盾 の 勇者 の 成り 上がり 2 Chapter 18
十八 話 疫病 の 村 その 日 は 野宿 と なった 。
食料 を 満載 した 荷車 を 引いた まま だ 。 これ は 食いしん坊 鳥 の エサ と 割り切ろう 。
色々 と 巡回 して いる と 、 北 の 方 でも 飢饉 が あった らしい 。 後 で また 南西 の 村 に 寄って 食料 を 分けて もらう か 。 在庫 処分 に 困って いる ようだ し 、 高く 売れる だ ろ 。
「 ごっは ー ん ! 」 布 を 被せた 荷車 に 頭 を 入れて 中身 を 貪る 鳥 。 「 お ー いす ぃ ー い ぃ ! 」 どっか で 聞いた こと の ある フレーズ だ 。 フィーロ は 急 成長 が 終わって いる の に 大食 漢 な んだ よ 。 日々 の 食費 が 馬鹿に なら ない 。 その代わり に 移動 は 異様に 速く 済む 。 けれど 色々 と 無 茶 を して いる 所 せ 為 い で 馬車 が すぐに 壊れる 。
「 どうした もの か 」
この際 、 木製 で は なく 金属 製 に する か な 。 フィーロ が 軽い 軽い うるさい し 。 でも 耐久 性 を 考える と 、 かなり 高く つき そうだ 。
ラフタリア は 乗り物酔い を 克服 した けど 、 フィーロ の 全速力 だ と 同乗 する 客 が 凄 すごい 勢い で リバース する んだ よ な 。 スプリング と か を 入れ させて ショック を 緩和 する の も 良い かも 。
最近 で は かなり 金 が 貯まって きて いる 。 武器 屋 の 親父 に 会う の が 楽しみだ 。
この 国 を 回って みて わかる の は 、 やはり 城下町 の 武器 屋 が 一 番 良い 物 を 売って いる 。 他の 勇者 が どこ で 武器 防 具 を 買って いる か 知ら ない が 、 俺 が 回った 町 や 村 で は 、 親父 の 店 より も 良い 装備 は 売って いない 。 「 ご しゅじん さま ー 」
も ふ …… フィーロ の 羽毛 が 俺 に 伸し掛かって くる 。
「 え へ へ ー 」
「 む う ……」
ラフタリア が 何故 か 俺 に 引っ付く ように 座る 。
「 へ へ へ 、 みんな で ポカポカ 」
「 俺 は 暑い ……」
「 フィーロ 、 離れ なさい 。 アナタ が 離れれば 丁度 よく なります 」 「 や ー 、 ラフタリア お 姉ちゃん が 離れれば 良い んだ よ 。 ご しゅじん さま を 独り占め よく ない 」
「 独り占め してません ! 」 「 さっさと 寝ろ 。 お前 等 ! 」 「 そんな ー ……」 「 一緒に 寝よう よ ー ご しゅじん さま ー 」
「 俺 は 東 の 地域 に 到着 する 前 に 薬 を 作って おか なきゃ いけない んだ よ 」
在庫 の 治療 薬 だけ で は 間に合わ ない の を 見越して 、 大量に 手 に 入った 薬草 で 鋭 意 調合 中 だ 。 それ でも 足りる か わから ない の が 痛い なぁ …… これ が 行商 の 難点 だ 。
「 ぶ ー ……」
フィーロ は むくれ ながら 俺 から 離れて 外 で 眠る 。
同時に ラフタリア も 馬車 の 中 に 入った 。 地べた で 寝る より 寝心地 が 良い から だろう 。
「 さて 」
