三 姉妹 探偵 団 4 Chapter 10
10 沈 黙
「 誰 な の !
夕 里子 は 、 はっきり した 声 を 、 暗闇 へ 向 って 投げ つけた 。
怖く ない わけで は ない 。
夕 里子 だって 、 もちろん 怖い もの は 怖い のだ 。
真 暗 な 部屋 の 中 で 、 ドア も 開か ず 、 何 か が ジリジリ と 近寄って 来る の を 待って いる 。
そして 、 その 近付き 方 は 、 どこ か まともで は なかった ……。
夕 里子 は 、 冷たい 汗 が 、 体 中 から 吹き出す の を 感じた 。
罠 に はまって しまった の かも しれ ない 。
ザッ 、 と 何 か を 引きずる ような 音 が 、 さらに 近付いて 来て いる 。
── 夕 里子 は 、 必死に なって 落ちつこう と した 。 冷静に 、 冷静に 、 と 自分 へ 言い聞かせる 。
そう 。
これ まで だって 、 何度 も 危 い 所 を 切り抜けて 来た のだ 。
それ に 、 ここ は 人里 離れた 山荘 と いって も 、 他 に 人 が い ない わけじゃ ない 。
国 友 も 、 珠美 も 、 それ に 少々 頼りない が 、 綾子 も いる 。
まず 、 ドア だ !
手探り で 、 ドア の ノブ を つかむ と 、 夕 里子 は もう 一 度 、 力一杯 、 ドア を 揺さぶって みた 。
「── 誰 か !
誰 か 来て ! しかし 、 手 で 力一杯 叩いて みて 、 夕 里子 は その ドア が 、 見た目 に は 他の 部屋 と 同じ 木 の ドア だ が 、 実際 に は 、 おそらく 間 に 鉄板 を 挟んだ 、 厚く 、 重い ドア だ と 悟って いた 。
声 や 、 音 を 、 廊下 へ 出さ ない ように して いる のだろう 。
「 助けて !
国 友 さん ! ── 金田 君 ! 少なくとも 、 一緒に 来た 金田 は 、 この ドア の すぐ 表 に いる はずだ が 、 全く 反応 は なかった 。
夕 里子 は 、 ハッと 振り向いた 。
── それ は 夕 里子 から 、 ほんの 一 、 二 メートル の 所 まで 這い 寄って いた 。
低く 、 足下 の 方 から 、 ハア 、 ハア 、 と 獣 の ような 息づかい が 聞こえて 来る 。
何 だろう ? 動物 か ? しかし 、 なぜ こんな 真 暗 な 部屋 へ 押し 込めて いる の か 。
ザッ 、 ザッ 、 と 床 を こする 音 が して 、 夕 里子 は 、 それ が 、 ほとんど 自分 に 触れ そうな 所 まで 来て いる こと を 感じた 。
窓 !
── 窓 は ない のだろう か ?
夕 里子 は 、 さっき 国 友 を 助けて 珠美 と 三 人 で ここ へ 戻る 途中 、 この 部屋 の 窓 に 人影 を 見た こと を 思い出した 。
確かに 、 あの とき は カーテン が 開いて 、 男 が 立って いた のだ 。
つまり 、 窓 が あって 、 決して 、 板 など が 打ち つけて ある わけで は ない 、 と いう こと に なる 。
おそらく 、 完全に 遮 光 できる カーテン が 下って いる のだ 。
夕 里子 は 、 ともかく 、 その 「 窓 」 を 見付けよう 、 と 思った 。
光 さえ 射 し込めば 、 相手 の 姿 さえ 見えれば ……。
じっと 暗がり の 中 へ 目 を こらす と 、 かすかに ── 本当に かすかに 、 だが 、 うっすら と 光 の 洩 れて いる 一角 が ある の が 、 見分け られた 。
あれ が 窓 だ 。
一 か 八 か 。
やって みる しか ない 。
ハァッ 、 と いう 、 その 「 何も の か 」 の 息づかい が 、 夕 里子 の 足 に 触れる ほど だ 。
夕 里子 は 、 思い切って 、 見当 を つける と 、 その 「 何 か 」 を 飛び越えた 。
何 か 柔らかい もの が 足 の 先 に 触れた ような 気 が した が 、 ともかく 、 固い 床 に 、 降り立った 。
夕 里子 は 真 直ぐに 、 その かすかな 光 へ 向 って 突進 した 。
手 を のばし 、 カーテン を 引きちぎろう と ──。
暗がり の 中 で 、 距離 感 が 狂って いた 。
夕 里子 は 、 まともに 窓 に 向 って 突っ込み 、 ぶつかった 。
カーテン らしい 布 の 手応え は 一瞬 で 、 アッ と 思った とき は 、 それ ごと 、 窓 ガラス を 突き破って いた 。
「 キャッ !
