Section 013 - Kokoro - Soseki Project
Section 013 - Kokoro - Soseki Project
Sekcja 013 - Projekt Kokoro - Soseki
第013節-Kokoro-Soseki項目
七
私 は 不思議に 思った 。
なな|わたくし||ふしぎに|おもった
しかし 私 は 先生 を 研究 する 気 で その 宅 へ 出入り を する ので は なかった 。
|わたくし||せんせい||けんきゅう||き|||たく||でいり|||||
However, I didn't go in and out of the house with the intention of studying the teacher.
私 は ただ そのまま に して 打ち 過ぎた 。
わたくし||||||うち|すぎた
今 考える と その 時 の 私 の 態度 は 、 私 の 生活 の うち で むしろ 尊 むべ きもの の 一 つ であった 。
いま|かんがえる|||じ||わたくし||たいど||わたくし||せいかつ|||||とうと||||ひと||
When I think about it now, my attitude at that time was rather one of the most respected things in my life.
私 は 全く その ため に 先生 と 人間 らしい 温かい 交際 が できた のだ と 思う 。
わたくし||まったく||||せんせい||にんげん||あたたかい|こうさい|||||おもう
もし 私 の 好奇心 が 幾分 でも 先生 の 心 に 向かって 、 研究 的に 働き掛けた なら 、 二 人 の 間 を 繋ぐ 同情 の 糸 は 、 何の 容赦 も なく その 時 ふ つり と 切れて しまったろう 。
|わたくし||こうきしん||いくぶん||せんせい||こころ||むかって|けんきゅう|てきに|はたらきかけた||ふた|じん||あいだ||つなぐ|どうじょう||いと||なんの|ようしゃ||||じ||||きれて|
若い 私 は 全く 自分 の 態度 を 自覚 して い なかった 。
わかい|わたくし||まったく|じぶん||たいど||じかく|||
それ だ から 尊い の かも 知れ ない が 、 もし 間違えて 裏 へ 出た と したら 、 どんな 結果 が 二 人 の 仲 に 落ちて 来たろう 。
|||とうとい|||しれ||||まちがえて|うら||でた||||けっか||ふた|じん||なか||おちて|きたろう
私 は 想像 して も ぞっと する 。
わたくし||そうぞう||||
先生 は それ で なくて も 、 冷たい 眼 で 研究 さ れる の を 絶えず 恐れて いた のである 。
せんせい||||||つめたい|がん||けんきゅう|||||たえず|おそれて||
私 は 月 に 二 度 もしくは 三 度 ずつ 必ず 先生 の 宅 へ 行く ように なった 。
わたくし||つき||ふた|たび||みっ|たび||かならず|せんせい||たく||いく|よう に|
私 の 足 が 段々 繁 く なった 時 の ある 日 、 先生 は 突然 私 に 向かって 聞いた 。
わたくし||あし||だんだん|しげ|||じ|||ひ|せんせい||とつぜん|わたくし||むかって|きいた
One day when my legs were getting heavier, the teacher suddenly asked me.
「 あなた は 何で そう たびたび 私 の ような もの の 宅 へ やって 来る のです か 」
||なんで|||わたくし|||||たく|||くる|の です|
"Why do you come to the house of something like me so often?"
「 何で と いって 、 そんな 特別な 意味 は ありません 。
なんで||||とくべつな|いみ||
"By the way, it doesn't mean anything special.
―― しかし お 邪魔な んです か 」
||じゃまな|ん です|
「 邪魔だ と は いいません 」
じゃまだ|||
"I don't mean it's in the way."
なるほど 迷惑 と いう 様子 は 、 先生 の どこ に も 見え なかった 。
|めいわく|||ようす||せんせい|||||みえ|
I see, I couldn't see any annoyance anywhere in the teacher.
私 は 先生 の 交際 の 範囲 の 極めて 狭い 事 を 知っていた 。
わたくし||せんせい||こうさい||はんい||きわめて|せまい|こと||しっていた
I knew that the range of dating of the teacher was extremely narrow.
先生 の 元 の 同級 生 など で 、 その 頃 東京 に いる もの は ほとんど 二 人 か 三 人 しか ない と いう 事 も 知っていた 。
せんせい||もと||どうきゅう|せい||||ころ|とうきょう||||||ふた|じん||みっ|じん|||||こと||しっていた
I also knew that there were only two or three of my former classmates in Tokyo at that time.
先生 と 同郷 の 学生 など に は 時たま 座敷 で 同 座 する 場合 も あった が 、 彼ら の いずれ も は 皆 な 私 ほど 先生 に 親しみ を もって いない ように 見受けられた 。
せんせい||どうきょう||がくせい||||ときたま|ざしき||どう|ざ||ばあい||||かれら|||||みな||わたくし||せんせい||したしみ||||よう に|みうけられた
Occasionally, the teacher and students in the same country would sit in the tatami room, but none of them seemed to be as familiar to the teacher as I was.