俺 は 火 の 番 を し ながら 治療 薬 の 調合 を 続ける 。
「 ナオフミ 様 」
「 ん ? 」 ラフタリア の 声 に 馬車 の 方 を 見る 。 すると ラフタリア が 馬車 の 中 から 手招き して いる 。
「 どうした ? 」 「…… 一緒に 寝ません か ? 」 「 お前 も か …… まったく 、 寂し がり 屋 だ な 。 また 怖い 夢 でも 見た の か ? 」 以前 は 誰 か が 傍 に いない と 夜泣き する ほど だった から な 。 …… それ は 両親 を 酷 い 失い 方 を した トラウマ から なんだろう が 。
「 ち 、 違います ! 」 否定 して いる が 見た目 は 大人 でも 中身 は 子供 。 親 恋しくて 寂しい のだろう 。
「 イヤ か ? なら フィーロ を 人 型 に して 添い 寝 して もらえば 良い だ ろ 」
「 寂しい と か じゃ なくて …… その ……」 ラフタリア は なんか 俯いて 恥ずかし そうに 呟く 。 そう いえば いつの間にか 夜泣き を し なく なった よ なぁ …… アレ から 随分 経った 気 も する 。
「 ナオフミ 様 は 元 の 世界 に …… 好きな 人 と か …… いる んです か ? 」 「 は ? 別に いない ぞ 」 一体 何の 話 が したい と いう のだ 。 意図 が 掴め ない 。
「 いきなり どうした ん だ ? 」 「 いえ …… ナオフミ 様 は 私 の 事 を どう 思って いる の か な と 」 は ? う ー む …… なんか ビッチ が 頭 に 浮かんで きて ムカムカ する が 、 ラフタリア に 怒る 理由 は ない 。 なんで ビッチ が こんな 時 に 浮かぶ の か 、 俺 自身 不明だ 。
「 奴隷 と いう 立場 で 無理 を さ せて しまって いる 」
「 その …… それ 以外 で は ? 」 「 親 代わり と して 立派に 育てよう と 思って いる 」 首 を 傾げ ながら 答える 俺 に 、 ラフタリア は なんとも 微妙な 顔 を する 。
「 俺 を 信じて くれて いる から な 。 俺 も お前 を 娘 の ように 大切に して いる 」
付き合い 自体 は そこ まで 長く ない が 、 俺 は ラフタリア が 大きく なる 前 から 知っている 。
さっき も 思った が 、 外見 こそ 大人 だ が 、 まだまだ 精神 的に は 子供 な んだ 。 無理 を して 大人 振ろう と して いる が 、 誰 か が 守って やら なければ 耐えられ なく なる 事 も ある だろう 。 「 は 、 はい ! って 、 あれ !? なんか おかしく ない です か ? 」 「 おかしく ない 。 明日 も ある し 、 しっかり と 休んで おけ 」
「 は ぁ ……」
笑顔 で 頷く ラフタリア だ けど 、 何 か 疑問 を 持った ように 首 を 傾げ つつ 、 馬車 の 中 の 寝床 に 戻った 。
俺 は 次の 行商 の ため に 作業 を 続行 する 。
ちなみに ここ 最近 の 行商 時 に 起こる 戦い に よって 、 それぞれ Lv が 上がって きて いる 。
俺 Lv 37 ラフタリア Lv 39 フィーロ Lv 38 フィーロ に すら 抜か れた 。 俺 の Lv アップ は 相当 遅い の か ?