と 、 叫び声 を 上げた の か どう か ── 自分 でも 分 ら ない 。
夕 里子 は 、 窓 から カーテン もろとも 、 宙 へ 飛び出して いた 。
そして 、 落下 する と いう 感覚 の ない まま 、 いきなり 深い 雪 の 中 へ と 突っ込んで 、 気 を 失った 。
── 何の 音 だろう ?
珠美 は 、 山荘 の 一 階 に ある サロン で 、 同じ 週刊 誌 を 何度 も 見て いる 内 に 、 いつしか ウトウト して いた のである 。
そこ へ 、 何 か ガチャン 、 と 壊れる ような 音 が して 、 ハッと 目 を 覚ました のだった 。
いや ── それとも 、 夢 でも 見て た の かしら ?
こんな 昼間 から 、 何も 起る わけ が ない し ……。
「 や だ な 」
と 、 珠美 は 呟いた 。
「 夕 里子 姉ちゃん に かぶれちゃ った の か な 」
珠美 は 大体 が 安全 第 一 を モットー に して いる 。
夕 里子 の 如く 、 わざわざ 危険に 飛び 込んで 行く ような こと は 決して し ない 。
それ でも 、 時として 危 い 目 に 遭う こと が ある の は 、 総 て 姉 たち の せい な のである 。
しかし ── まあ 、 この 山荘 で のんびり して いりゃ 、 安全だ 。
何といっても 、 三 姉妹 が 全部 揃って いて 、 しかも 、 水谷 先生 と いう 逞 しい 男 、 国 友 と いう 刑事 まで いる 。
どうも 、 姉 の 夕 里子 は 、 ここ に 何 か 秘密 が ある ように 考えて いる らしい が 、 それ は むしろ 珠美 に 言わ せりゃ 、「 本人 の 趣味 」 の 問題 な のである 。
「 あー あ 」
と 、 伸び を して 、 珠美 が 立ち上る と 、 ちょうど サロン へ 、 片 瀬 敦子 が 入って 来た 。
「 あ 、 珠美 ちゃん 、 ここ に いた の 」
「 骨休め 。
── 休み っ放し だ けど 」
と 、 珠美 は 笑って 言った 。
「 退屈 しちゃ うわね 」
と 、 敦子 は 言った 。
「 国 友 さん 、 大丈夫な の かしら ? 「 夕 里子 姉ちゃん が ついて る もん 」
「 そう ね 」
と 、 敦子 は 微笑んだ 。
「 ね 、 夕 里子 、 そう 言えば 、 どこ に いる んだ ろ ? 「 知ら ない 」
と 、 珠美 は 肩 を すくめた 。
「 二 階 で 寝て る んじゃ ない の ? 「 今 、 覗いて みた の 。
でも 、 い なかった わ 」
「 変 ね 」
珠美 は 首 を かしげた 。
「── もし かして 」
「 どこ ?
