんせい

怜子 さん って れいこ||

あそこ の 遊園地 行って みよ う か ||ゆうえんち|おこなって|||

あの 観覧 車 |かんらん|くるま

あれ に は 乗ら ない |||のら|

そう

この 前 病院 から 電話 し たら さ |ぜん|びょういん||でんわ|||

携帯 に かけ て み た ん だ けど けいたい||||||||

全然 通じ なく て ぜんぜん|つうじ||

あれ は ね

あの 後 川 に 捨て ちゃ った |あと|かわ||すて||

えっ 何で |なんで

嫌 な 機械 だ から いや||きかい||

いつも 繋がって る 必要 ない でしょ う |つながって||ひつよう|||

でも すぐに 新しい の 持た さ れ ちゃ う ん だ ろ う な ||あたらしい||もた|||||||||

新しい の 持た さ れ たら 偶に かけ て いい あたらしい||もた||||たまに|||

偶に は ね たまに||

そう だ これ 望月 に もらった ん だ けど |||もちづき|||||

怜子 さん 写って る よ ね れいこ||うつって|||

うん

誰 に も 見え て い ない みたい だった だれ|||みえ|||||

望月 で すら 怜子 さん に 気づ い て い なかった もちづき|||れいこ|||きづ||||

そう

色 は いろ|

怜子 さん の 色 は どう 見える れいこ|||いろ|||みえる

見える よ 「 死 」 の 色 が みえる||し||いろ|

僕たち も これ から 段々 と 忘れ て いく の か な ぼくたち||||だんだん||わすれ|||||

あの 合宿 の こと |がっしゅく||

四 月 から の こと よっ|つき|||

三神 怜子 に 纏わる 色々 な こと みかみ|れいこ||まつわる|いろいろ||

その 全部 |ぜんぶ

そんなに 忘れ たく ない |わすれ||

ずっと 覚え て い たい |おぼえ|||

終わった ん だ よ ね おわった||||

色褪せ て く フィルム の よう に いろあせ|||ふぃるむ|||

確か な 今 も いずれ 霞 ん で たしか||いま|||かすみ||

何でもなく 笑い あった なんでもなく|わらい|

刹那 の 時間 と 光 せつな||じかん||ひかり

繋がって ゆく 記憶 の 底 に つながって||きおく||そこ|

誰 か が 見つける ため ある と 信じ てる 今 でも だれ|||みつける||||しんじ||いま|

これ が 「 災厄 」 を 止める 方法 だ ||さいやく||とどめる|ほうほう|

これ を どう 解釈 する か は 君 たち 次第 だ |||かいしゃく||||きみ||しだい|

ただ よく 考え て 行動 し て ほしい ||かんがえ||こうどう|||

ちゃんと 考え て |かんがえ|

周り の 友達 と 相談 し て まわり||ともだち||そうだん||

後悔 し ない よう に こうかい||||