いや 、 二 人 は アタッカー だ 。 特に フィーロ は ラフタリア より も 高い 俊 敏 性 で 敵 を 瞬 殺 する 。 だから 上がり も 早い のだろう 。 ラフタリア も 負け じ と 俺 の 指示 を 無視 して 前 に 出る が 、 フィーロ の 速度 に 追いつけ ない のだ 。
「 ご しゅじん さま ー 」
「 どうした ? フィーロ 」
薬 を 調合 して いる と 、 フィーロ が 寝ぼけ 眼 で 人 の 姿 に なり 、 背 を 預けて くる 。
「 ご しゅじん さま は まだ 眠く ない の ー ? 」 「 まだ 行商 用 の 薬 の 調合 が 済んで いない んだ 。 それ が 終わったら 寝る 」
「 そっか ー ……」 「 お前 は ゆっくり 休めよ 。 なんだか んだ で 一 番 大変な んだ から な 」
馬車 を 引く の が 好き と は いって も 、 重 労働 である の は 変わら ない 。 フィーロ 自身 は 楽だ と 言う が 、 健康 面 を 考え ない と 危険だろう 。
「 一 人 で 起きて て 寂しく ない の ? 」 「 認識 の 違いだな 。 お前 等 の 寝顔 を 見て いる 分 に は 寂しく なんか ない 」
「 そう な んだ ? え へ へ 」
嬉し そうに 言う フィーロ 。 なんか 元気 が ない な 。 いや 、 気のせい かも しれ ない が 。
「 どうした ? 」 「 ご しゅじん さま が ー …… フィーロ の 寝顔 を 見て 寂しく ない なら 良い の ー 」 訳 が わから ない な 。
「 あの ね 。 ご しゅじん さま は 、 フィーロ を どんな 気持ち で 選んで くれた の ? 」 「 は ? 」 別に 、 特に 考え も なく 無作為に 選んだ もの だ が 。 と いう か 別に 外れ で も 良い と いう 感覚 で 卵 を 選んだ 。
「 フィーロ ね …… ご しゅじん さま に 選んで もらえて よかった と 思って る よ 」
まあ 、 結果 を 見れば 俺 も 良い 戦力 に なって くれて いる と は 思って いる 。 なんだか んだ で 可愛 げ は ある し 、 親心 的な 感覚 が 芽生えて いる の は 事実 だ 。
フィーロ も ラフタリア も まだ 子供 だ 。 体 は 大人 に 近づいて いる のだろう けど な 。
…… 本当 は 戦い なんて さ せちゃ いけない と わかって いる 。 幾ら 異 世界 だ から と いって 、 年 端 も いか ない 女の子 を 前 に 出して 戦わ せる なんて 真似 を 、 良心 を 持つ 者 なら させよう と は 思わ ない 。
本人 が 望んで る から なんて 方便 で 、 実際 俺 は 酷 い 奴 だ 。
本当 なら 、 ラフタリア の 居場所 を 作って あげて 戦い から 遠ざける べきな のだろう 。
だけど 今 の 俺 に は そんな 力 も 無い し 、 金 も 無い 。
フィーロ も 今 は 普通に 女の子 だ し 、 戦わ せる べきで は ない のだろう 。 本当 なら 魔物 と 戦わ せ ず 、 好きな 事 を さ せたい 。 例えば …… 馬車 を 引か せる ? これ は 今 と 変わら ない か 。
う ー む …… どっち に して も 俺 は 酷 い 人間 だ な 。
「 あの ね 。 フィーロ は ね 。 安物 だった ん だって 」
「 ん ? 」 フィーロ は 語り だした 。 奴隷 商 に 預けた その 日 、 俺 が 去った 牢屋 で 手 を 伸ばして 泣いて いる と 、 奴隷 商 が ポツリ と 呟いた 。
「 おかしい です ねぇ 。 盾 の 勇者 様 に お 売り した 卵 は 安物 な のです が 、 何故 こんな 変異 を した のでしょう ? 」 「 クエ !?」 フィーロ が 人 の 言葉 を 理解 して いる の を 知って か 知ら ず か 奴隷 商 は 部下 と 話 を 続けて いた 。
「 えっと 、 再 確認 致しましょう か 。 この フィロリアル は 駄羽 同士 の 組み合わせ で 、 食肉 用 でした ね ? 」 部下 が 奴隷 商 の 問い に 頷く 。 「 卵 で の 価値 は 銀貨 五〇 枚 、 成鳥 でも 変わら ない はず ……」