「 国 友 さん の ベッド の 中 ……」
敦子 が 、 それ を 聞いて 、 吹き出した 。
「 お 姉ちゃん も 、 子供 扱い な んだ な 」
と 、 珠美 は 言った 。
「 そんな こと ない けど さ ──」
敦子 は 、 ちょっと 考えて 、「 でも 、 夕 里子 って すてき よ 。
女の子 でも 惚れちゃ う 」
「 そろそろ 男の子 に 惚れ られ たい 年ごろ です けど ね 」
── 二 人 は 、 裏庭 を 見渡せる 窓 の 方 へ と 歩いて 行った 。
「 まぶしい ね 」
と 、 敦子 が 目 を 細める 。
よく 晴れて いる ので 、 雪 の 照り返し が 強烈な のだ 。
裏庭 に は 、 誰 も い なかった 。
「── 何だか 怖い 」
と 、 敦子 が 、 ふと 、 独り言 の ように 言った 。
「 どうして ?
川西 みどり 、 って 人 の こと ? 「 え ?
── ああ 、 そう じゃ ない の 。 それ も ある けど ……」
敦子 は 、 視線 を 宙 へ 泳が せて 、「 静かだ と 思わ ない ?
意外な 言葉 だった 。
珠美 も 、 初めて 、 その こと に 気付いた 。
「 本当だ 。
── 何も 聞こえ ない ね 」
珠美 は 、 つい さっき 感じた 、 不安に も 似た 感覚 が 、 この 静けさ から 来て いた もの かも しれ ない 、 と 思った 。
都会 に 暮して いれば ── そして 、 まあ 普通の 時間 の パターン で 生活 して いれば 、 まず 、 完全に 静かな 時間 と いう もの は ほとんど ない のだ 。
珠美 は 、 決して いつも 音楽 を 流して おか ない と 落ちつか ない と いう タイプ で は ない し 、 ウォークマン を 持って 歩く わけで も ない 。
それ でも 、 起きて いる 間 は 、 たいてい 、 何 か の 「 音 」 や 「 声 」 を 聞いて いて 、 それ が 当り前に なって いる 。
それ に 比べ 、 この 山荘 の 静かな こと と いったら ……。
確かに 無気味な ほど だ 。
「 みんな 黙りこくって ん の か な 」
と 、 珠美 は 言った 。
「 分 ら ない わ 」
敦子 は 首 を 振って 、「 でも 、 いくら 国 友 さん が 寝て る って いって も 、 まだ 、 水谷 先生 や 金田 君 、 それ に 綾子 さん も いる わ 。
もちろん 石垣 園子 さん と 、 子供 の 秀 哉 君 も ……」
「 私 、 あの 子 嫌い 」
と 、 珠美 は いつ に なく はっきり と 言った 。
いや 、「 いつも 通り 」 と いう ところ かも しれ ない 。
「 そう ね 。
何 か ゾッと し ない わ ね 。 でも ── これ だけ 人 が いる はずな のに 、 話し声 一 つ 、 聞こえ ない なんて ……」
気 に し だす と 、 気 に なる もの だ 。
「 何 か 音 の 出る もの を ──」
と 、 珠美 は 、 ふと 思い 付いて 、「 TV つけよう 」
と 、 サロン の 中 を 見 回して 、 やっと 気付いた 。
「 TV ── ない の ね 」
「 そう 。
不思議でしょ ? と 、 敦子 は 肯 いて 、 言った 。
確かに そうだ 。
こういう 場所 ── 個人 の 家 なら ともかく 、 客 を 泊める 山荘 で 、 TV が ない と いう の は 変って いる 。
「 そう いえば 、 部屋 に も ない ね 」
珠美 は 肯 いた 。
「 妙だ ね 。 いくら 山 の 中 だって ──」
「 映り が 悪くて も 、 必ず TV の 一 台 ぐらい は 置く もの よ 」
敦子 は 首 を 振って 、「 ラジオ も ない わ 。
少なくとも 、 お 客 の いる 部屋 に は 」
「 そう か 。
あの 石垣 って 人 の 住んで る 部屋 に は ある の かも しれ ない わ 」
でも ── 確かに 妙な 話 である 。
さすが に 呑気 な 珠美 も 、 少し 不安に なって 来た 。
する と ──。
「 あら 、 庭 に ……」
と 、 敦子 が 言った 。
二 人 が 立って いる 窓 から 、 裏庭 が 見える 。
その 庭 を 、 雪 に 足 を 取ら れ ながら 、 石垣 園子 と 秀 哉 が 、 歩いて 来る のだ 。
「 ちょっと !
