104. 赤い 蝋燭 - 新美 南 吉
あかい|ろうそく|にいみ|みなみ|きち
104. red candle - Nankichi NIIMI
104. vela roja - Nankichi Niimi
104. красная свеча - Нанкити Ниими
104. 紅蠟燭 - 新見南吉
赤い 蝋燭 - 新美 南 吉
あかい|ろうそく|にいみ|みなみ|きち
山 から 里 の 方 へ 遊び に いった 猿 が 一 本 の 赤い 蝋燭 を 拾いました 。
やま||さと||かた||あそび|||さる||ひと|ほん||あかい|ろうそく||ひろい ました
|||||||||||||||||picked up
赤い 蝋燭 は 沢山 ある もの では ありません 。
あかい|ろうそく||たくさん||||あり ませ ん
それ で 猿 は 赤い 蝋燭 を 花火 だ と 思い込んで しまいました 。
||さる||あかい|ろうそく||はなび|||おもいこんで|しまい ました
・・
猿 は 拾った 赤い 蝋燭 を 大事に 山 へ 持って 帰りました 。
さる||ひろった|あかい|ろうそく||だいじに|やま||もって|かえり ました
The monkey took the red candle he picked up to the mountain and took it home.
・・
山 で は 大へんな 騒 に なりました 。
やま|||たいへんな|さわ||なり ました
|||big trouble|commotion||
何しろ 花火 など と いう もの は 、 鹿 に して も 猪 に して も 兎 に して も 、 亀 に して も 、 鼬 に して も 、 狸 に して も 、 狐 に して も 、 まだ 一 度 も 見た こと が ありません 。
なにしろ|はなび||||||しか||||いのしし||||うさぎ||||かめ||||いたち||||たぬき||||きつね|||||ひと|たび||みた|||あり ませ ん
|||||||||||||||||||||||weasel|||||||||||||||||||
その 花火 を 猿 が 拾って 来た と いう のであります 。
|はなび||さる||ひろって|きた|||のであり ます
・・
「 ほう 、 すばらしい 」・・
「 これ は 、 すてきな もの だ 」・・
鹿 や 猪 や 兎 や 亀 や 鼬 や 狸 や 狐 が 押 合い へ しあい して 赤い 蝋燭 を 覗きました 。
しか||いのしし||うさぎ||かめ||いたち||たぬき||きつね||お|あい||||あかい|ろうそく||のぞき ました
||||||||||||||||||||candle||looked at
すると 猿 が 、・・
|さる|
「 危 い 危 い 。
き||き|
そんなに 近よって は いけない 。
|ちかよって||
爆発 する から 」 と いいました 。
ばくはつ||||いい ました
・・
みんな は 驚いて 後 込 しました 。
||おどろいて|あと|こみ|し ました
・・
そこ で 猿 は 花火 と いう もの が 、 どんなに 大きな 音 を して 飛出す か 、 そして どんなに 美しく 空 に ひろがる か 、 みんな に 話して 聞か せました 。
||さる||はなび||||||おおきな|おと|||とびだす||||うつくしく|から||||||はなして|きか|せま した
||||||||||||||to fly out|||||||||||||
そんなに 美しい もの なら 見たい もの だ と みんな は 思いました 。
|うつくしい|||み たい||||||おもい ました
・・
「 それ なら 、 今晩 山 の 頂上 に 行って あそこ で 打上げて 見よう 」 と 猿 が いいました 。
||こんばん|やま||ちょうじょう||おこなって|||うちあげて|みよう||さる||いい ました
||||||||||launch|||||
みんな は 大へん 喜びました 。
||たいへん|よろこび ました
|||was very happy
夜 の 空 に 星 を ふりまく ように ぱあっと ひろがる 花火 を 眼 に 浮べて みんな は うっとり しました 。
よ||から||ほし||||ぱあ っと||はなび||がん||うかべて||||し ました
||||||scatter||suddenly spread||||||floating in memory|||enraptured|
・・
さて 夜 に なりました 。
|よ||なり ました
みんな は 胸 を おどら せて 山 の 頂上 に やって行きました 。
||むね||||やま||ちょうじょう||やっていき ました
||||||||||made it
猿 は もう 赤い 蝋燭 を 木 の 枝 に くくりつけて みんな の 来る の を 待って いました 。
さる|||あかい|ろうそく||き||えだ|||||くる|||まって|い ました
||||||||||tied to|||||||
・・
いよいよ これ から 花火 を 打上げる こと に なりました 。
|||はなび||うちあげる|||なり ました
|||||launching|||
Finally, the fireworks will be launched.