「 クエエエエ ! 」 バサバサ と 翼 を 広げ 、 本来 の 価値 を 言われて フィーロ は 抗議 の 声 を 上げた 。 「 これ が 勇者 様 の 力 …… な のでしょう か 。 それとも 波 で 生じた 魔物 の 肉 を 食した 所 為 な の か 、 面白く なって きました です 。 ハイ 。 上手く いけば 一 儲け できます です 」 「 それ で 、 この フィロリアル は どう する のです か ? 」 「 要 調査 です 。 銀貨 五〇 枚 で これ な のです から 、 もっと 高価な フィロリアル を 勇者 様 に 提供 すれば 、 更 なる 金 に なる 可能 性 が あります 。 入念に 調べ 上げ 、 最悪の 場合 は 補填 と 称して 高額の フィロリアル を 与えましょう 。 いえ 、 ドラゴン を 進呈 する の も 良い かも しれませんです 。 ハイ ! 」 「 ク 、 クエエエエエエエエエエエエエエ !?」 「 うわ ! 檻 が ! 」 それ を 聞いて フィーロ は 否定 したい 気持ち で 檻 を 壊した 。 自分 は もっと 優秀だ と 自己 主張 した 結果 壊して しまった らしい 。
自身 の 本当の 価値 は 俺 に 決めて もらう 。 その ため に 何でも する 。 じゃ ない と 自分 で は ない フィロリアル に 居場所 を 奪わ れる 。 なにがなんでも 俺 の フィロリアル は 自分 だ と 主張 し たかった ようだ 。
「 ご しゅじん さま …… フィーロ の 事 、 見捨て ないで 。 フィーロ は ここ に いたい の ……」 潤んだ 瞳 で フィーロ は 懇願 する ように 言う 。
「 ワガママ を 言わ なかったら 見捨てたり は し ない 」
安易に 選んで しまった が …… 俺 の 所 為 で 本来 の フィーロ が 辿 る 運命 と は 違う 結果 に なって しまった と も 言える の か 。
普通の フィロリアル と して 牧場 で 生きる 道 も …… あった の かも しれ ない 。 もちろん 、 食肉 用 と いう 酷 い 一生 に なって しまった かも しれ ない けれど 、 それ が フィロリアル な のだろう 。
そう 考える と 俺 の 所 為 で フィーロ は 戦い に 身 を 投じる 羽目 に なった の か 。
それ は …… 幸せな のだろう か ? 選ば れる と いう の は とても 苦痛 を 伴う もの だ と 、 俺 は 『 盾 の 勇者 』 に 選ば れた こと で 知った 。
「 ほんと ? フィーロ が 怪我 を して 動け なく なったら 別の 子 を 買ったり し ない ? 」 「 ああ 、 本当だ 。 俺 が 嘘 を 言った こと が …… ある な 。 でも すぐに 代わり が 効く と は 思って ない 」
「 うん ! フィーロ がんばる ね ! 」 「 期待 して いる 」 そう 言う と 、 フィーロ は 俺 の 背中 に 寄り掛かった 体勢 で 寝息 を 立て 始めた 。
まったく 、 何 を 恐れて いる んだ か ……。
全て の 原因 は むしろ …… 俺 だ 。 恨ま れる 謂われ は あって も 感謝 さ れる 覚え は ない 。
俺 に 無 価値 だ と 思わ れる の を 怖がって いる の か …… 最初 から 思っちゃ いない のに な 。 むしろ 俺 は …… ラフタリア や フィーロ に 戦う こと を 拒ま れる こと の 方 が 、 怖い 。
矛盾 して いる 自覚 は ある 。 だけど 俺 は ラフタリア と フィーロ が いる から こそ 、 こうして 戦えて いる んだ 。 本当 は ラフタリア も フィーロ も 戦わ なくて 良かった はずな のに 、 俺 が 奴隷 商 の 所 で 選んで しまった から 運命 が 変わって しまった 。
だ から こそ 、 責任 を 持た ない と …… いけない んだ よ な 。
世界 が 平和に なった 時 、 二 人 が 幸せに 過ごせる 場所 を 作って あげ ない と いけない な 。
国 の 東 の 地域 に 到着 した 。
辺り の 木々 が 枯れて いて 空気 が 重たい 。 別に 特別 寒い わけで も ない 地域 だ と いう のに 、 大地 の 色 が 黒く 、 例えて 言う の なら 暗黒の 大地 みたいだ 。