と 、 珠美 は 、 敦子 の 肩 を つかんだ 。
「 低く なって ! ほら 」
「 え ?
敦子 は 、 戸惑い ながら 、 一緒に なって 身 を かがめた 。
二 人 は 、 窓 の 下 から 、 目 まで を 出して 、 表 を 改めて 眺めた 。
「 あの 二 人 …… いつ 出て 行った の かしら 」
と 、 珠美 が 言った 。
「 珠美 ちゃん 、 気 が 付か なかった の ?
「 全然 。
私 、 ずっと ここ に いた のに 」
そう 。
裏庭 へ 出る ドア が 開けば 、 珠美 は 必ず 気 が 付く はずだ 。 いくら ウトウト して いて も 、 完全に 眠って いる わけで は ない のだ から ……。
裏庭 に は 、 色々 と 、 金田 や 敦子 の 歩き 回った 足跡 が ついて いる 。
しかし 、 石垣 母子 は 、 妙な 方角 から 歩いて 来て いた 。
「 あっ ち へ 行ったら 、 崖 から 落ち そうじゃ ない ?
と 、 敦子 も 同じ 思い らしい 。
「 そう ね 。
── 何だか 変だ わ 。 それ に 、 今 、 綾子 姉ちゃん が 授業 して る はずな のに 」
「 こっち を 見て る !
敦子 が 頭 を あわてて 下げた 。
「 大丈夫 よ 。
外 が こんなに 明るい んだ もの 。 こっち は 見え やしない わ 」
「 でも 、 あの 男の子 、 超 能力 が ある んでしょ ?
「 そんな 力 が あれば 、 隠れた って むだ よ 」
珠美 も 、 大して 度胸 は ない 方 だ が 、 理屈 っぽい ところ が ある ので 、 納得 できれば 、 それ で 割り切れる と いう もの な のである 。
「── 入って 来た わ 」
と 、 珠美 は 言った 。
石垣 母子 が 、 裏庭 へ の 出入 口 から 入って 来る 音 が した 。
うん 、 この 音 なら 、 もし 出て 行った と して も 気付か ない わけ は ない 。
「 ソファ に 戻って よう 」
と 、 珠美 は 敦子 を 促した 。
「── 二 人 で 何 か して た こと に して ──」
「 でも 、 何 を ?
敦子 は 、 噓 を つく こと の 苦手な 娘 である 。
こんな とき 、 とっさに うまい 言い訳 が 出て 来 ない 。
「 そう ね 」
珠美 は 、 ちょっと 考えて 、「 ラブ シーン でも どう ?
敦子 は 目 を 丸く した 。
「── あら 、 こちら だった の ?
石垣 園子 が 顔 を 出す 。
「 おやつ でも 、 と 思った の 。 クッキー を 焼いた から 、 ここ へ 持って 来る わ ね 」
「 すみません 」
珠美 は 、 たとえ 相手 は 怪しくて も 、 決して くれる もの は 断ら ない 。
「 私 、 お 手伝い し ましょう か 」
と 、 敦子 が 腰 を 浮か す と 、
「 いい の いい の 」
と 、 石垣 園子 は 手 を 振って 、「 少し 動か ない と いけない の よ 、 私 も 。
こういう 時期 は 、 どうしても 、 運動 不足に なる から 」
「 綾子 姉ちゃん は 、 ちゃんと やって ます か ?
と 、 珠美 は 澄まして 訊 いた 。
「 家庭 教師 なんて 初めて だ から 、 あの 人 」
「 ええ 、 そりゃ もう 熱心に 」
と 、 園子 は 肯 いて 、「 少し 休んだ 方 が いい 、 って 、 今 、 おやつ を 先 に 持って 行った ところ よ 」
「 へえ 、 珍しい !