しかし 困った こと が 出来ました 。
|こまった|||でき ました
と 申します の は 、 誰 も 花火 に 火 を つけよう と し なかった から です 。
|もうし ます|||だれ||はなび||ひ|||||||
I say this because no one wanted to light the fireworks.
みんな 花火 を 見る こと は 好きでした が 火 を つけ に いく こと は 、 好きで なかった のであります 。
|はなび||みる|||すきでした||ひ|||||||すきで||のであり ます
・・
これ で は 花火 は あがりません 。
|||はなび||あがり ませ ん
|||||will not rise
This will not make the fireworks go off.
そこ で くじ を ひいて 、 火 を つけ に 行く もの を 決める こと に なりました 。
|||||ひ||||いく|||きめる|||なり ました
第 一 に あたった もの は 亀 で ありました 。
だい|ひと|||||かめ||あり ました
The first thing that hit me was the turtle.
・・
亀 は 元気 を 出して 花火 の 方 へ やって行きました 。
かめ||げんき||だして|はなび||かた||やっていき ました
だが うまく 火 を つける こと が 出来た でしょう か 。
||ひ|||||できた||
いえ 、 いえ 。
亀 は 花火 の そば まで 来る と 首 が 自然に 引込んで しまって 出て 来 なかった ので ありました 。
かめ||はなび||||くる||くび||しぜんに|ひきこんで||でて|らい|||あり ました
|||||||||||retracted||||||
When the turtle came near the fireworks, it naturally retracted its neck and did not come out.
・・
そこ で くじ が また ひかれて 、 こんど は 鼬 が 行く こと に なりました 。
|||||ひか れて|||いたち||いく|||なり ました
鼬 は 亀 より は 幾分 ましでした 。
いたち||かめ|||いくぶん|
|||||somewhat|better
と いう の は 首 を 引 込めて しまわ なかった から であります 。
||||くび||ひ|こめて||||であり ます
しかし 鼬 は ひどい 近眼 で ありました 。
|いたち|||きんがん||あり ました
||||nearsightedness||
だから 蝋燭 の まわり を きょろきょろ と うろついて いる ばかりでありました 。
|ろうそく||||||||ばかりであり ました
|||||looking around||wandering around||justでした
・・
遂々 猪 が 飛出しました 。
すい々|いのしし||とびだし ました
finally|||jumped out
猪 は 全く 勇 しい 獣 でした 。
いのしし||まったく|いさみ||けだもの|
The boar was a truly courageous beast.
猪 は ほんとうに やっていって 火 を つけて しまいました 。
いのしし||||ひ|||しまい ました
The boar really went for it and set it on fire.
・・
みんな は びっくり して 草むら に 飛込み 耳 を 固く ふさぎました 。
||||くさむら||とびこみ|みみ||かたく|ふさぎ ました
||||grass bush||jumped in||||plugged tightly
Everyone was so startled that they jumped into the grass and covered their ears.
耳 ばかり で なく 眼 も ふさいで しまいました 。
みみ||||がん|||しまい ました
It was not only my ears but also my eyes that were blocked.
・・
しかし 蝋燭 は ぽん と も いわ ず に 静かに 燃えて いる ばかりでした 。
|ろうそく||||||||しずかに|もえて||
However, the candle was burning quietly without a sound.