空 を 見上げる と 雲 も 分厚く 大きな 山脈 が 少しずつ 近づいて くる 。 なんとも 不吉な 感じ だ 。
「 えっと 」 道 が 分かれて いた ので 地図 で 確認 する 。
「 フィーロ 、 山 の 方 へ 進め 」
「 は ー い ! 」 「 二 人 と も 念のため に 布 で 口 を 覆って おけ よ 。 この 辺り は 疫病 が 流行 して いる らしい から な 」
「 はい 」
俺 も 口 を 布 で 覆い 、 最低 限 の 防御 を して から 目的 の 農村 に 辿り着いた 。
村 の 印象 を あえて 言う の なら 、 暗い 。 空 を 暗雲 が 覆って いて 、 なんとも 黒っぽい 村 だ 。
「…… 行商 の 方 です か ? 申し訳 ありません が この 村 は 、 疫病 が 蔓延 して い まして 、 ゴホ …… 避難 した 方 が ……」 苦し そうに 咳き込み ながら 村人 が 俺 達 に 説明 する 。
「 わかって います 。 だから 治療 薬 を 売り に 来ました 」 「 そ 、 そう です か ! 助かった 」
村人 が 走り出し 、 薬 の 行商 が 来た こと を 告げ に 行く 。
…… かなり 緊迫 した 様子 だ 。 この 調子 じゃ 在庫 に 不安 が ある な 。
俺 の 不安 は 的中 し 、 村中 から 薬 を 欲する 声 が 響く 。
「 神 鳥 の 馬車 だ ! これ で 村 も 救わ れる ! 」 うわ ぁ …… これ で 俺 の 作った 薬 の 効果 が 無い と か だ と 、 途端 に 信用 が 落ちる 。 しょうがない 。
「 薬 を 飲ま せたい 奴 は どこ だ ? 」 治療 薬 を 購入 した 奴 から 順に 、 一 番 効果 が 高い 方法 で 俺 が 飲ま せる と いう 行動 に 出る 。 「 こちら です 。 聖人 様 」
前々 から 聖人 と か 言われて いる が なんか む ず 痒 い 。 盾 の 勇者 と 嫌な 目 で 見られる より は 良い が 。 案内 さ れた の は 症状 の 重い 者 達 を 一堂 に 集めた 建物 だった 。 隔離 施設 的な 建物 だった のだろう 。
施設 の 裏 に は 墓地 が あり 、 真 新しい 墓 標 が 何 本 も 立って いる 。
…… 死 の 匂い が する と 言えば 伝わる だろう か 。 病院 や 墓場 独特 の 嫌な 空気 の 原因 と 同じだ と 確信 する 。
治療 薬 だけ で 治 せる か 不安だ 。
中級 レシピ を 解読 した 程度 で 自惚れて は いけない 。 もしも ここ で 治療 薬 の 効果 が 無かったら 、 手段 が なくなる 。 いや …… 高く つく が 高額の 薬 を 俺 が 服用 さ せれば 効果 は 出る だろう 。
それ でも …… 対応 できる ように なりたい 。 たとえ 解読 が 難しくて も 高くて も 、 何も 手段 が 無い より は あった 方 が 良い 。 上級 レシピ の 本 を 薬屋 に 売って もらえ ない か 今度 聞いて おこう 。
「 妻 を お 願い します ! 」 「 ああ 」 俺 は 咳 を 止め処 なく して いる 女性 を 起こし 、 少しずつ 治療 薬 を 飲ま せる 。
パア ……っと 光 が 女性 を 中心 に 広がった 。 女性 の 血色 が 良く なった ように 感じる 。 良かった 。 効果 が ある ようだ 。
「 次 ! 」 俺 が 顔 を 上げる と 、 案内 して きた 村人 の 奴 、 驚愕 の 眼差し で 俺 を 見て いた 。 「 どうした ? 」 「 あ 、 あの ……」 女性 の 隣 で 横 に なって いる 子供 を 指差す 。
先ほど まで 女性 同様に 咳き込んで いた はずな のに 、 咳 が 止まって いた 。
ん ? 死んだ ……?
俺 は その 子供 の 呼吸 を 確認 する …… よかった 。 まだ 生きて いる 。
しかし 直前 まで 咳き込んで いた はずな のに 随分 と 安定 して いる な 。
「 どう なって いる んだ ? 」 「 聖人 様 が 妻 に 薬 を 飲ま せる と ほぼ 同時に 、 隣 の 子 の 呼吸 も 和らいだ ように 見えました 」 ふむ …… も しか して 薬効 果 範囲 拡大 ( 小 ) と は この 事 を 指して いた の か ?