うんと こき使って やって 下さい 」
どこ まで 本気で どこ から が 演技 な の か 、 自分 でも よく 分 ら ない と いう 所 が 、 珠美 に は ある 。
「── 珠美 ちゃん って 、 いい 度胸 ねえ 」
と 、 園子 が 出て 行って から 、 敦子 が 言った 。
「 人間 、 度胸 が なきゃ 、 お 金 も 手 に 入ら ない もん 」
珠美 は 、 アッサリ と 言った 。
「 でも 、 ともかく 、 あの おばさん が 噓 を ついて る って こと が 分 った わけだ 」
「 無気味 ね 。
── クッキー なんか 、 食べて も 大丈夫 かしら ? 「 大丈夫でしょ 」
「 どうして 分 る の ?
「 どうせ 、 がまん でき なくて 、 食べる に 決 って んだ もの 。
大丈夫 と 思って なきゃ おいしく ない じゃ ない 」
正に 、 珠美 流 の 理屈 だった 。
五 分 ほど して 、 石垣 園子 が 、 クッキー を 器 へ 入れ 、 紅茶 と 一緒に 運んで 来た 。
「 ここ へ 置き ます から ね 。
── それ から 、 私 、 少し 昼寝 を さ せて いただく わ 。 でも 、 奥 の 方 の 部屋 に い ます から 、 何 か ご用 が あれば 、 遠慮 なく 起こして ちょうだい 」
園子 の 言葉 に 、 珠美 と 敦子 は チラッ と 目 を 見交わした 。
「── 分 り ました 。
お邪魔 し ない ように し ます わ 」
と 、 敦子 が 言う と 、
「 本当に やさしい お嬢さん ね 、 あなた は 」
と 、 園子 は 微笑んだ 。
私 は 優しい お嬢さん じゃ ない の か 。
── フン 、 と 珠美 は 思った が 、 まあ 客観 的に 見る と 、 多分 に 小 にくらしい ガキ かも しれ ない 。
ま 、 いい や 。
今 は この クッキー 。
園子 が サロン を 出て 行った とき 、 早くも 珠美 は 右手 で 紅茶 の カップ を 取り 上げ 、 左手 で は 、 二 つ 目 の クッキー を 取って いた 。
一 つ 目 は 、 口 の 中 に ある 。
「── チャンス だ ね 」
と 、 珠美 は 、 クッキー を 紅茶 で 流し 込む と 、 言った 。
「 でも 、 あの おばさん 、 怪しい 奴 でも 、 料理 の 腕 は 一流 ! 「 その 点 は 確か ね 」
と 、 敦子 も 肯 いた 。
「── で 、 何の チャンス な の ? 「 裏庭 を 調べて みよう よ 」
「 調べる って ?
「 今 、 あの 二 人 が どこ から 来た の か 。
もしかしたら 、 下 へ 出る 抜け道 で も ある の かも しれ ない じゃ ない 」
「 そう ねえ ……」
敦子 は ためらった 。
何といっても 夕 里子 や 珠美 と 違って 、 敦子 は そう 冒険 に 慣れて いる わけで は ない 。
「 じゃ 、 いい よ 。
敦子 さん 、 ここ に いて 。 もし 、 私 が 生きて 帰ら なかったら ──」
「 珠美 ちゃん !
敦子 は 情 ない 顔 に なって 、「 いい わ 。
一緒に 行く わ よ 」
「 無理 し なくて も いい よ 」
「 一 人 で ここ に 残って る の も 、 いやだ もん 」
「 じゃ 、 決 った !
その 前 に ──」
珠美 は 、 ティッシュペーパー を 出す と 、 残った クッキー を 包み 出した 。
「 何 して ん の ?
「 持って く の 。
お 弁当 」
どうやら 、 ピクニック と 間違えて いる ようだった ……。