範囲 が 広がるって 効果 は 優秀 過ぎる だ ろ 。 見た 限り だ と 半径 一 メートル 程度 、 薬 を 服用 さ せた 者 の 周囲 に 同様の 効果 を 出せる ようだ 。
どれ だけ の スペック を 秘めて いる んだ 、 この 盾 は 。
ただ 、 戦闘 に なる と 範囲 外 である 可能 性 は 高い な 。 一 メートル 以内 で 固まって いたら 、 格 下 の 相手 で ない 限り 一網打尽 に さ れる 。
「 それ なら 話 は 早い ! 治療 薬 を 飲む 人 の 半径 一 メートル 以内 に 集めれば 、 全員 に 薬効 が ある 。 いそげ ! 」 「 は 、 はい ! 」 人手 が 足りない ので 、 フィーロ と ラフタリア に も 病人 を 運ば せて 集め 、 中心 の 人 に 薬 を 飲ま せた 。 薬 の 節約 に も なり 、 隔離 施設 の 連中 の 治療 も 思いのほか 早く 終わった 。
ただ …… あれ から しばらく 経った けれど 、 症状 の 緩和 だけ で どの 人 も 完全に 快方 に 向かって いる わけで は ない の が 厳しい ところ だ 。
「 やはり 俺 の 治療 薬 じゃ これ が 限界 か ……」
「 ありがとう ございました ! 」 感謝 さ れる の は 嬉しい が 、 俺 は 満足 と は 言い切れ ない 状況 だった 。 感染 する 危険 性 も 孕んで いる し 、 根絶 でき ない と は 。
「 そう いえば この 病 は どこ から 来た んだ ? 風土 病 か 何 か か ? いや 普通 は 流行 は やり り 病 やまい か 」
治療 薬 で この 程度 しか 効果 が 無い と いう 事 は かなり 重度 な 病 だ 。 俺 達 に も 感染 する 危険 性 が ある 。 最悪 、 早急に ここ を 去る と いう 選択 を とら ねば なら ない 。
「 その …… 実は 魔物 の 住む 山 から 流れて くる 風 が 原因 だ と 治療 師 は 説明 して おりました 」 「 詳しく 話せ 」
「 では 、 彼 に ……」
治療 師 と は 、 俺 の 世界 で 言う 医師 に 近い 回復 魔法 と 薬学 に 精通 した 職種 だ 。
その 治療 師 は 、 この 村 で 病 に 効果 の ある 薬 の 調合 を 行って おり 、 丁度 俺 達 が 治療 中 に 隔離 施設 に 来て 治療 を 手伝って いた 。
「 お前 、 治療 薬 より 高位 の 薬 が 作れる か ? 」 「 はい 。 現在 製作 中 です が 、 聖人 様 が 調合 した 薬 で 症状 の 大規模な 改善 が 見られた ので 、 放置 して います 」 「 早く 作業 を 再開 しろ 。 完全に 治療 できて いない と いう 事 は 、 いずれ 再発 する と いう こと だ 」 「 は 、 はい ! 」 「 待て 」 大急ぎで 作業 を 続行 しよう と する 治療 師 を 呼び止める 。
「 お前 は この 病 の 原因 を 山 から の 風 だ と 説明 して いた そうだ な 。 何故 だ 」
「 あ 、 はい 。 約 一 ヶ月 ほど 前 、 山脈 を 縄張り に する 巨大な ドラゴン を 剣 の 勇者 様 が 退治 いたしました 」 そう いえば 、 そんな 噂 が 流れた な 。
「 ドラゴン は 人里 離れた 地 を 根城 に して 巣 を 作る のです が 、 この ドラゴン は はぐれ 者 だった ような のです 」
「 それ と 何の 関係 が ある んだ ? 」 「 一 時期 この 村 に は 、 勇者 様 の 偉業 を 見 に 冒険 者 達 が 集まった そうです 。 そして 彼等 は 山 に 登り 、 勇者 様 が 倒した ドラゴン の 素材 を 持ち帰って きました 」 ドラゴン の 素材 で 優秀な 武器 と か 防 具 を 作れば 良い もん なぁ ……。
ちょっと 羨ま し い 。
「 で ? 」 「 ここ から が 本題 です 。 素材 が 剥がさ れた まで は よかった のです 。 その おかげ で この 寂れた 村 も 金銭 的に 非常に 潤いました 。 ですが …… その ドラゴン の 死骸 が 腐り 始めた 頃 に 問題 が 起こった のです 。 丁度 同 時期 に 死骸 を 見 に 行った 冒険 者 が 病 を 発症 しました 」 「 その 死骸 が この 病 の 原因 か 」
「 おそらくは ……」
素材 を 剥ぎ まくって いる のに …… と いう ところ で 安易に 想像 が 付く 。 ドラゴン の 死骸 で 残されて い そうな 部位 …… 肉 だ な 。 幾ら ドラゴン と いえ ど 一 番 に 腐る と いったら その 辺り だろう 。
一部 の 美食 家 と か が 欲する かも しれ ない が 、 大抵 は 腐り かけ の 肉 など 冒険 者 は 欲し ない 。
物語 と か だ と ドラゴンって 余す 所 が ない ほど 肉 が 美味しい と 言わ れる けど 、 この 世界 の 基準 だ と どう な んだろう 。 毒 が ある の かも しれ ない 。
後 は 臓物 だ 。 特に 肝臓 の 類 は 腐り やすい 。
錬 は 素材 目当て の 可能 性 が 高い から 、 臓物 辺り は 無視 して い そうだ 。
精 々 心臓 と か …… 魔力 的 効果 の 高 そうな 部位 だろう なぁ 。
「 原因 が わかって いる なら ササッ と 処分 すれば 良い だ ろ 」
「 それ が …… 元々 冒険 者 で も なければ 入ら ない 凶悪な 魔物 の 住む 地域 の 山脈 な ので …… 近隣 の 農民 で は 撤去 も 不可能な のです 」
「 じゃあ 冒険 者 に 頼めば 良い だ ろ 」
「 気付いた 頃 に は 山 の 生態 系 が 劇的に 変化 して い まして 、 空気 に は 毒 が 混ざり 、 病 の 影響 で 並み の 冒険 者 で は 入る こと さえ 困難に …… しかも 流行り 病 を 警戒 して 冒険 者 も 近づきません 」 は ぁ …… 錬 の 奴 、 魔物 の 死骸 くらい ちゃんと 処分 して いけ 。
錬 は 勇者 の 中 で 一 番 年 下 だ 。 俺 が 高校 生 だ と したら 、 物 が 腐って 困る 、 なんて 発想 は 出て こ なかった だろう 。 ゲーム と 現実 の 違い に 一 番 遠い と 言わ れれば この 結果 は 必然 と 言える 。
「 聖人 様 、 どう しましょう 」 「 国 に は 報告 した の か ? 」 「 はい 。 近々 薬 が 届く 予定 です 」
「…… 勇者 は ? 」 「 何分 、 忙しい 身 な ので 、 後回し に なって いる 可能 性 が 高い か と 」 元 もと 康 やす と いい 樹 と いい 錬 と いい 、 腹立たしくて しょうがない 。
「 国 へ の 依頼 料 と か は 既に 払って いる の か ? 」 「 ええ ……」 「 キャンセル したら 金 は 戻って くる か ? 」 治療 師 の 奴 、 俺 を まっすぐに 見て 目 を 見開く 。 「 聖人 様 が 行か れる のです か ? 」 「 どうせ 薬 が 出来る まで 時間 が 掛かる だ ろ ? 成功 したら 報酬 を 貰う ぞ 」
「 はい …… 後 半日 は 掛かる か と 」
「 わかった 。 その 間 に ドラゴン の 死骸 を 処分 し に 行って くる 。 代わり に 国 へ 支払った 依頼 料 を 寄越せ 」
「 わ 、 わかりました 」 こうして 俺 達 は 山 の 方 へ ドラゴン の 死骸 を 処分 し に 行く こと に なった 。